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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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疾風迅雷

 
前書き
長らくお待たせしました。 

 
シュタイナーの新たな力、《エレクトロドライヴ》は戦国龍《雷電》とリンクすることにより発動する力であり、雷電の力を使いこなすことが出来る。そしてその力は神にも届くとされている。

「はあッ!」

放たれた一撃はスリュムの拳を受け止めるどころか、弾き返した。
後ずさるスリュムに対し、シュタイナーは追撃を繰り出す。左右の拳から繰り出される一撃一撃が重くのしかかる。

「ぬぅうううん!」

スリュムも負けじとその巨体を振り回す。しかし、それをシュタイナーはさながら踊っているかのように流れる動作で躱した。まるで攻撃がどこから来るかが分かっているかのように。

「すご・・・」

「攻撃がまるで当たらない」

「あれが雷電の力だ。自分の周囲にエレキフィールドを発生させ、その領域内の電気の動きで周りの動きを感知するレーダーのような役割を担っている。死角から攻撃が来ても躱せるのはそのためさ。無論、そんなの使いこなせるのはごく少ないがな・・・」

そう、いくら分かっていても、それを実行できるだけの動体視力、反射神経、判断力、集中力、そして何より無数の攻撃に物怖じしない度胸を持っていなければ出来ない芸当。

『確かに並大抵のプレイヤーならば認識が出来ても能力を持て余す。だが、あいつなら・・・』

「使いこなせる・・・!」

たった1人で対峙しているシュタイナーを見て、シオンは彼ならあの力を使いこなせるという確かな手応えを感じていた。

「雷電の力は《雷》。その能力は、《超高速移動》」

シュタイナーの動きが更に加速すると気がついた頃にはスリュムの懐に入っていた。まるで雷の閃光の如く一瞬の出来事だった。

「ぬぅッ!?」

「どうした?青ざめてるぞ、顔が!」

シュタイナーの拳がスリュムの腹に突き刺さる。その一撃は速く、重く、そして鋭く、突き刺さっていた。

「オ"ォ"ォ"オ"オ"オ"ッ!!!」

スリュムの身体は宙に浮くほどの一撃にその場にいた者は驚愕する。

「あの巨体を打ち上げるなんて・・・」

「なんつーパワーしてやがる!?」

「あれがもう一つの能力、《肉体の限界突破(オーバーリミット)》電気を神経に通わせ、肉体のリミットを意図的に外し、本来の力以上のものを発揮させる」

「聞いたことがあるわ、人間の身体は無意識に力をセーブしてるって。でも、そんなことすれば・・・」

「本来の力に身体自体が付いていけずに筋肉は愚か、骨までも砕ける可能性がある」

おぞましい事実にメンバーは若干引いていた。
無理もない、もともと無意識にセーブしていた分の力を解放して筋肉だけではなく、骨までもズタボロになるのだ。いくら火事場の馬鹿力並みの力を常時使えるとしてもそれは嫌なものである。

「まあ、幸いなことにあいつの本職は拳による格闘術。ある意味、超近距離戦闘型のあいつと雷電の相性は良い。少なくとも身体が壊れることはないよ。なんたってキリト以上にSTR(ストレングス)極振りした様な男だからな」

シオンは目の前で戦う男の背中を見ながらそう言った。その背中に、拳に、迷いは感じられなかった。

『そりゃあれだけ強力な力を身体のリミッターを外して使っていれば、いくら丈夫なヤツでも発動後はしばらくは動けなくなるよな・・・。パンチ一発で自分の腕が消し飛ばないのが不思議なくらいだ・・・』

「さすがに固いな・・・」

「フンッ、小虫にしてはやりおるのぉ」

シュタイナーは内心焦りがあった。いくら雷電によって強化された身でも限界がある。時間が来れば自分はもう動けなくなる、それが彼を焦らせた。そしてそれは戦いにも響くこととなる。

「しかし・・・」

スリュムは大きく息を吸い込み強力な氷ブレスを放つ。シュタイナーはそれをかわそうとするが、身体にラグが生じ、一瞬遅れた

「クッ!?」

「まだまだ甘い小童よォ!!」

「しまっ・・・!」

動きを封じられたシュタイナーにスリュムの豪腕が襲いかかった。その衝撃は凄まじく、フィールドは砕け、その亀裂は四方へと広がっていった。
あれ程の攻撃力、まともにくらえば大ダメージは免れない。その場にいた者は勝負が決まったかに見えた。
ある男を除いては、

