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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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異伝~新たなる軌跡のプロローグ~前篇

ゼムリア歴1204年、3月1日――――



前メンフィル皇帝”闇王”リウイ・マーシルンは愛する妻イリーナや信頼できる仲間達と共にクロスベルで起こった”D∴G教団事件”に関わり、事件終息後大使館に帰還して元の仕事をしていたある日、かつての戦いで共に戦った仲間にしてエレボニア帝国皇子オリヴァルト・ライゼ・アルノールがミュラー・ヴァンダール少佐を伴ってリウイを訪ねてきた。



~メンフィル大使館~



「―――お久りぶりです、リウイ陛下。急な訪問に応えて頂き、誠にありがとうございます。」

「………一体何の用でここに来た。まさかメンフィルのクロスベルへの強引な介入について文句を言いにきたのか?」

会釈をしたオリヴァルト皇子をリウイは真剣な表情で見つめながら尋ねた。

「いやいや……クロスベル問題についてはボクも頭を悩ましていましてね……そこにメンフィルという二大国すら逆らえない”抑止力”が現れた事はクロスベル問題がよい方向へと変わるちょうどいいきっかけになっていると思っていますよ。――――実は今日こちらを訪ねさせて頂いたのは頼みたい事がありまして。」

「私達に頼みたい事……ですか?」

「……その頼みとやらはペテレーネの同席を求めた事に関係あるのか?」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたペテレーネは首を傾げ、リウイは尋ねた。

「はい。実は――――――」

そしてオリヴァルト皇子はリウイ達にエレボニア帝国内に存在している平民だけでなく、貴族の子女達も通う歴史ある学院――――”トールズ士官学院”である特殊なクラスを立ち上げる事やその理由を説明した。

「―――なるほど。さしずめ”鉄血の子供達(アイアンブリード)”に対抗できる戦力を集めようとしているところか。」

「ハハ……さすがにそこまでは思っていませんよ。問題は何も”革命派”だけでなく、”貴族派”もそうなのですし……”Ⅶ組”については既に私の手から離れている状態ですし。どういう選択をするのかは”彼ら”自身です。」

リウイの言葉を聞いたオリヴァルト皇子は苦笑しながら答え

「フッ。エステルあたりが今の話を聞けば、絶対に信用しないだろうな。」

「リ、リウイ様。」

口元に笑みを浮かべて呟いたリウイの言葉を聞いたペテレーネは冷や汗をかいてリウイに視線を向け

「ハハ、ボクの事は気にしないで下さい、ペテレーネさん。それに今のボクを見たら、エステル君も信用してくれますよ♪」

ペテレーネの言葉を聞いたオリヴァルト皇子は笑顔で答えた。しかしその時、その場にいる全員は黙り込み

「絶対にありえんな。」

「……俺もリウイ陛下に同意だ。」

リウイとミュラー少佐は静かな口調で呟き

「ア、アハハ…………」

ペテレーネは冷や汗をかいて苦笑していた。

「みんなして、ヒドイ!特にミュラーはヒドすぎないかい!?ボクの親友なのに!?」

3人の反応を見たオリヴァルド皇子は疲れた表情で答えた後ミュラー少佐に視線を向けた。

「……彼女から見た今までのお前の奇行を考えれば、どう考えてもありえんな。」

「……他国の大使館で俺の側室どころか正妻にまで声をかけ……リベール内で起こした数々の奇行……挙句の果てには”女神”にまで声をかけるという前科があるしな。」

「スミマセン…………ボクが悪かったですから、もう勘弁してください…………」

ミュラー少佐とリウイの話を聞いたオリヴァルト皇子は疲れた表情で答え

「クスクス……それで……その話に私やリウイ様がどう関係してくるのですか??」

その様子を微笑みながら見ていたペテレーネは表情を戻して尋ねた。



「……その事につきましては後で説明させて頂きます。―――リウイ陛下。元エレボニア貴族で今はメンフィルの貴族である”シュバルツァー男爵家”はご存知ですか?」

「”シュバルツァー男爵家”………?」

オリヴァルト皇子の話を聞いたペテレーネは首を傾げ

「…………――――ユミルの領主か。当時は田舎の領主でありながらもエレボニア皇家とも縁のある名家であった事から”ログナー侯爵家”より価値があると思って侵攻し、その際に向こうから降伏してきたが……今更あの家に何の用がある?」

リウイは考え込んだ後オリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。

「……そう言えばシュバルツァー男爵には3人の子供がいたと思いますが……」

「…………ああ、思い出した。兄と双子の姉妹の3人兄妹だったな。確か兄の方は養子だという話だが…………―――なるほど。さしずめその3人の中の誰かを”Ⅶ組”のメンバーにしたいのか。」

