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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第90話

~トールズ士官学院・1年Ⅶ組~



「早いよね……もう自由行動日か。」

「ええ、もう少し先のようなつもりでいたけど……」

「内戦が終結してからエレボニアどころか西ゼムリア大陸には様々な出来事がありましたからね……時間が経つ事を早く感じるのも仕方ありません。」

エリオットとアリサの言葉に続くようにプリネは静かな表情で呟いた。

「その中でも一番の出来事はやっぱ先月に各国が調印した『西ゼムリア同盟』だよね~。」

「リベール王国のアリシア女王陛下が提唱した『不戦条約』に続く抑止力を持つ新たな平和条約か。」

ミリアムの言葉に続くようにラウラは静かな表情で呟き

「リベール王国、エレボニア王国、レミフェリア公国、クロスベル帝国、メンフィル帝国、ノルド精霊共和国が調印した『国家間で外交問題が発生すれば、必ずその問題を当事者である国家間同士で―――特に武力で解決せず、条約に調印した国家も交えて解決する。』事を謳う条約ですね。」

「『不戦条約』と同様強制力はありませんが、この条約に調印したにも関わらずそれを無視するような事をすれば、その国家は他の国家から白い目で見られ、信用を無くす事になりますからね。」

「しかもゼムリア大陸全土の多くの人々が崇めている”空の女神”―――エイドスさん自身が出席している所で調印された条約なのですから、そう簡単に無視する事はできないでしょうね。」

エマとプリネ、ツーヤはそれぞれ内容を思い出しながら答えた。



「あの条約のお蔭でエレボニアは色々な意味で救われたよな……」

「ええ……特に旧二大国―――エレボニアとカルバードに対して戦争を仕掛けたメンフィルとクロスベルから贈与してもらう予定だったエレボニアの領地の放棄する代わりに各国への”信頼の証”として”戦争回避条約”によってメンフィルとクロスベルに贈与されたエレボニアの領地の一部とザクセン鉄鉱山の鉱山権をそれぞれから12、5%ずつ―――つまり25%もの鉱山権を返還してくれるように嘆願してくれて、それらに二大国が応じて領地や鉱山権の一部が返還された事はエレボニアにとっては様々な意味で助かったでしょうね。」

「加えてあの条約がある限り、他国が衰退したエレボニアに侵略しようと考える可能性を大きく減らせられるしな。」

「ヨアヒムの時でもオリヴァルト殿下達の説明をすぐに信じて援軍を出してくれたし、アリシア女王陛下には何度感謝しても足りないよね。」

「ああ……”百日戦役”からまだ12年しか経っていないにも関わらずエレボニアの為に色々としてくれたしな……」

「フフ、アリシア女王陛下の慈悲深さはわたくし達も見習わなければなりませんわね。」

マキアスとアリサは安堵の表情で呟き、ユーシスは静かな表情で呟き、苦笑しながら呟いたエリオットの言葉にリィンとセレーネはそれぞれ頷いた。



「というかわたしはあの自称”ただの新妻”が各国のVIPが集まる国際会議に出席した事が今でも信じられない。エイドスの事だから絶対嫌がるかめんどくさがって、出ないと思っていたのに。」

「そ、それは……」

「確かに今までのあのエセ女神の行動や言動を考えれば、驚嘆に値するな。あのエセ女神が国際会議に出席した話を聞いた時は天変地異の前触れかと思ったぞ。」

「”女神”のエイドスなら冗談抜きで天変地異を起こせると思うよ、キャハッ♪」

「エ、エヴリーヌさん。」

ジト目になっているフィーの言葉を聞いたリィンは表情を引き攣らせ、ユーシスはジト目でフィーの意見に同意し、口元に笑みを浮かべて呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかいた。



「フフ、エイドスさんもきっと混迷に満ちたゼムリア大陸を少しでも良くする為に出席したのだと思うぞ。」

「え、えっと……実はその事なのですがエステルさんからの便りによるとエイドス様に『西ゼムリア同盟』の調印式に出席して頂く為に、当初ご家族であるアドルさん達と一緒にリベール王国内を旅行していたエイドス様にアリシア女王陛下自らがクローディア姫と共に面会して嘆願したのですが、エイドス様は拒否したそうでして。アリシア女王陛下達は何とかエイドス様を説得しようとしたのですがエイドス様は色々と理由をつけて拒否しようとしたそうなのですが……それを見かねたエイドス様のご両親であられるアドルさんとフィーナ様、そしてアリシア女王陛下達に”仲介人”として依頼されて立ち会ったエステルさんが説得して”渋々”出席する事を決められたそうです。」

