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青砥縞花紅彩画

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23部分:雪の下浜松屋の場その八


雪の下浜松屋の場その八

弁天「んじゃあこれで」
南郷「また来るぜ」
与九「二度と来るな」
 二人は立ち上がる。そして店を出ようとするがここで駄右衛門達の方を振り向く。
南郷「んじゃあまた」
弁天「また御会いしやしょう」
日本「何時でも来るがいい」
忠信「相手になってやろう」
南郷「いいねえ、その心意気」
弁天「お侍にしておくのは勿体ねえよ」
日本「ふん」
忠信「戯れ言を」
 四人は互いに見やってまたニヤリと笑う。弁天はここで赤星にも顔を向ける。
弁天「あんたもな」
赤星「何を言わっしゃるか」
 二人も互いに見て無言で笑う。それが済むと二人はあらためて店の者に挨拶をする。
二人「また来るぜ」
与九「来るなと言っているだろうが」
宗之「(与九を止めて)これ」
与九「しかし」
宗之「盗人ややくざ者には関わらないのは一番じゃ。それはわかっておろう」
与九「はあ」
宗之「放っておけ。よいな」
与九「わかりました」
 こうして彼は離れる。それを見届けた二人は店を出る。
弁天「兄貴、上手くいったな」
南郷「ああ、ここまではな。だがこっからだぜ」
弁天「おう」
 二人は右手に消える。駄右衛門達達と店の者はそれを見届けてから互いに顔を見合わせる。
幸兵「とにかくこの場は安心」
宗之「よかったよかった」
赤星「これもお侍様方のおかげです」
日本「いやいや」
忠信「拙者共は当然のことをしたまでお気になされますな」
幸兵「いえいえ、そうはいきませぬ」
宗之「仁義を忘れては商いはできませぬ故」
日本「仁義か」
宗之「はい」
日本「それは商いの世界だけではないぞ」
宗之「と言いますると」
日本「(顔を横に向けて)いや、何でもない」
宗之「左様でございますか」
幸兵「それはともかくこのままでは我々の面子が立ちません」
赤星「そうです。ここは是非お留まり下さい」
日本「よいのか」
幸兵「はい、是非お願いします」
日本「ううむ。(ここで忠信に顔を向けて問う)お主はどうじゃ」
忠信「玉島様に従いまする」
日本「そうか。では(ここで幸兵衛に顔を向ける)」
日本「その好意に甘えさせてもらおうか」
幸兵「わかりました。これ(店の者に顔を向ける)」
宗之「(それを代表して)はい」
幸兵「宴の用意を。よいな」
宗之「わかりました。では取り掛かろうぞ」
一同「わかりやした」
 ここで皆左手に向かう。そしてがやがやと用意をはいzめにかかる。
幸兵「(赤星を呼び止めて)これ」
赤星「はい」
幸兵「御前さんはここの片付けを頼むよ。あと店閉いまでここは任せたからね」
赤星「わかりました」
幸兵「それじゃあね。私は宗之助や与九と一緒に用意に取り掛かるから。後はくれぐれもな」
赤星「はい」
 そして幸兵衛も左手に消える。場には赤星だけが残る。
赤星「さて、これからだな。肝心なのは」
 彼はその場を整理しながら呟く。そして暖簾を下ろしたところで幕が降りる。拍子木。
 
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