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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第119話

~封印区画・最下層・最深部~



「か、勝ったぁ~~っ……」

バラバラになって完全に沈黙したトロイメライを見てエステルは安心した。

「……みんな、ご苦労だったな。」

安心しているエステル達のところにカシウスが近付いてきた。

「ただいま。エステル、ヨシュア。ずいぶん久しぶりだな。」

「と、と、と……父さん!?」

今まで行方不明だったカシウスを見てエステルは驚いて叫んだ。

「まだまだ詰めは甘いが一応、修行の成果は出たようだな。今回は合格点をやろう。」

「ご、合格点じゃないわよ!なによ、父さん!なんでこんな所にいるの!?」

「なんでって言われても……まあ、成り行きってやつ?」

「ど、どんな成り行きよっ!」

エステルとカシウスの親子漫才が始まり、ヨシュアは相変わらずの様子に苦笑した。

「はは、父さんも相変わらず元気そうだね。」

「ほう、お前も少し背が伸びたみたいだな。どうだ、エステルのお守りは色々と大変だっただろう?」

「どーいう意味よ!?」

ヨシュアを労っているカシウスに自分の名前が持ち出され、エステルは父をムッとした表情でカシウスを睨んだ。

「まあ、それなりにね。でも、それと同じくらい僕もエステルに助けられたから。だからおあいこってところかな。」

「そうか……。いい旅をしてきたみたいだな。………そう言えばお前達、リフィア殿下達と旅をして来たようだな?」

「うん。彼女達にもずいぶん助けられたよ。」

「確かプリネ姫とも一緒だったようだな?噂の”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”と一緒の旅を出来るなんて、男として、最高の旅になっただろう?」

「ハハ………さすがにそれは言い過ぎだよ。」

からかわれるように言われたヨシュアは苦笑しながら言った。そして次のエステルの言った言葉がカシウスを驚かせた。

「そうそう、父さん。”闇の聖女”様に会えたよ!」

「ペテレーネ殿にか!?…………それでどうだった?10年ぶりに会えたお前の憧れの人物は。」

「えへへ…………以前と同じ、とっても優しい人だったよ!お母さんの事でお礼を言えたし、短い間だったけど、魔術も教えてくれたんだ!」

「そうか…………それはよかったな。」

エステルの言葉を聞いたカシウスは口元に笑みを浮かべた後、ある事を思い出した。

「そう言えば、エステル。お前が引き取った娘をここに来る途中で見たが、お前にはもったいないほどの可愛い娘だな。俺の見立てではあの娘が成長した時、とんでもない美人になるぞ~。」

「うっさいわね~!というか、どこでミントの事を知ったのよ!?」

カシウスにからかわれたエステルはカシウスを睨んで言った。



「ハッハッハ!そんな細かい事は別にいいじゃないか。」

エステルに睨まれたカシウスは笑い飛ばした。そして親子のやりとりが終わった後、シェラザードが話しかけた。

「お帰りなさい、先生!」

「おお、シェラザードか。2人の世話を任せてしまって、すまなかった。」

「フフ………別にいいですよ。」

そしてシェラザードとカシウスの会話が終わるとティータが話しかけた。

「あのあの、お久しぶりです、カシウスさん!」

「おお、ティータか。以前会った頃と比べて、背が伸びたんじゃないか?」

「えへへ………」

カシウスに言われたティータは可愛らしい笑顔を見せた。

「こんにちはです~。エステルのお父さん~。」

「会うのは久しぶりだな、リスティさん。すまなかったな。リベールの問題に関係のない貴女まで手伝わせてしまったようで………」

「エステルは友達だから、リスティは少しだけ手伝っただけですよ~。だから、気にしないで下さい~。」

「そうか……………」

リスティの言葉を聞いたカシウスはカーリアンを見た。

「それにしてもファーミシルス大将軍が陰で女王陛下を護っているのを見て驚きましたが、まさか貴女までこの娘達に力を貸してくれるとは思いませんでしたよ、カーリアン殿。」