ガイウスの言葉を否定するかのようにプリネが苦笑しながら答えるとその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「し、”渋々”って……」

「混迷に満ちたゼムリア大陸が平和になる切っ掛けとなる調印式ですのに……」

「やっぱりそんな事だろうと思っていたよ。」

「”女神”の面汚しだな。」

「アハハ、どうせエイドスの事だからアリシア女王達の嘆願を拒否する時『何で”ただの新妻”の私がそんなめんどくさい会議に参加しなければならないんですか』とか言って、アリシア女王達を困らせたんじゃないかな~?」

「”困らせた”で済む問題じゃありませんよ、ミリアムちゃん……」

「しかもその拒否の言葉も一言一句間違っていなさそうで、洒落になっていないぞ……」

アリサはジト目になって呟き、セレーネは疲れた表情をし、フィーとユーシスは呆れた表情で呟き、無邪気な笑顔を浮かべるミリアムにエマとマキアスは疲れた表情で指摘した。



「ねえねえ、プリネ。エステル達がエイドスを説得したって言っていたけど、エステルがどうやってエイドスを説得したの?どうせエステルの事だから、普通じゃないやり方で説得したんでしょ♪」

「エ、エヴリーヌさん。」

「え、えっと…………『出席しなかったら元の時代に帰るまでずっとエイドスの事を超ひいお祖母(ばあ)ちゃんって言う』という言葉がエイドス様にとって相当効果があったようでして。それだけは止めて欲しいとエイドス様が涙目になってまでエステルさんに嘆願したそうですから、恐らくそれが決定的になったかと思います。」

エヴリーヌの疑問を聞いたツーヤが冷や汗をかいている中、プリネが真相を語るとリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そ、そんな理由の為だけに……」

「”女神”なのだから恐らく相当な年月を生きて来ただろうに、そこまでして年寄り扱いされたくない思考が理解できんな。」

「ま、まあまあ。エイドスさんも女性なのですし、頭で理解はしていても”一人の女性として”気にしておられるのですよ。」

「くふっ♪”女神”を涙目にさせるなんて、さすがはエステルだね♪」

アリサは疲れた表情で呟き、ジト目で呟いたユーシスにエマは苦笑しながら諌めようとし、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべ

「ニシシ、”空の女神”の弱点発見だね~♪」

「今度会った時エイドスの事を年寄りの人に対する呼び方で呼んだらどんな反応をするか試してみよう。」

「そんな事をして、エイドスさんから”天罰”を降されても知らないからな。」

「エイドスさんは本物の女神様だから本当に”天罰”とかできそうだものね……」

「実際オーロックス峡谷の時に領邦軍に”天罰”としてロストアーツを放った上、アルバレア元公爵にも膨大な霊力(マナ)による攻撃を叩き込みましたし……」

それぞれエイドスに対する悪戯を思いついたミリアムとフィーの話を聞いたマキアスは呆れた表情で指摘し、エリオットは困った表情をし、エマは疲れた表情で呟いた。



「ま、まあ実際にエイドスさんが参加してくれたお蔭で、『西ゼムリア同盟』が持つ抑止力が高まったからよかったじゃないか。」

「うむ。理由はどうあれ調印式に出席をして貰い、『西ゼムリア同盟』の抑止力を高めてくれた事に感謝すべきだろう。」

苦笑しているリィンの指摘にラウラは頷き

「でも意外だったよね。あの条約で”戦争回避条約”で贈与されたエレボニアの領地の一部とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部を返還する事になるからメンフィルとクロスベルにとっては損をする事になるのに、どっちとも認めてくれたし。」

