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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第25話

その後ホテルにチェックインし、部屋に荷物を置いて集合したリィン達は課題を確認後、依頼を達成する為に依頼人の許へと向かった。



~バリアハート・ターナー宝飾店~



「なるほど、じゃあこれから……」

「ええ、そろそろ見える頃だと思いますけど……」

リィン達が依頼人である店員に近づくと店主は旅行者と話していた。

「おっと……先客かな?」

「どうしましょう。また後で訪ねてみましょうか?」

「おや……その制服は……それにユーシス様も。ようこそ、いらっしゃいました。実習の依頼の件でご来店ですね。」

そしてリィン達に気付いた店員は振り向いてリィン達が来た理由をすぐに察した。



「そうだが………俺がいるからといって特別扱いしないでくれ。取り込み中なら改めるが?」

「いえいえ……実は丁度ユーシス様たちのことをお話させて頂いていたので。」

「そうか、ならいいが。」

「あの、俺達のことを話していたというのは……?」

ユーシスと店員の会話から自分達の事が出てきた事を不思議に思ったリィンは尋ねた。



「ええ、順を追って説明します。こちらの方はベントさんといって、バリアハートへは旅行でいらしているそうなのですが……実は皆さんへの依頼は、ベントさんからもらった注文が発端でしてね。」

「えっと……まあ、なんていうのかな。僕は近い内に結婚する予定でね。ここで結婚指輪を作れないかと思って、相談に来たんだよ。バリアハートの職人街といえば毛皮もそうだけど宝飾店の加工でも有名だからね。」

店員に紹介された旅行者は恥ずかしそうに笑いながら答えた。



「ふむ、そのためにわざわざ……」

「ふふ、素敵ですね。」

「ええ。奥さんの為にわざわざバリアハートまで足を運ぶなんて、とても奥さん思いの方ですよ。」

旅行者の説明を聞いたユーシスは目を丸くし、エマとツーヤは微笑んだ。

「とはいえ、宝石となると……」

一方宝石の値段が気になっているマキアスは言い辛そうな表情をし

「うん、かなりの値が張りそう。」

マキアスが言いかけた事をフィーが頷いて続きを言った。



「ああ、確かにその通りだ。実際、俺の稼ぎだとここで指輪を買うことはものすごい出費でね。それも、七耀石の指輪となるとなおさらだ。だからほとんど諦めていたんだけど……無理を承知で相談してみたらブルックさんがいいアイデアをくれたんだ。」

「いいアイデア……?」

「ええ、いわゆる宝石と比べて価値が一段劣るとされるものの、美しさでは決して引けを取らない石。そういう石の事を、『半貴石』と呼ぶんですが……その内の一つ、”ドリアード・ティア”で指輪を作るのはどうかと提案したんです。」

「ふむ、初めて聞く名だな。」

宝石関連にある程度詳しいユーシスは初めて聞く宝石の名前を聞いて考え込み

「”樹精の涙(ドリアード・ティア)”……聞いたことがあります。ある種類の木に流れる樹液は外気に触れて時間が経つと、石のように固まることがあるって……その透明で純粋な輝きは七耀石にも勝るとも劣らないとか。」

聞き覚えがあるエマは説明した。



「ええ、その通りです。ずいぶん詳しいんですね。」

「委員長、宝石の知識にも通じているんだな。」

「さすがだね。」

「あはは……ちょっと興味があって。」

店員やリィン達に感心されたエマは苦笑した。



「そうすると僕達に頼みたいのは……」

話を聞いて自分達に何をしてほしいのかを察したマキアスは店員を見つめた。

「ええ、まさにその”ドリアード・ティア”の調達です。幸い、北クロイツェン街道にはそれを採取することのできる木が沢山生えていましてね。ただ、半貴石とはいえ、それなりに珍しい物には違いありません。なので、相当探さないと見つけられないとは思いますが。」

「なるほど……少々骨が折れるかもな。」

そして店員の説明を聞いたリィンが考え込んだその時

「いや―――そんなことはない。」

「え……」

宝石を見ていた客の一人である白マントの男がリィン達に話しかけてきた。



「!!??」

男を見たツーヤは思わず目をギョッとさせた後表情を引き攣らせた。

「君達がこれから探そうという無垢なる木霊の涙……それを先程、この目で見たというたら?」

(な、なんだ、この男は……)

口元に笑みを浮かべて説明する男の様子をマキアスは戸惑いながら見つめ

(ユーシス、知り合いか?)

(いや……覚えはないな。)

男がバリアハートに住む貴族だと予想したリィンはユーシスに尋ね、尋ねられたユーシスは男の容姿や服装をよく見た後自分の知り合いではない事を言った。



「フフ、私としたことが少々順番が狂ってしまったか。」

一方リィン達の様子を面白そうに見ていた男はその場で恭しく一礼し

「改めて、お初にお目にかかる――――私の名はブルブラン男爵。絵画に彫刻といった美術品、そして美麗な細工の施された様々な調度や工芸品の数々……およそ芸術と名のつく物があれば、どんな物にでも愛と情熱を傾ける―――自他共に認める好事家さ。」

男―――ブルブランは笑顔で自分の自己紹介をした。

「そ、そうですか……(なんというか、とっつきにくい人だな……)」

(何で”怪盗紳士”がバリアハートに……しかもこんな白昼堂々と、しかも素顔をさらして宝飾店にいるんですか……)

ブルブランの自己紹介を聞いたリィンは戸惑い、ツーヤは呆れた表情で溜息を吐いた。



「それより―――話は聞かせてもらった。君達はこれから”ドリアード・ティア”を探しに行くそうだね?」

「ええ、そうですが……」

「あの、今『さきほど見た』と仰いましたよね?それは本当なんですか?」

「ああ、美の話に関して私に嘘をつく道理はない。君達が求める光……確かに北の街道で見かけた。ただ申し訳ないが……土地勘がないので細かい場所まで説明できそうにない。フフ、だがまあそれはそれか。なぜなら、光というものは自らの手で見つけ出してこそ輝きを放つものだろうからね。」

「は、はあ……」

(エステルさん達からの話通り、確かにオリビエさんと色々似ていますね……)

ブルブランに問いかけられたマキアスは戸惑いながら頷き、ツーヤは疲れた表情になり

(……さっきから喋り方が微妙にうざい。)

(フン、それを言うなら内容もな。)

(あはは、まあまあ……)

呆れた表情でブルブランを見つめて会話するフィーとユーシスをエマは苦笑しながら諌めた。



「えっと、情報を頂けるのは正直ありがたいんですが……でもどうして、それをわざわざ俺達に?」

「フフ、単なるミラでは買えない価値を求めようという心意気……この度の話にはこのブルブラン、多大な感銘を受けた。というわけで親切心が働いただけのことだが……それ以上の理由が必要かね?」

「い、いえ……」

笑顔で問いかけられたリィンは戸惑いながら答えを濁し

「ま、情報が確かでも確かじゃなくてもどにかく行けばわかる。」

「ああ、時間も勿体ない。さっさと探索に出向くぞ。」

「そ、そうですね……」

「この後にもこなさないといけない課題もありますしね……」

フィーやユーシスの言葉を聞いたエマは頷き、ツーヤはブルブランを気にしながら頷いた。



「それではお二人とも。今から出かけてくるので待っていてください。」

「ええ、わかりました。」

「よろしくお願いします。」

「フフ、ごきげんよう。」

そしてリィン達は依頼人から頼まれた宝石を探す為に街道に出た。 
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