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RSリベリオン・セイヴァ―

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リベリオン・セイヴァ―外伝SHADOW 二話

 
前書き
玄弖、人生初の女子高へ行きます! 果たして箒に会えるかな? 

 
玄弖の目の前には見たこともない眩しい光景が次々に飛び込んできた。
汚らしい車が走るエリア14のゴツゴツした路上とは違い真っ平な路上をピカピカな車が走り、さらには巨大な建物が次々と目に飛び込んでくる。
そして……
――皆、着ている服が俺のと全然違うな?
防弾チョッキとプロテクトアーマーを付けた、まるでコスプレかどっかの民兵のような服装は、とてもじゃないがこのメガロポリスの都内では似合わない姿だ。
時折珍しい視線が飛び交うも、玄弖はそれほど気にはしていない。
「さて……エリア20へ行くにはどうすればいいんだ?」
確か、電車やモノレールと言う乗り物かバスという大型自動車で向かった方が運賃は安価で押さえられると弾から聞いた。しかし、出来る限りならバスに乗った方が良さそうだとも言っていたような気がした。そこには、痴漢されたと見せかけて男に慰謝料を要求してくる外道な詐欺女が潜んでいるというらしい。
「……何か、いい乗り物は? ん!?」
すると、ふと頭上から聞こえる音に玄弖は見上げた。すると、頭の上を巨大な四角い筒状の乗り物が宙を泳ぐかのように走っていた。
「な、なんだっ!?」
その迫力に、彼は腰を抜かすほど驚いた。
どこまでも続く長いレールにぶら下がって走る光景は、まるで空を飛んでいるかのように思えた。そんな迫力ある乗り物に、玄弖は魅了されてしまい、見た目判断であの乗り物に乗ることにした。
玄弖は、そんな乗り物を追うかのように乗り物をぶら下げていたレールを辿って走った。
「あそこか?」
その乗り物は、「モノレール」という電車に似たレールを走る乗り物で、電車のように安価で助かる乗り物らしい。
「す、すげぇ……!」
駅に通じる階段を上がって、玄弖は改札口のところまで来た。何やら乗客はそこで小さいカードのようなものを入れて、あのゲートを潜るらしい……
「えっと……」
おそらく、あれが乗車券というものなのだろうか? しかし、どうやってアレを購入すればいいのかわからない。玄弖は困ったと、その場て立ち止まってしまう。
「……」
「ねぇ? ちょっとアンタ?」
「ん?」
行き成り親しく話しかけられた声の方へ振り向いて、少し頭を下げると、そこにはツインテールの小柄な少女が仁王立ちしてこっちを見上げていた。
「俺?」
「そうよ? 他に誰がいるっての?」
「ああ……で、なに?」
「目の前でオロオロしてたから、何かあったのかって思ってさ?」
「は、はぁ……」
「で、何かお困り?」
「その……乗り方がわからなくて?」
「はぁ? 別に電車と同じじゃない? あそこの販売機で切符買って改札口に通すだけよ?」
「ご、ごめん……電車もわからないんだ?」
そんな苦笑いする玄弖に、少女は愕然とした。
「マジ……? アンタ、とんだ田舎モンね?」
「そ、そんな言い方ないだろ?」
「まぁ、いいわ? 人助けってことで教えてあげる! で、どこへ行きたいの?」
「あ、ああ……エリア20」
「あ! 私と一緒じゃない? なら、一緒に行ってあげる!」
と、彼女は玄弖の手を引いて販売機の方へ駆け寄った。そして、彼女なりの説明を聞かされて、ボタンに表示されている金額よりも多い金を入金させられる。
「えっと、教えてあげるんだからさ? 私の分も出してよ♪」
「あ、コラ!」
「いいじゃん♪ いいじゃん♪」
「……」
仕方なく、玄弖は彼女の分も出して、やや高くついたが無事にモノレールに乗ることができた。
「でさ? エリア20のどこへ行くの?」
少女は、隣の席に座る玄弖に行先を尋ねた。
「ああ、IS学園」
「え、えぇ!? アンタ!! どうして!?」
「え、なに?」
突然驚く少女に玄弖は目を丸くした。
「……」
すると、少女は何やら不審者を見るような目つきでマジマジと彼を宥める。
「な、何だよ……?」
「……アンタ、その格好からして『金髪ドS野郎』か『武人戦闘馬鹿』の仲間なの?」
「は……?」
何を言っているのか、玄弖は首を傾げるばかりだ。
「よくわからないけど……落とし物を預けてもらいに行くだけさ?」
「落とし物? どういうのよ?」
玄弖は、自分の首から外したペンダントを少女へ見せた。
「……あ! もしかして、コレ箒のペンダントじゃない?」
「ホウキ……?」
「篠ノ之箒、私と同じ専用機持ちの娘よ? ポニーテールで……牛みたいなバカでかい巨乳した生徒よ?」
最後の言葉が、ややドス黒い口調に聞こえたが、一様これで彼女の名前はわかった。
「よし! 篠ノ之箒ってんだな? え……篠ノ之!?」
勢いよく玄弖は立ち上がった。
「も、もしかして! あの篠ノ之束の!?」
「ええ、そうよ? ま、私は興味ないけどね?」
「……」
玄弖は出す言葉がなくなって、この場に固まった。
――彼女が、あの束の妹!? 偶然とは恐ろしいものだ……
「それにしても、本当に日本人って律儀ねぇ?」
「え、アンタ……外人なのか?」
我に返った玄弖は問う。
「ええ、中国から来たの」
「そうか……」
しかし、現在の中国は大層な治安の悪化に手を焼いているらしい。そこらじゅうがマッドマックス状態だそうだ。エリア20とは比べ物にならないくらいに……
――こいつ、ずる賢く見えて結構大変な思いしてんのかな?
玄弖は、そう彼女にささやかな同情をした。
「あ、別に同情なんていらないわよ? 代表候補生だから家族も本国で安全な暮らしを約束させてもらってんだし、お金に困ることはまずないから」
「え、そうなの?」
「当り前じゃない! 代表候補ってことは、もう将来を約束されたようなものなんだし?」
「……」
――何だ、同情して損した……
「ま、アタシもIS学園へ戻ることなんだしついてきなさいよ? 案内するから」
「お! 悪いな?」
……が、彼女の親切心は逆に更なるぼったくりを生むこととなる……

