ULTRASEVEN AX ~太正櫻と赤き血潮の戦士~
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1-5 赤き血潮の巨人
「グルオオオッ!!」
赤い巨人へ姿を変えたジンを見て、アロンから標的をマリアから彼に変更、突進を仕掛けた。
「デュ!!」
向かってきたアロンの頭を、ジンは正面から両手で掴んだ。頭を掴まれたアロンはもがき、ジンの手を振り払おうとしたものの、ジンの力はすさまじく、アロンがどれほど首を振っても話せなかった。
その間にジンは猛烈な膝蹴りを胴体に叩き込み、続いて首筋を引っつかみ、思い切り背負い投げて地面に投げ倒した。
倒れこんだところでその上にのしかかり、さらに続けてアロンの顔を殴りつける。しかし、アロンは頭突きを食らわせて、自分にのしかかっていたジンを突き飛ばして逃れると、立ち上がったところで足元の地面に足の先を突っ込み、思い切り足を上げる。その際に抉られた地面が一つの土の塊となってジンを襲う。
「デュ!!」
ジンはとっさに額に、チョキの形にした両手を額に添える。その途端に、彼の額に埋め込まれていた縦長のエメラルドグリーンのランプから、緑色に輝く光線が放たれ、アロンが抉り出した土の塊を粉々に吹き飛ばす。
だが、粉々に吹き飛ばした土の塊の粉塵に紛れたせいか、アロンの姿が消えていた。
「降魔が、いない!?まさか逃げたんですの?」
すみれが声を上げながら、辺りを見渡す。
「いえ、気配はまだ感じるわ」
マリアは視線を鋭くしながら周囲を見渡し、アロンの姿がどこに言ったのかを確認する。だが敵の姿はどこにも見当たらない。地面を掘って姿を隠したのだろうか?
「すみれ、地面も警戒範囲に入れなさい!地中にもぐった可能性があるわ!」
「わ、わかりましたわ!」
光武が動かないとはいえ、まだ自分はここに立っている。マリア機のそばで、すみれは引き続き警戒に入る。
だが、そのときだった。
「ジュア!!」
ジンは突如、すぐそばの水路に向けて手から一発の光の弾丸を手裏剣のように飛ばした。
「ギャアアアアアアア!!!」
水に着弾したと同時に弾丸は爆発し、水しぶきが巻き上がる。その音と共に、アロンの悲鳴が轟く。そして水しぶきの中から、姿を消していたアロンが姿を現した。もしや水に溶け込むように隠れていたとでも言うのだろうか。いや、それよりも…
(まさか、あの巨人には奴がどこに隠れていたか見えていたの…!?)
マリアは、ほとんど時間をかけることなく赤い巨人が、姿を隠したアロンの居場所を突き止めたことに驚かされた。
居場所を明かされたアロンを見ると、赤い巨人は片膝をついて頭に付いた突起に両手を添える。すると、何か頭から外れる感触を覚える。それを確かめると、ジンは頭の突起に両手を添えたまま、前に向けて両手を振りかざした。
「ジュア!!」
なんど、彼の頭についていた突起が、ブーメランとなってアロンに一直線に向かっていったではないか。アロンの足元に向かって高速回転しながら近づいていくブーメランはアロンの真下まで飛来し、そのまま急上昇する。
ザシュ!!と切り裂く音が鳴り響く。ブーメランが赤い巨人の方へ戻って行き、眼前に来たところで赤い巨人はそれをガシッと掴み、元通り頭に装着しなおした。
それと同時に、アロンの体は左右二つに綺麗にガバッと割れ、倒れた。
「や、やった…!?」
光武に乗っていたマリアやすみれ、地上から見ていた奏組、作戦司令室の巨大降魔は倒された光景に誰もが目を離せなかった。
やがて、赤い巨人は膝を付いて赤く発光した後、まるで最初からいなかったかのようにその姿を消した。
「消えた…?」
一体あの巨人はなんだったのだ?突然表れて、あの恐ろしい巨大降魔を打ち倒してしまうとは…。
「…今は、劇場にもどりましょう。すみれ。お互いに怪我が酷いし、光武も修繕が必要だわ」
「…わかりましたわ。これより帰還します」
「ちぃ、ここまで戦えるほどに力を取り戻していたのか…」
銀髪の男は、アロンが倒されて酷く悔しげに顔を歪ませた。
「ここは一旦引くか…だが!いずれ、貴様を倒し我が野望を成就してくれる…!」
彼は捨て台詞を吐き捨て、忍者の印のように手を合わせると、わずか一瞬の撃ちに、最初から影も形も無かったかのごとく姿を消したのだった。
赤い巨人が消え去ったと同時に、ジンは問屋街の建物壁影に背中を預けていた。
さっきのあれは、一体なんだったのだ?
確か自分は、すみれやマリアの光武があの降魔とか言う怪物に破壊されかけたとき、絶対に止めなければと思った。そう思ったら、体が急に熱く燃え上がるような感覚にとらわれて…。
気がついたら、意識が飛んで…。
「なんなんだ…僕は…さっきまで何を?」
ジンは、赤い巨人になったときの記憶がなかった。
だが、自分の体に張りめぐる異様な感覚だけは覚えていた。自分の体に、何かが起こったような感覚を。さっきまでの出来事に対してわけがわからず、頭の中がくしゃくしゃになって訳がわからなくなった。
「ジン君、ここにいたのね…もう!女の子を残して一人で出て行っちゃったらだめじゃない!」
すると、ジンを追って由里がようやく駆けつけてきた。
「それにしても、危ないところだったわね、マリアさんたち。でも、あの赤い巨人ってなんだったの?あの怪物の仲間じゃなかったみたいだったけど…」
しかし、背中を壁に預け、顔が蒼白になっているジンの姿を見て、彼女も異変に気づく。
「ちょっと、大丈夫?どこか痛むの?怪我したの?」
しかし、ジンは答えられなかった。突然の出来事の連続で彼の精神が追いつけなくなり、意識が朦朧として倒れてしまう。
「ジン君!?」
由里が自分の名前を呼ぶのを聞いたのを最後に、ジンは意識を手放した。
後書き
次回予告
僕は、『あの二人』との運命的な出会いを果たすことになる。
しかし、現実は新しい出会いに喜ぶ暇も与えてくれなかった。
街を襲った化け物、降魔。
それと戦う帝国歌劇団…いや、帝国華撃団。
そして街に現れたという赤い巨人。
誰か教えてくれ…!
僕は一体誰なんだ!?
次回! 『救世主,光臨』
太正櫻に浪漫の嵐!
お願い、あなたにこの世界を救って欲しいの
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