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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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【SEED】ボンサイ操縦者のボヤキとアガキ

 
前書き
単発ネタ小説。中身はあんまり詰まってないし、完結もしない。 

 
 
 ありのまま起こったことを話そう。
 晩に寝て目が覚めたら、俺はコズミック・イラ(C.E.)と呼ばれる時代にいた。な、何を言っているのかわかんねーと思うが(ry

 下らない話は後にしよう。とにかく今、俺はかなりやばい状況にいる。

「おいおい、どうしたんだよカリグラ。まさか怖気づいたってんじゃないだろうな?」
「うっせー話しかけんなチャラ金髪!!俺はなぁ、アガリ症なんだよ!!本番に弱いんだよ!!精神統一……精神統一の邪魔すんな!!」
「とかいいつついざ本番になると何食わぬ顔で結果出してるくせにな」
「お前も黙ってろオレンジ頭!!お願いだから命令が下るまで放っておいてくれ!!」
「ふふふ……君たちは仲がいいな。初陣で散らせたくはないものだ」
「アンタも俺の不安を煽るなぁぁぁーーーーッ!!」

 今どんな状況か説明しよう。俺は今、何の因果かプラントを防衛する組織「ザフト」の一員としてMSに乗っている。何故ならそう、馬鹿の連合軍どもがとち狂ってプラントに宣戦布告したからだ。

 まぁ、歴史を振り返ってみると戦争がいつ始まってもおかしくなかったってのはある。ジョージ・グレンの告白でコーディネーターという新種族が生まれて以来、地球連合とコーディネーター群は常にギスギスしまくっていた。特に「コペルニクスの悲劇」――明らかにプラント過激派の仕業としか思えないテロの後の空気は最悪だったが、とうとう溜まった膿が破裂した具合だ。

 ちなみに、ザフトとは言っても俺は別にコーディネーターではなく、単に俺を生んだ後に両親が次の子供をコーディネーターにしようとしたからプラントに移り住んだだけだ。プラントって言ったらどこを見てもコーディネータだと思われがちだが、そもそもコーディネーター同士での出生率はアホみたいに低いし、第一世代コーディネーターの親とかは普通にプラントで暮らしているので不思議な事ではない。

 不思議な事は、そんな俺がモビルスーツに乗せられていることである。主に俺の両サイドの馬鹿の所為だが。

「ったく何で俺がモビルスーツパイロットだよ!モビルスーツを操るには馬鹿みたいな反射神経と頭脳が必要なんじゃなかったっけ!?」
「しゃあねえだろ。お前頭の方はナチュラル並みだけど反射神経はバケモノクラスだかんな。現にお前MS任されてんだろ?このミゲル・アイマン様の直感は正しかったってことだぜ」
「嫌だ嫌だと拒否する俺を同級生のよしみという名の強制力でザフトに無理やりねじ込んだテメェを俺は一生許さねぇ」

 てめぇジュニアハイスクールで同級生だったからってやっていいことと悪いことがあるぞ。俺の全く与り知らない所で先生や父さんたちを勝手に説得して俺がザフトに行かざるを得ない空気を作りやがって。ハゲろ西川ボイス野郎。アーマーシュナイダーで毛根だけ刈り取られて「ミゲルゥゥゥゥゥ!!」になれ。

「なんやかんやでMSも生身も結構優秀だから、周りはお前がナチュラルって知ってマジでビビってたな。ま、それもお前のフォローをしてやったこのハイネ様のおかげだがな!」
「こっそり俺のMSにナチュラルでも使えそうな感じのOSをぶっ込んできたハイネも絶対許さねぇ」

 乗り切れそうにない課題を押し付けられたときに頼んでもないのに先輩風吹かせて勝手にフォローしまくって俺をFAITHの最終選考にねじ込んだテメェはいろいろと死ね。ナチュラルだからって理由で落とされた俺の横で真面目な面して「それはおかしいぜ」と選考官説き伏せようとしやがって。お前のオデコにハイメガキャノンの落書きしたろかワレ。

「そう愚痴を言うものではない。君はこの世界で初めてMSを使った実戦を経験するのだ。いわばこれは歴史の生き証人になるという事を意味する。生き延びれば君の名前がプラントに刻まれることだろう……」
「大勢のパイロット候補生の中から態々俺を引っ張り出してMSに乗せた変態仮面隊長は末代まで呪います」

 人の履歴書見るなり仮面越しに珍獣を見るような瞳で圧迫面接しかけた上に本作戦に参加させたこのフラガ仮面はマジで死ねばいい。冷静に考えたら生きてる方が面倒だしマジで死ねばいい。何こいつ白服がそんなに偉いの?

