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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第87話

~地下墓所~



「よ、よかった~……」

「ああ……一時はどうなる事かと思ったよ……」

「フフ、イリーナ皇妃の助言とリィンのお蔭だな。」

その様子を見守っていたエリオットとマキアスは安堵の表情で溜息を吐き、ラウラは静かな笑みを浮かべ

「あの”英雄王”に真正面から意見をするなんてやるじゃない♪」

「正直驚きました。あんな事ができるのはイリーナ皇妃を除けばエステルさんくらいでしょうし……」

「ハハ……イリーナ皇妃の助言がなければ、かなり危なかったですよ。」

サラ教官とツーヤはリィンに微笑み、リィンは苦笑していた。



「うむ!さすがはエリゼの兄だな!」

「フウ……兄様が陛下に意見をするなんて正直、生きた心地がしなかったわよ……」

感心された様子のリフィアに見つめられたエリゼは疲れた表情で溜息を吐いた。

「兄様っ!兄様が助言して頂けなければ、私のせいで姫様を含めた多くの方々にご迷惑をかける所でした……本当にありがとうございます……!」

「ハハ……俺がお前とエリゼを守るのは当たり前だし、それにほとんどイリーナ皇妃のお蔭だよ。」

エリスに抱き付かれたリィンは苦笑しながらエリスの頭を優しく撫で

「イリーナ皇妃、本当にありがとうございました……!」

「―――妹や妹の友人を庇って下さってありがとうございました……」

リィンから離れたエリスはエリゼと共にイリーナ皇妃を見つめて頭を下げた。



「フフ、私は大した事はしていませんよ。それに私の大切な専属侍女長の愛弟子を困らせたくなかったですしね。」

「……ご配慮、感謝致します。」

優しげな微笑みを浮かべて言ったイリーナの言葉を聞いたエクリアは微笑みながらイリーナに会釈し

「それよりエリスさん。今回の件で責任を感じてアルフィン皇女と距離を取るような事はしない方がいいと思いますよ。」

「え…………」

「そうでないと、貴女を思って勇気を出したお兄さんの行動の意味がなくなりますもの。確かにリウイの言う通り線引きは必要ですけど……他国の皇族や貴族と”縁”を結ぶ事も貴族の子女として、大切な事ですしね。」

「イリーナ皇妃…………はい……!」

優しげな微笑みを浮かべるイリーナの言葉に驚いたエリスはすぐに気を取り直して真剣な表情で会釈をした。



「何から何まで本当にありがとうございます…………特にリィンさんにはどんな恩返しをしたらいいのか、思いつかなくて申し訳ないですわ……」

「そ、そんな!俺の事は気にしないで下さい!ほとんどイリーナ皇妃のお蔭ですし……!」

イリーナに会釈をした後困った表情で考え込んでいるアルフィン皇女の様子を見たリィンは慌てた様子で謙遜した。



「―――でしたら、夏至祭最終日に宮殿で開かれるパーティーにリィンさんを招待して、殿下のダンスパートナーに指名してはいかがですか?殿下直々に招待され、ダンスパートナーに指名されるほどの信頼がある事によってリィンさんの箔がつき、貴族達も孤児のリィンさんを拾って養子にした事やメンフィル帝国に所属したシュバルツァー家の影口を叩きにくくなると思われます。」

するとその時クレア大尉がアルフィン皇女に微笑んで提案し

「いい”っ!?」

「「!?」」

(あら♪何だか面白い展開になってきたわね♪)

(ふふふ、そうですね。)

クレア大尉の提案を聞いたリィンは表情を引き攣らせ、エリゼとエリスは血相を変え、ベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をし

「まあ……!それは良い提案ですね……!あ、その前に……リウイ陛下、どうかリィンさんをわたくしのダンスパートナーを務める事を許して頂いてもよろしいでしょうか……?」

アルフィン皇女は嬉しそうな表情で頷いた後ある事に気付いてリウイを見つめた。



「――――さっきも言ったようにシュバルツァー家がエレボニア皇家と縁がある貴族である事は知っている。俺達に一言断ってもらえれば、そんな些細な事に一々口出しをするつもりはない。」

するとリウイは口元に笑みを浮かべてリィンを見つめ

「え”。」

リウイに見つめられたリィンは呆けた声を出して冷や汗を滝のように流し始め

「ありがとうございます……!」

リウイの答えを聞いたアルフィン皇女は嬉しそうな表情をした。

「念の為にお聞きしますが、皇女である貴女自身が自らリィンさんをダンスパートナーに指名する事によって生じる”リスク”は承知の上なのですよね?」

「え……?―――!はい、勿論承知しておりますし、わたくし自身は”リスク”だなんて思っていませんわ……!と言う訳でリィンさん、どうか夏至祭最終日に宮殿にて開かれるパーティーに参加して、わたくしのダンスパートナーを務めて頂けませんか?お願いします……!」

イリーナの問いかけに一瞬首を傾げたアルフィン皇女だったがすぐに察した後嬉しそうな表情で頷いた後リィンに頭を下げた。



「あ、頭をお上げ下さい……!それに昨日も言ったように俺には大役過ぎて、とても殿下のダンスパートナーを務められるとは思えません……!」

アルフィン皇女に頭を下げられたリィンは慌てた様子で答えたが

「アルフィン皇女はその事も承知で頭を下げてまで頼んでいるのじゃぞ?それを無下にするのはメンフィル帝国の貴族……いや、人としてどうかと思うぞ?」

「それにアルフィン皇女はリィンさんをダンスパートナーに指名する事によって、貴族やマスコミの方達に、エレボニア貴族の方達からは評価が低いリィンさんがアルフィン皇女自身の婿候補に見られるかもしれないという”リスク”を背負ってまで頼んでいるんですよ。それでも受けないなんて、アルフィン皇女が可哀想すぎると思いますよ?」

