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ワールド・エゴ 〜世界を創りし者〜

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lost story2-『辿り着いた名も無き英雄』-

 
前書き
待たせたなぁ! 

 
 コツン。

 コツン。

 コツン。

 真っ白の飾り気一つ無い白に、乾いた音が反響する。
 大理石をブーツの踵で踏み鳴らし、『とある存在』が歩いて行く。

 セカイの名は《白亜宮》。かつて「 」と呼ばれる存在に飲み込まれ、奪われた世界。闇によって全てを喰い尽くされ、光を全て飲み込まれた、滅び切った世界。
 その世界にいるはずのない『存在』が、堂々と玉座へと向かっていく。

「────。」

「君を、招いたつもりは無かったのだけれど。……それに、少しは話さないのかい?ユキ君。それとも、『 i 』と呼んだ方が良いのかな」

 向かい合う白と白。
 管理者と管理者。
 災厄と災厄。

 ただその二つが世界に在る。それだけの事で、この世界はその存在証明を揺らがす。

「何故お前、が此処にそんざ、いしてい、る。既に消、えたと聞い、ていたが」

「ああ消えたさ。そして此処に再構築された。ここはRPGやSTGでいうラストステージって訳だ。そして僕がラスボス。最悪のシナリオだろう?」

「ありが、ちなシナリオだ。B級映画でもも、うすこしマシだ、ぞ」

「手厳しいね」

 少年は肩を竦めて苦笑する。玉座の上で足を組む純白の男は、ユキの異変に気付いているようだった。

「力をほとんど失ったようだ」

「不本意な、がら、な。同時、に声も奪、われた」

「ああ、だからさっきから喋り方変なんだね」

「う、む。そういう訳、だ。さ、あ戯言は終わ、りだ。聞かせ、てもらおう、か。今か、いの騒動の真相を」

 誤魔化すのならば、殺す。
 真相を話しても、殺す。
 九分九厘、殺す。

「さあ、語、り伝えろ。嘘の王。真の王。今のお、前はどち、らだ」

『彼』の口元が、小さく歪む。少し、しかし確かに、笑みを形作る。


「そうだね、そろそろ解説パートといこうか。某ゲーム風に言うのなら──」






 ──話をしよう。














 
 □ □ □ □ □















 あれは確か三十六万、いや、一万四千年前だったか──ああごめんよ、ちゃんと話すから拳を下ろしておくれ。

 まあ事の始まりは僕の誕生、もう数えるのも飽きたけれど、大雑把に言うのなら数百年前。
 僕の体感で言うならば既に億や兆どころか、この世の始まりを計12回繰り返して、更にそのうちの一回は無量大数なんていう馬鹿げた年数を不老不死になって過ごした訳だけれど、その分を全て含めれば12巡前の世界での数百年前と言うのが正確かな?

 まあそれはどうでもいい。問題は僕のこの体に取り付いた、かつての力ある『神々』共の戯れの産物。

 ──《終末核(イゼレクタ・コア)》。名前くらいは聞いた事があるかな?確か前回の滅びはそれこそ僕が真の意味で生まれた時の数百億年前だから、実物を見るのは僕が初めてだろうけれど。

 本来なら僕が世界を滅ぼして、世界を転生させる。これがセオリーだ。
 けれども知っての通り、僕は大のシスコンだからね。フィアーネが生きるこの世界、滅ぼしてなるものか。僕は早々にこの力を封じ込めたよ。まあ力の余波か何かのお陰か多少特殊な力(真偽操作)が使えるようになったけれど、まあそれはそれで良しだ。

 けれども『神々』は狡猾だ。過去にもこういうことがあったんだろうね。この《核》に時限爆弾を仕掛けていた。

 丁度今から31時間後と言ったところかな。そこから数えての12巡前のその時に、世界は転生する筈だった。

 まあ勿論僕もやられっぱなしじゃあないさ。
 自らの存在だけを一巡した世界へと転生させる事で、《核》のタイムリミットの初期化を繰り返した。繰り返していく内に《核》そのものを消去する方法でも見つからないかと思ったんだけれどね。
 それで言えば《9番目(2番目の成れの果て)》はいい線行ってたよ。
 当人は自覚して無かっただろうけど、不老不死に成る事でそもそも《核》を存在意義を否定する。《核》に『世界の初期化』という役割がある以上、初期化が不可能な状態で『1回きり』の解放を行う事は出来ない。

 ま、それも最後には諦められて暴発され掛けて、その時ようやく《核》に気付いた《9番目》が慌てて一巡したのさ。

 うん?9番目が2番目の成れの果てとはどういう事かって?ああ、君は確か『作者』の操作から独立していたから、《物語の外側》についての知識はあるよね?
 そう。この《ワールド・エゴ》って物語を綴る、忌々しい少年少女達の存在する『紛れもない現実』の世界。

 その《物語》の中に、東方偽転生って二次創作があった訳だけれど、それこそが《2番目》のルーツだよ。
 その物語のラストはこう。


『依り代を失い、幻想世界の存続は危うくなる。
 しかし、その世界を愛した《彼》は薬を飲み、永遠の存在として依り代の枠へと降りる。
 限りある命ならば、救いはあったろう。
 けれども彼は、文字通り終わりのない茨の道を選んだ。
 その世界を愛した故に。
 その世界に恋した故に。』


