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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第15話

~東通り・龍老飯店~



「いた……!」

店の中に入ったロイドは捜していた人物―――調理場で店主と会話しているレクターを見つけて呟いた。

「なるほどねぇ……花山椒ってのを使うのか。」

「そう、ただの山椒とは辛さも風味も段違い。東方でしか栽培されてないけど最近は鉄道便で注文できるよ。」

感心した様子のレクターの言葉に店主は頷いて答えた。

「いや~、自分でマーボー作るとどうも物足りなかったんだよなァ。『(マー)』か………ひとつ勉強になったぜ。」

店主の言葉にレクターが頷いたその時

「レクターさん……こちらにいましたか。」

ロイド達が近づいてきた。

(あっさり見つかったわね……)

(な、何だかものすごくチャランポランそうな……)

レクターを見たエリィとノエルは戸惑い

(……なるほど。あの”鉄血宰相”の懐刀だけあって只者ではないな……)

リィンは真剣な表情でレクターを見つめ

(あとは身分確認が出来ればミッション終了だけど……)

(そう簡単に事が進むとは思えないわね。)

ワジの小声にエルファティシアは目を細めて呟いた。すると

「おー、遅かったな。待ってたぜぇ、心の友よ!」

レクターがロイド達に笑顔を向けて言った。

「へっ……」

(”待ってた”…………という事はロイド達が自分に接触する事を既に読んでいたのね…………なかなか厄介な相手ね。)

レクターの言葉を聞いたロイドが呆け、ルファディエルが目を細めたその時

「マスター。コイツらがさっき言った連中だ。やる気と根性だけはあるからビシビシしごいてやってくれ。」

「わかった、任せるね。6人の上、1人は異種族というのは大変だけど東方料理が広まるのは嬉しい。頑張って付いてくるよろし!」

レクターが勝手に店主と話を進め、レクターの話に頷いた店主はロイド達を見つめて言い

「え、えっと……」

「いったい何の話を……」

店主に見つめられたロイドとエリィが戸惑ったその時、レクターは素早い動きでロイド達から逃げ去った!

「あ……!」

「に、逃げた……」

「ハハ、相変わらずだなぁ。」

「見事な逃げっぷりね……」

「さすがは軍の諜報機関に所属しているだけの事はあるな……」

「お、おいかけないと!」

レクターの行動を見たロイドとノエルは呆け、ワジは感心し、エルファティシアは苦笑し、リィンは真剣な表情で呟き、エリィが慌てた様子で言ったその時

「コラ、どこに行く!?もう修業は始まている!まずは下ごしらえの練習ね!」

店主がロイドの肩を掴んで注意した。

「い、いや、違うんです!」

「私達、クロスベル警察に所属する者で―――」

そしてロイド達は店主に事情を説明した。

「むう……カン違いなら仕方ない。」

「すみません。そ、それじゃあ失礼します。―――みんな、追いかけるぞ!」

「ええ!」

「了解です!」

店主に事情を説明して理解してもらったのを確認したロイド達は急いで店から出た。店から出たロイド達は周囲を見回したが既にレクターの姿はなかった。

「駄目だ………見失った。」

周囲を見回したロイドは溜息を吐き

「と、とんでもない人ですね。まるであたしたちが来るのをわかってて引っかけたような……」

「まあ、あれくらいのことは朝飯前なんでしょうね……さすがは情報機関の大尉を務めるだけはあるわ。」

信じられない表情で呟いたノエルの言葉にエリィは真剣な表情で答え

「フフ、とても軍人とは思えない方法だけど。」

「まあ、だからこそ俺達も油断してしまったんだけどな……」

「フフ、いきなり先制攻撃を受けてしまったわね。それで、ここで諦めるのかしら?」

静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉にリィンは苦笑しながら頷き、エルファティシアは口元に笑みを浮かべた後ロイドを見つめて尋ね

