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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第11話

4月24日、実習当日:AM6:40―――



~トリスタ・第3学生寮~



「……ふう……(結局、謝れないままここまで来てしまったな。実習期間中、彼女(アリサ)とはずっと顔を合わせる事になる。向こうも気まずいだろうし、何とかしたい所なんだけど……)」

玄関でリィンは特別実習のメンバーを待ちながらアリサとの仲直りの方法を考え込んでいた。

「――あ。」

「!!」

(あら♪)

そして声に気付いたリィンが振り向くと1階に到着し、アリサの姿を見たリィンは驚き、リィンの身体の中にいるベルフェゴールはからかいの表情になった。



「お、おはよう、アリサ。」

自分に近づいてきたアリサにリィンは戸惑いながら挨拶をし

「……お、おはよう。」

アリサも戸惑いながらリィンに挨拶をした後、二人は黙り込んだ。



「その……早いんだな。待ち合わせの時間まで20分くらいあるのに。」

「そ、そっちこそ……えっと……何時くらいに起きたの?」

(うふふ、どっちとも初々しい反応ね~。)

それぞれ戸惑いながら会話を交わす二人をベルフェゴールは興味ありげな表情で見守っていた。



「ああ……5時くらいかな。まあ、いつもそれくらいには起きているけどな。」

「そ、そうなんだ?クラブの朝練……でも確か、まだどこにも入ってなかったわよね?」

(フフ、ご主人様の事が気になっているのがバレバレよ♪)

リィンに質問したアリサの言葉から、アリサがリィンの状況を知っている事に気付いていたベルフェゴールは微笑みながらアリサを見つめていた。



「いや、個人的な習慣みたいなものというか……そっちはラクロスだったか。朝練とかもあるのか?」

「え、ええ。週に2日くらいみたいだけど。」

そして二人の会話は途切れてその場に静寂が訪れ

「「ごめん(なさい)!」」

やがて二人は同時に頭を下げて謝罪をした。



「「ど、どうして謝るの(んだ)?」」

(クスクス、息ピッタリじゃない♪もしかして”一人目”はこの子かしら♪)

更に同時に驚いて同じセリフを言った二人の様子を見たベルフェゴールはからかいの表情でアリサを見つめた。一方二人は互いを見つめ合って黙り込み

「ははっ…………」

「ふふっ……変に気が合うわね。」

やがてそれぞれ苦笑しながら互いを見つめた。



「その……本当にごめんなさい。あれが偶然だっていうのは最初からわかっていたのに……ちょっと気が動転しちゃって頬まで叩いてしまって……しかも、あれって私を助けようとしてくれたのよね?」

「いや、気にしないでくれ。あの落とし穴にしたって俺達がケガしないように安全は配慮してあった。俺が余計な気を回さなければ起こらなかった事態だよ。」

「で、でもそんな事までわからなかっただろうし……うん、やっぱり私の方が一方的に理不尽だったわ。それと、助けようとしてくれてどうもありがとう。」

リィンにようやく謝罪する事ができたアリサは微笑んだ後仲直りの握手を求めるかのように手を差し出し

「いや……うん、どういたしまして、だな。」

リィンは差し出された手を握ってアリサと握手をした。



「はは……」

「ふふ……」

そして二人は互いに微笑み合った。

「――すまない。どうもこういうのは不調法で。妹達にもたまにたしなめられているんだけど。」

(うふふ、何を言っているのよ。その鈍感な所が面白くていいんじゃない♪)

