| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第100話

特別実習の課題を終えたリィン達はフィオーラ夫人が作った夕食をご馳走になっていた。



~ぺステ城・広間~



「とても美味しいですわ……」

「こ、これ全部をフィオーラさんが作ったんですか……?」

食事の美味しさにセレーネは驚き、アリサは信じられない表情で尋ね

「ええ。皆さんのお口にあって何よりです。」

フィオーラ夫人は微笑みながら頷いた。



「これほどの量を一人で作るなんて、大変じゃなかったのか?」

「フフ、私の一日の仕事はエリウッド様の食事の用意と寝室と執務室の掃除くらいだし、レベッカさんも手伝ってくれているからむしろ暇な時間もあるくらいよ?」

「う、う~ん……領主の正妻の人が食事を作るなんて、普通に考えたらありえないよね……?」

マキアスの質問に微笑みながら答えたフィオーラ夫人の答えを聞いたエリオットは戸惑いの表情でツーヤに尋ね

「フフ、メンフィル皇家は他の国の皇家と比べると”型破り”ですから。」

「ああ。リウイ祖父上の時と比べればこの程度、大した事はないよ。」

「私はマーシルン皇家に産まれてよかったと思います。だって、淑女の教育として将来はお母様から料理を教えてもらえますもの♪」

ツーヤはエリウッド公爵と共に微笑み、クラリスは嬉しそうな表情で言った。



「んくっ、んくっ、んくっ……ぷっっはああああッ!!異世界のお酒も中々ね♪」

「サラ教官……マルーダ城の時はエリゼしかいませんでしたから、大目に見ましたけどこの場にはエリウッド公爵達もいるんですから、少しは遠慮したらどうですか?」

一方高級ワインを瓶ごと呑んでいるサラ教官を見たリィンは仲間達と共に冷や汗をかいた後呆れた表情で指摘し

「うふふふん、硬い事は言わないの♪エリウッド公爵自身も堅苦しく接する必要はないって言ってたじゃない♪」

「だからと言って、満喫しすぎです。」

サラ教官の言葉を聞いたアリサは呆れた表情で指摘した。



「あ、フィオーラさん。ワインがなくなってしまったので、お代りお願いします。」

「フフ、わかりました。何本にしておきますか?」

「とりあえず3本でお願いします♪」

「ちょ、ちょっとサラ教官!?」

「姉さんは仮にも皇族の正妻なのに、そんな使用人のような事をさせていいと思っているんですか!?」

フィオーラ夫人にワインのお代りを頼んだサラ教官の行動を見たエリオットとマキアスは慌て

「フフ、気にしないで。エリウッド様のお客様の給仕をするのもメンフィル皇家の正妻である私の仕事だから。」

フィオーラ夫人は微笑んだ後広間に備え付けてある冷蔵庫から高級ワインを取り出してサラ教官の机の前に置いた後空の瓶を回収した。



「ありがとうございます♪」

「フフ、どういたしまして。」

「す、すみません……」

サラ教官とフィオーラ夫人のやり取りを見ていたリィンはエリウッド公爵を見つめて疲れた表情で謝罪し

「ハハ、気にしないでくれ。それにしても……凄い飲みっぷりだな……サラ殿の飲みっぷりを見ているとペテレーネ様の弟子を思い出すよ。」

エリウッド公爵は苦笑しながら答えた後サラ教官を見つめた。



「へ……」

「ペテレーネ様というと……確かプリネ様のお母様ですよね……?」

エリウッド公爵の言葉を聞いたリィンは呆け、セレーネは戸惑いの表情でツーヤに尋ね

「うん。そしてペテレーネさんの弟子なんだけど……その人は今遊撃士をやっている人なんだ。」

ツーヤは頷いて説明を続けた。



「ええっ!?ゆ、遊撃士!?」

「何で遊撃士が”闇の聖女”の弟子になっているんだ!?」

ツーヤの話を聞いたエリオットとマキアスは驚き

「フフ、色々とあったんですよ。元遊撃士のサラ教官はご存知ですよね?シェラザードさんの事を。」

「ああ、風……じゃなく今は”嵐の銀閃”を名乗っているあいつでしょ?さすがにあたしはシェラザード程うわばみじゃないわよ~。しかもシェラザードと違って、酒癖は悪くないし。」

