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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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GGO
~銃声と硝煙の輪舞~
  Dancing in the dark

「――――ッく!!」

ズン!!という大気をも振動させる音をともに、ユウキは手中にて保っていた心意が強引にへし折られたことを知覚する。

事実、ブヴ――――ッ!という悲鳴のような音が上がり、上書き(オーバーライド)によって平べったくなっていた光剣の刀身が弾かれたように元の円筒形に戻っていた。パチパチと爆ぜる光のパーティクルが青紫色に染まってきた夕焼けに映える。

だがそれを認識するのもつかの間、神経を極限まで張りつめていなければたちまち反応圏を振り切るだろう速度をもって、黒く鈍く光る腕が振るわれた。

戦略や作戦などはない。本物の暴力は振るわれただけで、それらをまとめて薙ぎ倒す。

二刀をもってクロスガードを敢行するが、心意のかかっていないそれはそこら辺に転がっている棒切れよりも貧弱なものだった。

万分の一秒すらも耐え切れずに、小柄な身体がノーバウンドで宙を飛んだ。途中にあった巨岩を割り砕きながら吹き飛んだ体躯は、それでも空中で体勢を立て直し、盛大な砂埃エフェクトを出しながら着地した。

その間に《ソレ》に飛んだのは、幾多の弾丸。

5.56x45mm NATO弾が、一分に850発という発射速度をもって、秒速が約一キロにも届く初速をもって、対象の活動を停止させるべく殺到する。

だが、当たらない。

撃つ、と思い、引き金(トリガー)に指を掛けた時点で、目で観測していた地点にいないのだ。

舌打ちをする暇もなく、鋭く周囲を警戒するミナの耳元でひぅッ、というリラが息を呑む音が聞こえた。

直後、離れた場所で、リラの愛銃――――ブルーパーが吐き出した対人榴弾が炸裂し、砂と岩盤を四散させる乾いた轟音が響くが、背中越しに伝わるリラの緊張はまるで解けていない。

―――速すぎるッ!!

ほとんど悲鳴のように、脳裏が、精神が、心が叫ぶ。

ソロでフィールドに出ていた時に運悪く対人スコードロンの陣形のただ中に誘い込まれた時でも、ここまでの精神的な重圧(プレッシャー)は感じないだろう。ヤツらが獲物をいたぶるように、ねぶるように囲いを徐々に小さくし、真綿で首を絞めるように殺すのとはわけが違う。

言うなればそう。直線的なのだ。

いたぶるようでもなく、しかしいたぶるように。

ねぶるようでもなく、しかしねぶるように。

一撃で決めることは容易い。だが、それではつまらない。

だから、まだイキがいい獲物が疲れ、反応が鈍くなるのをただ淡々と、舌なめずりをしながら待ち構えているのだ。

直線的で、極めて《無邪気》な残虐性。

やっと吹き飛ばされたユウキが髪をたなびかせながら戻り――――合流する前に『見えないナニカ』と激しい剣戟を交わし始める。

だが、それを見ても手出しはできない。

剣戟を交わし合っている途中であっても、リラとミナが欠片でも動こうとすれば直近の地面が轟音とともに爆散し、こちらのしようとしていたアクションをことごとく警戒に引き戻す。

それが示しているのは悠然たる事実。

次はお前らだからジッとしてろ。

傲然と、塊然と、頑然と言下に言い放つ。

「「―――――ッッ!!」」

動きたい。

撃ちたい。

戦いたい。

だけど――――死にたくない。

本能が、本性が、本質が絶叫する。

《アレ》は、戦いという行為が成立しない存在である、と。

ゾガッギャギャギャギギギギギィガガガガガッッッッ!!!!!

四方八方、どころではない。文字通り360度全ての方向から、無数の拳撃が回避を許さない精度と威力をもって襲い掛かってくる。その嵐のただ中で立って、しかもそれら全てを二刀で受け流しているユウキにかかる負担は尋常ならざるものがある。

「ッ!」

背後から放たれた、延髄、というか頭そのものを吹き飛ばすような一撃を、剣身を横にして辛くも衝撃を逃がす。せっかく組み直した心意が、それを支える心ごと瓦解するような揺さぶりが手中で爆発する。

視界の端で流れるように空に消えていく腕は、闇を切り取ったように黒く染まっていた。

だが、それは決して褐色という意味ではない。ドス黒く変色した皮膚は、ところどころ金属質な輝きを放つ光沢を持っていた。

そして最悪なことに、ユウキの中の《絶剣》と呼ばれる部分はソレを目撃した記憶を掘り起こす。

―――黒鋼(くろがね)のッ……鎧!