「まあ、メンフィルはその代わりに”元ノーザンブリア公国という広大な領地”を手に入れたけどね~。」

エリオットの話を聞いたミリアムは意味ありげな笑みを浮かべてプリネ達を見つめた。



「それは……」

「でもそっちの方が”ノーザンブリア”って所にとってよかったんじゃないの?」

「……『西ゼムリア同盟』の条約内容の中には『”猟兵”達の雇用の禁止』という一文がありましたからね。ノーザンブリアの民達は猟兵達の稼ぎによって生活しているのですから、そのような内容の条約が調印されれば少なくても西ゼムリア大陸ではほとんど活動できない上稼ぎも当然減り生活が更に困窮する事になりますが、メンフィル領となる事でメンフィルの加護を受ける事ができるのですからノーザンブリアが長年抱え込んでいた貧困問題は解決できますからエヴリーヌお姉様の言っている事は間違ってはいませんね。」

ミリアムに視線を向けられたツーヤは複雑そうな表情をし、エヴリーヌの疑問にプリネは静かな表情で答え

「あの条約によって領地の一部やザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部が返還される事もそうだが”百日戦役”の勃発となった原因である”ハーメルの悲劇”と”西ゼムリア通商会議”で猟兵達に”帝国解放戦線”を処刑させてクロスベルの弱味を握ろうとした件、そしてメンフィル帝国との戦争勃発の原因である父―――アルバレア元公爵による”ユミル襲撃”。そのどれも全てが”猟兵”が関わっていた上その全てをエレボニアが引き起こし、リベールに対して返し切れぬほどの”借り”があるエレボニアは反対ができる立場でない所か、どの国家よりも逸早く賛成しなければならない立場だったからこそ、ユーゲント陛下はすぐに調印すべきだと判断されてあの条約をリベールが提唱してから、わずか二日という異例の速さでエレボニアはあの条約に全面的に賛成であるという事を公表されたのであろうな。」

「クロスベルもディーター・クロイス元大統領が自作自演の為に雇った”猟兵”達による襲撃事件がありますから、少なくてもエレボニアとクロスベルは反論しにくい立場である事を理解した上で、アリシア女王陛下は条約内容に猟兵達の雇用の禁止を入れられたのかもしれませんね。」

「それにリベールは元々国内での猟兵達の雇用を禁止していたからね~。猟兵達を嫌うリベールにとっては猟兵達の国といってもおかしくないノーザンブリアがメンフィルに保護される事で猟兵としての活動をする必要もなくなるから、反論しにくい上実際ディーター・クロイスのせいで経済恐慌が起きた後の今の状況でノーザンブリアを保護できるくらい余裕がある国はメンフィルかクロスベルしかいないから最終的には認めたんだろうね~。」

ユーシスとエマ、ミリアムはそれぞれの意見を口にした。



「ですが幾ら合法的な方法でメンフィル領となった事でメンフィル帝国から加護を受けられる立場になっても、ノーザンブリアの方々にとってはショックな出来事でしょうね……」

「メンフィルが『西ゼムリア同盟』の条約内容を盾にノーザンブリアをメンフィル帝国領化する主張をしたのは、もしかしたらユミルが”北の猟兵”達に襲撃されたからその”報復”かもしれないな……」

「……………ま、でも話によるとメンフィルがノーザンブリアの人達の面倒を見てくれているお蔭でノーザンブリアの人達の生活が随分マシになっているって話なんだから、別にいいんじゃないの?――――サラも全然気にしていないみたいだし。」

「あ…………」

セレーネとリィンは複雑そうな表情で呟き、フィーが呟いた言葉を聞いたアリサはサラ教官の故郷が”ノーザンブリア自治州”である事を思い出し、辛そうな表情をした。



「え、えっと……その件は置いておいて、メンフィルとクロスベルも変な事をしたよね。」

「”変な事”というと……―――あ。」

「……………………」

重々しくなった空気を変える為に口にしたエリオットの話を聞いたマキアスは呆けた後静かな表情で黙り込んでいるガイウスに視線を向け

「――――”ノルド精霊共和国”。クロスベル同様領有権問題があった”ノルド高原”を独立させた件か。」

ユーシスは静かな表情で呟いた。

「確か話によるとクロスベルの”二大皇帝”の一人―――ギュランドロス皇帝が自分達やその子供達の代ではノルド高原についての領有権争いをするつもりはないが、自分達の子孫は争うかもしれないから今の内に領有権争いになっていたノルド高原を独立させるべきとの事だったそうだが……」

