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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第87話



~太陽の砦・最奥~



「……あ………」

「チッ………最後まで世迷言を………」

「でも……哀れね………」

「……はい…………」

ヨアヒムの消滅を見たロイドは呆け、ランディは舌打ちをし、複雑そうな表情で呟いたエリィの言葉にティオは頷いた。

「………………………」

「………気にする事はないよ。あの狂気の薬を大量に飲んだ時点でもう彼は助けられなかったんだ。」

「そうね……ああなってしまった以上、それこそ神のみが起こせる”奇蹟”でも起こらない限りは助けるのは不可能だわ。」

「それにあのイカれた野郎はあの薬で実験した子供達がどうなったかを一番良く知っていてんから、大量に服用すれば最後は自分がああなる事がある可能性も覚悟して、飲んでんから坊達のせいやないで。」

「お前達はベストをつくし、その結果”本来の目的”であるあの少女とクロスベルを守った。恥じる事は無い。」

一歩前に出て視線を床に向けて悔しそうな表情で黙り込んでいるロイドにヨシュアとルフィナ、ゼノとレオニダスはそれぞれ慰めの言葉をかけ

「うん………そうね……出来ればあたしも助けたかったけど……」

「ああ………最後まで……彼の妄想を晴らす事が出来なかった……出来ればきちんと裁きを受けて自分の罪を受け止めて欲しかった。そうでないと……彼自身も彼が犠牲にした人達も哀しすぎる………」

エステルの言葉に頷いたロイドは悔しそうな表情で呟いた。



「ロイド……」

「………ロイドさん………」

「…………………」

ロイドの言葉を聞いたエリィとティオは心配そうな表情でロイドを見つめ、レンは複雑そうな表情で黙り込んだ。するとその時ロイドを黙って見続けたランディがロイドに近づいて、ロイドの背中を強く叩いた。

「オラ!何をしけたツラしてやがる!」

「ランディ………?」

「俺達は全能じゃねえ!全てが上手くいくわけがねえんだ!それでも精一杯やってここまで来れたんだろうが!?ベストとは言わねぇが………上出来ってもんだぜ!」

「………ランディ………」

ランディの励ましの言葉を聞いた後驚きの表情でランディを見つめ

「………かつてのロッジ制圧作戦では多くの教団信徒たちが自決しました。ガイさんやアリオスさん、課長たちは屍を越えてわたしを助けてくれました。避けられない犠牲も……時にはあるのだと思います。」