「フフ…………別にいいわよ♪それより、前に戦った時より強くなっているんじゃない?」

「ハハ………貴女達の強さと比べれれば、微々たるものですよ。」

カーリアンに好戦的な目で見られたカシウスは苦笑しながら答えた。

「な、和やかに会話している場合じゃないってば!まったく、帰ってくるなり見せ場をかっさらって……もしかして出てくる瞬間を狙っていたんじゃないでしょうね……?」

カシウスに見せ場をとられたと思ったエステルは、カシウスが見せ場の瞬間を狙って待っていたと思ってジト目でカシウスに睨んだ。



「やれやれ……。どうやら片づいたようじゃの。」

そして少しすると中継地点にいた博士達が来た。

「ママ!」

ミントはエステルを見つけると、真っ先にエステルに抱きついた。

「無事でよかったよ~。ミント、とっても心配したんだよ!」

「フフ、心配かけてゴメンね。」

抱きついて来たミントを受け止めたエステルはミントの頭を撫でた。

「そうだ………ミントに父さんの事を紹介しなくちゃね。この人があたしとヨシュアの父さんよ。ほら、挨拶をして。」

「はーい!初めまして、お祖父ちゃん!ミントだよ!これからよろしくね!」

「ハッハッハ!まさかこの年でこんな大きな孫ができるとは思わなかったな。しかもとびっきり可愛くて素直な娘じゃないか。…………よろしくな、ミント。」

「えへへ………」

ミントを紹介されたカシウスは笑った後、ミントの頭を撫でた。そしてその後、博士達を見た。

「おお、博士。ずいぶん遅い到着ですな。」

「お前さんが先行した後、人形(マペット)の群れに囲まれてな。何とか撃退してからようやくたどり着いたが……。どうやら……全て片づいたみたいじゃな。」

博士は周りの状態を見て、安心して溜息をついた。

「ええ……。色々と課題は残ったがとりあえず一件落着でしょう。」

「で、でも……。情報部に操られた大部隊がお城に迫ってるんでしょ。女王様、大丈夫かな………?」

「確かに……。警備艇も来ていたみたいだし。父さんが来た時、地上の様子はどうだった?」

エステルとヨシュアは地上の様子が気になり、カシウスに聞いた。

「ああ。その事ならもう心配ないぞ。モルガン将軍に頼んで事態を収拾してもらっている。シードにも動いてもらったからじきに騒ぎは沈静化するだろう。」

「あ、あんですって~っ!?」

カシウスの手際のよさにエステルは驚き叫んだ。



「ふふ……なるほどな……。ここに来るまでに仕込みをしていたわけか……」

トロイメライの腕から脱出したリシャールは膝をついて自嘲気味に笑った。

「……目を覚ましたか。」

カシウスは気絶から覚めたリシャールに気付いてリシャールの方に体を向けた。

「モルガン将軍には厳重な監視をつけていた……。シードも家族を人質にとって逆らえないようにしていた……。どちらもあなたによって自由の身になったわけですか……」

「まあ、そんなところだ。だがな、リシャール。俺がしたのはその程度のことさ。別におれがいなくたって彼らは自分で何とかしたはずだ。」

「いや……違う。やはりあなたは英雄ですよ……。あなたが軍を去ってから私は……不安で仕方なかった……。今度、侵略を受けてしまったら勝てるとは思えなかったから……。だから……頼れる存在を他に探した。あなたさえ軍に残ってくれたら私もこんな事をしなかったものを……」

カシウスの言葉をリシャールは否定するように、顔を横にふって悲痛な表情で呟いた。

「………………………………」

リシャールの呟きを聞いたカシウスはリシャールに近づき、拳で思いきり殴り倒した。



バキッ!!



「ぐっ……!」

殴られたリシャールは倒れたまま、殴られた部分の痛みに呻いた。

「甘ったれるな、リシャール!貴様の間違いは、いつまでも俺という幻想から解き放たれなかったことだ!それほどの才能を持ちながら、なぜ自分の足で立たなかった!?俺はお前がいたから安心して軍を辞めることができたのだぞ!?」

「た、大佐……」

カシウスの言葉にリシャールは驚いてカシウスを見た。

「俺は……そんなに大層な男じゃない。10年前も、将軍やお前たちが助けてくれたから勝つことができた。そして、肝心な時に大切なものを自分で守る事ができずあやうく失う事をしてしまい、二度とその過ちをしないために現実から逃げてしまった男にすぎん。」

「……父さん……」

エステルはもし、あの時リウイ達がいなかったら母がどうなったかを考え悲しげな表情をした。そしてカシウスは決意の表情で話を続けた。

「だがな……もう二度と逃げるつもりはない。だから、リシャール。お前もこれ以上逃げるのはよせ。罪を償いながら、自分に何が足りなかったのかを考えるがいい。」



こうして、情報部によるクーデター計画は幕を閉じた。モルガン将軍とシード少佐によって王国軍部隊の混乱は収拾され……計画に荷担していた情報部の人間は各地で次々と逮捕されていった。そして数日後……… 
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