 簡単に要約するとこうなるのかな。
 今は消えてしまった歴史、今後再臨する事もない歴史。けれど、その物語には続きがあった。


『その世界は、遂に《自然なる終わり》を迎えた。
 知的生命体は穏やかに衰退し、滅亡し、皆が幸せに終わるハッピーエンド。
 自然的に、健康的に、世界はやっと一巡し、新たな人類が生まれる。
 では《彼》は?
 ──《彼》に終わりは無い。たとえ世界が滅ぼうと、《彼》が死す事は決して無い。
 彼は魂を二つに分けた。
 《彼》が《彼》で居るための魂。そして《彼》が《彼以外の存在》たる魂。
 後者を《彼》は世界に切り離し、切り離された《彼》は今一度世界との鬼ごっこを再開する。

 そうだね、永遠に苦しみ続けた、生き続けた《彼》が再び人類史に登場したのは……

 大体、「9番目」の転生後じゃないかな』



 ──ま、この13週目の世界では、全ての《僕》は《僕》に統合されている。主に《12番目》のお陰だけれどね。
 12の僕と言えど全てが僕。その経験は着実に僕に──僕という存在そのものに刻み込まれていった。

 後は分かるね?ああ、その通り。
 《核》がそろそろ対策を練ってきた。

 《核》は自らの時間の概念を弄って、決して逆行を行えないようにした。それをされてしまえば、さすがの僕でも手の打ちようが無い。完敗さ。
 ここまでくると最早執念だねぇ。《核》に人格を植え付けてくるなんて……

 僕は全ての力を分割──これまで生きてきた記憶のターニングポイントを整理して、12の存在とした。
 それぞれの《核》の力を弱めて、そのまま封じ込もうって寸法さ。

 ま、結論から言えば失敗だ。当然と言えば当然だね、時を巻き戻すなんて馬鹿げた事でもないし、ただ分割された程度じゃあ直ぐに元通りだ。今では僕に半分以上の僕がが統一されている。残りの後半は今でも動いているけれど、それも時間の問題だろう。
 統合されてしまった僕に、今や力を強めた核に逆らう権利は無い。この僕はもう、時が来れば全世界を滅ぼすだけの神となるだろう。

 今の神々のような紛い物では無い。原初の神だ。
 天地創造?そんな事は神の領域に指先すらも触れていない。
 生命誕生?そんなもの無数に存在する原初の神々ならば、小石を拾うよりも簡単な事だ。

 世界を廻し、世界を視る。
 運命を与え、運命を奪う。

 『世界そのもの』(付喪神)『神々』(神話)は届かない。

 残念ながら、世界に住まう存在である限り、この世界には逆らえない。



 ──例外は居るようだけれどね。








 □ □ □ □







「れ、い外だと?」

「うん、そう。流石に『彼』を呼ぶのは世界としても阻止したいようだね。アレはこの世界にとってもイレギュラーな存在だ」

 ルークやユキ、その他面々の戦の力となっているモノを一括りに纏めるならば、全てが『異能』というカテゴリに入るだろう。
 時を止める。闇を物質化して創造する。言霊を操る。その他諸々、強力な異能者達が集められた。

「こんなゲームで言えば初期レベルが99のチーター達の存在を、真正面から叩き潰す存在が居る。異能に頼り切った僕達は、きっと彼には勝てないだろう」

「貴、様が勝て、ないと明げ、んするのは珍し、いな。どれ程のち、からを持った者だ?」

「逆だよ。彼は『異能』なんて呼べる者は何一つ持っちゃいない。彼の武器はその人間の限界まで鍛え上げた馬鹿げた身体能力と、たった一つの絶対的な『体質』だけ────おっと。丁度良い、来客だ」











 場は《白亜宮》本殿から、門前へと移る。









 《白亜宮》を覆う闇は、世界によって齎された絶対的な隔壁である。本来ならば見つける事も叶わず、触れれば如何なる存在であろうと絶命を果たすパンドラの匣。

 その障壁が、真正面から音も無く破られた。


 まるで存在そのものを打ち消す様に。
 まるで存在そのものを否定する様に。

 その『左腕』は、あらゆる異能を否定する。

 《滅び》が男に喰らいつく。

 その指先に触れた瞬間、《滅び》は魂を霧散させる。

 無尽の刃が形成される。しかしそれは、男の傷付ける前に消失する。

 左腕は、『世界の使い』をいとも簡単に否定した。

 やがて、門へと辿り着く。

 門に秘められし性質は《不壊》。そして《不開》。
 指先が門に触れる。

 そして門は『壊れ開く』。

 男を阻む力は、全て霧散した。

 コツン。コツン。と、再び大理石を踏み締めるブーツの乾いた音が、玉座に響く。

 鍛え上げられた肉体、その体を覆うスーツ、長身のその風貌は、ただそれだけで全てを威圧する。
 最も奇妙だったのは、その頭に巻く『目隠し』。しかしそれは、『彼』の妨げとは成り得ない。

 ──そう、彼の英雄こそは。


「──待っていたよ、名も無き英雄」

「──全ての原因が何をほざくか、たわけ」



 かつて一度、《世界を救った英雄》。無銘(名も無き英雄)であった。











 世界転生まで、あと31時間。
 《滅びの依り代》の完成まで、あと29時間。  
 

 
後書き
ものっすごい待たせといてコレでなんかすいません() 
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