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宇宙へ

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第二章

「私とて親衛隊にいるのだから」
「そうですね」
「うん、長官のお考えもね」
「では余計に」
「しかしだよ」
 博士は言うのだった。
「私は信じているんだ」
「人が月に行けることを」
「ロケットでね」
「だからそのお考えはですか」
「捨てないよ」
 絶対にという言葉だった。
「それが真実なのだからね」
「だからなのですか」
「そう、長官がどう思われていても」
 それでもというのだ。
「私は何時か必ずね」
「人を月にですね」
「私のロケットで送るよ」
 こう確かな声で言うのだった、彼はその信念の下にナチス政権下においてロケットの研究及び開発を続けていた。
 そしてそのロケットがだ、兵器として使われたのだった。
 ロンドンを襲うVー2ロケットを観てだ、博士はスタッフ達に言った。
「まだまだだよ」
「ロケットとしてはですね」
「これでも」
「そう、これは開発のはじめだよ」 
 そうしたものに過ぎないものだというのだ。
「有人ロケット戦闘機も開発されているけれど」
「あれもですね」
「まだ開発のはじめ」
「それに過ぎないのですね」
「私の夢は」
 空を見上げてだ、博士は言った。
「あくまでね」
「月ですね」
「人を月まで送ることですね」
「ロケットで」
「そうだよ」
 だからこそというのだ。
「このロケットも有人戦闘機もね」
「そのどちらもですね」
「まだ開発のはじめ」
「それに過ぎないのですね」
「まだまだだ」
 まさにというのだ。
「私は先に進んでいくよ」
「人を月に送る為に」
「博士のロケットで」
「だからこのVー2ロケットでもですね」
「満足されていないのですね」
「とてもね」
 博士はこう言うのだった、その端正な顔を引き締めさせて。
 そして実際にだった、博士は研究と開発を進めていった。だがその彼をヒムラーは監視し続けていて遂にだった。
 その身柄を拘束した、もっと言えば逮捕された。しかしここで。
 彼の周りの者達が必死に動き総統であるヒトラーにも働きかけたのだった。
「博士は政治的野心はありません」
「ナチスに逆らう気もありません」
「あくまでロケットを開発されたいだけです」
「他には何もありません」
 こう言ってだ、そしてだった。
 博士の解放の為に動いた、その彼等の努力でだ。
 博士は解放された、だが彼はヒトラーに直接総統の執務室に呼ばれてだ、ヒトラー自身から難しい顔で言われた。 
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