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おぢばにおかえり

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第二十話 二学期その八

「ちっちそこまでされたことある?しかも長池先輩だけじゃなくて何人もよ」
「私だったらもう学校に行かないわよ」
「確かに」
 私だったらそんなことされたらもう。学校には通うことができても二度と明るくなれないと思います。若し他にも色々とあったらそれこそ。頭がおかしくなるかも。
「先輩もそういうことがあったのよ」
「だからね」
「いんねんは返って来るのね」
「そうよ、それは逃げられないから」
「そうなの」
 話を聞いていて暗い気持ちになります。
「先輩でも」
「誰も逃げられないから」
 そうなんです。いんねんだけは逃げられないですし自分でそれに気付いてどうにかするしかないんです。私もそれは同じです。人は皆。
「先輩が怖いって言われてるのはそういう一面なんでしょうね」
「わかったみたいね、やっと」
「ええ、まだ信じられないけれど」
 俯いて皆に答えます。
「先輩は気付いておられるのかしら」
「気付いてると思うわ」
 寮生の娘の一人が私に言ってきました。
「それはね」
「気付いているから時々暗い顔見せるのよ」
 このことは私にもわかります。先輩は時々とても暗くて辛そうな表情を浮かべますから。それがどうしてなのかはわからなかったですけれどそれにはこういう理由があったのです。
「先輩も後悔しておられるのよ。けれど」
「まだ完全にいんねんを断ち切ることはできないのね」
「そう簡単には切られないわよ、いんねんはね」
「そうよね。だから皆それで苦しむんだし」
 いんねんをどうにかしないといけませんがやっぱりそれは難しいんです。前世からのものだったりしますから。皆そうなんです。
「先輩はいんねんを切られるのかしら」
「それはこれからの先輩次第でしょうね」
 一人からこう言われました。
「全部ね」
「先輩・・・・・・」
「けれど。大丈夫だと思うわ」
 それでもこう言ってもらえました。
「先輩が自覚しておられるしそれに優しい方なのは本当だし」
「そうよね」
 先輩がどういった方なのかは知っているつもりです。だからこのことは頷くことができました。それでも表情は暗いままですけれど。
「先輩なら」
「それでもね。人ってわからないわよね」
 今度はこの言葉が出て来ました。
「ええ。誰でもいんねんがあって」
「それに気付かないでいることだってあるし」
「その悪いんねんはね」
 また一人が言いました。
「白いんねんに変わるから」
「白いんねんになのね」
「ええ、だからそんなに悲観する必要もないのよ」
 こう言うのです。
「前向きでいいから。先輩はどうかわからないけれど」
「先輩、明るい方よ」
 私にとってはとても晴れやかで。本当に側にいてくれるだけで私は救われます。その方が前向きでないなんてとても思えません。
「だから。若しそんないんねんがあってもきっと」
「そうなればいいわね」
「いいわねって」
 自分でもどうしてここまで気になるかわかりません。先輩っていっても他人なのに。それでも先輩が言われるってことが嫌で。それで言うのでした。
「先輩だったら絶対」
「前から思っていたけれど」
 寮生の娘の一人にまた言われました。
「何なの?」
「ちっちってさ、本当に長池先輩のことになると必死になるわよね」
「そうよね」
 皆がそれに続きます。
「どうしてなの?一緒の部屋だから?」
「それでもかなり」
「だって。先輩にはいつもよくしてもらってるし」
 それがかなり大きいのは自分でもわかります。
「それに優しい方だし」
「ちっちから見ればなのね」
「ええ」
 他にどう言えばいいかわからない位。とてもいい人です。 
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