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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)

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第50話 腑

 
前書き
ついに前作の「とある暁の傀儡師(エクスマキナ)」の話数と並びますね

まだまだ、突っ走ります! 

 
お互い
死なねぇ方法があるとすりゃあ
敵同士、腹の中見せ合って、隠し事をせず
兄弟の杯を酌み交わすしかねぇ
けど、そりゃ......無理だ
人の腹の中の奥......腑まで見るこたぁできねーからよ
本当は、煮え繰り返ってるかも分からねぇ

腑を......見せ合うことはできねーだろうか?

分からねぇ......ただオレは、いつもここで、その方法があるかないかを
願掛けしている

能力者を封じ込める装置『キャパシティダウン』
この不協和音に似たノイズを耳にした能力者は、自身の能力が使えなくなるだけでなく、運動能力が鈍くなってしまう。
この装置には、全ての能力者に効果があり、レベル5であろうとも例外はない。

黒ゼツは第4位の能力者『麦野沈利』の身体を奪い、トビはフレンダの顔に張り付いて、それぞれの能力と運動能力を使っていた。
そのため、木山の策によりキャパシティダウンの影響をモロに受けてしまい、身体が硬直したまま動きが制限されてしまう。

!?ゼツの動きが止まった

目と耳が使えない状態のサソリはキャパシティダウンの影響を受けずに、流れ込ませた土砂を操り黒ゼツ麦野とトビフレンダの二人を捕らえると砂の塊ごと宙に浮かばせた。

徐々に回復する視力と聴力。
サソリは朧げながら、ぼかされ滲んだ世界が見えてきた。
サソリの隣には、強い意志を持って臨んでいる木山が凛とした顔立ちで立っていた。

「すまない......信用するのは同じ苦しみを持った者だけにしている......お互いの手の内、腑を見せてようやくね」
焦点が合ってきたサソリの目には、木山の吹っ切れた顔が眩しく見えた。
「ふふ、やるな」
それな応えるように、チャクラ操作を慎重に精度を高めた。
聴力が回復したということは、サソリ自身にもキャパシティダウンの影響を受けるが、病院で散々苦労した代物だ。

この程度ならば、問題ない

木山はキャパシティダウンのリモコンを慎重に操作しながら、黒ゼツとトビを睨み付けた。
繭状に砂に固まり、顔だけを表に露出しながら、悔しそうに顔を歪めている。

「キサマ......」
「少なくとも、得体の知れない君達よりはサソリ君の方が信用できる」

ここに来る途中
偶発的とはいえ、垣間見たサソリの過去を思い出した。
大切な人を喪い、もがき苦しんだ彼
ぽっかりと空いた穴を埋めるように人形へと逃避し、人間を人形に造り替える禁断の技術を開発した
全てとは、言えないが
気持ちが分かってしまう

生徒を救うために開発した『幻想御手(レベルアッパー)』
結果的には大規模な混乱を招いた実験となったが、サソリと根っこの部分は同じだ。
悪い技術のようになってしまったが、予期しない部分でサソリの腑とも云うべき断片を観ることが出来た事には感謝した。

「さて......ゼツ。キサマらの目的は何だ?」
サソリは両腕を前に出して、キャパシティダウンの影響を受けながらも掴んだ砂の塊を維持し続けている。

「ヤルナ......サソリ」
「割と暑苦しいっすね!解放って無しっすか?」
グルグルの面を付けたフレンダが首を回すが、砂から出られずに傾けた。
「無しだ」
「厳しいっすね」

「木山......そこに倒れて眼鏡の女を安全な場所に運んでくれ」
サソリは木山を一瞥もせずに指示を出した。
既に万華鏡写輪眼の影響で幻術に掛けられた木原一族のテレスティーナが壁を背に力を無くしていた。
「分かった」

キャパシティダウンのリモコンを手に持ったまま、やや早歩きで砂の塊から距離を取りように移動をし始めた。
「......甘クナッタナ、サソリ......」
「戦いに邪魔なだけだ」
「イヤ、違ウ......昔ノオマエナラ躊躇無ク潰スダロウ」
「何の事だ?」
「ソノ甘サガ命取リニナル」