「……なぁ、どうして先に喫茶店によるんだ?」
エリア20へ到着後、IS学園へ行く途中にある喫茶店へ連れていかれると、目の前で特性パフェを頬張る少女がいた。
「っていうか……何で俺の驕りなの?」
「案内料よ? 案内料~♪」
結局、少女にパフェを奢らされた後に彼女の後ろを歩いてIS学園へたどり着いた。
ここまで来るのに長い道のりよりも金が高くついたことに玄弖はため息をついた。
「あそこが門の受付だから。じゃあね!」
少女は、そう言うと彼に手を振ると、顔パスで門を潜ってった。
「……さて、俺も行きますか?」
玄弖は、門へ歩み寄ると、警備の女性に声をかけた。
「あの、スンマセーン!」
「?」
すると、一人の警備員が、彼を怪しむような目つきで宥めてきた。
「あの……何でしょうか?」
警備員が怪訝な目つきで問う。
「その、生徒の落とし物を拾ったんですが……」
「落とし物……?」
「ええ、これなんですけど?」
と、玄弖はペンダントを手に乗せて警備員に見せた。しかし、彼女は何故か嫌な目で玄弖の身形を見た。
「あなた……オタク? ひょっとして、この学園の子を追い回すストーカーとかしてんの?」
「え……?」
「そんな格好して……まぁ、ここにもアンタに似たようなコスプレしてる男が入ってきたけど……正直、IS学園に男が居ること自体、迷惑なのよね?」
「あ、あの……俺、ただ落とし物を届けに来ただけなんスけど?」
たったそれだけなのに、何故ここまで言われなければならないのか? そんな理不尽な態度に玄弖は少しムッとした。
「ベタな理由でIS学園に来る男たちって大抵変質者が多いのよ? わかったら、さっさと帰りなさい?」
「だから! 俺は、本当に落とし物を届けに来たんだよ? ここに、『篠ノ之箒』って娘がいない?」
「……!」
俺は、落とし主である箒のフルネームを口にした。すると、どうしたことだろう? 警備員らは全員玄弖を不審者と定めるような目つきを向ける。
「貴方! やっぱり変質者なの!?」
「ち、違うって!?」
「警察呼ぶわよ!? それが嫌ならとっとと帰りなさい!!」
結局、玄弖は聞きいれてもらえずに追い返されてしまった。
――くそ! なんでこうなるんだよ!?
ここまで結構苦労して来たというのに、追い返すなんて対応が酷すぎる。確かに、IS学園は女子高、男子禁制なのは百も承知だ。しかし、限度というものがある!
――このまま、大人しく引き下がれるかってんだ!
「っ……!」
玄弖は、周辺をキョロキョロと見回すと、人目につかないことを確認して裏手に回った。幸い、警備員には気づかれていない。
「……?」
しかし、裏口から回ってフェンスを通り越し、難なく敷地内へ潜入したのはいいが……近くから女子生徒たちの声が四方から聞こえてくる。人が多すぎるからこのまま進むのはやや難しい。
――どうすれば……?
一時戻って対策を練り直すか? いや、何度も来ては完全に不審者と思われる。ここまで来てしまったら……何としても進むしかない。
「ん……?」
そのとき、ふと玄弖は何かの気配に気付いた。今まで、鈍感であった彼が敏感になるなんてことはない……
「!?」
そして、背後から襲い掛かる何者かの両手を、彼は回し蹴りでそれをい振り払った。
「なに……!?」
その声は、少女の声であった。銀髪で眼帯をした、あの中国の代表候補生と同じ小柄な背丈をしている。顔つきからして西洋人のようだ。
「だ、誰だ!?」
行き成りかかってきた少女に玄弖は問う。
「貴様こそ、何者だ? ここは、関係者以外立立ち入りが禁じられているのだぞ?」
「あ、いや! その……」
「侵入者か……?」
「あ、あの……」
おどおどした彼の態度が、図星のごとく侵入者だということがバレてしまった。
「図星か……」
「や、やっべ……!」
とにかく、玄弖は一目散に逃げ出した。
「待て!」
当然のようにラウラは追いかけてくる。それも直ぐに追い付かれるほどの速さで追いかけてくる。
「ちくしょう!」
――もっと早く! もっと早く走らないと……!
そのとき、彼は力強く地面をけり上げた。
「!?」
気が付くと、玄弖自身も理解ができない状況に代わっている。
それは、彼が上空へ高々と舞い上がり学園校舎の屋上が目に移った。
「う、うそ……俺、飛んでる!?」
いや、正確に言うとジャンプしていると言った方がいい。しかし、当然のように高く舞い上がったのなら、必ず重力によって落下するのが落ち。徐々に力を失った跳力は徐々に降下を始めて行く。
「あ……」
あの少女から逃げ出せたはいいがこのままだと……
「た、助けて~!?」
そのまま、彼は更衣室の屋根へ真っ逆さまに落ちて行った……
そして。