「そしてお兄様やパパ達がその犠牲の先を越えてくれたから、レンやティオが今、この場にいるのよ………」

「………ティオ……レン………」

ティオとレンの言葉を聞いたロイドは驚きの表情で2人を見つめ

「彼は自滅してしまったけど………まだまだ後始末は残っている。………クロスベル全域の混乱、それから操られていた人の安否も……落ち込んでいる暇は無いと思うわ。」

「………エリィ………」

エリィの言葉を聞いたロイドは黙ってエリィを見つめた後目を閉じ

「………ありがとう。そうだな……ヘコんでいる場合じゃないな。それに………キーアや課長との約束もちゃんと守らないとな………!」

静かな笑みを浮かべた後目を開いて笑顔を浮かべた。



「ええ……!」

「全員で無事にあの子の元に戻る約束……それと課長に一人前と認めてもらう約束ですか。」

「ハハ………何とかどっちも守れそうだぜ。」

「ふふっ………」

「………仲間か………」

「うふふ、リベル=アークや”影の国”で戦った人達を思い出すわね♪」

「フフ、そうね。」

ロイド達の様子を微笑ましく見守り、かつての出来事を思い出していたエステルやヨシュアは懐かしそうな表情をし、レンの言葉にルフィナは微笑みながら頷き

「ハハ、”影の国”やったら、フィーもその”仲間”の中に入る事になるんやろうな。」

「フッ、そして今のフィーもまた新たな”仲間”に囲まれているのだろうな。」

ゼノとレオニダスはそれぞれ静かな笑みを浮かべてある人物の顔を思い浮かべていた。



「フフ………どうやら幕引きみたいね。」

「え………」

その時ユウナの声が聞こえ、声を聞いたエステルはロイド達と共にユウナを見つめた。

「本当は最後まで手を貸すつもりはなかったんだけど………ふふっ………レーヴェやおねえちゃんに影響されちゃったのかしら。」

「ユウナ………!」

ユウナが去るつもりである事を悟ったヨシュアはエステルと共にパテル=マテルの片手に飛び乗ったユウナに近づいた。

「………これでクロスベルでのユウナの心残りは全部無くなった。なかなか楽しかったけどユウナがいると混乱しそうだし、そろそろ失礼するわね―――」

そしてユウナはパテル=マテルに指示をしてその場から去ろうとしたが

「ユウナ。」

「………なぁに、エステル。ユウナは……まだ捕まる気はないわよ?」

エステルに名前を呼ばれると身体を震わせた後エステルを直接見ないように身体を横に向けて答えた。



「ううん、ユウナ………もうあんたは……あたしたちに捕まってるわ。」

「……!」

「最後に別れてから半年………一度リベールに里帰りしてまたここに来てから3ヵ月………あたしたちはいつでもユウナの気配を肌で感じていたわ。」

「人形工房にいた事も知っていたし、ちょくちょくクロスベル市に遊びに来ていたのも知っていた。さすがに導力ネットで君を捉えるのは難しかったけどね。」

「あ、当たり前じゃない……!ユウナは”仔猫”……誰にも捕まらないんだから!」

エステルの後に答えたヨシュアの話にユウナは必至の様子で答えた。

「あたし達以外には、ね。―――今、あたし達はユウナとレンの事を全て知った。あんた達の過去、哀しみ。そして嬉しい事や楽しい事も。もう――――逃げ切れないわよ?」

「っ………あ、あきらめると……思ったのに………”楽園”のことを知ったら………エステルはユウナの事を絶対にあきらめて、おねえちゃんだけで満足すると思ったのに………っ!」

「…………………ユウナ……………」

エステルの言葉を聞いて身体を震わせた後エステルに背を向けて涙を流し始めたユウナの言葉を聞いたレンは辛そうな表情でユウナを見つめていた。



「2年前のあたしだったらひょっとしたらそうだったかも。でも、みんなやレーヴェ、そしてユウナとレンに出会えたおかげであたしは強くなれた。過去のどんな出来事も……今のあんたを形作っている大切なものだから………今はただ……愛おしくて仕方ないわ。」

「………ぁ…………」

全てを知ってもなお自分を愛おしく思っているエステルの言葉を聞いたユウナは呆けた声を出した。

「―――本当だったらご両親の元に戻った方がいいのかもしれない。でも僕達は……どんなに我儘と言われようとも家族として君を引き取りたい。それがクロスベルに来て僕達が改めて出した結論だ。―――――勿論父さんや母さん、ルーク兄さん、それに………レンも君を家族として引き取る事に賛成だよ。」