ツーヤに尋ねられたサラ教官は頷いて答えた後苦笑した。

「……酒癖が悪くないなんて、よく言えますね……」

「アハハ……」

サラ教官の答えを聞いたアリサはジト目になり、アリサの言葉を聞いたセレーネは苦笑し

「しかし何故エリウッド公爵がその遊撃士の方と同じ酒の席をする事になったんですか?」

ある事が気になったリィンは不思議そうな表情でエリウッド公爵を見つめて尋ねた。



「リウイ祖父上がイリーナ様の婚約を発表した時と結婚式の際のパーティーでたまたま見かけたんだよ。」

「シェラザードさんって、凄いんですよ!お酒の飲み対決でカーリアン様やファーミシルス大将軍とまともに戦えるんですから!」

「ええっ!?そ、その名前って……!」

「”戦妃”と”空の覇者”じゃないか!一体何があってそんな事になったんだ……?」

エリウッド公爵の説明を嬉しそうな表情で補足したクラリスの話を聞いたエリオットは驚き、マキアスは信じられない表情で声を上げた後考え込んだ。



「フフ、あのお二人は元々身分なんて気にしない方達ですから、あの二人にとってシェラザードさんは飲み対決では自分達とまともに戦える好敵手なんですよ。」

「それにメンフィル皇家自身が身分に関してほとんど気にしない皇家なのよ。」

「民の方達にとっては素敵な皇族ですわね。」

ツーヤとフィオーラ夫人の説明を聞いたセレーネは微笑んだ。



「というか今更気付いたんだけど……サラ教官が何本も飲んでいるワインって相当高級な気がするんだけど。」

「た、確かに言われてみれば……」

「まあ、皇族や皇族の客人用ですから、間違いなく高級でしょうね……」

その時ある事に気付いたアリサの言葉を聞いたリィンとセレーネは冷や汗をかき

「そのワインでしたら一本50万ルドラですよ。」

フィオーラ夫人は二人の疑問に答えた。



「い、一本50万!?」

「相当の高級ワインじゃないか!」

「し、しかも50万なら幻のワインと言われている『グラン=シャリネ』の1183年物が落札された時の値段と同じよ!?」

「それをサラさん、何本も飲んでいますよね……?」

フィオーラ夫人の答えを聞いたエリオットとマキアス、アリサは驚き、セレーネは冷や汗をかいてサラ教官を見つめ

「んふふふ~♪さすが皇族が飲んでいる酒は違うわね~♪」

サラ教官は一切動じず嬉しそうな表情で次々と高級ワインを飲んでいた。



「という事は昨日エリゼがサラ教官に出したワインも相当高級だったんじゃ……」

その時ある事に気付いたリィンは冷や汗をかいてツーヤを見つめ

「ええ。マルーダ城の客人用に出すあのワインは確か80万ルドラですよ。」

「………………」

「は、80万……」

「とんでもない高給取りのエリゼ君の一月の給料と同じじゃないか……」

ツーヤの答えを聞いたリィンは口をパクパクさせ、エリオットとマキアスは表情を引き攣らせた。



「ハハ、僕達自身はあまり気にしていないよ。」

「それに高級な食材やお酒を使うのも皇族としての義務なのです。」

「へ……」

「どうしてそんな事が皇族の義務に……」

クラリスの話を聞いたリィンは呆け、マキアスは戸惑いの表情になった。



「既に知っていると思うがメンフィル帝国の国土は余りにも広大でその為、民が納める税金も毎月凄まじい額になっている。勿論いざという時の為に金庫等に保管しているが、ある程度のお金は民の為に使うべきと言うのがメンフィル帝国の皇族を含めた上流階級の身分を持つ者達の考え方だ。逆に尋ねるが高級食材やワインを買わないと誰が困るかな?」

「それは勿論食材やワインを作っている平民達、それらを入荷して販売をしている商人達ですが……―――あ。」

エリウッド公爵に答えを促されたマキアスはすぐに答えた後ある事に気付いて呆けた声を出し

「なるほど……”金は天下の回り物”って言葉があるくらい、お金が様々な人々の手に渡って回っているからこそ人々の暮らしは成り立っていますものね。」

「確かに平民の方々は高級食材やワインなんて滅多に買いませんからそういう物を作っているお客様は必然とお金をたくさんもっている方々になりますね。」

アリサとセレーネは納得した様子で頷いた。

「う、う~ん……じゃあエレボニアの貴族の人達もそんな考えだからこそ毎日豪華な暮らしをしているのかな?」

「それは違うと思うぞ。エレボニアのほとんどの貴族は平民達の財産を搾取しているようなものだから、平民の暮らしなんて考えてない。パトリックの奴がいい例だ。」

戸惑いの表情で考え込んだエリオットの言葉を聞いたマキアスは真剣な表情で答え

「ハハ……」

相変わらずのマキアスの様子にリィンは苦笑した。



「そういう訳ですから、食事で出される材料などの値段は気にしないでください。それに元々お父様達はお酒はそれほど飲みませんからむしろ蔵に入りきらないくらい余っている程ですし。」

「なるほどね~。さすがゼムリア大陸では”大陸最強”と呼ばれているくらい太っ腹な考え方ね♪という訳でもう5本追加で♪」

クラリスの話を聞いたサラ教官は再びフィオーラ夫人にお代りを催促し

「フフ、わかりました。」

「サラ教官は少しは遠慮してください……」

リィンは呆れた表情で指摘した。その後食事を終えたリィン達はそれぞれが泊まっている客室に戻ってそれぞれの時間を満喫し始めた。



~数時間後~



「……………………」

数時間後、リィンが泊まっている客室の扉の前でアリサは真剣な表情で扉を見つめ

「スー、ハー……スー、ハー……―――よし!」

周囲を見回し何度も深呼吸をした後決意の表情になって扉をノックした。

「リィン、少しいいかしら?」

「アリサ?ああ、鍵は開いているからそのまま入ってきてくれ。」

「―――お邪魔するわね。」

そしてアリサはリィンが泊まっている客室に入り

「あら?アリサさんがどうしてお兄様の部屋に……―――えっ!?」

アリサが部屋に入る少し前にツーヤの私室から戻ってきたセレーネはリィンが泊まっている部屋に入る大人の雰囲気をさらけ出す寝間着である漆黒のキャミソールドレスを身に纏っているアリサの服装を見て驚いた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