――また、胸が大きくなったな?
更衣室で、篠ノ之箒がシャワーを浴び終えてロッカーの前で自分の胸を見下ろした。
「まったく……こんないやらしい体は、いつまで私を苦しめるつもりだ?」
顔を赤くして片手で片方の巨乳を持ちあげる箒は深い溜息をついた。
が、その突如。上空からピュ~……と音と共に彼女の頭上の屋根を玄弖が突き破って落ちてくる。
「ぎゃ~!」
「っ!?」
ズドン! と、二人は重なり合って倒れてしまった。
「い、いてて……! んぅ!?」
箒の上に伸し掛かっている玄弖は、なにやら顔面が温盛のある巨大なマシュマロに覆われていた。さいわい、それがクッション代わりになって顔面を強打することだけは免れたが……
「き、キサマ……!?」
箒は、顔を赤くして自分が何をされているかという状況に気付くと、覆いかぶさる玄弖を突き倒して、素早くロッカーから一本の竹刀を取り出した。
「いったぁ……お! アンタか? 探したんだぜ? ほら、コレ……」
しかし、持ち主の少女は何やらドス黒いオーラが漂っていた。
「あ、あの……」
気まずくなった玄弖は、恐る恐る訳を尋ねようとするが、
「問答無用……!」
と、箒は竹刀を上段に構える。
「ま、待て……とりあえず落ち着いて!?」
「天誅っ!!」
その後、玄弖の顔面にはおびただしいほどの痣が浮かび上がり、頭部には鏡餅のようにタンコブが二重に積み重なっていた。
ボコボコにされた玄弖は、とりあえず箒に事情を説明し、箒も徐々に落ち着きを取り戻し、彼の話を理解した。
「……成程? だが、不法侵入は犯罪なんだぞ?」
と、箒は一般常識を教えるが、エリア14で育ってきた玄弖にとって、そんなルールなど知る由もなかった。
「す、すまん……でも、俺はアンタのためにこれを?」
そう、玄弖は箒にペンダントを指しだした。
「こ、これは……!?」
彼女は、急いで玄弖の手にあるペンダントを受け取ると、それを大事そうに見つめた。
「せっかく、これを届けるために来たのに……さっきの事故ぐらいは見逃してくれよ?」
泣きそうな顔で玄弖は言う。
「……」
箒は、そんな世間知らずの青年に対し、騒がせ者だと困った目を向けるも、時期に溜息をつきながら微笑んでやった。
「ま……そうとは知らずに暴行を加えてしまった私にも非はある。医務室へ来い? 手当てぐらいはさせてくれ」
箒は、玄弖を連れて近くの医務室へ向かった。幸い、保健室の教員は留守だったため、気がるに玄弖を連れて入ることができた。
「い、いてて……!」
箒がぬる消毒液が、玄弖の頬の傷がしみる。
「すまん。痛かったか?」
「いや、こんな痛みはエリア14じゃ日常茶飯事だからな?」
エリア14で喧嘩や乱闘は日常茶飯事である。死者は滅多にでないが、怪我人だけは必ずでる。
「その……お守りを届けに来てくれたことに、礼を言おう?」
「いいってことよ?」
「それと……あの時、私を助けてくれたことにも感謝したい。あのとき、礼を言わずに愛想悪く帰ってしまった無礼、許してくれ?」
「ああ、別にいいよ? 感謝してくれてるなら、俺も助けた甲斐があった」
徐々に玄弖の腫れや痣は薄れていき、玄弖は椅子から立ちあがった。
「……世話になった。俺は、そろそろ行くよ?」
「せっかく来たのだし、もう少しゆっくりしていけばいい?」
「え、けど……」
「後から私が警備員に厳しく注意しておく。案ずるな?」
「じゃあ……お言葉に甘えて?」
玄弖は、箒の言葉に甘えてこのIS学園の見学を楽しむこととなった。
ちなみに、この後正門の警備員らは箒によってこっ酷く怒られた。こうして、玄弖が正式にIS学園へ入校できるよう許可が下りた。