「………っ…………」

ユウナに説明をしたヨシュアに一瞬視線を向けられたレンは身体を震わせてヨシュアの視線から逃れるように明後日の方向へと視線を向けていた。

「………うううっ………そんな……そんなの……っ!」

そして二人の暖かい言葉に心からの嬉しさを感じたユウナが涙を流し始めたその時

「―――――」

「パテル=マテル!?ど、どうして勝手に……!」

何とパテル=マテルが動いてエステルとヨシュアに近づき、その行動にユウナは驚いた。



「も、もしかして……」

「そうか……君もユウナのことを………」

「ふふっ……さすがはユウナの”パパとママ”ね。」

一方パテル=マテルの行動の意図を悟ったエステルは驚き、ヨシュアとレンは微笑んだ。

「――――――」

「………ダ、ダメぇ……!」

ユウナの幸せの為に二人にユウナを託す事を決めたパテル=マテルはユウナの必死の声を無視して自身の片手に乗っているユウナを優しく掴んでエステルとヨシュアの前に下ろし

「―――捕まえた。」

「ぁ…………」

そこにエステルが近づいてユウナを背中から優しく抱きしめ、抱きしめられたユウナは呆けた声を出して抵抗もせず、ただエステルの抱擁を受け入れ続けていた。



「ありがとう……パテル=マテル。マイスターに調整されて自分の意志で動けるようになったみたいだね?」

「――――――」

「ううううっ………」

「もう……逃がしてあげないんだから。……これからどこでどんな風に暮らしていくか一緒に考える必要はあるけど………まずは一度……リベールに帰りましょ………?ティータもずっと……ユウナの事を待っているわ………」

「………ああああああっ………わあああああっ…………!」

「………ユウナ………!」

そしてエステルとユウナは互いを強く抱きしめ合って涙を流し始め

「うううううっ………ああああっ…………うわあああああああんんん!」

「…………………」

ユウナは大声で泣き続け、その様子をヨシュアは静かな笑みを浮かべて見守っていた。



「………はは………」

「グスッ………本当によかった……」

「……はい………」

「はは……さすがにジンと来ちまうな。」

そこにロイド達が近づいてそれぞれ感動した様子でエステル達を見守っていた。

「………みんな……ありがとう……本当に君達にはなんて………なんてお礼を言ったらいいのか………」

「いや……俺達は手伝いをしただけさ。君達は君達の手で………この結果を手に入れたんだと思う。―――ヨシュア。おめでとうって言わせてくれ。」

「………ありがとう、ロイド。」

ロイドの祝福の言葉にヨシュアは微笑みを浮かべて受け取った。



「フフ………本当によかったわね、エステル……それにユウナちゃんも。」

「……嬢ちゃんは参加しなくてええんか?」

「ふふっ……レンは今までエステルとユウナの関係について口出ししなかったし、何もしなかったから……レンにその資格はないわよ………」

「………お前がそう思っていても、向こうはそう思っていないと思うがな。――――!その証拠に、向こうもお前に話があるようだぞ?」

一方エステル達の様子をロイド達から離れた場所で見守っていたルフィナは微笑み、ゼノに問いかけられて寂しげな笑みを浮かべて答えたレンにレオニダスは静かな笑みを浮かべて指摘した後エステルから離れて自分達に近づいて来るユウナに気づくとレンに助言し

「え…………」

レオニダスの助言を聞いたレンが呆けたその時ユウナがレンの目の前まで近づいた。

「おねえちゃん。」

「…………なにかしら?」

静かな表情で自分を見つめて自分の名前を呼んだユウナに対してレンは気まずい表情でユウナから視線を逸らして答えた。



「……ちょうどいい機会だし、”約束通り”プレゼントを渡すわ。」

「え。」

「―――パテル=マテル、位相空間にアクセス。”プレゼント”をユウナの両手に転送して。」

「―――――――」

そしてユウナの言葉にレンが呆けたその時ユウナはパテル=マテルに指示をし、指示をされたパテル=マテルは異空間に保管していた物――――ユウナと同じ髪の色である橙色のリボンやブローチ、そしてクロスベルのマスコットキャラクター―――”みっしぃ”と”みーしぇ”のぬいぐるみとマフラーをユウナの両手に転送した。

「―――はい、おねえちゃん。みんな、おねえちゃんにあげるわ。」

「…………まさか、このプレゼントって………」

ユウナは両手に転送されたリボン等を全てレンに手渡し、手渡されたプレゼントが何であるのかに察しがついたレンは驚きの表情でユウナを見つめ

「――――誕生日おめでとう、おねえちゃん。5年分纏めての意味になっちゃうけど、それに関してはお互いに同じだったから、お相子って事だから文句はないわよね。」

「……っ………」

「あ………」

「ユウナ………」

優し気な微笑みを浮かべたユウナに5年分の誕生日の祝福の言葉を贈られたレンは身体を震わせ、その様子を見守り、”影の国”でのユウナと自分達の別れ際の事を思い出したエステルは呆けた声を出し、ヨシュアは静かな笑みを浮かべてユウナを見つめていた。

