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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第147話

6限目 特別HR―――



~1年Ⅶ組~



「それでは、具体的な案を皆さんから募りたいと思います。」

オリヴァルト皇子達が会議室で色々と話し合っている中、Ⅶ組は学園祭についての話し合いをしていた。

「―――開催日程は来月の10月23日、24日の2日間。出し物などの設置準備は前々日の午後からになります。当然、その前までにも入念な準備が必要になりますね。」

「……まあ、その意味でも何にするかどうかは重要だろう。展示、イベント、ステージ……飲食店舗なども許可されている。そうでしたね、クロウ先輩?」

エマと共にHRを進行しているマキアスはクロウに視線を向けて問いかけた。



「ま、単なる展示ってのはどこのやらんと思うけどな。なんつーか、それをやったら学生として負けってカンジ?」

「まあ、まずはみんなでアイデアを集めていきましょう。何でもいいので、思いついた物から言ってくださって結構ですよ?」

エマに問いかけられたリィン達だったが、全員黙り込み、誰も案を出さなかった。



「あはは……」

「君達な……少しは協力したらどうだ?」

「これでは学園祭の出し物の為にわざわざ用意した時間が無駄になるぞ。」

その様子にエマは苦笑し、マキアスは呆れ、レーヴェは静かな表情で指摘した。



「ええ、わかってはいるんですけど……」

「その、何となく集中、しきれないっていうか……」

マキアスとレーヴェの指摘にリィンとアリサは困った表情をし

「それに全員って言っても、プリネたちはいないしねー。」

「仕方ないよ……プリネは公務の関係でいないし、エヴリーヌはプリネの護衛、ツーヤは高熱を出して倒れた後突如繭みたいなものに包まれたセレーネの看病をして休んでいるんだし……」

ミリアムの言葉を聞いたエリオットは不安そうな表情で答えた。

「ツーヤの話ではセレーネがあの繭のような物に包まれたら、”成長”と言っていたが……」

「……心配である事には違いないな。」

「………………」

ガイウスが呟いた言葉を聞いたラウラは静かな表情で頷き、リィンは心配そうな表情で黙り込んだ。



「……お前こそ、先程から落ち着かない素振りだろうが。」

「ぐっ……」

そしてユーシスに指摘されたマキアスは唸り

「あはは、無理ないよね。」

エリオットは苦笑しながら言った。



「ちょうど今、理事会で我らの処遇も話されている……」

「その理事が肉親ともなればなおさら気になるだろうからな。」

「はあ、そうなのよね。……今月の”特別実習”もどうなるかわからない状況だし。」

「……まあ、そうだな。先月の実習の事を考えれば中止になってもおかしくない。」

ラウラ、ガイウス、アリサの話を聞いたマキアスは複雑そうな表情で頷いた。



「フン、別に実習に拘っているわけではないが……勝手なカリキュラム変更に納得できる訳がないだろう。……その判断に身内が絡んでいるとなれば尚更だ。」

「うーん、確かに……」

「わからなくはないかも。」

複雑そうな表情で答えたユーシスの意見にエリオットとフィーは頷き

「実際、実習に行くかどうかで準備期間も変わってきますから出し物にも影響しそうですし……確かにちょっと困りましたね。」

エマは考え込んだ後困った表情で頷いた。

「真面目だねぇ、お前さんたち。」

そしてリィン達の様子を見たクロウは苦笑した。



「ねえねえ、レーヴェ~。3日前からプリネが公務で留守にしているけど、もしかして3日経っても帰って来ないのは”列車砲”の件?」

「それは…………」

「……………………」

その時レーヴェを見つめて質問したミリアムの質問内容を聞いたリィンは血相を変えた仲間達と共に真剣な表情になり、アリサは複雑そうな表情で黙り込み

「ガレリア要塞の件を各国に黙る代わりにエヴリーヌさんの列車砲破壊の責任を問わない件と、残りの列車砲をメンフィル帝国に贈与した事……ですね。」

「あの件には直接関わっていなくても、ケルディックの臨時領主も兼ねているプリネなら”列車砲”の配備について関係しているかもしれんな。」

不安そうな表情をしたエマの言葉に続くようにユーシスは真剣な表情で推測し

「――ああ、そうだ。プリネ皇女はエレボニア帝国から贈与された”列車砲”を配備する最有力候補の場所を知った後猛反対しているそうだからな。それが原因で、未だに学院に戻ってきていない。」

