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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第88話



―――クロスベルに恐るべき混乱を引き起こした”D∴G教団”の存在。それに利用されたマフィアと薬物によって操られていた警備隊。そしてハルトマン議長を始めとする数々の有力者たちの不始末……



――――事件の概要はクロスベルタイムズによって報じられ、前代未聞の大スキャンダルへと発展した。ここに至ってマクダエル市長は警察局長、警備隊司令両名を解任―――各課の責任者やソーニャ副司令に事件の徹底究明を命じた。ダドリー捜査官を始め、今まで上層部に押さえつけられていた捜査官達によって、帝国派議員のみならず、共和国派議員にも及ぶ”教団”とのコネクションが洗い出され……何名もの逮捕者が出るに至って、クロスベル政界に対する市民の不信感は頂点へと達した。



そんな中、IBCのディーター総裁が次期市長選挙の出馬を電撃表明し………引退するマクダエル市長の理念を継いで健全な政治体制の確立を公約に掲げた。そしてマクダエル市長もまた逮捕された議員たちの補欠選挙への出馬を表明し……早くも議長候補として各方面から期待されているという。



そして事件から1ヶ月後―――そのマクダエル市長によって俺達は市庁舎のホールに呼ばれ、今までお世話になった関係者達が見守る中、マクダエル市長より表彰状をもらった。



――――エステルとヨシュアはユウナと共にリベールに帰る事になった。遊撃士協会の人手は減ることになるが、政治改革が行われることによって警察の体制もより良く変わるだろう。今後は一層、ギルドとも協力しつつ彼らの負担も減らせるかもしれない。



―――別れ際、ユウナは俺達に改めて気になる言葉をかけてきた。500年前の真実とキーアが競売会にいた経緯………そして俺の兄、ガイ・バニングスを殺めかけたのは結局何者だったのか………全てを見通すような彼女にもそれらの真相はわからなかったという。だが、それを解き明かすのは、俺の―――いや俺達の役目であるはずだ。いつかまた再会する約束をして俺達は彼らと別れの言葉を交わした。



――――ルフィナさんはエステル達より一足早くリベールへと帰ったが、彼女の話によると近い内正式にクロスベル支部に出向し、しばらくの間クロスベルに常駐するつもりだとの事だ。その目的がかつて所属していた組織――――”星杯騎士”としての目的か、純粋に遊撃士としての目的か、または正体を隠している兄貴の頼みによるものなのか、それとなく聞いてみたが彼女は苦笑しながら答えをはぐらかしつつも、『さすがはガイの弟ね』と感心した様子で俺を評価してリベールへと帰って行った。



ゼノさんとレオニダスさんはディーター総裁から報酬を受け取った後はジョーカーさん達と共にクロスベルから去って行った。何の為に猟兵を雇い続けているのか……そしてクロスベルから去って行ったジョーカーさん達は今何をしているのか……それら全ての疑問に対する答えを持つレンに何度聞いてもレンはその度にはぐらかし、結局その答えを口にする事はなかった。



そして―――――



白熱した市長選が終わり、俺達が通常業務に戻った日………俺達は新市長となったディーターさんからある話が持ちかけられた。それは”特務支援課”の態勢強化であった。



自治州であるクロスベルが自らの力で自治と自衛ができるという事を他国に知らしめて大国の介入を阻止し、クロスベルの自治を為す為に遊撃士協会と共に”D∴G教団”を解決に導いたクロスベル警察に所属している”特務支援課”はクロスベルのクロスベルによる自治を象徴する存在であると思い、そんな俺達に更なる活躍をして欲しいと思っているディーターさんは俺達が持つそれぞれの長所を伸ばして、心機一転した”特務支援課”がクロスベルで活動を再開してはどうかという提案であった。



俺達は互いに話し合って考え抜いた末、その提案を受ける事にし、俺は捜査官としての腕を磨く為に捜査一課の研修する事に、エリィは自身が持つこれまで培ってきた政治学のノウハウを生かし、各国とのコネクションをより強化する為にクロスベル州議会の再編に伴って各国に外遊するマクダエル議長に同行する事に、ティオはエイオンシステムや魔導杖(オーバルスタッフ)の強化の為にレマン自治州にあるエプスタイン財団の本部に戻り、エイオンシステムや魔導杖の研究開発の手伝いをする事に、ランディは少しでも猟兵時代の強さを取り戻す為にヨアヒムによって操られたクロスベル警備隊のリハビリに協力する為に再訓練の教官として務める為に一時的に警備隊に戻る事になり、その結果”特務支援課”を休止し一時解散する事になった。