「しかもそのノルド精霊共和国の”元首”はリザイラ―――ううん、”リザイラ精霊女王”だものね……」

ラウラの話に続くように呟いたエリオットはリィンに視線を向けた。

「ふふふ、呼びましたか?」

するとその時リザイラが転移魔術でリィンの傍に現れた。


「わわっ!?」

「ビックリした~!」

「というかもしかしてタイミングを見計らって現れたんじゃないの?」

リザイラの登場にエリオットとミリアムは驚き、フィーはジト目でリザイラを見つめ

「ハハ……まだ二日しか経っていないのにもう帰って来て大丈夫なのか、リザイラ?確かノルドの用事とメンフィルから依頼された件で戻って来るのに、数日はかかるって言っていたけど……」

「ええ。ノルドの用事の方は高原各地にそれぞれ住むノルドの民達の代表者と私の部下達―――イフリート達との顔合わせだけでしたから。ああ、後はノルドの地とエレボニアの地の国境を守る兵達の新たな責任者との顔合わせもですね。」

リィンの問いかけにリザイラは静かな表情で答えた。



「えっと……それだけですか?”国”になったのですから色々とやる事があると思うのですが……」

「うむ。リザイラ―――いや、リザイラ精霊女王陛下はノルドの元首なのですから、元首として多忙になるものだと我々も思っていたのですが……」

「私が望むのは人々が緑溢れたあの地で自然と精霊と調和して暮らし続ける事なのですから、特に何かを変えたいとは思っていませんし、自然や精霊達を脅かすような事をしない限り私はノルドに住まう人間達のする事に口出しするつもりはありません。―――それと呼び方や接し方は以前と同じで構いませんよ。精霊王女―――いえ、精霊女王たるこの私を今まで敬うような事をしてこなかった貴女達が今更そのような事をすれば天変地異が起こるかもしれませんので。」

リザイラの答えを聞いたエマは戸惑いの表情で尋ね、ラウラの問いかけに答えたリザイラは静かな笑みを浮かべてリィン達を見回した。

「よくそんな事が言えるわね……その天変地異を起こすのは貴女の方でしょうが。」

「実際リザイラは雪崩を発生させたり、竜巻を巻き起こしたりしたことがあるしな……」

アリサはジト目でリザイラに指摘し、マキアスは疲れた表情で今までの事を思い返し

「まあ天変地異くらい起こせないと”精霊女王”と言えないもんね。」

「”精霊女王”と言えばフィニリィさんもそうですが、もしかしてフィニリィさんもできるのでしょうか?」

「う、う~ん……多分できると思うけど……」

エヴリーヌは静かな表情で呟き、ツーヤの疑問を聞いたプリネは困った表情をしたが

(失礼ですわね!そのくらいの事、私にとっては容易い事ですわ!)

(わ、わかったから大きな声で念話を送らないで。)

自身の中で憤っているフィニリィの念話を聞くと苦笑し始めた。



「…………リザイラ、ずっと聞こうと思っていたんだが本当に独立したノルドの地の元首になってよかったのか?」

「ガイウス……」

リザイラを見つめて問いかけるガイウスをリィンは心配そうな表情で見つめ

「最初にその話を持ち掛けられた時、正直私は断るつもりでした。ですが時代が変われば、いつか必ずあの緑豊かな素晴らしい自然を手に入れようとする愚か者達が現れるというクロスベルの皇帝の言葉を聞いて考え直しました。自然や精霊達、そして彼らと調和して共に生きる人々の生活がこれからも維持できるようにする事もあの地を管理していた精霊王女―――いえ、”精霊女王”たる私の役目です。ですからあの素晴らしい緑溢れた地の平和を保つ為にも、受ける事にしたのですよ。」