「いつまで床に引っ付いてるつもりだ?」

「シオン・・・」

「ったく。こっちはクッソ重い豪腕を背にしてるってのに」

シュタイナーの目の前には大きめの盾を背に攻撃をガードしているシオンの姿があった。
盾は辛うじて攻撃を防いでいるものの、今にも破壊されそうな状態である。
シオンはそんなことを気にせず話した。

「お前は昔から(2年半前)そうだった、優しい故に本気になれない。それがお前の長所であり、欠点でもあった。だからいざという時に判断が遅れる。でも・・・」

シオンは口角を上げ無理やりな笑顔を振りまいた。

「それを貫いて何が悪い。自分の長所を伸ばして何が悪い。甘い?上等じゃねーか、“ヒーロー”ってのは皆甘いんだよ!」

拳を盾で強引に払うとスリュムは思わず後ずさりをする。

「知ってるか?ヒーローはな、誰よりも守るもんが多いし、宿命も背負(しょ)ってるし、そういう面倒くせえ星の元に生まれたような奴らなんだよ。でもな、それがあるから強いんじゃねぇか」

シオンは剣を取り、ゆっくりと重い足取りで歩みだす。だが、その歩みには力があった。

「行けよ、シュタイナー(ヒーロー)。お前の信念を貫いてこい!」

その言葉に押されるようにしてシュタイナーは立ち上がり、シオンの隣に並ぶと拳を突き出した。

「ヒーローだって?僕はまだそんなのになった覚えはないけどね。でも、もし君がヒーローだと言うのなら、それは君にも言えることじゃないかな?」

「ハッ!・・・言うじゃねぇの!アルモニー!!」

『呼んだか?』

アレ(・・)をやるぞ」

シオンの発言にアルモニーは興味深そうに答えた。

『ほう?まだアップデートは完了していないが?』

「5%ならいけんだろ?」

アルモニーは何かを見透かされた気がしたが、それを無視するかのように期待の意を込めて答えた。

『いいだろう、5%以上は使えないと思え』

「わかってる」

そう言って後ろを見ると黄金の金槌を持ったフレイヤが唸り声を上げていた。

「みなぎるぞぉおおおおッ!!!」

閃光とともにフレイヤは巨大化、野太い声が似合う筋骨隆々の大男となってその姿を変えた。

「おっ・・・!」

「さんじゃん!!」

「うわ〜、結果にコミットしちゃたよこの人。勇ましいが作れちゃったよ・・・」

パーティーメンバーを確認するとフレイヤから《Tor》にプレイヤーネームが変更されていた。
どうやら先ほどの黄金の金槌が彼女の封印を解く鍵だったらしい。

「まぁ、これで役者は揃ったわけだ・・・」

指を絡めて腕を伸ばし、腰を左右に回す。端から見れば何を呑気に準備運動をしているのかと思えるが、彼はいたって真面目である。

「いきなりだけどよ、人事を尽くして天命を待つって言葉、俺は嫌いじゃねぇんだ」

「?」

「だけど、どうせなら人事を尽くすんなら。偶には最後は天に任せずに自分で決めたいわけよ。だから・・・」

内から湧き出る感情をここにきて表に出せることに喜びを感じながら、シオンは剣を握る。その剣はいつもよりも白く、銀の光を帯びていた。

命懸け(本気)で、尽くしていくぜ!この勝負!!」

銀の光は更に眩く輝きを増し、剣を包む。その形状は徐々に変化し、その姿を形作っていく。より強く、より扱いやすく、そしてしなやかに。

制限(5%)解放《セブンスター・ドライヴ》!!』

瞬間、シオンからも銀の光が溢れ出す。その中で、シオンは静かに灯る光の見た目とは裏腹な反応を示していた。

「グッ!・・・コイツは、ちっとばかしキツいな・・・」

未だ光を纏う剣を前に突き出し、更に力を込め、唱える。

「オン、バサラ、ベイシラマンダヤ、ウン、ソワカ」

光は形となり、その身を現わす。右手は機械的な籠手となり、剣は先ほどよりも少しだけ細く、長くなっていた。

『それが君の新たな力、《セブンスター・ドライヴ》。これは君の成長に比例してアップデートしていく言わば《共存のシステム》だ。君が強くなればシステムもそれに答え、君が弱くなれば、システムもまた衰退する』