「それと…………――――ごめんなさい。」

「…………ぇ……………」

更にユウナはレンを見つめて軽く頭を下げて謝罪の言葉を口にし、ユウナの行動の意味が理解できなかったレンは呆けた表情でユウナを見つめた。

「”あの場所”で―――”楽園”で色々な事をやらされてユウナが苦しんで痛がっているのに助けてくれなかったおねえちゃんを逆恨みしてごめんなさい………おねえちゃんもユウナと同じ立場だったのだから、ユウナを助ける事なんてできるはずがないとわかっていたのに、ユウナはおねえちゃんをずっと恨み、憎み、そして”偽物の家族”として扱った。………本当にごめんなさい。」

「……っ………!それは………レンも同じ―――いえ、レンは”ユウナのおねえちゃん”なんだから、本当ならユウナの代わりをしてでもユウナを守ってあげるべきだったわ……!なのに貴女を恨み、憎み、偽物の家族扱いした所かレンだけ”新しい幸せ”を手に入れて、レーヴェから貴女の事を聞くまでずっと貴女の事を忘れて過ごしてきたレンの方が悪いわ……!謝るべきなのはレンの方よ……!ごめんなさい………貴女を逆恨みし続けて本当にごめんなさい、ユウナ………!」

ユウナの謝罪の意味がわかったレンはユウナから貰ったプレゼントを宝物を扱うかのように大事に抱きしめて涙を流しながらユウナに頭を下げて謝罪の言葉を口にし

「おねえちゃん…………その………これからは前みたいに姉妹の関係に戻っていいのよね………?」

レンの謝罪に涙ぐんだユウナは涙を流しながら僅かに期待が籠った表情でレンを見つめて問いかけ

「フフ………ユウナったら、おかしなことを言っているわね………ユウナがレンの事を前のように”おねえちゃん”って呼ぶように戻っている時点でレンとユウナは姉妹の関係に戻っているじゃない………」

問いかけられたレンは涙を流しながらユウナに微笑んだ。

「ふふっ………おねえちゃんはユウナの事を素直じゃないって言っているけど、おねえちゃんの方が素直じゃないじゃない………こんな時でも素直じゃない答えを言っているんだから………ううううっ……」