「リザイラさん……」

「ほえ~……何だか今のリザイラ、王様っぽいよね~。」

「”ぽい”ではなく、元々精霊族の”本物の王女”だったろうが、阿呆。」

「フフ、ずっと気安い間柄で接していましたから、ミリアムさんの反応も仕方ないかもしれませんわね。」

リザイラの答えを聞いたプリネは驚き、呆けた表情をしているミリアムにユーシスは呆れた表情で指摘し、セレーネは苦笑していた。



「ノルドの為に本当にありがとう………―――そして改めてよろしく頼む。」

「ふふふ、私は”精霊女王”として当然の事をしただけで別に礼を言われるような事はしていないのですがね。――――それよりも、メンフィルから依頼された件の関係でノーザンブリアとやらの大地を見て来ましたが……まさかあれ程までに酷い大地がこの世に存在するとは思いませんでした。」

ガイウスに感謝されて静かな笑みを浮かべたリザイラだったがすぐに表情を戻して答えた。

「ええっ!?メンフィルの依頼って、ノーザンブリアに関係する事だったの!?」

「一体どのような依頼をメンフィルからされたのだ?」

リザイラの答えを聞いたエリオットは驚き、ラウラは真剣な表情で尋ねた。



「”塩の杭”とやらに滅びたノーザンブリアの地の自然を復活させる事です。」

「し、自然を復活させるって………!」

「め、滅茶苦茶過ぎるだろう……」

「確かノーザンブリアの大地の大半は”塩の杭”の呪いによって作物どころか、草木一本生えない塩の大地と化しているという事ですが……幾らリザイラさんが”精霊王”だからと言っても、さすがに滅びた大地を元通りにする事はできないと思うのですが……」

リザイラの話を聞いたアリサは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情をし、エマは不安そうな表情で呟いた。

「ふふふ、”精霊女王”を甘く見てもらっては困ります。リスレドネーの精霊達と共に”初源の歌”を奏でれば滅びた大地も時間をかければ、復活させる事は可能です。」

「しょ、”初源の歌”!?”大崩壊”によって破壊された大地を憂いた精霊達が歌い、破壊された大地を蘇らせたというあの伝説の歌をリザイラさん達は奏でる事ができるのですか!?」

リザイラの口から出た驚愕の答えを聞いたエマは信じられない表情で声をあげ

「そう言えば……以前リザイラ達が俺達やノルドの民達を襲おうとしていた貴族連合軍を殲滅した後、戦闘によって荒れ果てたノルドの地を復活させたな……」

「ああ……オレは今でも鮮明に覚えている。」

「まさに”奇蹟”を見ているみたいでしたわよね……」

リィンとガイウス、セレーネはかつての出来事を思い出していた。



「ちなみにどうしてメンフィルの依頼を請けたの~?」

「今のお前は曲がりなりにも”国家の元首”。ノルド精霊共和国の元首であるお前がメンフィルの依頼を請ければ、ノルド精霊共和国はメンフィル帝国の属国だと思われてもおかしくないぞ。」

ミリアムの質問に続くようにユーシスは真剣な表情で指摘した。

「私は対等な取引をしたまで。ですからそのような心配をする必要はありませんよ。」

「と、”取引”ですか……?」

「私達も初耳ですが……一体どのような対価をリザイラさんはお父様達に提示したのですか?」

リザイラの答えを聞いたツーヤは戸惑い、プリネは不思議そうな表情で尋ねた。



「もしノルドの地を侵略しようとする愚か者達が現れた際、メンフィルが無条件で援軍を出し、ノルドの地を守る事です。無論メンフィルが派遣した援軍の総指揮権は私という事も了承してもらっています。」

「ええっ!?ど、どうしてそのような事を……?ノルド精霊共和国も『西ゼムリア同盟』に調印したのですから、他国から侵略を受ける可能性は低いと思うのですが……」

リザイラの答えを聞いた仲間達と共に驚いたセレーネは驚きの表情で尋ねた。

「時が流れれば人々は変わり、考えも変わります。それは国の”皇”も同じ事。ノルドと隣接しているエレボニアとクロスベルの現代と次代の皇はあの条約を無視し、ノルドの地を侵略しよう等という事を考える可能性はほぼないでしょうが………その子供、子孫の代になればわかりません。」