 つーかさ、何この幸薄い小隊は。

 死ぬ奴と死ぬ奴と死ぬ奴しかいねーじゃねえか。確かに腕前だけ見れば凄いのが集まってるのは否定しないぞ?原作でキラ追い詰めるマンとしてしつこすぎるくらい戦ったクルーゼ、これでも『黄昏の魔弾』とかいう二つ名を持っていたミゲル、そして曲がりなりにもFAITH(今はまだ違うけど)で赤服のハイネと来れば大抵の敵は倒せるだろう。
 でもテメーら完全に死神に憑かれてんじゃねえか。特に両サイドの西川・ザ・盆栽マスターズ。俺をそっちの道に巻き込むな、死ぬから。一時期は親友イライジャと一緒にザフト脱退まで考えた俺の辞表を握り潰したオレンジの悪魔共め。

「それともアレか?………やっぱり同じナチュラルと戦うのは厭か」

 軽口を叩いていたハイネの声色が変わる。
 現在、連合の宇宙艦隊がプラントへの直接攻撃を狙って進行中だ。あと数分とせず、ここはジンとメビウスの入り乱れる戦場になるだろう。俺だって博愛主義者じゃないし、相手が殺しに来るんなら殺し返そうと割り切ることは出来る。

「別にナチュラルだから嫌なんじゃねーよ。出来れば命の取り合いに飛び込みたくはなかったってだけだ。お前らの所為でズブズブのグダグダになっちまったけど、流石に両親と弟のいるプラントを穴ぼこにされるのを許すほど腐抜けてない」

 結局、作戦を辞退するかどうかを考えた時に心に残ったのがそれだった。

 俺の家族は幸いにもこれから滅ぶであろう「ユニウスセブン」にはいない。というか、ユニウスセブンが攻撃対象にされることはザフトではあまり想定されてない。俺も原作知識根拠ではないが、一般兵なりに食糧生産プラントが攻撃される可能性を問うた。だが最終的には俺達MS部隊が全部敵を叩き落とせば問題ないし、メビウス一機で破壊出来る程プラントはヤワではないということで一致した。

 この調子だとブルーコスモスの持ちだした核ミサイルは原作通りユニウスセブンを焼くだろう。だから俺は、それ以外でやるべきことをやるだけだ。そんな俺に、ハイネは笑った。なにわろとんねん。

「だよな……それでこそカリグラだ。お前はそれでいいと思うぜ」
「ンだよ曖昧な言い方しやがって………おいミゲル、テメェも何笑ってやがる!」
「くっくっ……だってさ、さっきまでアガリ症がどうとか言ってたくせに戦う気満々なんだから、そりゃ笑いたくもなるさ」
「敵を前にその肝の据わり様は流石だな、カリグラ。ハイネが推しただけのことはある」
「………ハイネ、貴様の仕業かぁぁぁーーーッ!」
「言いだしっぺはミゲルだぜ?『俺の背中はアイツ以外には任せない』ってよ」
「そゆコト!いやぁ、先輩はやっぱり分かってますねー!」
「二人纏めて宇宙の星になれボケナス共」
「「縁起でもない事言うな!!」」

 とりあえず、この戦いを意地でも生き延びてから二人を殴ったろうと心に決めた。

「お喋りはそこまでだ諸君。もうじき敵の艦隊がレンジ内に入る。敵も味方も命がけ……となれば、勝敗の行方を決めるのは覚悟の差、ということになるかな?」
「俺達コーディネーターの覚悟が連中に劣ってるなんてありえないっしょ、隊長!」
「戦争しか頭にないナチュラル共をとっとと追い払って祝杯をあげるとしますか!!」

 3機のジンがマシンガンを構えて臨戦態勢に入る。俺も腰にマウントされた重斬刀とマシンガンに問題がないか改めてチェックしながらコクピットのレバーをギリリ、と握る。恐らくこの場では俺とクルーゼ以外の全員が、内心ではこの戦いを勝ち戦と勘違いして笑ってるだろう。敵主力のメビウスはMS初期量産機ジンに比べると5分の1程度の戦闘力しかないと言われている。
 そんな雑魚が数だけ集まっても勝てるわけがない。確かにそうだ。だが、あちらとこちらでは作戦成功の前提条件がまるで違うのだ。それをこいつらはこれから思い知るだろう。そして――いや、今はいいか。