「失礼ね………レンはいつも素直よ…………ああああっ………」

「「うわあああああああんんん!」」

生き別れ、再会した時は敵同士で互いを恨み、憎しみあい、時には本気で殺し合った事もある双子の姉妹はようやく互いに歩み寄って和解し、互いを抱きしめて大声で泣いた。



「ぐすっ………レン………ユウナ…………」

「…………………」

その様子を見守っていたエステルは涙ぐみ、ヨシュアは静かな笑みを浮かべ

「フフ………”雨降って地固まる”、ね…………まあ、彼女達の場合は”雨”どころか”嵐”になるのでしょうけど。」

「やれやれ……長い事猟兵生活をやっているけど、まさかこんな感動の場面に付き合う事になるなんて、人生わからないもんやな……」

「フッ、猟兵としてはある意味貴重な体験だな………」

ルフィナは微笑み、ゼノとレオニダスは苦笑していた。

「ふふっ……一刻も早くキーアちゃんの顔が見たくなってきたわね………」

「はい……それにツァイトに課長にも……」

「はは、そんじゃあボチボチ戻るとすっか……!」

「ああ………………――――特務支援課、撤収準備。囚われた人達を護衛しつつ、マフィア達の身柄を確保しながら地上に戻ろう………!」

その後ロイド達はロッジを出た。



~朝・古戦場~



「あ………」

「………朝陽が………」

「……キレイです……」

「ああ………それに暖かいな……」

「ふふ、徹夜になっちゃったわね。」

ロイド達が外に出ると既に朝になっていて、太陽の光をロイド達が感じていたその時

「ロイド―――――――ッ!」

聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。

「この声………!?」

「まさか………!」

声を聞いたロイドとティオが驚いたその時、ツァイトと共にやって来たキーアがロイドに飛び込み

「キーア………!」

キーアを受け止めたロイドは驚いた。



「………~~っ~~~~~!!!よ、よかったぁ………!ロイドも、エリィも………ティオもランディもレンも無事で………!」

「グルル……ウォン!」

安堵の表情のキーアが呟き、ツァイトが吠えるとキーア達の後ろからはセルゲイ、アリオス、ダドリー、ソーニャ副指令、ノエル、そしてロイド達に後ろからはエステル達が近づいて来た。

「どうしてキーアちゃんが………」

「はは………しかもえらい大所帯じゃねえか。」

キーアの登場にエリィが驚いている中ランディは苦笑しながらセルゲイ達を見回した。

「先程、市街に展開していた警備隊員達が全員気絶した。それで取り急ぎ、彼女を連れてこちらに出向いたというわけだ。」

「まったく、連れて行けとダダをこねられて困ったぞ。フン、これだから支援課は………躾くらいきちんとしておけ。」

アリオスの後に答えたダドリーは呆れた表情で溜息を吐いてロイド達に注意をしたが

「クク、そう言いながらわざわざ連れて来てやるあたりがお前らしいがな………」

「セ、セルゲイさん………!」

口元に笑みを浮かべて呟いたセルゲイの指摘に慌てた。



「はは………副司令に、ノエル曹長も………」

その様子を苦笑しながら見ていたロイドはソーニャ副指令とノエルに視線を向け

「皆さん、お疲れ様です!」

「こちらの部隊もようやく身動きが取れるようになったわ。それで様子を見に来たんだけど………とりあえず、危機は去ったのね?」

視線を向けられたノエルは敬礼をし、ソーニャ副指令は口元に笑みを浮かべて尋ねた。

「はい……!」

「不気味な魔獣達も全て姿を消してしまいましたし………」

「おかげで全員、連れて帰って来られたぜ。ま、マフィア達は拘束して、地下に置いたままだが………」

「………むしろこれからの方が大変かもしれませんね。」

「そうね……市民への説明と諸外国の対応………操られ、大怪我をした警備隊員達へのケアや治療もきちんとしないと………」

「マフィア達も一通り、拘束する必要がありそうですね。」

「そして今回の事件に関する一連の証拠集め……一ヵ月は大忙しだろうな。」

「うふふ、でも警察のみんなにとっては待ちに待ったルバーチェの検挙だから警察のみんなにとっては、嬉しい忙しさになるでしょうね♪」

ロイド達の後に答えたエリィの言葉に続くようにソーニャ副指令、ノエル、ダドリー、レンは呟き

「フフ………ギルドも協力させてもらおう。」

「……感謝する。……ちなみにそちらの二人はこれからどうするつもりだ。」

アリオスの申し出に口元に笑みを浮かべて頷いたダドリーは表情を引き締めてゼノとレオニダスに視線を向けた。



「そりゃ仕事は終わってんから、IBCの総裁殿から”報酬”を受け取った後は”本来の仕事”に戻らなあかんから、とっととお暇させてもらうで。」

「………こう見えても俺達はフリーではなく、”ある依頼人”と長期契約を結んでいる身なのでな。」

「”ある依頼人”………”Ms.L”か。全く……あの執事達と言い、”Ms.L”は一体何を考えているのだ?」

「クスクス、それは”Ms.Lのみぞが知る”、よ♪」

「ハア………冗談抜きで色々な意味で”Ms.L”は何を考えているのか知りたいわね………」

ゼノとレオニダスの答えを聞いて溜息を吐いたダドリーに視線を向けられて悪びれもなく笑顔で答えたレンの答えを聞いたロイド達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ルフィナは溜息を吐いてジト目でレンを見つめ

(なっ!?またあの娘、あたし達に隠れて猟兵を雇っていたの~!?しかも長期契約って、一体どんな内容の契約を結んだのよ!?)

