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Blue Sea 『空と海の境界線』

作者:03-Moonlight
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Operation 01
出会い
  Mission1「砕けた空」

 
前書き
本作品の時系列は
zero→04→5アーケード直後に近い形となっております。

----以下設定的なもの----
ファーバンティ
エルジアの首都。大陸戦争(AC04)においてのISAF対エルジアの最後の戦場であり、ISAFは空陸海から集中的に包囲、エルジアはジョンソン記念橋から増援を入れようとしたもののとあるISAFの戦闘機パイロットによって破壊され、本格的に孤立。
壊滅していくエルジア軍を見ながら将校はV-22によって離脱を試みたが、これらもISAFによって撃墜され、出遅れた1機からはエルジア軍の総司令官の遺体が発見された。
そして、黄色の13が舞った最後の空でもあり、ISAFのパイロットとの最後の死闘を繰り広げた空である。この戦闘により黄色中隊も完全に壊滅。エルジア軍は降伏し、大陸戦争は終結した。

その後ISAFの支援を受け国際復帰を目指しつつ、ファーバンティも徐々に元に戻りつつあった。
しかし、深海棲艦との戦争が発生すると、発生地点から最も近かったからか真っ先に狙われた。ISAFとの共同防衛を試みるが2週間ほどで敗走、住民含めウィスキー回廊やサンサルバジオンへと撤退し、ファーバンティは深海棲艦による要塞になりつつある。 

 
 1999年7月8日、小惑星ユリシーズはロシュ限界を突破。ユージア大陸では八基の120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲ストーンヘンジを始めとした破砕手段が講じられたものの、多数の破片が大気中で燃え尽きることなく落着。最初の2週間で50万人が死亡。経済的にも大打撃を受け、そして爪痕を残した。

 そしてアネア大陸では東部のエストバキア連邦による隕石迎撃システム「シャンデリア」はユリシーズの軌道、および被害の再計算によりアネア大陸に被害が及ぶことが判明した事があまりにも急だった事に頓挫。ユージア大陸と同じように迎撃ができずエストバキア連邦は壊滅、経済は破綻した。エメリア共和国には隕石による被害はごく僅かで、エストバキアへの復興支援を行っていたが、内戦の勃発の危機により一時凍結した。

 その時に見た空を、今でも覚えている。そして、ノースポイント・ニューフィールド島のアンダーソンクレーターの中心部が「我が家」だったことも。

 自分の手の感覚には「父」が握りしめたような感覚が残っていたということしか、鮮明に覚えていない。そして、姉も母も亡くなったこと。


 難民が大量に発生し、その問題をエルジアに押し付けるという形で解決させてしまった結果が、大陸戦争の引き金になった。そして、平和の為に作られたストーンヘンジも人を殺すためにエルジアによって占拠、投入された。

 そして父も戦争に向かった。消息は、文通もしなかったからわからない。

 大陸から完全に撤退し敗戦目前のISAFは最後の覚悟で立て直しを図りこれに成功。幾多の戦いが繰り広げられながらもその争いに終止符を打った。しかし結果として、ただ人が多く死んだだけの戦争となっただけ。それでも平和に向かおうとしていたのだが。
 2006年10月、それが覆る。ISAF、Independent States Allied Force(  独  立  国  家  連  合  軍  )が自由エルジアを壊滅させた後、解散した矢先の出来事。


 それはある漁船の行方不明から始まった。突然通信が途絶え、形跡も残らないという奇妙な事件から。調べても犯人も出てこないまま、寧ろ増えていった。ましてや、各国が保有するイージス艦にまでも被害は及んだ。これら一連の事件の真犯人をとらえ、そして呼称が付けられるまでは。

 事態を受けISAFはノースポイントから再結集を宣言、ISAFには今までとは違いオーシアやユークトバニアなどが加わり大規模な多国籍軍隊として形成されていった。そして研究機関は共通して海で発生し、そして水上レーダーにも映らない「艦」であることから「深海棲艦」という名前までがついた。