「う”っ……!」

口元に笑みを浮かべたリフィアと微笑みながら言ったイリーナの指摘に唸り声を上げて冷や汗を滝のように流しながら表情を引き攣らせた。

「御二方の仰る通りだぞ、リィン。」

「アルフィン殿下が自ら頭を下げて、更にリスクを背負ってまで頼んでいるんだから、お受けしないと色々と不味い気がするぞ、リィン。」

「アハハ……確かにそうだね。」

「え、えっと……観念して受けた方がいいと思いますよ、リィンさん。」

「”リスク”も覚悟しているアルフィン殿下に頭を下げさせても受けないなんて、とんでもない罰当たり者よ~?」

「ラウラ達や教官まで……ううっ、わかりました……――――俺如きではとても務まらない大役だと思いますが、殿下がそこまで仰るなら、リィン・シュバルツァー、不肖の身ですが務めさせていただきます。」

そしてラウラ達にまで集中攻撃をされたリィンは疲れた表情で答えた後すぐに気を取り直して真剣な表情でアルフィン皇女に会釈をした。



「はい♪よろしくお願いしますわね♪」

リィンの答えを聞いたアルフィン皇女は誰もが見惚れるような笑顔を浮かべてリィンを見つめ

「「に・い・さ・ま~~~??」」

エリゼとエリスは膨大な威圧を纏うと共に全身に目にも見える程の怒気をメラメラ燃やしながらリィンを見つめて微笑み

「だ、だから何でそこで俺を責めるんだよ!?」

二人に微笑まれたリィンは慌てた様子で答えたが

「「ギロッ。」」

「すみません……」

全てを凍てつかせるような姉妹の視線に反論できず、肩を落とした。



「それにしてもアンタがそんな提案をするなんて、一体どんな風の吹き回しかしら?」

リィン達を見守っていたサラ教官は口元に笑みを浮かべてクレア大尉を見つめ

「フフ、リィンさんの発言のお蔭で私達も助かったようなものですからね。そのお礼の一部を返したまでですよ。」

「なるほどね~。”氷の乙女(アイスメイデン)”に借りを作るなんて、やるじゃない♪」

静かな笑みを浮かべて言ったクレア大尉の言葉を聞いて納得し、口元に笑みを浮かべてリィンを見つめていた。



「フフ、どこかの誰かさんを見ているみたいですね。」

「……何故そこで俺を見る。」

エリゼとエリスに睨まれて慌てているリィンの様子を微笑みながら見守っていたイリーナに見つめられたリウイは呆れた表情で答え

「やれやれ……相変わらず嫉妬深い奴じゃな。」

「アハハ……」

「クスクス……」

リフィアは呆れた表情でエリゼを見つめ、ペテレーネは苦笑し、エクリアは微笑んでいた。

「………………”帝国解放戦線”―――――ようやく姿を現しましたね。」

そしてイリーナ達と共に微笑ましそうに見守っていたクレア大尉は真剣な表情で奥を見つめて呟いた。



~2時間後・ヘイムダル~



「よし……っと。もうこれで大丈夫だよ。」

「ありがとう、お姉ちゃん。」

2時間後、テロリスト達による騒動が収まったその頃トワはエステル達やアンゼリカと共に手分けして、テロリストが起こした騒動によって傷ついた市民達の傷の手当てをしていた。

「よお……トワ……大至急……俺に手当てを頼む……」

するとその時全身血塗れで身体の所々に火傷も負っているクロウがよろよろとトワに近づいてきた。



「ク、クロウ君!?ど、どうしたの、その傷……!?」

「ハハ……帝都内の魔獣や人形兵器から市民達を庇って戦っていた時にちょっとドジ踏んじまってな……」

「ちょ、ちょっと待って!凄い治癒魔術ができる人を呼んでくるから!フェミリンスさん!こっちに重傷者がいます!」

そしてトワは慌てた様子で別の場所で市民達の傷を癒しているフェミリンスを呼びに行き

「クソッたれ…………”奴”を葬るまで、テメェらにも絶対に邪魔させないし、あいつらの仇は必ず取ってやる……!」

トワが離れると壁にもたれかかって座り込んだクロウは”モルテニア”が停泊している空港を怒りの表情で睨みつけて唇を噛みしめて小声で呟いた。



こうして……メンフィル帝国軍と鉄道憲兵隊の主導によって夏至祭初日の混乱は収まった。手傷を負いながらも陣頭指揮を取ったレーグニッツ帝都知事の働きにより、3日に渡る夏至祭も無事終了した。



また……夏至祭最終日、リィンは約束通りアルフィン皇女のダンスパートナーを務めた。正当な血筋の貴族ではなく、シュバルツァー男爵が拾った”浮浪児”であるリィンの事を知っていた貴族達はリィンに暴言を吐き、アルフィン皇女に苦言を申し出たが、ユーゲント皇帝自身からアルフィン皇女の失態をリィンがリウイに意見した事によって撤回され、アルフィン皇女はその恩返しにリィンをダンスパートナーに誘った事を説明した事やリィンをメンフィル帝国の貴族として認めているリウイやリィンの妹であるエリゼを専属侍女長にしているリフィア、そして恩返しをするつもりだったリィンに暴言を吐いてリィンの気分を害したと思って怒りの表情になったアルフィン皇女に睨まれて自分達が暴言を吐いた相手であるリィンに頭を下げて謝罪する事を”命令”され、さすがにユーゲント皇帝とアルフィン皇女、メンフィル皇家には逆らう事ができず……唇を噛みしめてリィンに頭を下げて謝罪した後すごすごと引き下がり、悔しそうな表情や怒りの表情でリィンを睨んでいたという……………… 
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