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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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~白き花のマドリガル~後篇

王室親衛隊員達VSリウイとエステル。エステルにとっては慣れていない武器と初めて共に戦う仲間であり、どんな戦い方をするかわからないリウイがいる上、数も敵が上の状況で戦いは厳しいと思われた。しかし



~ジェニス王立学園・講堂~



「「喰らえ!」」

「甘い!」

「「うわ!?」」

2対1という普通なら不利な状況でリウイは余裕の表情で親衛隊員達の攻撃を捌き、吹っ飛ばした。さらに

「左を狙っての突きがくるぞ!身体を右に傾けろ!」

「なっ!?」

「了解!」

親衛隊員の攻撃を読みとり、エステルに回避の指示をした後、反撃の指示をした。

「その状態から斬り上げろ!」

「ヤァッ!」

「グ……!」

エステルの反撃に親衛隊員は驚き、後退した。

「すかさず突けっ!」

「はっ!」

「くっ………!」

崩れた態勢を直そうとした所にリウイの指示によってのエステルの攻撃に親衛隊員は驚いて、剣で防御した。



「くっ……挟み撃ちして交互に攻撃するぞ!」

「ああ!」

リウイの強さに2人の親衛隊員は素早くリウイを挟み撃ちした。そしてリウイの正面に移動した親衛隊員が攻撃を仕掛けた。

「セイッ!」

「フッ!」

「そこだっ!」

正面からの攻撃を防御しているリウイに背後から襲った。しかし

「狙いは悪くない。……しかし相手が悪かったな!そこだっ!」

「カハッ!?」

武器を持っていない手で競技用のレイピアを収めていた鞘で背後の敵の腹を相手の勢いを利用して突きさした。勢いよく襲いかかった背後の親衛隊員は自らの勢いのよさのせいで腹に強烈な一撃が入り、剣を落として蹲った。そしてリウイは落とした剣を足で舞台脇まで蹴り、目の前の敵を無力化するためにまず敵の武器の一点に集中攻撃した。

「行くぞ……!」

「うわわわ!(は、速すぎて攻撃が見えない……!)」

リウイの神速の連続突きに親衛隊員は慌てて防御したが、攻撃が見切れずリウイの攻撃によって自分に伝わる衝撃に手が踊らさられた。その隙を逃さずリウイは持っている武器に闘気を込めて技を放った!

「フェヒテンアルザ!!」

「なっ……!剣が……!」

リウイの一点集中攻撃に耐えられず、親衛隊員の持っていたレイピアが折れて武器として使い物にならなくなった。武器が壊れて驚いている親衛隊員にリウイはすかさず強烈一撃を放った!

「セアッ!」

「ガ………」

高威力を持つ突剣技――フェヒテンケニヒを正面から受けてしまった親衛隊員はその場でくずれ落ち、二度と立ち上がらなかった。そしてリウイは武器に魔力を纏わせて魔法剣を自分が相手した2人に放った!

「風よ!ウィンディング!!」

「「ぐわっ!?」」

風属性の魔法剣を受けた2人は悲鳴を上げて、デュナンの足元まで吹っ飛んだ。

「ひっ……!な、何をしているのだ!お前達は親衛隊員だろ!なんとかしろ!」

自分の足元まで吹っ飛ばされた2人にデュナンは悲鳴を上げて、残りの一人に文句を言った。

「か、閣下……!そんな無茶な……」

「隙あり!」

「うわ!?しまった!!」

エステルの攻撃をレイピアで防いでいた最後の一人はデュナンの言葉に顔だけデュナンに向けて答えた。そしてエステルは防御が疎かになった親衛隊員を逃さず、力を入れて親衛隊員をのけ反らせ、ある構えをした。

「確か、プリネがやっているクラフトってこんな構えだったわね。……リウイって人の技を見たお陰でちょっと思いついたわ……いっちょ、やってみますか!」

共に戦っているプリネのクラフトの構えを思い出し、リウイのクラフトを真近で見たエステルは試しに先ほどのリウイが放ったクラフト――フェヒテンアルザの攻撃前に似た構えをした。



(え!?あの構えは!)

舞台脇で生徒達といっしょにエステルとリウイの共闘を見守っていたプリネはエステルの構えを見て驚いた。

(おいおい……王国軍の中でも精鋭の強さと言われる親衛隊員があんなにあっさりやられるとか、エステルの横で戦っている人って何者だ!?)

