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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第49話

同日、14:00――――



ウォレス准将率いる帝都防衛部隊の降伏、そしてヘイムダルの奪還はトリスタに待機している”紅き翼”の面々にも伝えられていた。



~カレイジャス・ブリッジ~



「―――以上の事からしてウォレス准将が無血開城した為、正規軍、貴族連合軍双方共に被害を出さずにヘイムダルを奪還しました。ただ先程も説明しましたようにカイエン公や残りの貴族連合の部隊、そして貴族連合によって人質にされた貴族の家族の方々の行方は不明です。」

「そうですか…………問題はまだまだ残っているという事ですね。」

「ですがとりあえずこれで内戦を終結させた事にもなりますわ……」

モニターに映るクレア大尉の報告を聞いたセドリック皇太子は重々しい様子を纏って呟き、アルフィン皇女は安堵の表情で呟いた。

「それにしてもまさかウォレス准将が自ら降伏を申し出るとはな……」

「予想外。”黒旋風”は”黄金の羅刹”同様”戦闘凶”って言われているのに。」

「それに自らを犠牲にしてまで、部下の方達を守ろうとしていたなんて……部下思いな方でもあるのですのね。」

「ああ……犠牲を出す事なく、帝都を解放できて本当によかった……」

ラウラは重々しい様子を纏って呟き、フィーは目を丸くし、セレーネは複雑そうな表情で呟き、リィンは安堵の表情で溜息を吐いた。



「だが……肝心の”主宰”であるカイエン公を拘束していないのだから、まだ安心はできんだろう。」

「しかも残りの貴族連合の部隊もどこにいるかわからないしな……」

真剣な表情で考え込んだユーシスの言葉に続くようにマキアスは不安そうな表情をし

「それにパトリック君達――――貴族連合に人質にされた貴族の家族の人達もどこに幽閉されているんだろう……?」

「みんな、無事だといいのだけどね……」

「……カイエン公は”尊き血”を重要視しているから、幾ら何でも彼らには危害を加えないと思うのだが……」

トワとジョルジュがそれぞれ不安そうな表情をしている中、アンゼリカは真剣な表情で考え込んだ。



「―――煮え切れない結果となったが、帝都を奪還した事で内戦は一応終結した事になる。―――おめでとう。これでエレボニアは存続できる事になったよ。」

「おめでとうございます。これで”戦争回避条約”によって設けられた猶予期間は守られた事になり、メンフィル・クロスベル連合もエレボニア侵攻を完全に中止し、エレボニアと和解をするでしょう。」

「私からも祝福の言葉を送らせて頂きますわ。―――おめでとうございます。士官学院生の身でありながら内戦終結に大きく貢献したのは、皆さんが歴代初かと思われますわ。」

「フフ、ドライケルスも貴方方の事を誇りに思っているでしょう。」

パントやルイーズ、そしてシグルーンとリアンヌはリィン達に称賛の言葉を送り

「戦争が回避できてエレボニアが存続できるようになったのは嬉しいけど……」

「まだ解決していない問題がたくさんあって、全然喜べないよね……」

「”結社”を失って行き場を無くした姉さんは今頃どこで何をしているのかしら……?」

「……………………あの女の事だから、くたばってはいないでしょう。」

パント達の称賛の言葉を聞いたアリサとエリオットはそれぞれ複雑そうな表情をし、心配そうな表情で呟いたエマの言葉を聞いたセリーヌは複雑そうな表情で自身の推測を口にした。



「そう言えば……”戦争回避条約”にカイエン公の身柄をメンフィルに引き渡す内容があるが、この場合どうなるのだ?」

「あ…………ま、まさか守れないからという理由で再び侵攻するのでしょうか……?」

ガイウスの疑問を聞いてある事に気付いたエリスは不安そうな表情でパント達に尋ね

「いや、その心配は無用だ。君達も知っての通り『メンフィル帝国が定めた期間以内に内戦を終結させて残りの全てを実行するのならば、メンフィル帝国はエレボニア帝国に対する侵略行為を中止し、和解にも応じる。』とあるが……内戦が終結した後ならば、例の”救済条約”で先に相殺された内容以外の条約に関しての期間は特に指定していない上、しかも実行できないと言っても”犯罪者”の引き渡しができないだけならばリウイ陛下達も大目に見てくれるだろうし、必要なら私からとりなしておこう。」

