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おぢばにおかえり

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第二十話 二学期その六

「三年生なんてねえ」
「夢物語よね」
「そうそう」
 そういう話になります。
「三年の人達って皆立派だし」
「立派なんてものじゃないわよ」
 私にとってはそれは長池先輩です。本当に素晴らしい人です。
「ああしたふうになれるのかしら、私達」
「なれないわよね、絶対にね」
「高校生活ってあっという間だって言われるけれど」
 これは皆が言われています。寮生活なんてすぐに終わるって。すぐにって言われても私達はとてもそうは思えないですけれど。このこともそうなんです。
「どうなのかしらね」
「あと二年とかなりあるんだけれど」
「卒業なんて想像もできないわ」
 今度は卒業の話になります。
「ずっと高校生かもね」
「ずっとってことは」
 皆ついついすごく嫌な想像をしてしまいました。それは私もです。
「この厳しい生活がずっとってこと!?」
「嫌よ、毎朝こんなに早いの」
 その早さだけじゃないんです。起きたらすぐにお掃除とかのひのきしんですし。やっぱりかなりしんどいです。それがこれからもずっとだなんて。
「第二専修科みたいじゃない、東寮って」
「ああ、あそこね」
 高校を卒業して専修科という場所に行く人達もいます。ここは簡単に言えば天理教の専門学校みたいな場所です。ただ専修科は二年でその第二専修科は五年あります。専修科はそれぞれの詰所から通うんですけれどその第二専修科は寮生活です。厳しいことで有名です。
「あそこよりも厳しいの?東寮って」
「二部のさおとめ寮の方がきついんじゃないの?」
「ああ、あそこもかなりらしいわね」
 天理高校は二部という夜間もあってそこの女の子達の寮はさおとめ寮っていいます。ここでの生活は東寮よりも厳しいって話です。
「何か女の子の寮っていうとねえ」
「花園みたいに考えてる男の子多いらしいけれどね」
「それは全然違うと」
 これは断言できます。
「入ればそれは魔窟」
「汚い場所は徹底的に汚い」
「階級制度は北朝鮮」
 本当に北朝鮮ってどんな国なんでしょう。私が聞く限りでは東映の特撮ものの悪役そのまんまなんですけれど。あんまりそのまんまなんで驚いています。
「考えれば凄い場所よね」
「確かにここに三年いるって凄いわよね」
「全く」
 皆でまた言い合います。
「何だでかんだで二学期になったけれどね」
「秋ねえ」
「恋の季節っていうけれど」
 どうなんでしょう、この高校では。
「流石に普通に恋愛とかはいいんでしょ?寮でも」
「彼氏いる先輩とか多いわよ」
 そういう方もおられます。お付き合いに関しては特に滅茶苦茶なものでもない限りいいみたいです。そういえばあの長池先輩は。
「それでね、時々だけれど」
「時々?」
「ふられてえらいことになった人もいるらしいわよ」
 これは何処の学校でも同じです。私も中学校でそうした人を見てきました。
「えらく落ち込んで泣き叫んで。凄かったらしいわ」
「ちょっと待って、それって」
 私はその話を聞いて誰なのかすぐにわかりました。
「長池先輩!?違うの?」
「あっ、多分そうよ」
「三年の人だったっていうし」
 自宅生の娘達が私に言います。
「長池先輩ってあの色が白くて茶色の髪の人よね」
「ええ、そうよ」
 私は真面目な顔で質問に答えます。 
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