考え込んだペテレーネの言葉を聞いたリウイは答えた後、オリヴァルト皇子を見つめた。

「フッ、さすがはリウイ陛下。話が早くて助かります。ボクが”Ⅶ組”のメンバーに入れたいのはリィン・シュバルツァー―――――現在はメンフィル軍の訓練兵として入隊しているシュバルツァー家の長男です。可能ならばエリゼ君とエリス君も入学させたい所ですが……長女のエリゼ君はリフィア殿下の専属侍女に任命されたとの事ですし……次女のエリス君は今年ボクの妹であるアルフィンも通う事になる”聖アストライア女学院”に通うとの事ですし。」

リウイの言葉を聞いたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて答え

「……よくそこまで知っているな。シュバルツァー男爵にでも聞いたのか?」

オリヴァルト皇子の話を聞いたリウイは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。

「はい。……それで是非ともリィン君を”トールズ士官学院”――――”Ⅶ組”のメンバーにさせてもらえないでしょうか?」

「……何故そこまでその少年に拘る。」

オリヴァルト皇子の話を聞いたリウイは眉を顰めてオリヴァルト皇子に尋ね、尋ねられたオリヴァルト皇子は理由を説明した。

「なるほど…………確かに今の話を聞く限り、”Ⅶ組”のリーダーはリィンさんしかいませんね……いえ、リィンさんが相応しいですね……」

説明を聞き終えたペテレーネは頷き

「…………そしてそこにプリネも加えさせてくれという頼みか。」

リウイは考え込んだ後静かな口調で呟いた。

「おや………」

「……さすがです。」

「ええっ!?プ、プリネを!?一体どうして……!?」

リウイの答えを聞いたオリヴァルト皇子は目を丸くし、ミュラー少佐は感心し、ペテレーネは驚いた。

「ペテレーネの同席も求め、今の話を聞いて、ペテレーネに関係するとしたら、それしか思い当たらんからな。プリネの両親である俺とお前の許可を取る為にも。」

「あ…………!」

リウイの答えを聞いたペテレーネは声を上げてオリヴァルト皇子を見つめ

「―――その通り。できればエステル君達―――遊撃士を近くで見てきた彼女にも是非とも”Ⅶ組”に入って彼らを手伝ってほしいのです。」

オリヴァルト皇子は静かな表情で頷いて答えた。

「…………現在は訓練兵であるリィン・シュバルツァーはともかく、皇女であるプリネを2年も他国に留学させるメリットはこちらにはないな。」

オリヴァルト皇子の話を聞いたリウイは静かな表情で答えたが

「―――いえ、ありますよ。」

「何?」

オリヴァルト皇子の話を聞いて眉を顰めた。



「…………”百日戦役”の件でエレボニアの民達にとってメンフィルや”闇夜の眷属”は恐怖の存在です。ですが、そこにメンフィルの皇族が留学してエレボニアの歴史ある学院で学んだとなれば、両国の関係を友好へとつなぐ懸け橋となり、アリシア女王陛下が提唱された『不戦条約』が出す他国同士が友好的なムードになる事を高める上、エレボニアの民達の”闇夜の眷属”への目も変わると思われます。加えてプリネ姫は温厚な性格である事はゼムリア大陸中に知れ渡っているので、効果は高いかと思われます。」

「な、なるほど…………」

「……………………………………フン、そこで『不戦条約』に加えて俺達が目指す理想――――”共存”を持ってくるとはな。さすがは”鉄血宰相”に挑むだけはあるな?」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたペテレーネは驚きの表情で頷き、リウイは目を細めて黙り込んだ後鼻を鳴らしてオリヴァルト皇子を見つめて尋ね

「ハハ……さすがにそれは褒めすぎですよ。―――それで、お二人ともいかがでしょう?」

尋ねられたオリヴァルト皇子は苦笑しながら答えた後リウイを見つめて尋ねた。

「ペテレーネ。お前は今の話、どう思う。俺に気を使わず自分の思った事を言って構わん。」

「私は……構わないと思います。多くの同年代の人達と共に学院生活を送るのはあの子にとって良い事だと思います……実際、短期間とはいえジェニス王立学園での生活をとても楽しんでいました。」

リウイに促されたペテレーネは少しの間考え込んだ後答え

「……まあ、こちらとしてもエレボニアの内情も易々と入ってくる事もあり、国としても益にはなるが…………――――条件がいくつかある。その条件を呑めるなら、皇子の希望通りに二人を”トールズ士官学院”に入学させよう。」

リウイは頷いた後オリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。

「……ちなみにその条件とは?」

「………………」

オリヴァルト皇子は真剣な表情でリウイを見つめて尋ね、ミュラー少佐は黙ってリウイを見つめていた。

「―――まず一つ目は護衛役としてツーヤ並びにレーヴェの同行を認め、二人ともトールズ士官学院に何らかの形で関わらせ、最低でもどちらか一人は常にプリネの傍にいさせる事だ。」

