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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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  ep.013 決戦4

的場は少し走り気味で階段を上る。
階段を上り切ると、そこにはこんな戦場に似合わないくらいポップな服を着た少年がゲーム機でゲームをしてながら的場を待っていた。
少年は的場の足音を聞いてゲーム中の指を止めた。

「おっと、こりゃ申し訳ないね。 今まで気付かなかったよ。 アンタが"的場ッチ"だよな。」

その喋り方は自分よりも精神年齢が低そうだった。
しかし、明らかに先ほどの3人とは雰囲気が違っていた。

「アナタはさっきのメンバーよりは強そうな気配を漂わせますね。」

「多分、騎城ッチは多少なりとも手を抜いてたんだと思うぜ〜。」

その物言いだと、彼は手を抜くということはしないように見える。
すると、少年は自己紹介をした。

「俺ッチは影縫四規(かげぬい しき)。 現役高校生とレベル6やってまーす。 俺ッチのモットーは"楽しんだもん勝ち"。」

「俺は的場聖持(まとば せいじ)です。」

自己紹介を終えると、影縫の表情が変わった。
そして着ている服のポケットから拳銃を取り出した。
そして、それを的場に向ける。

「俺はさ...イチイチ戦いながら考えるのとか苦手だからさ....宣言するわ。」

「.......................。」

的場に緊張が走る。
冷たい汗がゆっくりと頬をつたっていく。

「俺は、お前を初手で倒す。」

この状況で、答えなければ気分的に見てこれからのペースを影縫に取られると考えた的場は低い姿勢になり影縫に同じく宣言する。

「なら俺も最初の一手で終わらせます。」

2人の宣言で、空気が驚くほど冷たくなり辺りが静寂に包まれる。

バン!!!
影縫が拳銃の引き金を弾いた。
つまりそれは影縫の"初手"を意味していた。
的場は突撃で地を蹴り、飛んでくる弾丸を頬すれすれで回避する。
そして、その勢いを殺さずに影縫に迫る。

ーその頃
それより上の階では、studentの5強とも言うべきメンツが勢揃いしていた。

「野口、影縫の実力はどうなんだ。」

神薙が質問する。

「それは俺も気になる。 何せ、俺は影縫よりも騎城を置いたほうが良いと思ったんだからな。」

桐崎が神薙に便乗するように言う。
我紋に関しては話には興味がなさそうで、死んだ魚のような目で的場を待っている。

「僕が思うには、studentの中でランクを付けるなら、肉弾戦のトップは"神薙くん"、殺しのトップは"池野くん"、そして計算のトップは"影縫くん"だと思っている。」

「計算のトップ?」

なんとも謎なことを言う野口だが、それには野口が分かったとある理由があった。

「彼は普段こそ本性を隠しているけど、スイッチが入れば能力なしの計算で相手を凌駕するよ。」

「つまり、相手の行動とか攻撃の手順を全部数値化して相手を翻弄するってわけか。」

実際、下の階では影縫が的場を圧倒していた。
的場の攻撃は、たまにかするがダメージは一切与えられていない。

「どうなってんだ。」

的場は頭をクリーンにするために影縫と距離をとる。
そして次の手順を考える。

『懐に侵入して、右パンチ、そこから残った勢いを使っての右の回し蹴り。』

的場は地を蹴る。
的場は右パンチを繰り出し、影縫はそれをガードする。

『右パンチ.....勢いを残してるのか。 この感じは右の回し蹴りが90%ってところかな。』

もちろん的場は自身のシュミレーションの通り、右の回し蹴りを繰りだそうとするが影縫のほうもそれは読めていて、素早く的場の攻撃圏内から退く。

影縫は攻撃圏内から退くと拳銃を2丁取り出し乱射する。
普通ならばこれは無駄撃ちに他ならないが影縫の場合は訳が違っていた。
放たれた弾丸は驚くほど正確な角度で壁に弾かれ、的場を四方八方から狙ってくる。
影縫が野口に計算のトップと言われている理由はこの卓越した計算能力と間合いの把握力のことだった。

『撃った数は全部で5発。』

的場は1発目に右斜め上から着弾する弾丸を確認すると左に少し避けて、次に左斜め上から迫る2発目の弾丸を後方に下って回避、次に背後から飛んでくる3発目をバク宙でギリギリ回避するが、着地と同時に飛んでくる4発目が的場の頬をなぞる。
そして最後の5発目を目で捉えると体をぐねりと捻らせ、回し蹴りで弾丸をはじく。

「ハァ.........ハァ.....ハァ.....。」

『計算では3発当てる予定だったが1発か....的場の反応速度を考慮して狙うか。』

バン バン バン........
『今度は7発。』

的場は1発目を捉えようとしたが、今度は的場が見つけるよりも早く弾丸が的場に命中する。

「さぁ、的場!! 思う存分踊ってみせろ!!」

的場は2発目を感覚のようなもので咄嗟に回避し、影縫の背後に回り込むように弧を描いて走る。

「もうその手は読んでるんだよ。」

弾丸は的場を追い掛けるように着弾する。
そのうちに的場の走る速度を越え、1発が的場の右足の足首辺りを貫通する。

影縫は動けなくなった的場に拳銃を向けた。

「終わりだ、的場。」

「いや、俺の勝ちです。」

影縫の立っている床に亀裂が走り、床が抜ける。
影縫は抜けた床と一緒に落ちていった。
そして、弾丸が的場の背後から1発だけ飛んできて、的場の頬すれすれを通過した。

『そうか、初手で倒すの意味はこれだったのか.....。』

的場も影縫も相手の初手を見抜いた。
もし、能力まで使われていたらと考えると少し寒気を感じた的場なのであった。 
 

 
後書き
ちなみに的場の初手は姿勢を低くした時にその床に切り込みみたいなのを入れて、床を脆くしてたんです。 
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