「私もリフィア殿下にとりなおしておきますわ。」

「ならば私の方からもリウイ陛下にとりなしておきます。今回の件はかつての我が同胞―――”蒼の深淵”も深く関わっていたのですから。」

「………ありがとうございます。必ずカイエン公を拘束し、メンフィルに引き渡す事をお約束しますのでリウイ陛下達のとりなし、どうかよろしくお願いします。」

「他の条約に関しましてはお父様達が復帰し、停止していたエレボニア政府が再開をした近日中に実行する事をこの場で確約致しますので、どうかよろしくお願いしますわ。」

パントやシグルーン、リアンヌの申し出を聞いたセドリック皇太子とアルフィン皇女は頭を深く下げた。



「これでメンフィルやクロスベルの件は気にせず国内の残った問題の解決に集中できるわね。」

「はい。―――行方がわからないカイエン公と貴族連合の部隊の拘束、そして貴族連合に幽閉されたパトリック達の救出ですね。」

「一体どこにいるのでしょう……?」

サラ教官の言葉にリィンは頷き、エリスは不安そうな表情で考え込んだ。

「―――デュバリィの話では士官学院を守っていた兵士達を率いる者が”グノーシス”を持っていたとの事。その事を考えると恐らく行方がわからないカイエン公や残りの貴族連合の部隊は……」

「”ルバーチェ”のようにヨアヒム・ギュンターの傀儡になった可能性が高いわね。問題は傀儡にした貴族連合をどうするつもりかね……傀儡にした貴族連合を使ってクロスベルに侵攻とかしたら、また国際問題に発展するかもしれないわね。」

リアンヌの推測の続きを答えたサラ教官は厳しい表情で考え込み

「まあ、そうならないようにガレリア要塞跡に部隊が残してあるから大丈夫のはずだよ。そうだよね、クレア?」

サラ教官の疑問に答えたミリアムはモニターに映るクレア大尉に尋ねた。



「ええ、ガレリア要塞にはクレイグ中将が残した”第四”の部隊の一部に加えて”鉄道憲兵隊”も配備していますし、クレイグ中将は明日には解放された帝都の防衛等についてはゼクス中将に任せてガレリア要塞跡に帰還する手筈になっていますから例え残りの貴族連合の部隊がクロスベルに侵攻しようとしても、援軍が来るまでに食い止められます。」

「あの……そもそも何故貴族連合を傀儡にしたヨアヒム・ギュンターがクロスベルに侵攻すると確信しているんですか?」

「そ、そう言えばそうですわよね……?」

リィンの疑問を聞いたセレーネは戸惑いの表情で頷き

「多分”キーア”って人物がクロスベルにいるんじゃないの?カレル離宮でもその人物の名前を口にしていたし。」

「―――確かに言っていたな。”真なる神”がどうとか訳のわからんことを言っていたが。」

「それにエイドスさんの命も奪うって言っていたからな……」

「そういえばエイドス殿は今はクロスベルだったな……だからかもしれんな。」

フィーの推測を聞いたユーシスは静かな表情で頷き、マキアスは不安そうな表情で呟き、ラウラは真剣な表情で考え込んだ。



「―――いえ、クロスベルに侵攻するとしたら一番の狙いは”キーア”の筈よ。ヨアヒム・ギュンターはその為にマルコーニや当時の警備隊の司令にグノーシスを投与させた”ルバーチェ”やクロスベル警備隊を操ってクロスベル襲撃事件を起こしたのだからね。エイドスの殺害はそのついでだと思うわ。」