「ツーヤ君はプリネ姫同様学院生として入学しても違和感はなく、ちょうどいいと思うのですが……さすがにレーヴェ君は年齢的な問題もあって、学院生として入学させるのは少々無理があると思うのですが。」

「ならば戦闘訓練の臨時教官にでもして、”Ⅶ組”の副担任あたりにしてしまえばいいだろう。士官学院なのだから、戦闘訓練の授業くらいはあると思うが。」

「なっ!?”剣帝”を士官学院の教官にですか!?」

リウイの話を聞いたミュラー少佐は驚いて声を上げ

「なるほど……確かに”結社”の”執行者”であった彼なら、実戦技術の教官として十分務まるだろうね。実際猟兵団を鍛えた事があるんだから、実戦技術のプロと言ってもおかしくないだろう。」

オリヴァルト皇子は納得した様子で頷いた。

「だ、だが……確か今の士官学院の実戦技術の教官は…………」

一方ミュラー少佐は複雑そうな表情をして言葉を濁し

「まあ、”彼女”にはボクの方から頼んで了承してもらうよ。それで他の条件は?」

オリヴァルト皇子は静かな表情で答えた後リウイを見つめた。



「2つ目はプリネ、ツーヤ、レーヴェ、そしてプリネの使い魔達全員に万が一その身に危険が訪れた場合、身を護る為にどのような者達が相手でも戦える特権をユーゲント皇帝に認めさせておく事だ。」

「……その特権の具体的な内容は?」

「……どのような者達が相手でも戦える……―――例えば”貴族派”の”領邦軍”や”革命派”の”鉄道憲兵隊”がプリネ達に危害を加えようとした際、存分に戦える事だ。――――万が一、相手を殺害してもエレボニア帝国はメンフィル帝国に対して一切文句を言えない事も含めてある。」

「なっ!?リウイ陛下!さすがにそれは横暴では……!万が一、他国にそのような事が露見すればエレボニアはメンフィルの属国なのかと見られます!」

「リウイ様…………」

オリヴァルト皇子の疑問に答えたリウイの説明を聞いたミュラー少佐は驚いた後、厳しい表情で声を上げ、ペテレーネは心配そうな表情でリウイを見つめた。

「他国の皇族に加えて貴族も留学させるのだから、皇族達自身やその護衛達に”その程度の権限”はあって当然だと思うが。万が一現在のエレボニアの”事情”にプリネ達が巻き込まれた際、抵抗する事もできずに”何か”あった場合”エレボニア帝国”はメンフィル帝国に対してどう責任を取るつもりだ。」

「し、しかし…………」

リウイの話を聞いたミュラー少佐は複雑そうな表情で言葉を濁し

「…………わかりました。父上を説得して何とか認めさせます。皇帝たる父上の意志ならば例え相手が”四大名門”や”鉄血宰相”でも”一応”、逆らえないでしょうし。」

「おいっ!?」

静かな表情で答えたオリヴァルト皇子の説明を聞いたミュラー少佐は厳しい表情でオリヴァルト皇子を睨んだ。

「―――ただし。あくまで相手が”プリネ姫達に危害を加えようとした時”です。さすがにプリネ姫達自身から危害を加えようとすれば、見逃す事はできません。」

「それは別に構わん。それ以前にプリネ達がそんな事をする性格だと思っているのか?」

「いえいえ……3人の事はよく知っている上、プリネ姫のガーディアン達もそのような性格ではない事を知っていますので、絶対にそんな事はしないと確信していますが……念の為に確認させて頂きました。」

リウイの言葉を聞いたオリヴァルト皇子は苦笑しながら答えた。

「そしてこれは最後の条件だが―――――――」

その後リウイから最後の条件を聞いたオリヴァルト皇子はミュラー少佐と共に大使館を出て、飛行船に乗る為にロレントに向かっていた。



~エリーズ街道~



「フウ……最大の難所は何とか突破できたな……しかしさすがはリウイ陛下。相変わらず厳しい人だ。2つ目の条件もそうだが、最後の条件も”彼ら”に納得させる事は通常ならかなり難しいだろうしね。」

大使館からある程度距離を取ったオリヴァルト皇子は安堵の表情で溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべ

「……どうするつもりだ。ユーゲント皇帝陛下は相手がお前の頼みならば聞くかもしれんが…………”彼ら”は絶対に渋ると思うぞ。」

ミュラー少佐は真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて尋ね

「フフ……そこに関しては”ボクのやり方”で”彼ら”に納得させるよ。先程出された条件を呑む代わりに”例の船”の出資者にもなってくれる上、学院の経営金として”寄付”もしてもらえるのだから、”彼ら”も文句は言いにくいだろうしね♪」

尋ねられたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて答えた……………… 
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