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龍が如く‐未来想う者たち‐

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冴島 大河
第二章 裏切者
  第二話 現れた男

夜の神室町の人の波は、とても恐怖を覚える。
極道者が、波に紛れて襲いかかってくるかもしれない。
どこからか、つけられているかもしれない。
全て波に埋もれ、わからなくさせる。

しかし、天下一通りで出来た空間には、人の波は起きなかった。
代わりにいるのは、2人の追われる者と10人程の追う者のみ。

赤スーツの秋山と、黒スーツの麻田。
互いにかなり疲労しきっていた。
何人倒してきたか、もうわからなくなっている程。
しかし追う者は、減るどころか数を増していく。

もうダメかもしれない……。
不意によぎったそんな言葉が、一瞬で吹き飛んだ。
正確には、目の前にいた人ごと考えが吹っ飛ぶ。


「秋山!大丈夫か!?」
「さ、冴島さん!?」


取り囲んでいた男たちをなぎ払いながら、冴島はようやく秋山のもとに辿り着く。
いつの間にか取り囲んでいた男たちは、皆地べたに這いつくばっていた。
秋山と麻田は、安堵の溜息を零す。


「助かりました、冴島さん。でもよく俺らだってわかりましたね」
「さっきまで花屋のとこおったんや。カメラで秋山たちを見つけてな。そんで、そっちは?」


冴島と目が合った麻田は、強張った顔から笑みが浮かぶ。
まるで、珍しい物でも見たような顔だ。


「あ、足立組の麻田といいます!!まさかここで、伝説の方にお会い出来るとは……!!」
「足立組……」


その名に、冴島は花屋の言葉を思い出す。
「合流したら、足立組に行け」
麻田という男が居るなら、それを言ったのも納得する。


「麻田といったか。悪いんやが、足立組の事務所で匿ってくれんか?」
「えっ!?匿うって……」
「見つけたぞっ!!」


麻田が疑問を投げかける前に、冴島の背後から数人走ってくる。
恐らく、喜瀬組の追っ手だろう。
これ以上面倒になる前に、ここを離れたかった。


「こりゃ先に逃げた方がええやろ」
「今は組長が不在ですが、一先ず案内します。着いてきてください」


まずは、追っ手を振り払うのが先決だった。
角を右左と曲がりに曲がるが、追っ手は減るどころか増える一方。
これじゃあキリがない……。
何か策は無いかと考えていると、突然麻田は足を止める。


「何や?どないした!?」
「あ……」


その視線は、目の前の男に釘付けだった。
痩せた体格にメガネと、いかにもインテリ系な男。


「組長……!?」


投げかけられた言葉に、男の正体が足立だと気付く。
だが足立自身怪我をしていて、ボロボロの身体だった。
肩で息をしながら冴島たちに歩み寄ったかと思えば、横をスッと通り抜ける。
その足は、追っ手の方に向けられていた。


「まさか足立さん、その体で足止めするつもりじゃ……」
「……これは、私なりの詫びです。足を撃ち抜いてしまった、私なりの……謝罪です」
「それなら組長、俺も残って……!!」
「お前は客人を事務所まで連れて行け」


そこまで話して、ようやく足立は冴島と目を合わす。
瀕死の男とは思えない程の、鋭い眼差し。
語らずとも、その男の強さは感じ取れる。


「悪いな、俺は怪我人放って逃げる男やない」


冴島もまた、追っ手の男たちに向き直った。
麻田が思わず駆け寄ろうとするが、秋山にそれを止められる。


「ボロボロの俺たちは、ただの足手まといになる。悪いけど、俺らは逃げさせて貰おう」


目が泳ぐ麻田に、秋山は背中を叩く。
足立が心配だったが、それ以上に足手まといにはなりたくなかった。


「絶対、死なないでください!!」


その声が聞こえた後、すぐに走り去る音が背から聞こえた。
小さく息を吸い、大きく息を吐く。


「手助けさせて貰うで、足立さんとやら」
「……私の足手まといにだけは、ならないでくださいね」


虚勢をはる足立に微笑みかけ、2人は追っ手に立ち向かった。 
 

 
後書き
次回5/23更新 
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