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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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remember memory
  ep.0001 remember memory 池野&箱部 中編2

 
前書き
唐突なようですが、やはり3話でまとめるのはキツイので分けることにしました。
と言っても今回が事実上、クライマックスみたいなものです。 

 
池野は分からなくなっていた。
これまでは気にならなかった。
人を殺す意味を今更になって考えるようになった。

「イズ.......お〜い、イズ。」

池野は振り返った。
そこにはアナコンダで池野の会話相手になっているOR(オア)という青年が立っていた。
オアは池野より何歳か年上でアナコンダでは池野に続くNo.2を担っている。

「オアさん。どうしたんですか?」

オアは首を傾げて、逆に池野に聞き返した。

「どうしたも何も君が"相談がある"って呼んだんだろ?」

池野はハッとなって頭を下げた。
するとオアは池野の横に並んだ。
池野が悩みをオアにぶつける。

「分からなくなったんです。どうして俺たちは人を殺してきたのか。どうして殺さなきゃならないのか。」

オアは少し和らいでいた表情を真顔に戻した。
そして、池野に言葉を返した。

「イズ。暗殺者や殺し屋は人の死について考えちゃならないんだよ。考えてしまうと、次から躊躇なく刃を振るえなくなる。」

オアの言葉は説得力があって、とても反論が浮かぶような気がしなかった。
しかし、もう自分がこれまでのように人を殺せなくなってしまったことは十分理解できた。
池野はオアに一礼すると、その場を去っていった。

そんな中、池野にまた任務が入ってきた。
今回のターゲットは第0学区でも有数の名家である"箱部宗次郎(はこべ そうじろう)"という人物だった。
池野は、任務に不安を残しながらも出撃した。
箱部家は大きな屋敷のような建物で、名家の名に相応しいものだった。
池野は、やはりいつも通り誰にも気付かれずに建物に侵入することに成功した。
でも今回ばかりは自分のこのセンスに嫌悪感を抱いた。
そう思っていると、今度は視線の先にお世話人らしい人物を目撃した。
池野は背後から首元をロックし、持っていたナイフで動脈を切り裂いた。
たちまちグニャリと状態を崩し動かなくなった。

『この感覚はなんだ.........。』

その日はやけに人の死体に恐怖を感じた。
いつもは何も感じなかったのに.....。
池野は夫婦の寝室を見つけると、部屋に入りナイフで夫婦を脅す。
2人を手持ちのワイヤーで拘束して動けなくした。

「あなた方の最期の望みを聞きましょう。」

池野は心の中で自分の言葉を疑った。
暗殺者である自分が人の死を哀れんでいる。
殺してしまう分、せめてもの罪滅ぼしをしようとしている。
今の台詞のオアが聞いたら目を疑うだろう。
現に自分が1番、今の言葉に驚いている。
すると、夫婦は口を開いた。

「娘を......。」

池野は旦那の方を見た。

「娘は....まだ君と同じくらいの歳なんだ。」

池野は、それ以上は聞かなくても分かった。
続けて喋ろうとする旦那を止めて、救急キットのような入れ物から錠剤を取り出した。

「これは、安楽死するための薬です。お二方にはこれを飲んで頂きます。どうか、安らかに。」

池野は夫婦が薬を飲んだのを確認すると部屋を出た。
部屋を出て少し歩くと娘の寝室らしき部屋を発見した。
部屋に入ると、ベッドで1人の少女が池野を見つめていた。
娘は、怖いだろう状況で恐怖感を一切感じさせないように話し出した。

「貴方様は、私を殺しに来たのですか?」

池野は、娘の発言にまったく反応しなかった。

「俺は貴方を守るように貴方のお父様とお母様に約束しました。だから貴方を殺しません。」

「では私が貴方に死ぬように命じれば、貴方は命を絶つのですか?」

池野はナイフを目の前に差し出すことで覚悟を示した。
娘は池野の行動に動揺しなかった。
彼女も等しく覚悟を決めていたからだ。

「貴方の覚悟は十分伝わりました。なら貴方には私を守るように命令します。」

池野は顔を上げて娘の顔をはっきりと確認した。
娘は涙すら流さず、池野を見ていた。
2人の目が合うと娘は優しく微笑んで自己紹介をした。

「私は"箱部鈴菜(はこべ りんな)"あなたは........?」

少し間を置いて、池野も自己紹介をした。

「俺はイズです。」

池野には名前がなく、コードネームが彼の名前になっていた。
箱部を連れて部屋を出る。
玄関から堂々と家を出ようとすると、箱部が池野の足を止めた。

「この家を燃やしてください。」

池野は箱部の言葉に目を疑ったが、すぐに納得した。

「体が残っていては天国に行けませんから。」

池野は箱部の望み通り、屋敷に火を放った。
大きくそびえ立っていた屋敷は紅蓮の炎に包まれてゆっくりと崩れていく。
不意に池野の耳に囁くように声が聞こえた。

『君にもいつか自分の生に意味を与えてくれる人に出会うことになるだろう』

箱部が燃えていく屋敷から池野の顔へ目をやると、池野は静かに涙を流していた。
その日を境に池野はアナコンダには戻らなくなった。
今まで、自分が奪ってきた他者の命の分も彼女のために尽くそうと考えたからだ。
すると、箱部が池野の涙を拭った。
箱部は池野を抱きしめて、あやすように言った。

「よくこれまで頑張りましたね。」

後ろから優しく頭を撫でる。
池野はこれまで感じたことのない愛情のようなものをこの日、初めて知ったのだった。 
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