「ここが、私が授業を受ける一年一組の教室だ。そして、その隣が二組で……」
箒の説明を聞きながら、玄弖はIS学園の見学を堪能していた。
「ほう? 従来の学校と比べてかなり豪勢な作りになっているな?」
「ああ、ここIS学園はこの国を象徴する重要な拠点の一つなのだ!」
「ふぅん……」
しかし、正直玄弖はIS学園の見学を続けてい内に、興味が薄れていった。箒には申し訳ないが、やはりエリア14に暮らす人たちと重ねてしまったら、この学園の人間たちに対して腹ただしく思ってしまう。
――政府ってのは、どうしてこんな事に金掛けんのかな……?
「次は、学食へ向かおう? 丁度昼時だ。学園内の食事は無料だから代金は要らぬぞ?」
「へぇ? そいつは良いな!」
学食と聞いて、玄弖は食欲がわいてきた。
学食は、見晴らしの良い学園の風景を見ながら食事ができ、玄弖は抵触のトレーを抱えて箒と共に食事をとった。
「おお! コイツはうめぇ!!」
今まで、エリア14では湿気た食べ物や賞味期限の切れたギリギリセーフな食べ物しか食べたことなかったから、こういった御馳走は滅多に食べることができなかった。
「この肉うめぇよ!?」
「喜んでくれて何よりだ。しかし……男子とは、よく大量に食事を取るものだな?」
箒は、玄弖が頬張っている焼肉定食とテンコ盛りの飯を宥めた。
「ああ、食える時にタラフク食わないとな? それがエリア14の鉄則さ?」
すると、そんな二人の元へ一人の女子生徒が駆け寄ってきた。
「お~! モッピーが知らない男の子とご飯食べてる~!?」
無仏本音である。
「む、無仏!?」
ビックリした箒は席から立ちあがった。
「ほほぉ~? これはこれはモッピーも隅に置けないねぇ~?」
「ち、ち、違う! 彼は来客だ!? 私が本校の施設を見学させようとだな……」
――そうだ! 私には一夏がいる!! このような……といっては失礼だが、このようなどこぞと知らぬ馬の骨に私が惚れるわけがない!! しかし、食いっぷりは見事で素敵……って、何を言っているのだ私は!?
「ん? どうした? 篠ノ之?」
頬張りながら玄弖が赤くなっている箒に尋ねる。
「い、いや! 別に何でもない。そう、何でもない……!」
「……?」
そんな彼女の落ち着かない態度に首を傾げるも、玄弖はすぐに食事を再開した。

