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赤い帽子

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4部分:第四章


第四章

「彼に任せましょう」
「うむ。しかしだ」
 署長は全てを男に任せたうえで言ってきた。
「今夜わしも一緒に行っていいか」
「はい」
 彼はその言葉に頷いた。
「それではそれで御願いします」
「君がどうやって事件を解決するのか。見てみたくなった」
 これは好奇心からである。それを抑えることができなくなっていたのだ。
「だからだ。それでいいな」
「はい、どうぞ」
 彼は表情を変えないまま応える。
「それで御願いします」
「私もそれでいいか」
 意外にも副署長も名乗り出て来た。
「君もか」
「既に多くの犠牲者が出ています」
 彼はとりあえずは警察官であろうとしていた。好奇心があることはそれで否定していた。もっともそれは署長から見れば下手な演技でしかなかったが。
「その犯人が誰か見ておきたいのです」
「ふむ。では君もだな」
「はい」
 署長の言葉にこくりと頷く。
「それで御願いします」
「わかった。では三人だ」
 こうしてメンバーが決まった。署長はあらためて男に告げた。
「それでいいな。そして場所は何処だ?」
「駅です」
 男は一言で告げた。
「そこです」
「そうか」
 副署長は駅と聞いてすぐに何かを察した。そこは。
「一年前飛び込み自殺があったな」
「はい、そこに行けば必ず」
「犯人が来るというのだな」
「そうです。だからこそ」
「よし、わかった」
 署長もそこまで聞いた上で頷いてきた。
「では今夜駅に行こう、いいな」
「はい、それでは」
 こうして三人はその夜駅に行くことになった。閉鎖されていたが特別に警察の権限で入れてもらった。そこは大きめの駅だったが今は三人の他は誰もおらず静まり返っていた。赤い壁も暗闇の中に沈み線路にも電車も何もない。階段も汚れすら見えず黒いプラットホームも白い点線も誰もおらず非常に殺風景なものであった。三人はその殺風景な世界の中を歩いていた。署長はその中で男に対して問うのであった。
「ここでいいのだな」
「場所も時間もそうです」
 これでいいと述べてきた。
「もうすぐ来るでしょう」
「犯人は一体何者なのだ?」
 副署長は暗闇の中の駅を見回しながら怪訝な声で呟いた。
「わざわざこんなところに来るとは一体」
「私の予想ならば」
 男は副署長のその呟きに応えて述べる。
「人間ではありません」
「ではあれか」
 署長はそれを聞いて彼に言う。
「千年がどうとかいうのは」
「そうです。だからこそです」
 署長のその言葉にも答えた。
「間違いなく人間ではありません。それも」
「それも!?」
「かなり凶悪な相手です。ですが」
「もうこちらの手は用意してあるというのだね」
「その通りです。ですから御安心下さい」
 副署長にも答える。
「それにわかりませんか?」
「何がだね」
「今にも来ますよ、その相手が」
 彼は周囲を見ることなく述べてきた。
「もうすぐ」
「何故そう言えるのかね、また急に」
「気配です」
 男の返答はこうであった。
「気配が。この殺気に満ちた気配が何よりの証拠です」
「そういえばだ」
 署長はその言葉に応えるかのようにふと怪訝な顔になった。それと共に顔を顰めさせて言うのであった。
「何か急に生臭くなってきたな」
「確かに」
 副署長もここで気付いた。
「この匂いは。血ですか」
「それが何よりの証拠です」
 男は副署長の言葉に頷くと共に懐に手を入れた。
「来ます。そう」
 剣呑な鋭い声で言う。
「今にも」
「今にも」
「ええ、ほら」
 男の目が鋭くなっていた。彼は明らかに何かを感じていた。そうしてその感じた先をその鋭くなった目で見ている。そこにいるのがわかっているかのように。
「伏せて下さい」
 署長と副署長に対して告げた。
「すぐに。いいですね」
「!?うむ」
「わかった」
 二人はそれに頷くとすぐに伏せた。それと共に二人の頭の上を何かが通り過ぎた。
「今のは一体!?」
「何なのかね」
「その犯人です」
 男だけが立っていた。どうやら今のでは彼は何ともないようであった。その証拠に二人の上から聞こえる声は確かなものであった。
「やはりここで来ましたか」
「今のがか」
「はい」
 署長の言葉に応える。
「詳しいことは後で。また来ます」
 そう言うと懐に入れていた手を取り出した。そこには銃があった。
「これで。終わらせます」
「拳銃でかね」
「ただの拳銃ではありません」
 伏せたままの副署長に答える。見れば彼も署長も伏せながら拳銃を構えている。警官だけあってどんな時でも用心は怠ってはいなかった。
「この時の為にあえて持って来たものです」
「犯人を倒す為にか」
「そうです。また来ます」
 今度は署長にも副署長にもわかった。あまりにもはっきりとした殺気であったからだ。
「来るな」
「そうですね」
 副署長は署長の言葉に伏せたままで頷いた。
「間違いなく」
「ですがこれで終わりです」
 男は今の状況においてもまだ冷静であった。
「これで。今度で」
「そうか、では頼むぞ」
「はい」
 署長の言葉に応える。
「来た時に。これで」
「来たぞっ」
 副署長は気配だけを感じて告げた。彼にもはっきりとわかる程の強い殺気がした。それが何よりの証拠であった。
 
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