「いえ……とにかく後を追ってみましょう。今なら通りの人に聞けば行方が掴めるかもしれません。」

尋ねられたロイドは真剣な表情で答えた。

「わかったわ。」

「行きましょう!」

その後ロイド達は付近の住民にレクターの行方を聞き、中央広場にある百貨店”タイムズ”の屋上に向かった。



~中央広場・百貨店”タイムズ”・屋上~



「あ……」

「いた……」

仲間達と共に屋上に上がったロイドとエリィは屋上の手すりの近くで付近の建物とは比べものにならないくらいの高さの建物を見つめているレクターを見つけて呟いた。

「ふ~……しかしクロスベルってのはマジで訳わからんよなァ。」

レクターが溜息を吐いて呟いたその時、ロイド達がレクターの背後に近づいた。

「……言いたいことは何となくわかりますけど。」

「―――通称”オルキスタワー”。地下250アージュ、40階建ての世界初の超高層ビルディング。新市庁に加えて、企業用のフロア、国際会議場なども用意されているわ。」

「確かに圧巻ですよね……こんなに離れているのにあんなに大きく見えるなんて。」

「一体どれだけのミラがつぎ込まれているんだ……?」

「人間の技術の進歩の速さはどの世界も変わらないわね……」

エリィの説明を聞いたノエルとリィンは驚きの表情で高い建物―――オルキスタワーを見つめ、エルファティシアは静かな表情で2人と共に同じ建物を見つめ

「フフ、まだ隠れているからどんなデザインかわからないけど……もう一通り完成してるんだって?」

ワジは静かな笑みを浮かべてロイドを見つめて尋ね

「ああ、もう市の職員の半分はあちらに移っているらしい。実際のビルのお披露目は通商会議の時になるけど……」

尋ねられたロイドは頷いて答えた。

「で、並みいる首脳たちの度肝を抜くつもりってわけだ。やれやれ。ディーター・クロイスってのは思ってた以上の人物みたいだな。ただでさえヴァイスハイト・ツェリンダーやギュランドロス・ヴァスガンを含めた警察、警備隊の新たな上層部も話に聞いていた以上の人物だし。クロスベルの各組織の新たなトップや上層部はどいつも面白そうだねぇ?」

「…………………………―――クロスベル警察、特務支援課としてお聞きします。レクター・アランドール殿。身元の確認にご協力ください。」

口元に笑みを浮かべて言ったレクターの言葉を聞いたロイドは黙ってレクターを睨んだ後、真剣な表情で言った。

「くくっ…………真面目だねぇ。―――イヤだと言ったら?」

ロイドの言葉を聞いたレクターは口元に笑みを浮かべた後尋ね

「……確かにクロスベルでは両帝国、共和国政府関係者に対して法的拘束力を行使できません。ですがそれは、あくまで身元が明らかになっている場合だけです。」

「逆に明らかにできなければ普通の外国人と同じレベルでは取り調べる事ができる……なるほど、そういうことか。」

レクターの質問にエリィは真剣な表情で答え、エリィの話を聞いたワジは納得した様子で頷いた。

「フム、そう来たか。……仕方ない。年貢の納め時のようだな。いいぜ、オレの所属は―――」

一方レクターは頷いた後ロイド達に振り向いて答えかけたが

「んー………?」

ある方向を見つめて不思議そうな表情をした。

「どうしたんですか?」

レクターの様子を見たロイドは仲間達と共にレクターが見つめる方向を見つめて尋ね

「ああ、向こうの建物だ。……なんか黒い人影が屋根を飛び回ってないか?」

「え……」

「ま、まさか……」

レクターの言葉を聞いたロイドとエリィは信じられない表情をし

「へえ、もしかしてあの”銀”って人なのかな?」

「で、でも……こんな昼間からですか?」

「とても暗殺者が活動する時間帯とは思えないわね……」

ワジは意外そうな表情をして呟き、ワジの言葉を聞いたノエルとエルファティシアは戸惑いの表情を見せ

(”銀”だと?)

(……まあ、昼間に活動はしていたけどな。くかかかかっ!)

(私達に見つかってからは同じ愚は犯していないと思うのけど……)

メヒーシャは眉を顰め、ギレゼルは笑い、ルファディエルは考え込み

「ええ、そうですね――――って!?」

エルファティシアの言葉に頷いたリィンはレクターがいる方向に視線を向けた時、レクターの姿が消えている事を見て声を上げ

「し、しまった!」

リィンの声を聞いてレクターがいない事に驚いたロイドはレクターがいた場所に近づき、ある物を見つけた。

「ま、まさかこのザイルで下へ!?」

「あ、ありえない…………」

手すりに引っかけられてあるザイルを見たエリィとノエルは驚き

「あはは!信じられない事をするなぁ!」

「うふっ♪ここでも一杯喰わされたわね♪」

「わ、笑いごとじゃないと思うんだけど……」

ワジは笑顔で感心し、エルファティシアは小悪魔な笑みを浮かべ、2人の言葉を聞いたリィンは溜息を吐き

「くっ……ここまで常識が通用しない相手なんて……この下は裏通りだ!とにかく階段で降りるぞ!」

ロイドは溜息を吐いた後仲間達と共に走り出し、裏通りで市民達に聞き込みをした後、さらに歓楽街に向かい、歓楽街でレクターがカジノの中に入ったという情報を聞いた後カジノに入った。



