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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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外伝~仔猫(キティ)と相棒(パテル=マテル)~


同日、14:40――――



~ローゼンベルク工房~



「――――ふぅん、なるほど。お兄さんたちもやっとそこまで辿り着いたみたいね。」

ロイド達が行動を始めていたその頃、レンはローゼンベルク工房の地下にある端末を動かしながら呟いた。

「出席者も揃って招待状も届けられた………これで(パーティー)の準備はぜんぶ整ったかしら?先に鬼さんを見つけるのはエステル達?お兄さん達?それとも―――」

口元に笑みを浮かべたレンが呟いたその時

「………相変わらず全てが見えておるらしいな。」

一人の老人が部屋に入ってきてレンに近づいてきた。

「うふふ、レンはそこまで自信過剰じゃないわ。レンに見えるのは絡まり合った因果(システム)だけ。お互い別々に作動する因果がこのクロスベルという場でどんな織物を編み上げるのか………それが見えるというだけよ。」

「ふむ……なるほどな。マフィアと例の教団が何をするつもりかは知らんが少々、騒がしくなりそうだの。まあ、これも自業自得―――いや因果応報というものか。」

レンの話を聞いた老人―――ローゼンベルク工房の主、ヨルグは重々しい様子を纏って呟いた。

「ええ、あの灰色の街が積み重ねてきた因果の報いと言うべきかもしれないわね。――――てっきり”結社”の関与もあるかと思っていたのだけど。」

「この地は”結社”と”教会”の緩衝地帯にもなっておるからな。法王は騎士の活動を禁じ、盟主は執行者を派遣しない。ま、あくまで建前としてはだが。」

「うふふ、おじいさんの工房がある時点で怪しいものだけど……”怪盗紳士”だっけ?彼もいた上、まさかクロスベルの導力ネットに介入できる遠隔システムまで用意してるとは思わなかったわ。おかげでレンも退屈しなくて済んでるけど。」

「お前さんの役に立ったのなら用意した甲斐があったというものだ。あやつが押し付けて来た時はブチ壊してくれようと思ったが………」

「クスクス………相変わらず”博士”と仲が悪いのね。”十三工房”の管理者にして使徒第六柱――――ノバルティス博士。”結社”独自のネットワークがあると思うのに、今更エプスタインの試験運用に何の興味があるのかしら?」

ヨルグの話を聞いたレンは上品に笑った後、興味深そうな表情をした。



「フン、あやつのことだ。どうせロクでもない企みのために役立てようと思っとるのだろう。まったく、開発途中の実験作を適当にバラまきおって………」

「うふふ、お兄さん達が戦ったあの紅い武者さんね。モニターで見た限りはそれなりにできる子みたいだけど?」

怒りを纏って呟いたヨルグの話を聞いたレンは口元に笑みを浮かべて尋ねた。

「やはり自律的な状況判断と柔軟な行動選択に難アリだな。なかなかお前さんの”相棒”のようにはいかんさ。」

「ふふっ……でも、レンがここにいるのは博士も気づいているんでしょう?レンはともかく彼について何も言ってこないのかしら?」

「今のところはダンマリだな。どうやら新しい機体とお前さん達に奪われた”箱舟”の代わりの開発に熱中しておるようだが………―――まあ、課題だった姿勢制御と関節部分の構造強化も完了した。あやつに余計な口を挟ませるスキは見せんさ。」

「うふふ、ありがとう。”あの子”の修理を引き受けた事も含めて、感謝しているわ。」

「フン………突然この屋敷に乱入した後、魔弓将と共に次々とわしの自信作を全て破壊し、さらに罠も突破した挙句、わしの所に辿り着いてわしを脅した娘がよく言う。」

口元に笑みを浮かべて言ったレンの言葉を聞いたヨルグは鼻を鳴らした後、レンを見つめた。

「あら。その割には”結社”に助けを呼ばないで、さらに”あの子”にも余計な細工はしていないじゃない。」

「………わしはお前さんの”相棒”の望みに応えてやっただけじゃ。心から求めていた”主”の役にもっと立ちたいという望みをな……それにお前さんにも感謝しておるよ。ヤツに色々いじくられていた”あの子”をヤツから取り上げて大切に扱っている事をな。」

「どういたしまして♪うふふ……おじいさんさえよかったら、メンフィル帝国の技術士として迎え入れてあげてもいいいのよ?既に元執行者のNo.2”剣帝”レオン=ハルトという例が既にいるのだから、おじいさんの技術士としての実力を知ればきっと受け入れてくれるわ♪」

ヨルグの話を聞いたレンは上品に笑った後、興味深そうな表情でヨルグを見つめて尋ね

「フッ………わしは気ままに人形作りをしたい上、”盟主”にも恩があるからな………断らせてもらおう。」

「あら、残念♪せっかく腕のいい人材を引き抜いてパパ達から褒められようと思っていたのに。」

「やれやれ………それよりも―――今日は忙しくなるのだろう?少々早めだが、午後のティータイムとしよう。」

「うふふ、そうね。」

ヨルグの提案にレンは上品に笑いながら頷いた後ヨルグと共にある方向を見つめ

「”パテル=マテル”―――レンやエヴリーヌお姉様達と一緒にお茶しましょう。今日は長い一日になるわ。たぶん、この自治州が始まっていちばん長い一日にね。」

見つめた方向にいる巨大人形―――自分がリベールの異変にて戦いの最中、”結社”から強奪したゴルディアス級戦略人形―――”パテル=マテル”に不敵な笑みを浮かべて提案し

「―――――――――」

レンの提案に答えるかのように”パテル=マテル”は両目の部分を光らせた……………







 
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