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異世界にて、地球兵器で戦えり

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第二十一話 そして交渉は始まる

帝国ホテル・大和店にて十分な休息を終えた。首脳会議の午後の三時であるため午前は首都大和近辺で自由時間を設ける事になった一向は、島田、宮本、クリストフの同行であえれば自由に大和見物をしても言いとの通達があり、伊丹は早くアカツキ帝国のアニメ・漫画文化の中心地に行きたいと願っていたので、同人ショップを希望して、これに賛同したのがファルマート大陸組でピニャ達も賛同して同行する事をを願った。

ピニャがアカツキ帝国の漫画やアニメに興味を示したのも昨日の夜に、帝国ホテル・大和店の図書室にてBL漫画を読んでその衝撃が凄まじく、ピニャを筆頭とした騎士団は見事にハマってしまったのだった。こうして島田は伊丹やピニャを引率する形でアニメ・漫画・同人誌を中心とした店を回る事になり、宮本・クリストフは、定番な場所を回る為に残りの面々を案内する事になった。このように、様々な場所を回って自由時間を満喫した面々であったが、一人を除いてテンションが下がっていた。


「大丈夫。富田ちゃん?」

「あ、ああ……」

富田は島田と伊丹達のグループに同行していた。自分の好みでもあるボーゼスも一緒に行動するという事もあり、富田は同行したのだが、当然のように富田は同人誌に興味はなく、BLに関しては更に趣味の範囲外である。全くの感性的にノーマルな富田にとって、伊丹や島田の好みはまだ我慢出来ていたが、BLに関しては全くの体性は出来ていなく、BLコーナーに入った時点で既に地雷を踏んだ程の精神的ダメージを食らったのだった。

((合掌))

同人誌好きでもBLは趣味の範囲外である伊丹と島田は、富田の心情を理解しており、二人は同時に心の中でそう呟くのであった。

ーーー。

こうして一行は大和駅周辺に到着しているマイクロバスに搭乗して出発した。それから一時間もかからないうちに目的地に到着した。そこは帝国ホテルとは違う別のホテルであるが、それでも首都大和の高層ビル群の光景を一望できる場所だ。

ホテルの入り口には既に数人の男性が待機している。服装こそ黒いスーツを来た何処にでもいる男性であるが、その雰囲気に一般人でないと逃げる事が得意な伊丹は理解する。警察のSPか軍の特殊部隊の人間だろうと判断した。

「島田義明大尉です。ファルマート大陸の来賓を連れて来ました。」

「ご苦労様です。元帥閣下と日本の首相達は既に会議室にいますよ」

「分かりました。ふう、元帥閣下とのご対面か……緊張するな」

「やっぱりお偉いさんと会議に参加するのは緊張しますか?」

「当たり前だ。特に元帥閣下は、誰もが王様はこうあって欲しいと言う事を体現したような人だからな」

普段は伊丹と同種の人間でもある島田であるが、やはりアカツキ帝国の最高指導者であると同時に最高司令官との対面は嫌でも緊張するようである。

こうして島田達は案内されて、ビルの五階にある会議室に案内された。ドアをノックして、そして会議室の中に入る。

「遠路遥々お疲れ様です。さあ、座ってください。」

丁寧な口調で話すのが、アカツキ帝国の最高責任者である前田健太郎である。そして前田健太郎の隣に座っているのは日本国より来た本位首相である。

(これが、帝国を壊滅寸前まで追い込んだ頂点に君臨する存在!)

ピニャは特に前田健太郎に対して丁寧な口調で喋っているが威圧感を感じて、心臓が止まりそうなくらいに緊張していた。見た目こそ隣に座る本位とは年齢的に若い指導者であるのだが、その風格は前皇帝のモルトと比べ物にならず、現皇帝のゾルザルなど足元にも及ばないとピニャは判断した。そして、ピニャはアルヌス基地にて、アカツキ帝国の兵士達は上から下まで立場に関係なく慕われていた理由を理解した。

これ程の風格を纏い、絶対の自信に満ち溢れて引っ張ってくれる存在に敬意を払うのは当然だと思ったからだ。

(帝国は何もかも負けている……)

最高指導者と出会い、初めてピニャは帝国は化け物の国家と愚かな戦端を開いてしまったと肌で理解したのだった。


「閣下。こちらがファルマート大陸より来られた方々です」

「ロウリィ・マーキュリーよ。死と断罪の神エムロイの使徒よぉ」

「ハイエルフのテュカ・ルカ・マルソーです。」

「私は、レレイ・ラ・レレーナ」

「ブルーム王国第四王女のアナです」

「帝国第三皇女のピニャ・コ・ラーダと申します。こちらに居ますのは私の側近です。」

緊張はしていてもやはり、このようなに各国の指導者や重鎮達と出会う機会も多いピニャは、何とか平常心を保ち噛むこともなく平然とした口調で喋る事に成功したが、内心では心臓はバクバクしているが、そんな内情を表情に出さない所は、流石は皇女といった所だろう。