テレスティーナに向かった木山だったが、会話が気になりサソリの方を見ると真後ろに赤い光の線と白いレンズが蛍光灯に反射しているのが確認できた。
「!?」
赤いレーザーポイントがゆっくりと上に移動してサソリの頭部に静かに向けられていた。

「サソリ君!?」
キャパシティダウンを受けているサソリは、自身に向けられている銃口に気付くことなく黒ゼツとトビの動きを封じているのに精一杯だった。

「ま、マズイ!」
木山は、踵を返してダッシュをするとサソリを押し退けた。
「な?!」
サソリが木山の予期せぬ動きに困惑するより前にパンッ!と乾いた発砲音がして、体勢を崩したサソリの頬を掠めると木山の肩に弾丸が命中して、ゆっくりと倒れ込んだ。

「木山!?」
「かは!......」
肩から溢れ出す血を片手で抑えるが、木山の呼吸が乱れていく。
サソリは、チャクラ糸で止血をしようとするが、キャパシティダウンにより上手く練る事が出来ないでいた。
更に、微妙なバランスで制御していた身体能力が崩れて、ズシッと身体が重くなる。

「外しました......とミサカは報告します」

木山の肩から血が滲み出して、白衣が真っ赤に染まっていった。
軌道と声がした方をサソリが何とか確認すると茶色の髪にゴーグルを付けた何処かで見た事がある人物が銃を構えて立っていた。

「御坂......!?」
「何で君が......?」

そこには、サソリと共にレベルアッパー事件を収束に貢献した学園都市第3位の御坂美琴が額のゴーグルに手を当てながら、銃を構えた。

「お前何をしてん!?」
御坂にそっくりな人物は躊躇なく引き金を引いて、サソリの脇腹に着弾させた。
「ぐっ!?」
チャクラの制御が出来ないサソリには、弾丸が深く刻み込まれて、血が止め処なく溢れ出してくる。
サソリは、膝を着いてなんとか片腕を前にして黒ゼツ達を封じ込め続けるために入らない力を込める。

「赤い髪の男を仕留めました......とミサカは狙いを定めたまま高らかに宣言します」

「ナカナカ、頑張ルナ......」

「ご苦労~。ついでにこのうるさい音も止めるっす」

「了解しました......」

御坂......どういう事だ?
なぜお前が......

隣で肩を押さえて倒れている木山に這い蹲りながら近づき、上を見上げる。
機械的に冷たく見下ろしている御坂と思しき者と視線を合わせた。
「違う......」
サソリは忍の本能や微々たるチャクラ感知から目の前にいる人物は、御坂美琴とは違う人物と直感で判断した。

「.......」
ミサカは木山の手から離れたキャパシティダウンのリモコンを拾い上げて、ダイアルを回して、出力を下げていく。

ま、まずい......
ここで奴らを解放するのは......

しかし、音が弱まるのと比例して砂に閉じ込められていた黒ゼツとトビにチャクラが戻り、弾き飛ばすようにサソリの砂を振り払うと床に着地をした。
「ククク......残念ダッタナ」
緑色の発光体を浮遊させて、腕を前に出してメルトダウナーを発射した。

「ぐああああー!!」
中腰になっていたサソリの脚に当たり、作用反作用の法則により脚を後方に弾くとサソリが前のめりに倒れた。

「!?チ......ヤハリ、完全ニ戻ッテイナイヨウダナ」

キャパシティダウンの反動かまだ能力が復活していない黒ゼツは、麦野の腕を睨み付けながら舌打ちをした。
「割と厄介な装置っすね~」
トビフレンダが、身体を揺らめかせながらミサカからリモコンを引っ手繰ると突き飛ばした。
「あ......」
「こんなものは」

バキッとリモコンを力任せに握り潰すと破片がバラバラと落ちていく。
その時に切ったであろう血が床に向かって滴り落ちた。

「はぁぁぁ!」

サソリは、足を引きずりながらキャパシティダウンにより封じ込まれていた万華鏡写輪眼が復活し、燃えさかる蒼いスサノオを出現させて身に纏っていた。
絶え絶えの鎧武者のような上半身だけのスサノオの刀が真っ直ぐトビフレンダに振り下ろされた。

