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魔女に乾杯!

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32部分:第三十一話


第三十一話

                  第三十一話  美樹の家族
 紫の魔女との戦いの後で美樹もまた魔法の勉強をはじめた。彼女の魔法は風の魔法、かなり独特な魔法といえた。
 彼女の家は一軒家である。広い家だが人気は少ない。家に両親がいることが少ないのだ。
 貿易会社に勤めている父は単身赴任で海外に行っている。美容院を経営している母はいつも社員の女の子達の面倒をみたり教えたりして帰るのが遅い。従って家のことは彼女がすることが多い。料理やその他のことが上手になったのには理由があるのである。
「お姉ちゃん」
 小学校二年の弟の信也が彼女に声をかけてきた。見れば美樹は台所で料理を作っている。
「今日の晩御飯何?」
「湯豆腐よ」
 彼女はそう答えた。
「あと湯葉。御馳走でしょ」
「湯葉!?あのお豆腐から作る紙みたいなの?」
「お豆腐からは作らないけれどね」
 彼女はそう答えた。
「けれどもとは同じよ。お豆さんから作るの」
「そうなんだ」
 信也はその大きな目をくりくりと動かしながら言った。髪は美樹と同じ茶色がかった黒である。それを見ると姉弟だということがわかる。
「信也お豆腐とか好きだったよね。だから今日それにしたの」
「ありがとう」
「もう少ししたら食べましょ。食器出しておいて」
「はあい」
 そして二人で夕食を食べた。信也は食べながら美樹に尋ねてきた。
「ねえ」
「何?」
「お父さん今度帰って来るの何時かな」
「そうね」
 彼女は壁に掛けられているカレンダーをチラリと見た。それを見ながら答えた。
「今月はもうないわ」
「そうなの」
「けれど来月また帰って来るから。安心して」
「うん。あとお母さん今日も遅いんだね」
「ええ」
 美樹はそれに頷いた。
「いつもうちお父さんもお母さんもいないんだね」
「けれど寂しい?」
「えっ」
 信也は美樹のその問いにはっとした。
「私がいるけれど。それじゃ駄目かしら」
「ううん、それでいい」
 信也は首を振ってそう答えた。
「お姉ちゃんがいるから。寂しくはないよ」
「よかった」
「だから僕平気なんだ。安心してね」
「ええ。安心したわ。じゃあ御飯が終わって後片付けが終わったらお風呂に入りましょうね」
「うん!」
 美樹は信也をお風呂に入れた。それからすぐに信也を寝かして自分は部屋に帰った。そして宿題と明日に備えての予習、復習や魔法の勉強をするのだった。そして十二時までそうしたことを続けた。それから寝るのが日課であった。
 六時になると起きて信也を起こして身支度、食事等をして学校に行く。それが普段の生活。同じ年代の女の子達に比べてきついと言えばきつい。だが彼女はそれでも平気だった。信也の為だからだ。


第三十一話   完


                   2005・8・10



 
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