こうして会議は始まった。アカツキ帝国の要求に関しては既に先陣として交渉している帝国講和派の人間に言ってあるが、それでもピニャに対して伝える。先ずは譲れない要求としては亜人の奴隷解放。そもそもアカツキ帝国が帝国に対する宣戦布告内容であるため、講和するならばこの条件は譲れないと主張した。だが、これに関しても難しい問題を出したと頭を抱えるピニャであった。

そもそも帝国は人間至上主義を掲げている国家であるため、その根底を覆す講和内容を直ぐに飲めるわけもないからだ。それでも、現状のゾルザル支配の帝国が続けばアカツキ帝国と日本という規格外染みた国家に帝国が消滅させられる未来しか想像できないので、そのためピニャは既に帝国の常識が通用しない価値観と武力を持っている国家相手に帝国式交渉術を行えば、二日前にアナに言われた消滅は確実であるため、他の貴族達の反発も強い事を理解したうえで内容を飲むことを伝えた。


「我が帝国は一方的な侵略戦争を始めてしまいました。本当に申しわけありません」

ピニャが頭を下げる。これに対して側近のボーゼスとパナッシュの二人は驚く。帝国の交渉は地球で例えればヤクザの恫喝と同じほど完全な強者主義の交渉であるのに、ここまで低姿勢で臨むピニャに対して驚きが隠せなかった。

「姫様!」

「ボーゼス。今回の戦争は帝国に取って非がありすぎる。それを認めずに謝罪しなければ、それこそ帝国皇族として恥だ」

「ですが!」

「姫様が決めた事だ。大人しくするんだボーゼス」

冷静な口調でボーゼスを宥めるパナッシュ。パナッシュに言われてボーゼスも押し黙る。


「ピニャさん。私は現状の帝国を国家として認めていません。何故だがわかりますか?」

「な、何故ですか!?」

「帝国は戦争法を守っていないからです」

前田の言った事に対して本位が呟く。

「アカツキ帝国と日本は世界こそ違いますが、我が国はこの世界に転移する前の世界で戦争に対する取り決めが行われていました。例え戦争が始まったとしても、戦争に関係ない民間人。負傷者、捕虜、文民といった非戦闘員。文化遺産、歴史的建築物、宗教施設、病院、食料工場といった戦争に関係ない破壊や攻撃を禁止しています。これをアカツキ帝国では転移した現在でも厳守しています。無論、全員が守れるとも思っていませんが、この原則を破った兵士に対しては処罰が下されます」

「そ、それが国家として認められない事と関係が……」

「ファルマート大陸に、このような戦争法の概念がありませんから理解に苦しむかも知れませんが、我が国では、この戦争法を厳守しない国は正式な国家として承認していません。本来なら捕虜となる軍人も犯罪者となってしまうからです」


「帝国軍が犯罪者……」

唖然とするピニャだが、それに対して本位が更なる追い打ちをかける。

「ですが、そう思われても仕方ないのです。帝国はアカツキ帝国に対して宣戦布告も無しにアカツキ帝国に対して海軍をアカツキ帝国本国に向けて侵攻しました。そして我が日本に対しても一方的に戦端を開きました。そのせいで我が国に多数の民間人の被害者が出ているのです。無論、我が国の民間人だけでなく、銀座には我が国に観光で来ていた他国の民間人にも犠牲が出ています。我が国に一部ではありますが、帝国に対する過激な報復を望む声があります。そして他国の人間にも我が国も報復に参加させろとの声が日に日に増しています。」

「他の国も……」

これに対して更に頭が痛くなるピニャ。ただでさえ一国で帝国を滅ぼす事が出来るのに、それは日本の世界の他国が帝国に対して報復を望んでいると聞かされて頭が混乱していた。アカツキ帝国と日本が行った武力は日本の世界では珍しくないとアナに聞かされている。そんな化け物のような武力を持っている各国が帝国に対して報復を望んでいると知ってピニャは、何とか混乱して発狂しそうな心情を隠そうと必死になっていた。

「だが、現在の帝国の惨状を引き起こしたのは前皇帝のモルト、現皇帝のゾルザルです。我がアカツキ帝国としましては、前皇帝モルト及びゾルザルやその重鎮達に、これまでわが国や日本に対して行った責任を取ってもらいます。新たな政権が発足する帝国とは友好関係を築く事を願っています。」

「我が日本もそれを望んでいます。日本は攻撃をしかけなければ武力を行使したりしません」

微笑みながら会話しているが、伊丹からすれば美女相手に男二人が拳銃を眉間に当てながら恐喝しながら交渉しているようにしか映らなかった。そして伊丹は、この会議の後にアカツキ帝国と帝国に対する対策書の修正、または追加に対する対応もやらなければいけないので、ピニャとは別の意味で頭を抱える羽目になった。

(勘弁してくれ……こうなったら対策書を書くだけ書いて俺は知らんぷりだ!)

趣味を優先するために出世街道から外れたはずなのに、自分の予想と斜め上に行く状況に涙目の伊丹であった。

なお、この会議の後に伊丹が書いたアカツキ帝国と帝国に対する追加した対策書で更に的を得た事により、首相の本位にも目が留まり、余計に自分の評価を上がる事になってしまい、自分の予想と外れて更に仕事を増やされて、後に外務省から「異世界の事で困った時の伊丹様」と言われるようになるのであった。

 
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