レーヴェは静かな表情で頷いて答えた。



「プ、プリネが猛反対する場所ってもしかして……」

「―――エレボニア帝国に隣接しているメンフィル領か。」

レーヴェの答えを聞いてある事に気付いたエリオットは不安そうな表情をし、ユーシスは真剣な表情で呟き

「ちなみにどこが最有力候補に上がっているの?」

フィーは真剣な表情でレーヴェを見つめて尋ねた。



「―――まず一つ目はルーレの山奥に存在する温泉郷―――ユミルだ。」

「なっ!?どうして郷に列車砲を……!」

レーヴェの答えを聞いたリィンは血相を変えてレーヴェを見つめ

「ユミルに”列車砲”を配備すれば、万が一エレボニア帝国と戦争になった際、エレボニア帝国の五大都市の一つ―――ルーレ市と”四大名門”の一つ―――”ログナー侯爵家”に甚大な被害を与える事が可能な事に加えて”ザクセン鉄鉱山”を崩壊させる事ができる為、エレボニア帝国に対し、有効的な攻撃になるという理由でレン皇女が提案した。」

「!!」

「そ、そんな!?ルーレはともかくザクセン鉄鉱山には兵士はほとんどいなく、いるのは鉱員ばかりですよ!?それにもしルーレに列車砲による砲撃をされたら、何万人もの市民達が犠牲になるんですよ!?」

レーヴェの答えを聞くと目を見開き、アリサは表情を青褪めさせて声を上げた。

「だけど、兵器を量産している巨大な工場があるルーレやエレボニア帝国の屋台骨であるザクセン鉄鉱山を崩壊させる事ができれば、エレボニア帝国は鉄鉱石の採掘が困難になって、兵器の量産が困難になるから戦略的な面で見れば有効だね。」

「というか戦争を前提で提案するとか、そのレン皇女って奴はとんでもない物騒な皇女だな…………」

「……レン皇女は多くの市民達が犠牲になるとわかっていながら提案したのですか?」

フィーは真剣な表情で推測し、クロウは疲れた表情で溜息を吐き、ラウラは真剣な表情でレーヴェを見つめて尋ねた。



「ああ。それと同様の理由でもう一つの最有力候補は”ケルディック要塞”だ。」

「ケルディック要塞という事は………」

レーヴェの説明を聞いたマキアスはユーシスに視線を向け

「―――狙いはルーレと同じエレボニア帝国の五大都市の一つであり、”四大名門”の一つである”アルバレア公爵家”に甚大な被害を与える事ができるバリアハートか。」

「ユーシス…………」

「………………」

目を細めて呟いたユーシスの様子をエリオットは心配そうな表情で見つめ、ガイウスは静かな表情でユーシスを見つめていた。



「レン皇女は何故、多くの民達が犠牲になるとわかって、そのような恐ろしい提案をされたのでしょう……?」

「レン皇女曰く列車砲でクロスベル自治州の民達を人質に取ったエレボニア帝国は自分達に列車砲の砲口を向けられても文句は言えないとの事だ。―――つまりは”因果応報”という事だな。」

不安そうな表情をしているエマの疑問にレーヴェは静かな表情で答え

「それは…………」

「「………………」」

レーヴェの答えを聞いたラウラやマキアス、アリサは複雑そうな表情になった。

「何にしても、本当にどっちかに配備されたらエレボニアとメンフィルの国家間修復どころか、緊張状態になるね~。」

「――だからこそ、プリネ皇女は猛反対している。二国間を緊張状態にさせないためにも……―――そしてお前達の為にもな。」

そしてミリアムの推測に答えたレーヴェの説明を聞いたリィン達はそれぞれ黙り込んだ。



「―――遅くなってすみません。ようやく公務が終わりました。」

「ただいま。」

するとその時扉が開かれ、プリネと共にエヴリーヌが教室に入ってきた。


「あ……!」

「プリネ、”列車砲”はどこに配備される事になったの!?」

プリネとエヴリーヌを見たエリオットは目を丸くし、アリサは血相を変えて尋ねた。



「あら?どうして皆さんがその事を……」

「俺が話した。後々それが原因で仲違いされては”特別実習”にも支障が出ると思われるしな」

「そう………ありがとう、レーヴェ。―――皆さん、ご安心ください。なんとかレン達を説得させる事ができましたので”列車砲”の配備する場所はユミルやケルディック要塞ではなく、異世界―――”ディル・リフィーナ”にあるメンフィルと緊張状態に陥っている国と隣接しているメンフィル領に配備する事になりました。」