~カジノハウス”バルカ”~



カジノの中に入ったロイド達がスロット台がある場所に近づくと、スロット台の前に座ってスロットで遊んでいるレクターを見つけた。

「なんだなんだ~、またドギかよ。たまにはフィーナも出てくれないとつまんねぇぜ。」

スロット台の前でレクターがつまらなさそうな表情で呟いていたその時、ロイド達はレクターを包囲した。

「――――レクターさん。もう逃げられませんよ。」

「いいかげん、観念して身元を明らかにしてください。」

「身元ねェ~。ミモト、ミモト……どれがいいかなぁっと。」

ロイドとエリィに睨まれたレクターはロイド達から目を逸らして呟き

「……あからさまに誤魔化そうとしないで下さい。」

レクターの態度を見たロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。

「そうだな……イエス・オア・ノーで答えるから何でも質問してくれよ。」

「……わかりました。それでは質問させて頂きます。――――エレボニア帝国政府二等書記官、レクター・アランドール殿で間違いありませんか?」

「イエス。」

「エレボニア帝国軍情報局に所属する特務大尉殿でもいらっしゃる?」

「イエスだ。」

(あっさり認めるのか……)

自分の質問に頷いたレクターをロイドは考え込みながら見つめ

「……では、私の方からも。今回の訪問は、帝国政府の意向を受けてのものですか?」

エリィは真剣な表情で尋ねた。

「ノーであり、イエスでもある。」

「1ヵ月以上の滞在を予定されていますか?」

「フフ……答えはノーだ。一週間くらいで帰るぜ。」

(ここまでか……)

(ええ……これ以上は無理ね。)

レクターの答えを聞いたロイドとエリィはアイコンタクトを取った後、レクターを見つめ

「―――お手数をかけました。アランドール大尉。」

「ご協力、感謝いたします。」

レクターに感謝の言葉を言った。

「ああ、別にいいけどよー。そういや、あのチビッ子は元気か?アンタらが引き取ったんだよな?」

「えっと、キーアの事ですよね?ええ、おかげさまで元気一杯に暮らしています。」

「……その節はありがとうございました。」

「フフ、僕達を逃がすのに協力してくれたもんね。」

「ま、貴方のお蔭で再びヴァイスハイト達と出会えるきっかけの一つにもなったからお礼を言っておくわ。ありがとう。」

レクターに尋ねられたロイドとエリィは笑顔で答え、ワジとエルファティシアは口元に笑みを浮かべた。

「ん~、何のことだ?オレはクロと遊んでただけだぜ。そういや、ハルトマンのオッサン、結局捕まっちまったんだってな?まあ、妙なのに連れ回されてたし、無事に保護されてよかったぜ。」

「……何でそんなことまで。」

「あの2人を逮捕してから3日も経っていないのに……」

そしてレクターが呟いた言葉を聞いたロイドは表情を厳しくし、ノエルは信じられない表情でレクターを見つめ

「ま、そのあたりの確認もオレが来た目的の一つだからな。そういう意味ではお前も同じなんじゃないの?命惜しさにメンフィルに降伏して、エレボニアでは”裏切り者”やら”売国奴”やら”エレボニア貴族の恥さらし”と揶揄されているメンフィル軍に所属しているシュバルツァー家のご子息。」

「……俺の事もご存知でしたか。……エレボニアから罵倒されて当然な事を行った事は否定しません。ですが父さん達はエレボニア貴族としてのプライドよりもっと大切な物を守りましたから、俺と妹は父さん達の行動を誇りに思っています。」

興味ありげな表情のレクター見つめられたリィンは目を伏せて答えた後、真剣な表情でレクターを見つめて言った。

「くくっ……オッサンが聞けば何て言うだろうな――――」

リィンの答えを聞いたレクターが口元に笑みを浮かべて何かを答えかけたその時



「あ~、いたいた!こんな所で何やってのさー。」

赤毛の少女がロイド達に近づき

「アルカンシェルのチケットを手配してくれるんだろー?それで、どうなったのさー?」

不満げな表情でレクターを見つめて言った。

「うむ、今日の夜公演の貴賓席を確保してやったぞ。せいぜい感謝するがよい。」

「ホント!?えへへ、サンキュ!前から見たかったんだよねっ!」

レクターの話を聞いた少女は嬉しそうな表情をし

(……誰だ……?)