「そ、それって……」

「……リザイラはエレボニアやクロスベルがいつか、『西ゼムリア同盟』を無視してノルドを侵略するかもしれないと思っているのか?」

リザイラの話を聞いてある事を察したエリオットは不安そうな表情をし、リィンは複雑そうな表情で尋ねた。



「ええ。対して遥かなる時が過ぎようとメンフィルには”今”―――当時を知る”魔神”や”神格者”、そして長寿の異種族達の皇族達がいるのですからこちらが出した条件を守ってくれる可能性は高いでしょうから、ちょうどよかったのです。しかもメンフィルは”全ての種族との共存”を謳う国。その中には当然”精霊”も入っていますから、精霊達の女王の一人たるこの私とした取引内容を違える可能性は低いでしょう?」

口元に笑みを浮かべたリザイラがリィン達に問いかけるとリザイラの狡猾さを知ったリィン達全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「まさかメンフィルの理想まで利用するなんて、恐れ入りました……」

「精霊って自然の事以外興味ないと思っていたけど、意外と黒いね、キャハッ♪」

我に返ったプリネは苦笑し、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべた。



「―――話を戻しますがノーザンブリアの地は余りにも酷い大地でした。あの大地を元の大地に戻す為に”初源の歌”で祝福を与えても、相当な年数がかかりますね。」

「……リザイラ達――――精霊達の力でもノーザンブリアの地を元通りにする為には時間がかかるのか……」

「でも、”時間がかかる”だけで”できない”じゃないから、充分凄いと思うけど。」

「そうだよね~。ちなみにどのくらいかかるの?」

リザイラの話を聞いたガイウスは重々しい様子を纏って呟き、フィーの言葉に頷いたミリアムはリザイラに尋ねた。

「そうですね……”初源の歌”は精霊達にも相当な負担をかけますから、精霊達の命の支障がないように定期的に奏でても恐らくあの地の大地を完全に復活させるには、長く見積もって10年前後と言った所でしょうか。」

「じゅ、10年!?たったそれだけの年数で何とかなるのか!?」

「たった10年で滅びたノーザンブリアの大地を甦せるなんて……」

「精霊達の力が偉大である証拠ですね……」

「ここにも非常識の塊がいたな。」

「ハハ……」

リザイラの答えを聞いたマキアスとエマは驚き、ツーヤは真剣な表情で呟き、ジト目で呟いたユーシスの言葉を聞いたリィンは苦笑していた。



「しかし何故わざわざノルドを他国からの侵略を守る為にメンフィルの力が必要なのだ?リィン達の話によれば内戦時にそなた達の力だけで”機甲兵”に加えて空挺部隊も所有していた貴族連合軍を圧倒したと聞いたが。」

「ふふふ、貴女達がそれを私に言うのはおかしいのでは?何せかつて”精霊王女”であったこの私に人に与えられた力は時には精霊をも超える事を証明して見せたのですから、いざという時の為に人の力も頼る事は当然かと思うのですが?」

ラウラの問いかけに意味ありげな笑みを浮かべて問いかけ返したリザイラの答えを聞いたリィン達――――以前ノルド高原での”特別実習”の間にリザイラと戦った事があるメンバーはそれぞれ冷や汗をかいて気まずそうな顔をしてリザイラから視線を逸らした。

「フフッ、理由はどうあれ滅びた大地が甦る事はノーザンブリアの人々にとっては嬉しい事だろうな。」

「はい……!きっとサラさんも喜ばれるでしょうね……!」

「でも、ノーザンブリアの大地が甦った事でサラがノーザンブリアの人達と一緒にメンフィルからの独立を主張して、反乱を起こすかテロを起こしたりするかもしれないね。」

ガイウスの言葉にセレーネは微笑みながら頷いたが、フィーが静かな表情で呟いた言葉を聞くとリィン達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「洒落にならない事を言わないで下さいよ……滅びた大地に自然が甦って豊かになった事で、なし崩しにメンフィル領になった事に不満を持っていたノーザンブリアの民達が反乱を起こす可能性やテロを起こす可能性は十分に考えられるのですから……」

「え、えっと……さすがに遊撃士に復職するサラ教官がそんな事に加担しないと思うんだけどなぁ……」

疲れた表情で頭を抱えているプリネにエリオットは困った表情で慰めの言葉を送った。

「さて。そろそろ私は失礼させてもらいます。ご主人様。」

「ああ。お疲れ、リザイラ。」

そしてリザイラはリィンの身体の中に戻った。 
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