「うわっ!っとと。危ないじゃないすか!!先輩」
間一髪で躱したトビフレンダが、よろめきながらサソリに文句を言った。

「フ......立ッテ居ルダケデモ精一杯ミタイダナ」

「あららー、やっぱり使っちゃいますか」
「そこにいる御坂にそっくりな奴は何だ?」
「答エル義理ハナイナ......」
「ああ、そうかい」

サソリはスサノオの刀で黒ゼツ目掛けて振り下ろそうとするが......
トビフレンダがミサカの襟首を掴んで、ミサカを盾にするように前に立たせた。
「......!」
「!!?く、くそ!」
サソリは、スサノオの軌道をズラしてミサカの直ぐ隣に反らした。

「はあはあ......卑怯だぞお前ら」
「正々堂々の勝負って思いました?甘いっすね先輩」
「クク......ヤレ、トビ」
黒ゼツがトビに指示を出すと、トビフレンダは、ミサカの持っていた銃を奪い取った。
そして、パンとミサカの左大腿部を撃ち抜いた。
「ああ......ああああ!」
「き、貴様ら!」

明らかに御坂とは違う生命体のはずなのに、見捨てることが出来ずにいた。

サソリー!
何してんのアンタは!?
湾内さんに連絡するわよ

思い出されるのは、御坂との思い出だ。
理屈云々よりも身体が反応してしまう。


「......サソリ、愛情ヲ知ッタ忍ビハ脆クナルモノダ」
「!?」
いつの間にか肩を押さえている木山の首を掴んで黒ゼツが立っていた。
「うう......すまない」
「木山!」

「サテ、スサノオヲシマエ......サモナイト、木山ノ首ヲヘシ折ルゾ」
黒ゼツ麦野が力を込めると木山がくぐもった悲鳴を上げながらもがいた。
「がぁ......ああ」

「......くっ!」
サソリがスサノオを苦渋の判断でしまうとトビフレンダが印を結んで巨大な木造の大仏を生み出して、巨大な張り手でサソリに叩きつけた。
「がはっ!?」

「情けないっすね~......むむ!?」
サソリがチャクラを練りだしたのを確認すると、トビフレンダは、足元で大腿部から弾丸を受け、出血しているミサカの銃槍を捻るように踏み躙った。
「がぁ!!ああああああああああああああああああああああああああああああ」

「!?」
「ダメっすよ......チャクラを練っちゃ」
「次、妙ナ真似ヲシタラ......コイツラノ首ヲ刎ネ飛バスゾ」

「.........」
サソリは、悔しそうに舌打ちしながら、チャクラを弱くしていく。
「信用出来ないっすね」
トビフレンダは、ミサカの傷を嬲るのを止めると印を結んだ。
すると、サソリに叩きつけている木造の大仏の口が開いて、中からバチバチと電撃が流れ出した。

「確か先輩って......雷遁苦手でしたよね」
「!?きさま」
「まあ、いいや......えい!」
大仏の口から電撃が流れて来て、動けないサソリに直撃した。
「ぐああああああああああー!!」
電撃を受けたサソリの身体が奇妙な痙攣をして、息も絶え絶えとなる。

「さ......サソリく......ん」
首を掴まれ、肩から出血している木山が力無く声を出した。
「ン!?」
その時にサソリの意思とは関係無しに万華鏡写輪眼がゆっくりと開眼して黒ゼツを睨み付けた。
「殺ス前ニ、写輪眼ダケデモ回収シテオクカ」

かなり、ヤバイな.......
力が入らん

木山を掴んだまま、黒ゼツ麦野は移動し大仏に抑えつけられているサソリに妖しく光る写輪眼に手を伸ばした。

その瞬間に、黒ゼツ麦野の前に強烈な冷気が流れ込んで来て、黒ゼツは反射的にサソリから距離を取った。
「!?」

「大丈夫ー!!?サソリ!」
「麦野!フレンダ」
出入り口から床に張った氷を滑るように佐天と佐天の後ろから絹旗と滝壺が部屋に雪崩れ込んで来た。
 
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