一方ハンスはリウイの強さを目にして驚愕した。

(……………………まさか、あの方が学園祭に来てらしてたなんて………………この後、どうすれば……………)

リウイの正体がすぐにわかったクロ―ゼは驚いた後、今後の事を考え不安そうな表情をした。



「行くわよ……!フェヒテンイング!!」

「うわっ!?」

闘気を纏った連続攻撃のクラフトであり、メンフィル皇家に伝わる皇技――フェヒテンイングをエステルは最後の一人に向かって放った。親衛隊員はエステルの闘気の籠ったクラフトを受けて膝をついた。そこを逃さず、エステルはさらに弱めの威力に調節して、レイピアに暗黒魔術を纏わせた。

「吹っ飛べ!黒の衝撃!」

「ぐはっ!」

エステルがレイピアを一振りすると、レイピアに纏っていた暗黒魔術が親衛隊員を襲い、デュナンの足元まで吹っ飛ばした!

「ひ、ひいいい………!」

自分の護衛が全てやられた事を理解したデュナンは逃げようとしたが

「部下をほおって、どこに行く気だ?」

「ひ!い、いつの間に!?」

いつの間にかデュナンの背後にいたリウイにぶつかり、デュナンは腰を抜かしてうめいている親衛隊達のところまで情けない姿で後退した。



「さ~てと。邪魔者はそろそろ退散してもらうわよ……!行くわよ、リウイ!」

「………いいだろう!」

観客に聞こえないぐらいの声の大きさのエステルの呼びかけに頷いたリウイは、やや離れた場所で魔法剣を放った!

「舞い上がれ!!」

「「「うわぁっ!?」」」

「お、おわ~!?」

魔法剣によってできた風がデュナン達を襲い、デュナン達を空へ舞い上げた。

「せいっ!」

「「「「ガハッ!?」」」」

舞い上がり、落ちて来たデュナン達にエステルは飛び上がって、クラフト――捻糸棍を放つ用法で剣で闘気でできた衝撃波をデュナン達の頭上から放ち、デュナン達を叩き落とした!そして叩き落とされたデュナン達に向かって着地したエステルはリウイと共に挟み撃ちして闘気を込めたレイピアで息もつかぬ連撃を放った!

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「オォォォォォォォォッ!」

エステルとリウイは叫びながら何度もデュナン達を斬りまくった!2人の闘気の籠った斬撃は余波で衝撃波をうみ、その衝撃波がデュナン達を再び空中へと舞い上がらせた!

「「「ぐわぁぁぁ………!?」」」

「ぎゃぁぁぁっ………!!??」

エステルとリウイの猛烈な攻撃にデュナン達は悲鳴を上げた。

「はぁっ!」

「セアッ!」

2人の猛烈な攻撃はやがて終わり、最後の攻撃でデュナン達をまた空高くへと舞い上げた。そして2人は並び、同時に目を閉じた状態で突きの構えで魔力を剣に溜めた。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「オォォォォォォォォッ!」

同時に目を見開き、魔力によってエステルの剣には雷が、リウイの剣には暴風が宿り、2人は落ちてくるデュナン達に同時にそれぞれの渾身の一撃を放った時、それらは併せ(コンビクラフト)となった!光に生き、誰からも愛された少女と、闇の中で生き、ほとんどの同族達からは半端者として忌み嫌われ、自分の事をひた向きに慕う少女の存在に気付かず孤独に育った王が放つ嵐のような激しさの連撃と威力。その技の名は……!



「「奥義!太極嵐双剣!!」」



リウイが放った暴風の魔法剣にエステルの放った雷の魔法剣が混ざり、デュナン達に襲った!

「「「「ぎゃぁぁぁ………!!」」」」

暴風に混ざった雷に感電したデュナン達は悲鳴をあげながら、暴風によって観客達の頭上を越えて入口まで吹っ飛ばされた!

「……!!」

「「「「うわぁぁぁっ………!ガ!?…………」

「か、閣下~………!!」

入口付近にいた銀髪の青年は吹っ飛ばされて来たデュナンに気付き、身体を少し横に向けて回避した。そして入口を越えたデュナン達は門がある壁まで吹っ飛び、気絶した。そしてデュナンを心配したフィリップは吹っ飛ばされたデュナンを追うかのように、講堂から去って行った。



(おお!さすがリウイ!見事な裁きじゃ!それにまさか、エステルとの共闘が見れるとは……!)