俺達がそれぞれ自分達の長所を伸ばす事を決めた中、予定していた”特務支援課”の出向期間を延長していたレンにとってはちょうどいい機会の為、レンは警察を退職して”特務支援課”を去る事になった。”特務支援課”を去るレンの話によると警察を辞めた後はリベールに帰って遊撃士に戻る訳ではなく、オリヴァルト皇子の依頼によってエレボニア帝国の士官学院のあるクラスに編入するとの事だ。それぞれの長所を伸ばす為にクロスベル市に残る俺を除いてクロスベル市から去るエリィ達を俺や課長、そしてツァイトやキーアと共に見送ったレンは約1週間クロスベル市内で遊撃士として活動した。



そしてついにレンがクロスベルを去る日が訪れ、俺はキーア達と共に真新しい深紅の学生服を身に纏ったレンを見送ろうとしていた。



6月23日、同日08:50―――――



~クロスベル駅~



「――――出発時刻にはまだ少し早いけどそろそろ乗車するわ。別れを名残惜しんで乗り遅れる訳にもいかないしね。」

深紅の学生服を身に纏ったレンは自分の見送りに来たロイド達を見回した。

「そうか………」

「向こうでもしっかりやれよ………ま、お前の事だから心配しなくてもすぐに順応してやっていけるだろうが。」

レンの言葉を聞いたロイドは静かな表情で頷き、レンに応援の言葉を贈ったセルゲイはすぐに苦笑し始めた。

「………………………」

一方キーアは寂しそうな表情でレンを見つめていた。

「ふふっ、レディがそんな顔をしちゃダメよ?キーアは元がいいんだから、勿体ないわ。」

キーアの寂しそうな表情を見たレンは苦笑しながらキーアに声をかけた。



「ねえレン……レンとはこれでホントのお別れなの………?」

「キーア…………」

レンへの問いかけを聞いたロイドは心配そうな表情でキーアを見つめ

「――――キーア。”特務支援課”だってずっと存在し続ける訳じゃないわ。エリィお姉さんはいつか政治家になろうと思っているし、ティオはエプスタイン財団からの魔導杖の実戦テスト要員だからいつかはエプスタイン財団に戻らないといけないわ。ランディお兄さんはわからないけど……捜査一課の刑事を目指しているロイドお兄さんもそうだし、エリィお姉さん達や新しく支援課にやってくる人達もそれぞれの未来の為に、いつかは支援課を去る事になるわ。レンはみんなより支援課を去るのが少し早かっただけよ。」

「レン………」

「……………………」

キーアを優しく諭しているレンの話を聞いたロイドは驚き、セルゲイは目を伏せて黙り込んでいた。

「―――でも、レンの今のパパが言っているように一度結ばれた”絆”は決して途切れることは無いわ。だから、いつか……いえ、折を見て1年に数回は貴女に会いにまたクロスベルにくるようにするわ。」

「ホント!?」

レンの答えを聞き、レンとまた会える事を嬉しく思ったキーアは期待が籠った目でレンを見つめた。



「ええ。それと向こうに着いて状況が落ち着いたら貴女に手紙を出すわ。返事は期待していいのよね?」

「うん!キーア、ゼッタイに返事を書くから早く手紙を出してね!レンが手紙を出すのが遅かったら、キーアがレンに手紙を出してくれるようにサイソクするよ!」

レンに微笑まれたキーアは無邪気な笑顔を浮かべて答えた。

「クスクス、”催促”なんて子供にとっては難しい言葉も既に使っているなんて、一体誰の影響かしらね♪」

(どう考えても君だろ………)

「クク………」

からかいの表情で呟いたレンの言葉を聞いたロイドは疲れた表情で指摘し、セルゲイは口元に笑みを浮かべた。



まもなく2番ホームに帝都行き旅客列車が発車します。ご利用の方はお急ぎください



するとその時列車の出発を知らせる放送が聞こえてきた。

「あら、少し早めに乗るつもりだったけど、ピッタリになっちゃったわね。――――それじゃあ、レンは行くわ。”また”ね、みんな。」

「ああ………!」

「ま、暇になったらいつでも顔を出しに来ていいぞ。」

「まったね~!」

「グルルル………ウォン。」

そしてレンは列車に乗り込み、ロイド達はクロスベル駅から出発したエレボニア帝国に向かうレンを乗せた列車が見えなくなるまで見送り続けた―――――




 
 

 
後書き
今回の話でお気づきと思いますが閃篇開始の時期は3章の実技テストの日からです。なお、今回のBGMは閃Ⅰの”特科クラスⅦ組”だと思ってください♪ 
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