「……ここが、第三アリーナ。ここでは主にISの実技やトーナメント戦などを行ったりしている」
「へぇ……まるで、サッカースタジアムってやつだな?」
いや、下手すりゃスタジアムよりも広く見える。
「篠ノ之達は、こんな広い場所でISに乗っているのか?」
「ま、まぁな?」
……しかし、そんな二人の背後から数人の生徒達の呼び声が聞こえてくる。
「あれぇ? 篠ノ之さんじゃない? あなた、こんなところで何してるの?」
「……?」
玄弖は振り返ると、そこにはスク水のような露出度のあるスーツを着た女子生徒ら数人がこちらを見ていた。
「……!」
しかし、箒は嫌な目で振り返った。
「ちょっと? そこの男は誰なの?」
一人の女子が玄弖を見る。
「もしかして……勝手に部外者を入れたんじゃないでしょうね?」
「彼は来客だ。わざわざ、メガロポリスから私の私物を届けに来てくれたのだ」
「じゃあ、どうしてすぐに返さないの?」
「そうよ? 男がいると女子の神聖な聖域が汚れるじゃない?」
「な、何だよ!?」
彼女らの言葉に玄弖が腹を立てた。
「よせ、玄弖……」
と、箒が止める。
「そもそもさ? 強くもないのに専用機持ってるなんて生意気じゃない?」
「そうよね? 専用機持ちだからって何しても構わないって思ってるのかしら?」
「やっぱ、あの『篠ノ之束』の妹だから超~特別扱い何だよ?」
「……!」
箒は、無理にでも怒りを収めようと強く拳を握りしめた。しかし、そんな彼女とは違って玄弖には我慢の限界だった。
「お前ら! いい加減にしろよ!?」
玄弖が衝動的に怒鳴った。
「はぁ?」
そんな彼の声に苛立って女子の一人が振り向いた。
「あんたこそ、男が堂々と女に楯突いていいと思っているの?」
「そうよ! だいたい、男のくせにどうしてIS学園に居るのよ?」
「篠ノ之が招待してくれたって言ったじゃないか? それよりも、この娘に対してそんな酷い事言わなくてもいいじゃないか!」
「アンタには関係ないじゃない?」
「男のくせに生意気ね?」
「こういう奴には……お仕置きが必要ね?」
すると、中心に立つ女子がいきなりISを展開させて近づいてくる。
「待て! 彼は関係ない!! 絡むなら私だけにしろ!?」
箒は、玄弖の前に出ると両手を広げて女子たちの前に立った。
「どきなさいよ! 篠ノ之さん。 私たちは、これからそこの理不尽な男を懲らしめるんだからさ?」
「理不尽なのはどっちだ! ただちに、ISを用いた蛮行はやめろ!?」
「チッ……!」
舌打ちと共に、生徒の一人がIS越しの甲で箒を平手打ちした。
「くぅ……!」
箒は、よろめいたところを玄弖に支えられ、彼の両手が彼女の肩を掴んだ
「何をするんだ! 乱暴はやめろ!?」
玄弖は怒り、怒鳴った。