(まだ若いみたいだけど……)

ロイドとエリィは不思議そうな表情で少女を見つめた。

「あれ……?………………」

一方見つめられた少女は黙ってロイドを見つめ

「えっと……何かな?」

見つめられたロイドは苦笑しながら尋ねた。

「フーン……お兄さん、匂いがするね。懐かしい匂いだ。」

「え……」

そして少女が呟いた言葉を聞いたロイドが戸惑ったその時

「あーむっ。」

なんと少女はロイドの耳たぶに軽くかじりついた!

「!!!???」

少女の行動に飛び上がって驚いたロイドは混乱した様子で少女を見つめ

(あら…………)

(おおおおおおおおおおおおおおっ!?まさか、ここで急展開か!?相変わらず、我輩を飽きさせない男だな!くかかかかっ!)

ルファディエルは驚き、ギレゼルは興奮した後陽気に笑い

「ちょ、ちょっと!?」

エリィは少女を睨み

「なっ!?」

「え、えええええ~っ!?」

リィンとノエルは驚き

「ヒュウ♪」

「うふっ♪モテモテね~。」

ワジは口笛を吹き、エルファティシアはからかいの表情でロイドを見つめた。

「い、いきなり何を……!?」

「えへへ、ご馳走様♪うん、やっぱりかすかに匂いがするなぁ。そっちの4人からはほとんど匂わないけど……―――あ!お姉さんもお兄さんと同じくらいするね!?」

自分を睨むロイドに少女は笑顔で答えた後エリィを見つめ

「え……」

見つめられたエリィが戸惑ったその時少女は一瞬でエリィの背後に回って、エリィの胸を両手で揉み始めた!

「きゃあああああああああっ!?」

胸を揉まれたエリィは悲鳴を上げ

「エ、エリィ!?」

胸を揉まれているエリィを見たロイドは驚き

「い、いつの間に後ろに?」

「なんて動きだ……!」

ノエルとリィンは少女の動きに驚いた。

「お姉さん、おっきいねー。シャーリィはペタンだからうらやましいよ♪」

「ちょ、ちょっとやめてちょうだい……!あうんっ……!ど、どうしてこんな……!」

口元に笑みを浮かべて胸を揉む少女の行動にエリィは顔を赤らめた後喘ぎ声を出し

「な、な、な……」

「ど、どうすればいいんだ……!?」

「うふっ♪中々可愛い声を出すわね♪」

胸を揉み続けている少女の行動にノエルとリィンは混乱し、エルファティシアは小悪魔な笑みを浮かべ

「アハハ、いい光景だなぁ。」

ワジは笑顔で言い

「た、確かに……じゃなくて!ちょっと君!いきなり何してるんだ!?」

ワジの言葉に頷きかけたロイドはすぐに我に返った後少女を睨んだ。するとその時

「いい加減に……しなさ―――いっ!メヒーシャ!この娘をこらしめてっ!!」

エリィは怒りの表情で叫び

「さすがにやりすぎだっ!!」

召喚によって少女の背後に現れたメヒーシャは斧槍の上下を逆さにして棒の部分を少女の首筋目掛けて振り下ろしたが

「おっと。」

なんと少女は一瞬でエリィから離れてロイドの目の前に移動し、メヒーシャが振り下ろした斧槍は(くう)を切った!

「何っ!?」

攻撃を回避されたメヒーシャは驚き

(お?メヒーシャちゃんの攻撃を避けるとはやるじゃねぇか。)

(……メヒーシャの攻撃を……しかも背後からの奇襲を難なく回避するなんて……先程の動きといい、只者ではないわね………)

ギレゼルは意外そうな表情をした後興味深そうな表情をし、ルファディエルは真剣な表情で少女を見つめていた。

「ハハッ、さすがにやりすぎちまったみたいだな。下手すればセクハラになっちまったかもしれないぞ~?」

「セクハラじゃないよー。スキンシップだってば。」

一方レクターは笑顔で言い、レクターの言葉を聞いた少女は意外そうな表情で答え

「じゅ、十分セクハラですっ!はあはあはあ…………」

エリィは怒りの表情で怒鳴った後地面に座って息を切らしていた。

「エ、エリィさん。」

「だ、大丈夫か?」

「………………」

息を切らせているエリィにロイドとノエルが声をかけ、メヒーシャは自分の背にエリィを庇うような位置で斧槍を少女に向けて少女を睨んでいた。

「うむ、それではオレたちは失礼しよう。ミシュラムのテーマパークで夜まで遊び倒すんでな。」

するとその時レクターは立ち上がって笑顔で言い

「それじゃ、またね~!」

少女はロイド達に笑顔で言った後レクターと共に去って行った………… 
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