「………意地でも生き延びてやらぁ」

 この落としどころがない泥沼のような戦争を、俺だけは最後まで生き延びてみせる。そんな傲慢な事を考えながら、俺――カリグラ・タキトゥスは後に『血のバレンタイン』と呼ばれる戦いを待ちわびた。



 = =



 ジンの機動力は、当然と言えば当然だがヤキン・ドゥーエ戦役開戦当初では現行の汎用兵器としては最高水準を誇っていた。なにせジンはプラントが苦心と試行錯誤の末にやっと完成させた世界初の量産型モビルスーツなのだ。後に多くのヴァリエーション機を生み出し、ゲイツシリーズやニューミレニアムシリーズ第一弾のザクの雛形ともなったジンは、意外に高いポテンシャルを秘めている。

 戦争中期から後期にかけては後継機のシグーなどに押されていたものの現場では最後まで頼られ続けたという事実が、この機体の安全性の高さを物語っている。その高い信頼性からか、傭兵や宇宙海賊の間でも無茶なカスタマイズをしてもきちんとポテンシャルを発揮していた。
 ブレイク・ザ・ワールドではザラ派残党のジン・ハイマニューバ2型が最新鋭機と互角以上に渡り合ったし、あの傭兵サーペントテールのブルーフレームさえアサルトシュラウド装備のジンに一度不覚を取っている。

 長くなったが、つまりジンというMSは非常に長く使われたいい機体なのだ。

「こなくそぉ!!」

 正面から迫るメビウスのリニアガンの車線から逸れつつ、ジンのマニュピレータに握られた重突撃機銃が器用に敵を捉え、火を噴く。鋼鉄の弾丸を浴びたメビウスはバッテリーパックに被弾したのか激しいスパークと共に爆散する。パイロットは恐らく即死だろう。
 すぐさまの傍で周囲を索敵すると、別のメビウスがミゲルの重斬刀で斬られているのを見る。コクピットに直撃し、機体は爆発せずにコントロールを失ってあらぬ方角へと飛び去っていった。ハイネやクルーゼ隊長も見事にジンを操って敵を撃破していく。レーダーを見れば敵の第一陣は既に壊滅状態だった。

「意外とやればどうにかなるもんだ……」
「ほら見ろ、アガリ症なんぞ嘘じゃないか。しっかり敵を叩き落としやがって!」
「茶化すな!司令部からの通信は!?」

 言いながら機銃の弾倉を入れ替える。戦闘開始からそれなりの敵を倒したので残弾に不安があるし、次からにはミゲルのように重斬刀も使おうと内心で決めた。少し離れた場所のハイネとクルーゼも二人の周囲に戻って来た。

「第二陣の接敵までにはまだ時間がある。大人しく待ち構えていようではないか」
「流石にお前らは落ち着いてるな……向こうじゃはしゃぎ過ぎた連中を諌めるのが大変だったぜ。カリグラみたいななんちゃってアガりじゃなくて本物のアガりだからな」

 どうやら二人のいた宙域の近くでパイロットがパニックを起こしていたらしい。機体を加速させ過ぎたせいでGに押されてパニックになったり、アドレナリンの出し過ぎで敵もいないのにトリガーを引き続けて危うくフレンドリーファイアしそうになったりしていたようだ。見れば敵を倒したにもかかわらず隊列は若干乱れている。
 圧倒的優位での戦闘とはいえ、やはり初心者の実戦には想像を絶する緊張があったのだろう。結果だけ見ればザフト優位だが、パイロットの精神面では課題の多い状態だろう。さて、次は――と、気を引き締めた、その刹那。

『全軍に伝達!!左舷よりメビウス接近!数は一!予想以上に早い!ブースターか何かを後付して推力を底上げしていると思われる!至急撃墜せよ!!繰り返す、至急撃墜せよ!!』

 その瞬間に俺が感じたのは、言葉で言い表すのが難しい『悪意』のような曖昧な感覚。
 何となく――本当に何となく、危険だと確信した。

「ハァ?たった一機かよ!確かに左舷は戦力が手薄とはいえ、トチ狂い過ぎだろ――」
「管制!!そのメビウスの装備は!?」
「お、おいカリグラ?」

 怒鳴り散らすような俺の声にミゲルが怪訝な顔をするが、脳の裏がチリチリするような予感が消えてくれないのだ。メビウスの出現した場所から一番近いプラントはユニウスセブン。俺の予想が正しければ、あれの正体は――!!