レーヴェの答えを聞いて頷いたプリネは明るい表情でリィン達を見回した。



「そうか……!」

「エレボニア帝国領に隣接している場所じゃなくて本当によかったわ…………」

「そうですね……」

「……世話をかけたな。」

プリネの答えを聞いたリィンは明るい表情をし、安堵の表情をしているアリサの言葉にエマは頷き、ユーシスは静かな笑みを浮かべてプリネを見つめた。

「にしし、良い事を聞いちゃった~♪後でレクター達にも教えようっと♪」

「このガキは……」

「き、君なあ……せめてそういう事は口に出さず僕達の見ていない所でこっそりやってくれよ……」

しかし口元に笑みを浮かべたミリアムの言葉を聞いたユーシスは顔に青筋を立ててミリアムを睨み、マキアスは呆れた表情で指摘した。



「ねえねえ、それで何の授業をやっているの?」

「今は学院祭の出し物について話し合っていた所だ。」

エヴリーヌの疑問にラウラは答え

「学院祭……ああ、エステルやプリネ達が以前していた劇か。じゃあ、何?もしかしてエヴリーヌたちが劇をするの?」

「フフ、必ず劇をしなければならないと言う訳ではないのですけどね。それで、出し物は何になったのですか?」

エヴリーヌの答えを聞いて苦笑したプリネはリィン達に尋ねたが

「そ、それがその……」

「まだ白紙の状態だ。みんな、ガレリア要塞や列車砲の件で色々と気が散っていたからな。」

「そ、そうですか。」

答え辛そうにしているエマの代わりに疲れた表情で答えたマキアスの答えを聞いて冷や汗をかいた。



「ん~。―――ところで根本的な疑問なんだけどー。”ガクインサイ”ってなんなの?」

そしてミリアムの疑問を聞いたその場にいる全員は脱力した。

「き、君な……」

「”かかし(スケアクロウ)”や”氷の乙女(アイスメイデン)”は一体どういう教育をしたのだ?」

「すみません、そこの所から説明してませんでしたね……」

脱力から立ち直ったマキアスとレーヴェは呆れ、エマは苦笑し

「俺達学生が自主的にやる年に一度のお祭りのことさ。出し物やら屋台やら、ステージでの発表やら……この学院じゃ、主に1年生がクラスごとに企画するらしい。」

「2年生は進路もあるから有志限定みたいだね。後は、クラブ活動ごとに何か出すパターンになるかな?」

「へー、面白そう!それだったらゼッタイに何かやらないとダメだよー!他のクラスよりも目立たないと何かシャクだしー!」

リィンとエリオットの説明を聞いた後真剣な表情で声を上げた。



「はあ、そうなのよね……早速Ⅰ組の生徒に『絶対に負けませんわ!』とか宣言されちゃったし……」

「なにそれ。」

「フェリス嬢か。ふふ、いかにも言いそうだな。」

「実際、6月の中間試験でⅠ組は僕達にかなり対抗意識を燃やしているみたいだからな……」

溜息を吐いたアリサの話を聞いたフィーは首を傾げ、ラウラは微笑み、マキアスは考え込んだ。



「フン、ハイアームズの三男に勝ち誇られるのはあり得んが……こちらの人数が少ないことも考えに入れるべきだろな。」

「ふむ……そういう問題もあるのか。」

「うーん、せめて他のクラスの出し物がわかるといいんだけど。」

ユーシスの意見を聞いたガイウスとエリオットはそれぞれ考え込んだ。

(……確かにみんな集中しきれていない感じだな。)

そして仲間達の様子をリィンが見つめたその時

「ほらほら、しゃきっとしなさい。」

サラ教官が教室に入ってきた。



「サラ教官……」

「えっと……自習だったのでは?」

「ええ、そうだったんだけど理事会が無事終わったからね。こっちの方に戻ってきたのよ。」

「そ、それで……!?」

「”特別実習”の方は!?」

サラ教官の話を聞き、”特別実習”の有無をサラ教官が知っている事に気付いたアリサとマキアスは血相を変えて尋ねた。



「ふふ……君達の父兄はどうもスパルタみたいねぇ。全会一致で”特別実習”の継続が決定したわ。」

「あ……」

「……そうか……」

「あはは……大変だけどちょっと安心したかな。」

「うむ、先月の事を考えると慎重に行動すべきとは思うが……」

「それでも、特別実習あってのⅦ(おれたち)という感じがあるからな。」

「……そうだな。」

「メンドくさいけど仕方ないか。」

「エヴリーヌは勉強よりそっちの方がいいから、よかったよ。」

「もう、エヴリーヌお姉様ったら……」

「やれやれ……」

「皇子殿下や理事の方々には感謝しないといけませんね。」

「あはは、よかったねー。」

「進んで苦労を背負い込むとは若い、若いねぇ。」

サラ教官の口から出た答えを聞いたリィン達はそれぞれ明るい表情をした。



「ふふ……―――そうそう。皇子殿下や理事の方々はそろそろ帰られるそうよ。まだ授業中だけど許可するから挨拶してきたら?」

「あ……」

「そ、そう言う事なら。」

「……お言葉に甘えさせてもらうか。」

そしてサラ教官の提案によってリィン達はオリヴァルト皇子達を見送る為に校門に向かった。




 
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