パニッククリスマス
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2部分:第二章
第二章
狼狽しながらだ。こう話していた。
「おい、あの人何だ?」
「白ブリーフ一枚?真冬に」
「いや、冬でなくてもおかしいだろ」
「何かの番組の収録か?」
「罰ゲームじゃないのか?」
こう話していくのだった。
「さもないとあんな格好しないだろ」
「そうだよな。しかし何年洗ってないんだよあの下着」
「今時ブリーフ、それも白ってのもな」
「ないだろ」
「とにかくだよ」
何処からどう見てもだったからだ。
「おい、車掌さん呼ぼうぜ」
「そうだな。放ってはおけないぞ」
「あと警察だ警察」
「百パーセントの変質者だよ」
こうしてだった。誰もがだ。
携帯でこっそりと警察に通報し車掌を呼んだ。そしてだ。
車掌が来た。車掌はすぐにだ。
血相を変えてだ。こうそのブリーフ男に言うのだった。
「あの、お客様」
「用件を聞こう」
男は車掌に顔を向けて言い返してきた。
「仕事の依頼か」
「あの、仕事とかでなくです」
車掌は男に仕事ではないと告げた。
「あの、次の駅で降りてもらえますか」
「何故だ」
「何故かとかではなくてです」
「俺は普通に電車に乗っているだけだ」
「普通じゃないですから」
車掌は男に対して速攻で突っ込みを入れた。
「とにかくですね。次の駅で」
「用件を聞こう」
またこう言う男だった。
「そして報酬は」
「あのですね。会話が通じないのかな」
車掌はその可能性も考えた。外見が外見だからだ。
そしてだ。駅に着いた。だが佳美の降りる駅ではなくだ。それでなのだった。
彼女は降りなかった。その代わりにだ。
制服の警官達が車両にどかどかと入りだ。そのうえでだ。
男を取り囲みだ。こう告げるのだった。
「さあ、ちょっと署まで来てくれ」
「何のつもりだ、一体」
「何故その格好をしている」
「これが俺のスタイルだ」
男は平然としてだ。警官達に返す。
「それで何かあるのか」
「話は署で聞こう」
「猥褻物陳列罪で逮捕する」
「大人しくするんだ」
警官達はこう言ってだ。男の手に手錠をかけようとする。しかしだ。
その時に警官の一人がだ。男の背に回った。するとだ。
男はいきなりだ。警官の方を振り向いてだ。
警官の頭をだ。己の股間、その汚れたブリーフの前のところに押し付けたのだ。それを受けてだ。
警官は悶絶してだ。倒れ込んだ。それを見てだった。
他の警官達は血相を変えてだ。男を取り囲みだ。
「糞っ、素直に従わないぞ!」
「やはりこいつは変質者か!」
「しかも普通じゃない!仕方ない!」
「射殺しろ!」
即座にだ。この命令が出された。そうしてだ。
男に一斉に狙いを定める。車両の中でだ。しかしだった。
男は警官達に背を向けてだ。そのうえでだ。
車両の窓にダイビングしてだ。そこを突き破り。
そのまま駅の向かい側に飛び出た。しかしだ。
丁度そこに対抗車両が来てだ。男を跳ね飛ばした。それで一部始終終わりだった。
だがこれによりだ。佳美の乗っていた電車はだ。
騒動で動くどころではなかった。それでだ。
「お客様、まことに申し訳ありませんが」
車掌が彼女達に告げる。
「この電車は暫く動けません」
「あの男のせいか」
「跳ねられたしな」
「それの後始末もあってですか」
「それで」
「はい、申し訳ありませんが動くまで少し待って下さい」
こうだ。佳美達に申し訳なさそうに言うのだった。
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