「教官?何か知っているのですか?」

サラ教官が明確な答えを説明するとガイウスは不思議そうな表情で尋ねた。そしてサラ教官はキーアやヨアヒム、そして”D∴G教団”の関係について説明した。

「”D∴G教団”が崇めている”御子”、ですか。それならばそのキーアさんという方を確保する為に、クロスベルに攻め入る可能性も高いでしょうね。」

「しかも”特務支援課”の人達がその子の保護者をしているなんて……」

事情を聞き終えたエマは真剣な表情で考え込み、アリサは不安そうな表情をしていた。

「し、しかし……その”キーア”、だったか?500年以上前の人物だなんて、そんなのありえなくないか?」

「フン、250年前の人物が今目の前にいるのだから、ありえてもおかしくないと思うがな。」

「確かに言われてみればそうだよねぇ?」

「ア、アンちゃん!」

「ハハ………」

マキアスの意見に否定したユーシスはリアンヌに視線を向け、ユーシスの言葉に口元に笑みを浮かべて頷いたアンゼリカの答えを聞いたトワは慌て、ジョルジュは苦笑し、リィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「え、えっと………―――クレア大尉、”情報局”は行方がわからないカイエン公達について何か掴んでいないのですか?」

「あ、それにレクターはどうなったの?”碧の大樹”も消えたし、もうクロスベルから戻って来ている頃だよね?」

気を取り直したセドリック皇太子の質問に続くようにミリアムもモニターに映るクレア大尉に質問した。

「申し訳ありませんが情報局もまだ何も掴んでいないようでして……現在調査中との事です。それとレクターさんは昨日クロスベルから帰還しましたが、事情を聞いた後再びクロスベルに向かいました。」

「え……何故でしょうか?」

クレア大尉の説明を聞いたエリスは呆けた後尋ねた。

「クロスベルに滞在している”空の女神”―――エイドス様に”新型のグノーシス”を投与された者達の治癒の為に協力してもらう交渉とクロスベル政府にウルスラ病院に保管されてある”グノーシス”の解毒薬の提供等の交渉をする為です。」

クレア大尉の答えを聞いたリィン達はそれぞれ血相を変えた。

「そう言えば”グノーシス”を投与された場合の問題があったわね……」

「はい……話によると”新型のグノーシス”を投与されて、巨大な魔人へと化した方を救えるのは女神様だけだとの事ですし……」

サラ教官の言葉にアルフィン皇女は不安そうな表情で頷き

「で、ですがその”グノーシス”、ですか?”魔人化(デモナイズ)”を解毒する薬をどうしてクロスベルにある病院に保管されてあるのでしょうか?」

「アタシもそれに関して疑問を持っていたわ。”魔人化(デモナイズ)”の解毒薬なんてどう考えても”聖水”の類じゃない。教会ならまだわかるけど、何で病院にそんなものが保管されてあるのよ?」

ある事が気になっていたエマは戸惑いの表情で尋ね、セリーヌは眉を顰めて尋ねた。



「ギルド関係者に聞いた話だと、かつて”特務支援課”に所属していた”匠王”の娘達が開発して、襲撃事件の後”グノーシス”を投与された人々の治療を少しでも早める為にその娘達がウルスラ病院に開発した”グノーシス”の解毒薬の製法を教えたから保管されてあるそうよ。」

