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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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Another29 イプシロンの最期

 
前書き
イプシロンを倒したエックス達 

 
レイジングエクスチャージとギガアタックの連続使用で身体が悲鳴を上げているエックスはハイパーモードを解除してイプシロンを見据えた。
超フォースメタルを暴走させた負荷により、イプシロンの内部機関は相当ダメージを受けており、しかも、イプシロンを修理出来る技術を持つ存在は、この場にはいない。
誰の目から見ても、このままではイプシロンは助からないということが明白だった。
エックスは負荷で今にも倒れそうになる身体を必死に支えながらバスターを構えた。

エックス「何故だ…?何故超フォースメタルのミサイルなんて危険な兵器を!!」

バスターを向けられたイプシロンは肩で息を吐きながら、エックス達を睨みつけた。

イプシロン「力だ…。力をつけなければ、誰も私達の主張になど耳を貸さん」

ルイン「そんな!?他に何か方法があったんじゃ…」

イプシロン「お前達連邦に“イレギュラー”扱いされた我々に、他にどんな方法があったというのだ!!」

ルイン「そ、それは…」

イプシロンの言葉にルインは閉口してしまう。
レプリロイドは一度イレギュラー認定を受けてしまうと、それを取り消すのは容易ではない。
例えイレギュラー化して正常に戻ったレプリロイドでも、しばらくの間は元イレギュラーのレッテルが付き纏う。
事実、イレギュラー化から正常に戻ったホーネック達、ゲイト、ヤンマーク達は信用を得るまで元イレギュラーとして扱われた。

イプシロン「私は動ける限り…お前達を…っ!!」

立ち上がったイプシロンはアーマーから火花を散らし、苦しそうに喘ぎながらも、攻撃しようとする。

ゼロ「撃て、エックス!!」

エックス「うおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」

ゼロの声が響き渡り、エックスのバスターから最後の一撃が放たれた。
それは、チャージブレードで刻まれた傷に吸い込まれるように炸裂したのだった。
目を開けられないくらい強い光が玉座の間に広がる。
光が晴れ、全てが見渡せるようになると地面に黄金の輝きを放つイプシロンの強大な力の動力源であり、心臓とも言える超フォースメタルがあった。

エックス「これが、イプシロンの超フォースメタル…」

エックスは床から超フォースメタルを拾い上げ、切ない思いと共に胸の上で握り締めた。

ルイン「本当に…他に方法がなかったのかな?」

エックスの思いを代弁するようにルインが呟いた。
ルインは酷く傷付いた片腕をゆっくりと動かし、超フォースメタルに触れる。
気のせいかもしれないが、少しだけ腕の痛みが和らいだ気がする。

エックス「ルイン…」

ルイン「勝ったのに…何だか…悲しいね…」

悲しげにエックスの掌に収まっている超フォースメタルを見つめるルイン。

ゼロ「だが、いくら御大層なことを言っても、リベリオンがしようとしたことはイレギュラーだった」

ゼロが、親友と後輩の肩に諭すように手を置いた。

ルナ「一歩間違えりゃ、奴らは世界を破滅させちまうところだったんだ。」

ゼロ「その通りだ。俺達は間違ってはいない」

ルイン「でも…」

何が正しいかどうかは後世の歴史だけが決められることだと、スカーフェイスが言っていたのを思い出した。

アクセル「理屈じゃないんだよ」

ルナ「アクセル?」

アクセル「誰にも分からないんだよ。何がどうしてイレギュラーになるかなんてさ……」

エックス「………」

アクセル「例え間違った道であったとしても僕はイレギュラーハンターとしてあり続けるよ。今まで倒してきたイレギュラー達からしたら単なる自己満足に過ぎないだろうけど、それでもイレギュラーハンターとして100年間ずっとイレギュラーと戦い続けて来たプライドがあるからね」

ルイン「…そっか。やっぱ凄いねアクセルは。私もそう言う風に思う事が出来たら良いんだけど」

どこか寂しげに微笑するルイン。
アクセルも苦笑しながら、イプシロンとスカーフェイスのDNAコアを回収した。
全員が、考え方はどうあれ、ギガンティスの未来とレプリロイドの未来のために戦い続けた戦士達に黙祷を捧げた。

マッシモ「…ん?」

足音に気付いて振り返るとマッシモは目を見開いた。
マッシモの様子に気付いたエックス達も後ろを振り返るとそこには…。

シナモン「あ、あの人は…」

緑色の軍服を思わせるアーマーを纏ったレプリロイドが、真っ直ぐエックス達の方へ歩いてくる。

エックス「リディプス大佐…!!」

それはエックスとゼロ、ルインの上司であり、3人をギガンティスへ送り出したリディプス大佐だった。

リディプス「超フォースメタルの反応をキャッチして来たのだが…」

ルイン「え?」

リディプス「超フォースメタルはどうなった?」

エックス「はい、イプシロンが所持していましたが…回収しました」

エックスは躊躇わずリディプス大佐にイプシロンの超フォースメタルを渡した。

リディプス「これが…」

リディプス大佐は暫く手の中にある超フォースメタルの黄金の輝きを見つめていた。
やがてリディプス大佐は改めてエックス達に向き直り、賞賛した。

リディプス「今作戦において、諸君らの働きは見事だった!!作戦を指揮出来たことを名誉に思うよ、エックス。レジスタンスの諸君も協力に感謝する」

そうしてリディプス大佐は敬礼し、5人のイレギュラーハンターとレジスタンスの協力者達に最大の敬意を表した。

エックス「ありがとうございます」

エックスも傷の痛みのせいか、リディプス大佐にゆっくりとだが敬礼した。

リディプス「それでは諸君、基地に戻っていたまえ」

リディプス大佐はエックス達の態度に満足したように頷くと、さっと踵を返した。

リディプス「すぐに迎えの飛行艇を来させよう」

これでギガンティスの戦い全てが終わったのだ。
エックスは複雑な表情を浮かべながらここから去っていくリディプス大佐の背中を見ていた。
いくら上司から賛辞を受けてもエックスの心は少しも晴れない。
シグナスや今は亡きケイン博士のようにエックスをよく知っている上司達なら、最後に慰めの言葉でもかけてくれたかもしれないが、付き合いが浅いリディプス大佐にそれを期待するべきではないだろう。

ルイン「エックス…お疲れ様」

エックスの隣で、損傷のせいでぎこちないが背中を優しく叩くルインにエックスも微笑を返す。

エックス「(しかし…ミサイルの弾頭に使われていた超フォースメタルはどこに消えたんだろうか…?)」

イプシロンやスカーフェイスの発言から考えると、イプシロン達は自分達がミサイルの超フォースメタルを回収したと思いこんでいたようだ。
ならばミサイルの弾頭の超フォースメタルを回収したのがリベリオンではないのならば、一体誰が超フォースメタルを回収したのか?
それがエックスの最大の疑問であった。 
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