 だが、戦局は最初から悪かった。




 緒戦はISAFに加担したエルジアの首都ファーバンティにおいての防衛戦。既存の戦力では抵抗はできた。勿論撃破もできた。

 本来は一挙に大規模な砲撃をしかけせん滅する戦術だったが潜水艦によって戦術の隙を突かれ包囲され艦隊は瞬く間に半壊、のちに潜水艦の全滅には成功したが主力の戦艦が既にいなくなった事により艦対戦は困難と判断、航空部隊の戦果と損失は五分五分だったことから海の上では勝てないと判断し第2次防衛戦として大規模な航空部隊を投入。しかし艦隊の防空が加わったことで損失に大きく傾き、結果敗北を迎える。

 ファーバンティから撤退はしたが、エルジア軍が大陸戦争によって最終防衛ラインとして使われたウィスキー回廊にて、深海棲艦にとっての慣れない環境からか足止めに成功している。


 この戦線はユージア大陸だけの問題ではなかった。

 アネア大陸方面ではエメリア・エストバキア2国による共同軍隊を結成、エメリアの首都グレースメリアにおいて熾烈な戦闘を繰り広げる。エストバキアが急遽完成させた最新鋭の空中空母「P-1112 アイガイオン」からなる空中艦隊をも投入するが1週間半で陥落。深海棲艦はここを拠点としエメリアの領土、それも海に面した都市を攻撃した。被害こそ出たものの、占拠を許すまでには至っていない。

 オーシア・ユークトバニアの間に広がるセレス海でも深海棲艦が存在するのだが、此方は航空戦力が主体の為前線に置いて大規模な航空戦がたびたび発生し、両国、特にオーシアは戦闘機やパイロットの消耗が激しい状態であった。

 レサス・オーレリア方面ではレサスの技術力によりオーレリアは援助を受けるような形で奮闘。だがセントリー島との連絡が途絶えたため最新鋭兵器の要を失った結果徐々に押されつつある。


 そう、どの国も明日を生きるために必死なのだ。いつ滅ぶかわからないこの壮絶な戦いの世の中に。









 だがこの1年半で、深海棲艦の特徴を把握することができた。決して戦ったことが無駄になってない。世界各国で、早急な対策が取られた。

 まずは深海棲艦に対してISAFは様々な偵察衛星を基に勢力図を作成、またこれらの変化はリアルタイムに観測され常に最新の勢力図を作成、更新された。これらは市民、いや世界全体にも行きわたるほどであった。また兵器の方面ではエストバキアが空中空母「P-1112 アイガイオン」を基にした対深海棲艦向けに改良する「P-1112D クレイドル」を急造開始、また各国で作られたさまざまな戦闘機が追加ロールアウトを開始しISAFでは自由エルジアから回収した無人戦闘機を有人化する計画も始動し、最新鋭機も含めたさらなる戦力の増強へと傾いていった。

 確かにそれに伴い人も必要になっていくのだが、20歳以上の男性を基に兵隊の求人を始め兵となった人の数は多く、兵器の数と人の数が釣り合う状況ができた。新人が圧倒的に多かったものの、それをカバーしたのがISAFのベテラン兵達だ。




 彼らは攻めるよりも前線の維持に努め、最大の反撃作戦をとるための準備を行っていた。だが、その矢先に思わぬ事態――――――人類にとって有利なことが起こる。




 艦娘の出現である。だが、これに関しては諸説多く、謎に包まれている。

 もともとは深海棲艦と似た系列だと考えられたのだが、彼女たちを調べれば調べるほど人間と変わらないことが次々と判明していったのだ。まるで人間みたいに食事をとり、喋り、考え、愛し、愛され、そして完全な人格が一人一人ある。兵器と人のはざまながら、その姿はもはや人とも大差がない――――――いや、人であった。

 それに伴って海軍は急遽テストケースとしてノースポイント・ニューフィールド島に小規模ながら鎮守府を建設、提督を一人抜粋し様子を見た結果確実な戦果を上げつつ他所艦娘の存在が確認、数も増えたということからついに海軍は艦娘・提督主体へと動いていく。