(クスクス、後でおねえちゃんから詳しい事情を教えてもらえるといいのだけどね?)

(ハハ……それが難しいんだよね………)

ダドリーの言葉を聞いてレンが猟兵である二人を雇っている事に気づいたエステルはジト目でレンを睨み、からかいの表情で呟いたユウナの小声の言葉を聞いたヨシュアは苦笑していた。



「……ふふっ………」

「確かに死ぬほど忙しくなりそうだが……」

「でも………何だかすべてが良い方向に行きそうね。」

「……ああ……」

「うんっ!」

「ウォン!」

「クク……―――ロイド、エリィ、ティオ、ランディ、レン。詳しい報告はゆっくりと聞かせてもらうとして……とりあえず―――ケリは付けてきたか?」

和やかな雰囲気のロイド達を見たセルゲイは口元に笑みを浮かべて尋ね

「あ………」

セルゲイの言葉を聞いたロイドはエリィ達を見回し

「はい………!」

5人同時に返事をした!



「クク……上出来だ。これでどうやら………お前達を一人前として認めてやる事が出来そうだ。………ガイのやつも喜んでるだろう。」

「課長………………」

「フフ…………」

「……………………………」

そしてセルゲイの言葉にロイドが驚き、ルフィナとアリオスが静かな笑みを浮かべたその時

「はいは~い!ちょっとどいてどいて~!」

なんとグレイスがカメラマンと一緒にセルゲイ達の背後から現れた。



「グレイスさん!?」

「こ、こんな所まで……」

「こんな美味しいネタを見逃すわけにはいきますかって!何はともあれ、まずは一枚パシャリと行かせてもらうわよ~!ほら、全員入った入った。」

自分の登場に驚いているロイドとエリィを気にせず、グレイスはロイド達の集合写真を撮る為にロイド達を促した。

「やれやれ……」

グレイスの言葉にセルゲイは溜息を吐き

「写真、とってもらうの~?」

キーアは嬉しそうな表情でロイドに尋ね

「ああ………ニッコリ笑うんだぞ?」

「うんっ!」

ロイドの確認の言葉に元気よく頷いた。



「ツァイト、入りましょう。」

「グルル………ウォン。」

ティオの申し出にツァイトは頷き

「えっと、あたしたちは………」

「さすがに遠慮した方がよさそうだね………」

「おらおら。遠慮すんなっつーの。アーシアお姉さんや嬢ちゃんは当然として、ついでに”西風”の二人も入ってけよ?」

ランディは遠慮しようとするエステルとヨシュアも一緒に写るように促した後ルフィナやユウナ、ゼノとレオニダスにそれぞれ視線を向けて促した。

「ええ、喜んで。」

「ふふっ………それじゃあ遠慮なく。あ、おねえちゃんはユウナの隣に来てね。」

「ええ、勿論そのつもりよ。」

「おいコラ、”闘神の息子”。何で俺達だけ”ついで”扱いやねん。」

「後で詳細な説明をしてもらうから覚えていろ。」

ランディの言葉にルフィナ達はそれぞれ答え

「まったく……」

「フフ、たまにはこういうのも悪くなかろう?」

「ほら、副司令も課長さんの横あたりに!」

「はいはい………でもこれ、どんな絵面になるのかしら。」

その様子を見て呆れた表情で溜息を吐いたダドリーにアリオスは静かな笑みを浮かべて指摘し、ノエルはソーニャ副指令を促した。そしてロイド達はそれぞれ所定の位置に並び

「さあ、行きますよー。―――はい、チーズ!」

グレイスの言葉にそれぞれの仕草をして、グレイスが連れて来たカメラマンに写真を撮ってもらった。



こうしてロイド達のクロスベルの一番長い日がようやく終息した――――――!


 
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