「俺と共に強くなる力・・・」

『そう。つまり君の今の実力ではそのシステムは5%がやっとってことさ』

アルモニーはやや皮肉のような言葉を口にしたが、それを聞いたシオンは自分の変化した右手と剣を見ながら聞いてきた。

「つまり、ここから先、俺はまだまだ強くなれるってことだよな?」

『それは君次第だよ。私でもシステムでもない、君自身の(・・・・)成長次第だ』

「そうか・・・」

その時シオンは思った。
"まだ俺は、(高み)を目指せる"と–––––
そう思うと自然と笑みがこぼれた。

『今は時間を掛けていられる場合じゃない。最低限のことは頭に入れてある、あとは・・・』

「分かってる、あとは・・・」

シオンは剣を肩に担いで腰を低くし、片手を地面に着く。さながら忍者を匂わせるその姿からシオンは超低空からのスタートをシュタイナーと同時に切った。

『「流れで理解する(しろ)!」』

同時に動き出した二人は、スリュムの約30メートル手前で二手に分かれ、それぞれ左右に着くと先にシオンがスリュムの足元目掛けて飛び出していった。

「はぁッ!」

高速の回転から繰り出した斬りつけは右足に無数の切り傷を生み出し着実にダメージを与えていく。更に逆サイドからシュタイナーが機動力とパワーをいかし、高速パンチを繰り出しながらスリュムを撹乱していく。
高速で展開される戦闘に傍観者側は息を呑む中、動く者たちがいた。

「イェアッ!!」

「せいっ!!」

トールはその豪腕から繰り出されるパンチをスリュムの顔面にぶち当て、追撃をかける。更にエリーシャとシノンが魔法と弓矢による遠距離からの攻撃を当てていく。
その後もキリトたちの猛攻によりスリュムのHPゲージはイエローゾーンからレッドゾーンになる手前まできた。しかしそこからスリュムの最後の足掻きが始まった。

「ぬぉおおおおおッ!!!」

「なッ!?」

「ぐおッ!!」

「この、風はッ!?」

スリュムが起こした強力な暴風により全員の動きが止まる。そしてスリュムは手持ちの巨大な斧で薙ぎ払い、その場にいたものを吹き飛ばし、飛ばされた者たちは壁に激突。それぞれ多大なダメージを負った。

「クッソ・・・」

「最後の最後でとんでもねぇモン出しやがって」

「このままじゃ時間が・・・!」

皆苦しみながら瓦礫から身を起こすが、このままいけばトールの協力があってもメダリオンが黒く染まり時間切れになる。何か状況を打開する一発逆転の方法が欲しいところなのだが。