(さすがリウイお兄ちゃん!惚れ直しちゃいそう……キャハッ♪)

(もう!お父様ったらどこが『少し灸を据える』ですか!完全にやり過ぎではありませんか!……すみません、ペテレーネ様。私はちょっと失礼します!)

リウイとエステルの活躍にリフィアとエヴリーヌは喜び、ティアはやり過ぎた攻撃に怒って、その場から去ろうとしたところをペテレーネが呼び止めた。

(あ、ティアさん!どちらへ行かれるつもりですか?)

(決まっています!お父様達に追い出された方達の傷を癒します。競技用の剣でしたから、傷は酷くないと思うのですが一応念のために癒しておきたいのです。)

(あ、でしたら私も手伝います。リフィア様、エヴリーヌ様。もう、お二人の怒りは収まりましたよね?)

(うむ!ここは心配ないから、お前はティア殿といっしょに行ってくるがいい!)

(ありがとうございます。……ティアさん、行きましょう。)

(はい!)

そしてペテレーネとティアはその場を離れ、急いでデュナン達の元に向かった。



「………俺の役割はここまでだ。後は任せる…………」

剣を鞘に収めたリウイはエステルに剣を渡して言った。

「いつかまた、貴殿と会える日は来るだろうか……?」

エステルは自分の役割を思いだして、再び紅騎士ユリウスになりきり、本心も込めたセリフを言った。

「………縁があればまたいつか、会えるだろう。(リフィア達の面倒をもうしばらく頼む。………お前との共闘………短いながらも楽しませて貰えた。……いつか共に肩を並べて戦う日が来る事を楽しみにしているぞ。)」

(え?)

リウイが去り際に言った小声の言葉にエステルは呆けた。

「………さらばだ。」

リウイはエステルに背を向けると入口に向かって跳躍し、着地すると近くにいながら、気配を隠していた銀髪の青年に目をやった後、入口から去って行った。



「………………………」

「ユリウス!」

去って行ったリウイを見続けたエステル――ユリウスにクロ―ゼ――オスカーが役者全員を引き連れて声をかけた。

「クロ……おっと。オスカー!姫も!」

「心配しましたよ、ユリウス。」

セシリアが心配そうな表情で話しかけた。

「どうしてみながここに?」

「………ミリガン殿が去って行くのを見たからな、もう脅威は去ったと思ってお前を心配してこうして来たのだ。特にオスカーと姫が急かされて大変だったぞ……」

疑問を持ったユリウスにザムザが口元に笑みを浮かべて答えた。

「ザ、ザムザ!」

セシリアは恥ずかしそうな表情でザムザを咎めた。

「フフ……ありがとうございます、姫。此度のような試練がリベールに再び訪れても私達が斬り払う事をここに誓わせて下さい。」

「姫、私も誓わせて下さい。」

オスカーはユリウスと共に、セシリアの前で跪いて宣言した。セシリアは最初、2人の宣言に驚いたが、少しの間考えた後口を開いた。

「ユリウス、オスカー………わかりました。セシリア・フォン・アウスレーゼの名において、2人の誓いを認めます!」

セシリアは肩手を上げて、宣言した。そしてザムザはそれを見て、最後の幕引きの言葉をユリウスの代わりに叫び、公爵や議長がザムザの言葉を続けた。

「女神達よ、再び照覧あれ!今日という良き日がいつまでも続きますように!」

「リベールに永遠の平和を!」

「リベールに永遠の栄光を!」

そして舞台の幕は閉じた。



「フフ……どのような事が起きても、やはり最後は大団円か。だが……それでいい。(それにしても気配を最大限に消していた俺に気付くとは、さすがは”大陸最強”。あの時も思ったが、剣士として、いつか本気で手合わせを願いたいものだ……)」

講堂の扉の前にいた銀髪の青年がそう呟いて講堂を出て行った。



こうして『白き花のマドリガル』はトラブルもあったが、大好評のうちに幕を閉じた。



同時に、学園祭の終了を告げるアナウンスが鳴り響き……



来場客は、みな満足した表情で学園を後にするのだった……… 
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