「ええっ!?”匠王”って、以前僕達が異世界に行った時に僕達の武具を創ってくれた人ですよね!?」

「それもウィルさんではなく、その娘の人達がそのようなとてつもない薬を開発していたのか……」

「しかも”特務支援課”に所属していたなんて……!」

「武具だけでなく、薬の調合までできるとか”工匠”ってできる分野が広すぎでしょう……」

サラ教官の説明を聞いたエリオットやガイウス、リィンは驚き、アリサは疲れた表情で呟いた。

「それにしてもディオン卿のご息女であられる方達も”工匠”としての腕前も凄まじいですね……」

「ああ。16歳にもなっていないのに、そのような凄まじい効果を秘めた薬を開発できるなんて、普通なら考えられないしね。」

「じゅ、16歳にもなっていないって……!その人達、一体何歳なんですか!?」

パントとルイーズの会話を聞いていたマキアスは信じられない表情で尋ねたが

「マキアス、そなた……」

「年齢は女性に対する禁句ですわよ……」

「ちょっ!?というか普通に考えて誰でも気になるだろう!?」

厳しい表情をしたラウラと呆れた表情をしたセレーネに見つめられると焦った表情をした。



「フフ……――――ウィル殿のご息女の方達の年齢についてですが、姉が15歳、妹達は14歳との事です。」

「じゅ、15歳に14歳!?そんな幼い娘達がそんなとんでもない薬を開発したの!?」

「私や姫様達よりも年下ですね……」

「フッ、どんな娘達なのか、非常に気になるねぇ?」

「もう、アンちゃんったら……」

「ハハ、まあこれがアンだからね。」

リアンヌの話を聞いたアリサは驚き、エリスは目を丸くして呟き、興味ありげな様子でいるアンゼリカを見たトワは呆れ、ジョルジュは苦笑していた。



「フフ、確かに年齢はまだ幼い方達ですが、見た目は正直大人と言ってもおかしくありませんよ?」

「あ、そう言えばクレアは”匠王”の娘達に依頼する為に直接会った事があるんだったよね?だったら顔見知りのクレアも行った方がよかったんじゃないの~?”グノーシス”の解毒薬の”開発者”である匠王の娘達の協力も必要だと思うし。」

「へ……」

「何だと!?」

ミリアムが呟いた意外な事実を知ったマキアスは呆け、ユーシスは驚きの表情で声をあげ

「フフ、それは私も考えましたけどヨアヒム・ギュンターが貴族連合を使っての襲撃に備える為に私もエレボニアに残るべきだとレクターさんに言われましたので、エレボニアに残る事にしたのです。」

クレア大尉は苦笑しながら答えた。



「まさかこのような身近な所で話にあったウィル殿のご息女達と面識がある人物がいたとは……」

「”依頼”って言っていたけど、何の依頼をしたの?」

ラウラは目を丸くしてクレア大尉を見つめ、フィーは不思議そうな表情で尋ねた。

「大した内容ではありませんよ。武器の改造と、私が使っている”ミラーデバイス”の改造です。」

「ったく、まさかそんな事をしていたなんてね……―――もしかしてレクター少尉がクロスベルに交渉に向かったのは”匠王”の娘達に、既存のグノーシスの解毒薬の量産や”新型のグノーシス”に対する解毒薬の開発に関する交渉もする為かしら?」

「ええ、彼女達にも交渉するとレクターさんも言っていましたから間違いないかと思います。―――それではまた情報が入りましたらお知らせしますので私はこれで失礼します。」

そして通信を終えたクレア大尉はモニターから姿を消した。



「―――セドリック殿下、アルフィン殿下。既にメンフィル帝国も帝都の解放についての情報を手に入れていると思われますが、まずは殿下達自身の口から正式に内戦が終結した事についてメンフィル帝国に報告するべきだと思うのですが、いかがでしょう?」

「そうですね……カイエン公をまだ捕えていない事等についての件もありますし、すぐに報告して事情を説明した方が良さそうですね。」

シグルーンの提案にセドリック皇太子は頷き

「ええ……!お父様達もきっとお喜びになるでしょうね♪」

「まあ、プリネ達の事だからもう知らせているかもしれないけど。」

「フィ、フィーちゃん。」

嬉しそうな表情をしているアルフィン皇女に指摘するフィーを見たエマは冷や汗をかいた。するとその時何かの音が聞こえて来た。



「これって……導力通信のコール?」

「リンデ、どこからよ?」

「えっと、ちょっと待ってね。―――え……バリアハートのクロイツェン州統括領主の城館から来ているみたいよ。」

「へ…………」

「――――バリアハートのクロイツェン州統括領主の城館というと、恐らくプリネ達だろうな。」

通信士を務めている士官学院生の報告を聞いたマキアスは呆け、ユーシスは静かな表情で推測した。

「こんな絶妙なタイミングで通信だなんてたまたまかな……?―――皇太子殿下、皇女殿下。いかがなさいますか?」

戸惑いの表情で考え込んでいたトワは気を取り直してセドリック皇太子達に尋ね、二人はそれぞれ目を合わせて頷いた後セドリック皇太子が答えた。

「勿論繋いでください。」

「わかりました。―――スクリーンに転送して!」

セドリック皇太子の指示に頷いたトワの指示によって再びスクリーンがリィン達の目の前に現れ、スクリーンにプリネが映った。



「あ……プリネ……!」

「―――お久しぶりです、皆さん。まずは内戦を終結させた事……おめでとうございます。先程お父様―――リウイ陛下からメンフィル・クロスベル連合はエレボニアが”戦争回避条約”の猶予期間内に内戦を終結させた為、エレボニア侵攻を完全に中止したとの連絡がありました。」