「なら、一発逆転の方法を試すしかないよな?」

「えっ?」

「シュー、いけるか?」

「何をするかはおおよその見当は付いてるけど・・・良いよ、こっちは纏ってる分とさっきの時間でチャージはほぼ0秒。いつでも撃てる」

シュタイナーはシオンの問いに答えながら拳を握り直し、隣に並ぶ。
目の前の巨人は未だその力は衰えてはいない。臨戦体勢をとったままトールと睨み合っている。

「これが最後のチャンスだ」

「言われずとも。キリト、手伝ってくれ」

「あいよ!」

白、黒、ライム色の戦士が並び立ち、それぞれの武器を構える。その姿はまるで神に挑む英雄達の姿にも見えた。

「さあ、神様には神話にお帰り願おうか!」

「いくぞ!」

シュタイナーの合図とともに走り出した三人は縦一列となりスリュムに接近していく。スリュムもそれに応戦しょうとするがトールの一撃がクリーンヒットし体勢がやや崩れた。

「今だ!!」

先に飛び込んでいったシュタイナーとキリトがスリュムの両腕の攻撃を筋力パラメータ全開を振り切るかの勢いで相殺。弾き飛ばすと、その間からシオンが懐に飛び込んでいく。

「いけッ!」

「ちぃッ!まだじゃいッ!!」

スリュムはそれでも意地を見せつけるかのように弾かれた腕を無理やり振り下ろしてきた。

「どぉらあッ!!」

シオンはガードするも、拳は重力と勢いに任せてそのまま振り下ろされた。
拳は地面に突き刺さり、その場所は大きくひび割れ、誰もが万事休すと思っていた。

二人を除いては–––––

「ああ知ってたよ。たとえシステムでも、お前はそういう意地を見せる男だと・・・」

スリュムの拳は僅かに浮き上がり、その下には歯を思い切り食いしばって拳を受け止めているシオンの姿があった。

「まっっったくよぉ、ウチの、後方支援部隊は、優秀、過ぎて、涙が出ちまうよ!」

後方ではエリーシャとアスナがありったけのMPを使い強化呪文を唱えており、そのおかげもあってシオンのHPはなんとか持ちこたえることができたのだ。
既にスリュムの後方にはシュタイナーが回り込んでおり、その拳には光が灯っていた。
死に物狂いで掴んだチャンス、ここで決めずにいつ決める。

「覇王槍拳流、《雷神の型(トールスタイル)》!」

「いけよ、シュー(ヒーロー)。壁を、ぶち破れ!!」

雷神の鉄槌(ミョルニル)!!」

放たれた渾身の一撃はスリュムの背中から胸を貫き、膝をつかせ、最後の追い打ちとしてトールの攻撃が襲う。

「地の底に還るがいい!巨人の王よ!!」

膝をついた状態で頭から叩きつけられたスリュムのHPはゼロとなりその体は徐々に氷漬けにされていく。しかし、彼は最後の最後までその嘲笑を崩さなかった。

「ふっふっふ。今は勝ち誇るがよい。小虫どもよ。だがアース親族に気を許すと痛い目を見るぞ。彼奴らこそ真の」

辞世の句を最後まで聞かずしてトールは氷漬けにされたスリュムをハンマーで叩き割るとシオン達の方に振り向き、感謝の言葉を述べた。

「やれやれ、礼を言うぞ妖精の剣士達よ。どれ褒美をやらねばな」

そう言ってトールはシュタイナーの手元に先ほどフレイヤ(トール)に投げ渡されたハンマーが手渡された。

「《雷槌ミョルニル》正しき戦に使うと良い。では、さらばだ!」


そう言ってトールは稲妻となって姿を消した。辺りにはもう何もなく、残されたメンバーは先ほどシュタイナーに託されたミョルニルに目をやった。神々しいまでの金色が眩しく、その重厚感は見て取れる。

「まさか、さっき放った技と同じ武器を貰えるとは・・・。皮肉なもんだね」

「使えそうか?」

なんとも微妙な表情を浮かべるシュタイナーに対してシオンが聞くと、シュタイナーはミョルニルを装備して再び展開した。その姿は柄の部分が大きく伸び、短槍程の長さとなっていた。
新たな装いとなったミョルニルをブンブン振り回し最後はガツンと地面に叩き、その感触を確かめた。

「うん、悪くない」

短く一言だけだったが、その表情は穏やかないつもの顔となっていた。
しかし、本人はまだ何か物足りなさそうな手応えを感じていた。

「もう少しこれを有効活用できないものかな・・・」

「なんならくるみ割りにでも使うか?」

「冗談はその辺にして急ぐぞ!時間がない!」

キリトの言葉に急かされ一行は玉座の後ろに形成された階段で更に下の階層へと駆け込んでいった。




 
 

 
後書き
暑中お見舞い申し上げます。
最近日差しが強くなってきたのを感じる作者です(今更)
熱中症に気をつけながら日々を過ごし、執筆に励んでおります。最近では家で甲子園片手に夏休みの課題に取り組みつつ、近所の子供達の騒がしさに耳を傾けおります。
私にもあんな時代があったのだと思うと微笑ましく思います。

皆さん、熱中症には十分注意して楽しい執筆ライフを満喫しましょう( `ω´)
評価、コメントお待ちしております!

ではでは〜三( ゜∀゜)ノシ  
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