 しかし、艦娘を人として扱うのか、兵器として扱うのかで議論が紛糾する。もちろんこれはISAF内で完全に分裂し、穏健派と強硬派の2つに分かれた。といっても、軍事大国エルジアやベルカが強硬派に回って、ノースポイントを主体とした国々は穏健派に分かれるという、単純な構図に陥っただけであって、まだよかったのだが。それに合わせ世論も様々な意見が出され、艦娘についての扱いはより慎重になっていく。


 このころは各地の鎮守府でも平常から一転、一部提督によって艦娘を虐待する鎮守府、いわゆる「ブラック鎮守府」が生まれてきたのもこの頃である。一部内通者によって順次取り締まりは行われていたものの、それでも気付かれないように偽造を重ねた鎮守府も少なからずあり、今でも残っている。


 また戦線においては奪還作戦は停滞し深海棲艦の侵攻頻度も減る。それはISAF内での艦娘についての一連のこともあってからか、それらが沈静化してからということを予定している。すでに艦娘に関する法整備も行われ、ノースポイントでは艦娘は人と全く等しい権限を持つとし、人との区別は名目上にとどめるという法案はノースポイントの首脳陣によって行われ、穏健派は次々とこの法案を各国で施行した。



 ともあれ、現在の状況は膠着状態にある。戦争初期に比べれば、今は戦線も落ち着いている方だ。また、海はダメでも空での人員輸送は高高度飛行によって解消され、何とか提督の移動ルートとして使えている。






 それから時は過ぎ………




 今は2008年7月3日。ユリシーズが降って9年が経った日。セレス海方面の最前線「サンド島」へ向かう一つの軍用機がある。軍用機とはいえ、海軍所属、それも個人所持のものではあるが。



「貴方が向かっている先、サンド島は最前線ながら国立自然保護区です。建造は不可能、精々装備開発ができるくらいでしょう。基本的に、複数の艦娘を所持するのはこの鎮守府の規模的に厳しいので」


 最前線基地であるサンド島の説明をしているのは女性。そして説明の対象は男性――――――なのだが、男性は明らかに軍人、しかも提督の年齢とは思えない。更にその男性と女性はこの時が初めて会った、というわけではない。

「……もっとも、大型艦が多くなっても4隻の艦隊しか組めません。環境保護の観点が故らしいです」

 女性は説明を付け足す。

「ところで、貴方はこのことをセレンさんから聞いていますか?」
 セレンという単語が出る。男性を監視していた存在であり、支えていた存在。又ISAF内で発足された通称「大本営」直属の『中佐』。

「……聞いてはいません」
 そう返した男性は窓の外を見上げる。



「堅苦しいなぁ~」
 操縦席の男性はそう呟く。呟くとはいえ、その声の音量は呟くレベルではないのだが。
 女性は呆れたように言う。

「主任は真剣な話をしているときでもその受け応えでいいと思うんですね」
 女性は操縦席の男性――――――主任に返した。

「キャロり~ん、こういうときは気楽でいいと思うけどなぁ~ハハハハハハハッ!」
 主任は特に気にせずそのまま返事、というより下品な笑いをする。女性はこれでも元帥ですか……とため息をついて呟いた。もちろん主任には聞こえていない。

「そうでした、キャロりんと呼ばれましたが私の名前はキャロル・ドーリーです。お見知りおきを。ところで、あなたの名前は?」
 キャロりんと呼ばれた女性――――――キャロルは彼に正しい名前を伝えておく。もっとも彼は勘違いしないはずだ。あんなに気軽にキャロりんなどと呼ぶのは主任くらいなのだから。
「……広瀬……響(ひろせ きょう)、です」

 彼が名前を教えた後、キャロルはそれを書き留め、主任は反応せずそのまま軍用機の中は再び静寂を取り戻す。その中、彼は窓から空を見上げていた。

「この空から、再び降ってくることはあるのかな……」
 その呟きは誰にも聞こえなかった。






「今日はユリシーズが降り注いだ日、か……」
 『彼』がこれから来るであろうその施設に、一人の女が佇んでいた。むしろ、佇んでいるというよりその施設を回っていた。その女は、その施設の管理者でもあるように見える。
 ただ、彼女が作った施設ではない。彼が来るまでの管理者として、女はそこにいる。だが、とても小さい形に今は変わっている。