片手で頭をかきながら申し訳なさそうな表情で説明するリィンの話を聞いたベルフェゴールはからかいの表情になり

「あら、妹さんがいるんだ?……でもやっぱりそれもこちらの台詞ね。この半月、何とかちゃんと話そうとしたんだけど……やっぱり気まずくってつい変に避けてしまって……」

リィンに妹がいる事に目を丸くしたアリサだったが、すぐに自分の今までの行動を思い出して申し訳なさそうな表情をした。



「はは……そっか。あ、でも先週の授業で助け舟を出してくれようとしてなかったか?」

一週間前歴史の授業で自分が名指しされた時、アリサがさりげなく答えを書いたノートを自分に見せていた事を思い出したリィンはアリサに尋ね

「き、気付いていたんだ。その、改めて話すきっかけにできるかなって思って……まあちゃんと答えられていたから必要なかったんだけど……」

自分の行動に気付いていたリィンをアリサは目を丸くして見つめた。



「いや、その気遣いだけでもありがたいよ。」

「そ、そう……?」

リィンの言葉を聞いたアリサは恥ずかしそうな様子でリィンから視線を逸らした後ある事を思い出し

「そ、それはともかく!貴方に非がないのは認めるけどそれとこれとは話は別だからね!?」

やがて頬を赤らめてリィンを睨んだ。



「へ―――えっと、何の話だ?」

一方アリサに睨まれたリィンは心当たりが思い出せず不思議そうな表情で尋ね

「だ、だから、あのことよ!ああもう、わかるでしょう!?」

尋ねられたアリサは頬を赤らめた状態でリィンを睨みながら指摘した。



「えっと、旧校舎の地下に落とされた時の一件だよな?」

「ええ、私があなたの顔に胸を押しつけちゃった―――」

リィンに尋ねられたアリサは思わず忘れたいと思っていた出来事を口にした後、その事にすぐに気づいてリィンを再び睨んだ。

「と、とにかく!思い出すのも厳禁なんだから!い・い・わ・ね!?」

「あ、ああ……了解だ。」

アリサに念を押されたリィンは戸惑いながら頷いた。



「フフ、そんな事があったんだ♪」

するとその時突如ベルフェゴールがリィンの隣に現れ

「ベ、ベルフェゴール!?」

「なっ!?まさか今の話、聞いていたの!?」

現れたベルフェゴールにリィンは驚き、アリサは驚いた後ベルフェゴールを睨んだ。



「勿論全部聞いていたわよ♪私はご主人様と一心同体なんだから♪」

「ええっ!?」

「あ、あのなあ。誤解を招くような事を言うなよな……」

からかいの表情で自分を見つめて言ったベルフェゴールの発言にアリサは驚き、リィンは疲れた表情で溜息を吐いた。



「フフ、でもそんなハプニングが前にもあったんだから、ご主人様って地下と相性がいいようね♪」

「そのハプニングの”原因”の一つでもあるお前がそれを言うか……?」

「そ、そうよ!それに前から言おうとおもっていたけど、貴女、肌を露出しすぎよ!そんなに肌を露出していたら、男に襲われちゃうわよ!?」

(むしろその逆だけどな……)

アリサのベルフェゴールへの指摘を聞いたリィンはベルフェゴールに無理矢理契約させられた時の事を思い出して肩を落とした。



「あら、睡魔はこの服装が普通よ?確か貴女達のクラスメイトに”闇夜の眷属”がいるわよね?その娘達に聞いた事はないのかしら?」

「た、確かに”睡魔族”って言う種族の人達は露出が多い服装を着ているって話はプリネ達から聞いていたけど、でも魔術で私達が着ているような普通の服を着た姿で変えられるんだったら、そっちの姿になればいいじゃない……」

ベルフェゴールに質問を返されたアリサは戸惑いの表情をしていたが

「だって、めんどくさいんだもん。そ・れ・に♪私は気に入った男なら別に襲われてもいいわよ♪―――例えば、ご主人様とか♪」

「な、ななななななななっ!?」

「ちょっ、頼むから離れてくれ、ベルフェゴール!」

魅惑的な笑みを浮かべてリィンを背後から抱き締めて自分にウインクするベルフェゴールの言葉を聞いたアリサは顔を真っ赤にして混乱し、リィンも顔を赤らめて慌て出した。



「うふふ、”処女”は誰でも反応が初々しくて可愛いわね♪ご主人様に抱き付いている私を見て、慌てているって事はもしかしてご主人様に気があるのかしら?」

「な、ななななななっ!?そ、そんな訳ないでしょう!?」

そしてベルフェゴールはからかいの表情でアリサを見つめ、ベルフェゴールの言葉を聞いたアリサは顔を真っ赤にしてベルフェゴールの言葉を必死に否定し

「フフ、それじゃあまたね♪」

アリサの反応に満足したのか、ベルフェゴールはリィンの身体に戻る為にその場から光と共に消えた。

「………ねえ、リィン。まさかとは思うけど、自分が主なのを良い事にベルフェゴールにいやらしい事をしているんじゃ……」

ベルフェゴールがその場から消えるとアリサはジト目でリィンを睨み

「し、してないって!」

(うふふ、今は眠っている所を狙って、魔術で熟睡させた状態で”つまみ食い”をしているけど、その内起きた状態でもしようかな♪そっちの方が面白いし♪)

睨まれたリィンは慌てた様子で答え、リィンの身体の中にいるベルフェゴールは魅惑的な笑みを浮かべてある事を考えていた。



「あれっ?」

その時少年の声が聞こえ

「あ……」

「っと……3人共おはよう。」

声が聞こえた方向に振り向くとそこには残りのメンバーであるエリオットとラウラ、プリネが二人を見つめていた。



「お二人ともおはようございます。」

「おはよう、良い朝だな。」

「えへへ、二人とも早いね。でも良かったじゃない。やっと仲直りできたんだね?」

二人で談笑している事を思い出したエリオットは笑顔で尋ね

「そ、それは……」

「はは……まあ、おかげさまでね。」

尋ねられたアリサはエリオットから目を背けて恥ずかしそうな表情をし、リィンは苦笑しながら答えた。



「そうですか。それは良かったです。これなら”特別実習”も班全員が一丸となって上手くこなせそうですね。」

「ああ。正直この半月あまり、見ていて歯がゆかったからな。特にアリサは念願かなって謝ることができたようで―――」

微笑むプリネの言葉にラウラは頷いた後何かをいいかけようとし

「わー、わー!―――い、言っておくけど!同じ班で気まずいままなのはどうかと思っただけなんだから!そこのところを間違えないでよねっ!?」

ラウラが言いかけた言葉を大声を出して制したアリサは恥ずかしそうな表情で答えた。



「はいはい。」

「フフ……」

「ふむ、仲良きことは結構なことだと思うが……」

アリサの様子を見たエリオット達はそれぞれ微笑ましそうに二人を見つめた。

「はは……―――面子も揃ったことだしさっそく出発するとしよう。列車が来るまで時間があるから店に寄ってもいいかもしれない。」

「コホン……そうね。士官学院も早朝から開いているって聞いたし。」

「それじゃあ購買とか技術部で装備も整えられそうだね。」

「では、行くとしようか。」

その後リィン達は駅に向かい始めた。 
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