「え……それは本当なのか!?」

プリネから伝えられた話に呆けたリィンは明るい表情で尋ねた。

「はい。バリアハートの城館の客室で滞在しておられるユーゲント皇帝夫妻にも既に知らせてあります。」

「よかった……本当によかった……!」

「姫様……こちらをお使いになって下さい。」

「グスッ……ありがとう、エリス。」

プリネの答えを聞いた瞬間涙を流して安堵の表情をしているアルフィン皇女にエリスはハンカチを渡し、アルフィン皇女は渡されたハンカチで涙をぬぐった。



「悪いわね、本当ならこっちから出向いて説明するべきなのにわざわざ知らせてくれて。」

「いえ、私も皆さんの”仲間”として少しでも早く知らせたかったですから気にしないで下さい。―――それよりも、”クロスベル帝国”建国以降行方がわからなかった”蒼の深淵”の件について皆さんにお伝えしたい事があるのです。」

サラ教官の言葉に答えたプリネは意外な答えを口にした。

「え……ね、姉さんの事についてですか!?」

「……もしかしてヴィータを捕えたのかしら?」

プリネの話を聞いたエマは血相を変え、ある事を察したセリーヌは複雑そうな表情で尋ねた。



「それが……今から約2時間前に”蒼の深淵”自らバリアハートに姿を現して、メンフィル軍に”投降”して来たのです。」

「ええっ!?」

「クロチルダさんがメンフィル軍に”投降”しただって!?」

プリネの口から語られた驚愕の事実に仲間達と共に血相を変えたエリオットとマキアスは驚きの声をあげ

「ほ、本当に姉さん自らメンフィル軍に”投降”したのですか!?」

「はい。」

「……正直信じられないわね……アンタは何か心当たりはないのかしら?」

エマと共に信じられない思いをしていたセリーヌはリアンヌに視線を向けて尋ねた。

「いえ、私も彼女に何があってそうしたのか正直わかりません。ただあくまでこれは私の予想ですが”盟主”が殺され、更に彼女と私以外の”蛇の使徒”達が殺された事で”結社”が事実上崩壊し、それらによって全てに絶望して自暴自棄になり、”盟主”の後を追う為にそのような事をしたのかもしれません。」

「……………………」

「そ、そんな……プリネさん、メンフィル帝国は投降した姉さんをどうするつもりなのですか?」

リアンヌの推測を聞いたセリーヌは複雑そうな表情で黙り込み、表情を青褪めさせたエマはモニターに映るプリネを懇願するかのような表情で尋ねた。



「…………彼女の処遇についてはこれから決める事になりますので、現時点では明確な答えは言えません。ただ彼女は自分自身の希望に応じてくれるのならば、自分を処刑しても構わないどころかメンフィルに隷属しても構わないとも言っていますので、恐らく”更生の余地あり”という事で少なくても”処刑”の判決は出ないと思うのですが…………」

「なっ!?クロチルダさんがそんな事を言ったのか!?」

「あの姉さんが……」

「あのヴィータが全てを奪ったメンフィル相手にそこまでして叶えたい”希望”って何なのよ?」

プリネから語られた驚愕の事実にリィンは驚き、エマは信じられない表情をし、セリーヌは眉を顰めて尋ねた。



「―――その件については皆さんが直に会って彼女の”願い”を聞いた方がいいと思います。彼女もリィンさん達――――”紅き翼”に直接会ってお願いしたい事があると言っていましたので。クロチルダさんは今私の権限で城館の客室に滞在してもらっています。」

「わかった、すぐに向かう!―――トワ会長。」

「うん!すぐに学院のみんなを集めて、バリアハートに向かうね!」

こうして……リィン達はクロチルダの真意を知る為にバリアハートに向かった。 
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