『……ミサイルだ!リニアガンの代わりに大型のミサイルを……こ、これは!?』

 レーダーに映るメビウスの速度が、ぐんと恐ろしい速度に上昇する。中のパイロットが失神しかねないほどの速度に左舷に展開していたMS部隊の対応が一瞬遅れ、メビウスが戦域を飛び抜ける。

「駄目だ……そいつは撃たせたら駄目だ!!」
「おい、落ち着けカリグラ!!どっちにしろ俺達の位置からじゃ間に合わないし、たかがMA一機だぞ!?何をそこまで怯えて――」
『か、核………核ミサイルだ!!あの腹に抱えているのは、核ミサイルだ!!撃墜しろ、一刻も早く!!』
「なっ………!?」
 
 司令部から管制へ、管制から現場へ、余りにも遅すぎる情報の提示。しかして、望遠カメラはその姿をはっきりと捉えていた――メビウスが腹に抱える『核』のマーキングを。ヒステリックな叫び声をあげたその時には、既に連合のメビウスは防衛線を単騎で突破していた。

「馬鹿な!!連合は正気か!?あそこには軍事施設なんて一つもないんだぞ!?」
『やめろ……やめてくれ、ナチュラル!!そこには父さんと母さんが――!?』
『落とせ!!何でもいい、体当たりでもいいから落とせぇぇぇぇーーーーッ!!』

 第一陣の犠牲も、第二陣の兆候も、全てはこの一筋の矢で砂時計を貫くために。

『青き、清浄なる……世界の、ために』

 こちらの対応が追い付かないほどの鮮やかな奇襲。
 放たれる核ミサイル。その飛来先に鎮座する、ユニウスセブン。
 回線を飛び交う悲鳴、怒号、驚愕、絶叫。その全てがミサイルを止めることを叶えないまま。


 
 見る物をぞっとさせる巨大な桜色の閃光が、ユニウスセブンを紙屑のように引き裂いた。



「あ………」
「嘘、だろ……」

 人口24万3721名、うち全員が民間人。兵器などないし争いとも無縁で、ただコーディネーターが連合の奴隷でないことを示すために製造したささやかな食糧生産プラント。それが、たった今、目の前で粉砕された。



 C.E.70年2月14日――世界の流れを変えた史上最低の一回戦。
 それは、同時に俺がこの血で血を洗う地獄の戦争に片足どころか全身を浸す羽目になる運命を決定づけたものだったと言えるだろう。同僚はナチュラル排斥の声を強め、ナチュラルはコーディネーターを宇宙の化け物だと弾劾する。愚かしき対立の二重螺旋を織り込んで、世界は悪夢のシナリオへ突き進もうとしてる。

「………カリグラ、そろそろヘリオポリス周辺に到達するぜ?」
「わぁってるよ。赤服のおぼっちゃん達をエスコートしろってんだろ?」

 俺は知っている。この先に何が起こり、誰を失うのかを。
 だが俺はそれに絶望も希望もしちゃいない。要は、なるように世界はなるのだ。
 だったら俺はこの世界で俺であることを演じきってしまえばいい。

「………ところでミゲル、俺のプレゼントした盆栽ちゃんと育ててるか?」
「ああ、アレ。いやー無重力環境のせいで枝があらぬ方向に延びまくっちゃってさー!剪定してるうちにだんだん芸術的な形になってきたからあれはあれでいいとして、次の盆栽でもっと芸術的な盆栽育てたくなってきたわ!!」
(冗談であげたんだけどこいつ本当に盆栽マスターに近づいてきたな……盆栽、案外流行るかもしれん)

 転生者であるこの俺、カリグラ・タキトゥスの波乱の人生が幕を開ける。
  
 

 
後書き
しかし続きは書きません。なぜなら書いてる暇がないからです(笑)
ちなみに盆栽マスターは言わずもがな中の人ネタです。 
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