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歌集「春雪花」

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 昇りたる

  山の端の霞

    雲となり

 雨降らせしは

     君の居ぬ里



 山々から立ち上る霞…それは湧き立つ雲となり、空を覆ってゆく…。

 その雲はひっそりと雨を降らせて大地を濡らしてゆく…。

 彼のいないこの里を…私の寂しく想う心の中すらも…。



 想いても

  虚しきことの

   多かりき

 世は侘しきし

    時は還らず



 ただ愛しく、彼を想い続けても…何と虚しさの多いことだろう…。

 私にとってこの世界は、寄る辺のない…ただ移り行くだけのものかも知れない…。

 愛も得られず…かといって諦めも出来ず…。

 もはや若さもないこの身に、時間を戻せるはずもなく…後は老いて虚しく死にゆくだけなのだろう…。



 
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