「生意気いうんじゃないよ!」
そして、ISの拳が玄弖へと振り下ろされそうとしていた時。
「!?」
次に気付いたころには、吹き飛ばされていたのは玄弖ではなく、彼を殴ろうとした生徒の方がISごと吹き飛ばされて壁に貼り付いていた。
「な、何だ……!?」
玄弖は、己の両手を見つめた。
「これは!?」
そこには、二本のクナイが彼の両手に握られていたのである。
――あの時の!?
「な、何よ……何なのよ! アレは!?」
周囲の生徒達は突然起こったこの事態に混乱している。
「く、玄弖! それは……!?」
目を丸くして箒が問う。
「わ、わからない……どうして、コレが出てきたのか?」
心当たりはあるが、まさか再び現れるとは思わなかった。
「て、テメェ……よくもぉ!」
他の生徒達は次々とISを展開すると、片手に接近戦ブレードを取り出して玄弖へ襲い掛かろうとする。
「よ、よせ! 彼は丸腰なんだぞ!?」
しかし、彼女たちに箒の言葉などもう聞こえることはなかった。こうなれば、自分の赤椿を展開させて玄弖を守るしかない! しかし、そう思った矢先。
「よくも先輩をぉ!!」
一人の生徒がブレードを振り回して玄弖へ襲い掛かる。
「……!?」
しかし、次の瞬間にその生徒も最初に襲われた生徒こと、先輩と同じように壁へ貼り付けられる。
玄弖の繰り出した軽い回し蹴りが二人目の生徒をあのような結末に変えたのである。
「……」
無言のまま呆然とする玄弖に、再び残りの生徒達全員が彼へ襲い掛かる。
「!?」
だが、それも玄弖によってあっけなく返り討ち担うのだ。横から襲い掛かる生徒へは、素早く背後へ回ると、片方のクナイを背中へ突き刺し、さらに彼の後ろから別のISが襲い掛かると、もう片方のクナイを投げ飛ばして懐へ命中させる。クナイの攻撃は、どれも急所を狙った一撃で生徒の集団を倒してしまった。
「な、何なんだ……!?」
幸い、このクナイに助けられたとはいえ、自分の身に起きた突然の異変に玄弖は恐怖した。
「ッ……!」
しかし、途端に目の前の視界が暗くなり始めた。最後に映ったのは、必死でこちらへ呼びかける箒の姿である……
玄弖は、激しいめまいと共にその場へ倒れてしまった……
「玄弖! 玄弖!?」



 
 

 
後書き
予告

まさか……あのときのデータは完全に消去したはずだ! RSのコアデータに意識が残っていたとでもいうのか? 
ますます興味深くなったな? あの玄弖という持ち主の青年にしろ、飛影にしろ……

次回
「その名は飛影」

 
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