(この空に再び降り注ぐ日がないことを、祈るばかりだ……っ)
 女は気配を感じると門の隅に隠れ、気配を完全に消す。

 門から感じる気配は1人の艦娘。女が数少ない人の中で知っている『最初の1人』がその艦娘。女には気づかず、門の近くでウロウロし始めた。女にとってその場を抜け出す最大のチャンスだ。

(今だ)
 女は俊敏に門の前から去り、小ささを生かして何とかその施設の外へ、そして艦娘に気づかれないように離脱した。その時に、元の姿に戻った。

 その女の容姿は、パーマが少しかかった後ろの長い髪、前や横の少し長めに整えているあたりポニーテールは似合わない。少し幼さが残ってるようにも思える顔立ちに少し明るめのブラウン。そして軍服姿ではなく、スーツに近い服を着て、下半身はタイツ。ヒールは履けないらしいが、そうでなくても十分美人と呼ばれるようであろう女――――――セレン・ヘイズは、施設を離れ、航空基地へと移動を始めていた。

 それは、「彼」に会うため。





 セレン・ヘイズが鎮守府を去ったのと同タイミングで鎮守府の敷地に入った艦娘。彼女は、本来であれば初期配属艦となる艦娘ではない。彼女はどんな存在かといえば、艦娘の出現と全く同タイミングで現れた、というのが正しいのだろうか。最初の5人と呼ばれた「吹雪・電・漣・五月雨・叢雲」の誰にも当てはまらない。そして、彼女の存在は隠され、存在しないことになっている。

 世間一般には知られていない存在だが、大本営の上層部や先ほどのセレン・ヘイズやキャロル・ドーリーなど、彼女の存在を知っているものも少なくはない。そして「彼」の記憶にも彼女はいる。最も、少しだけ生活を共にしたことがあるくらいだが。

 彼女は静かに、「彼」を待っている。


(大丈夫……今度こそ……きっと)




 彼女の願いは、せめて人としていられることを祈っていた。
 それは、艦娘を恐れ、兵器として扱う者でないことを祈っていた。






 彼、響がサンド島に着く頃の機内。
 まるで再び何もなかったように静寂を取り戻していたが、再びキャロルの一声によって響との話が再び始まる。

「深海棲艦との戦いは、命の奪い合いだと思いますか?」
 その言葉を聞いた響は小さな声で「命の……奪い合い……」と呟いた。

 彼はまだ14と幼い。それをこんな命の奪い合いの現場、しかも最前線に配属するのだから大本営も大概なのだが、実の処セレンの判断が故どうとも言えない。

 響はキャロルから聞かれた命の奪い合いのことを必死に頭の中で考えていた。
 響にとって命の奪い合いは残酷なものだった。そう、彼の頭の中で、いくつかの記憶が繰り返し思い出され、考えることもできなかった。それもまた艦娘が絡んでいる、奇妙なものだが。

 だがそれを隠し、他人からは何を考えているかわからない状況に自らを持って行った。


 外から見れば、ただ純粋で静かな少年。響はそれを徹底していた。


 それを少し知っているキャロルにとっては疑問だった。自らを隠し続けることに、何か必要性を感じるのか。それとも、ただそうしていたいだけなのか。


 星が降った(堕ちた)あの日から9年のこの日、2人の物語は始まろうとしていた。 
 

 
後書き
アーガイブ No.1「サンド島」

オーシア領の自然豊かな南国。だが、その美しい見た目とは反対にセレス海方面の最前線基地である。
航空基地と鎮守府の2つによって最前線としての役割を担っているが、航空基地は妖精が搭乗する機体用滑走路もあり拡張ができないことからしばしば検討が繰り返される。
彼らの鎮守府は、サンド島の小さな港の一角にある。出撃設備はそこまで整っておらず、艦娘を建造できる工廠は開発工廠のみにとどまっている。 
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