下半身と上半身を永遠にお別れしそうな横薙ぎが、分厚いサバイバルベストを何の抵抗感なく切り裂く。さっき吹き飛ばされた時についでに脱いでおけばよかった、と後悔するが、もうそんな時間と隙は与えてくれない。

鈍く光る黒い嵐はさらに苛烈さと暴虐さを増す。

だが、攻撃の手が増せば増すほどユウキは冷静になれ、と悲鳴のように脳裏で繰り返した。

リラとミナに援護を頼むことは難しい。現に先刻から果敢に鉛玉やら対人榴弾やらが飛んでくるが、ほとんど相手にもされていない。

いや、それを言ったら今の自分だって正しい意味で戦闘が成り立っているのか怪しい。

攻守のバランスなど端から存在していない。ほとんど防御しかできていない。否、させてもらえないと言った方が正しいか。

あの城で培ったささやかな自信が、誇りが、矜持が、その基盤から崩される感覚。

そして、その崩壊を後押しするのは、少年が言っていた言葉だ。

すなわち、これでまだ()()()であるかもしれないという事実。

アインクラッドにて、《災禍の鎧》は六王によって完璧なまでに砕かれた。その際、初代の怨念たる《核》と、力が三つに分かれた三匹の《鬼》が誕生したのだ。

それは逆に言えば、それら四つを揃えれば、再び《災禍の鎧》が復活するということに他ならない。

もともと、ピースは揃っていた。それが偶発的なものか、はたまた恣意的なものが介入していたのかは別として。

五代目《鎧》討伐の時、レンの心に巣くった《狂怒》

ALOにてレンが下した《狂楽》

そして、ユウキ自身が埋め込んだ、埋め込んでしまった――――《核》

だが、まだ足りない。

もし揃っていたならば、レンだろうともここに来るまでの間、いや《核》を埋め込まれた瞬間に《鎧》と化していたはずだ。

そう、彼の言が正しければ、まだ、もう一ピースある。

他でもない、元凶。

フェイバルの(なか)に在る、存在。

《狂哀》

―――とはッ……いっ…ても!

破壊不能というシステムの定義に真っ向から反するような、地を割るような大撃を紙一重で避けながらユウキは思う。

―――そもそも行動に移れない!レンが強いのは分かってたけど、ここまでなんて!!

そもそもの話。

攻撃のプロセスがあまりにも異なりすぎている。

一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)というのは、敏捷値優先型ビルドであるプレイヤーがとる極めて一般的で普遍的な戦術だが、言うなればその究極が現在のレンだ。

一合、普通ならば鍔迫り合いでもし、互いの力量を図る一瞬のうちに、《ソレ》は多方向から()()()攻撃してくるのだ。一撃に込める意味があまりにも小さい。一撃をして二撃、ではなく多撃をして一撃なのである。

質ではなく、量をもって問答無用に圧し流し、押し潰す。

時間制限(タイムリミット)があるかは判らない。もう手遅れかもしれない。

死ぬ気で回避し、受け流し、どうにかガードと呼べる一瞬の均衡で見える少年の腕はドス黒く、そして鈍い光を放っている。もう、過去の所有者達と同じように、精神まで汚染されて突き動かされるような狂気に身を任せているかもしれない。

でも。

だけど。

足掻くのをやめる理由にはならない。

ギリィッ、と。

骨が軋むほどに強く剣を握り直し、《絶剣》は前を向く。

手元の光剣の剣身は、明らかに戦闘開始時と比べて輝きが減っていた。出力が出ていない。光剣は普通の光線銃と同じように、エネルギーパックで刀身を維持している。実弾銃に比べれば随分燃費は良い方だが、それでも限度はある。

心意は決して万能の力などではない。

いくらなんでも、宿らせる刀身もなしに剣を顕現させることなどユウキにはできない。

―――どうしたら……!?

焦燥に目を細める少女の意思とは裏腹に、いやその意思に応えるかのように、手中の剣は彼女を助けた。

ロウソクの灯りが消える時、ひときわ輝くように。

バヂッ!という高電圧のコンセントに針金をブッ刺したような鋭い音とともに、右の光剣がそれまで燻っていたのは何だったのかと思うほどの力強い光を取り戻した。

同時。

これまでと違い、辛うじて弾くことができていた一撃と、少女は真っ向から対決した。

ゴッッガギイィ!!

耳をつんざく金属音が響き渡り、回避することすら許されなかった拳が――――止まった。

『――――ゥ?』

そして同じく、ユウキは今まで見る余裕さえなかった少年の様子を初めて認識する。

小柄な体躯を覆う黒いファティーグはところどころ金属質な輝きを放ち、何より顔をフードのように取り囲む瘴気のような過剰光の奥に沈んだ顔は不自然なまで無表情だった。

ゾッとするほど色の抜けた肌は紙の白を通り越して、曇天のような灰色。しかし深い湖の水面のようだった碧眼だけは、血を落としたような真紅に染まり、理由のない衝動に突き動かされているようにギラギラとした光を放っている。

至近でその餓えた輝きと対峙し、だが決して引かず、受け止めた拳から伝わる人並み外れた膂力に抗いながら、少女は必死に訴えた。

「レン!レンッ!!お願い、目を覚まして!正気に戻って!」

ユウキは全てのステータス値を均等に上げたバランス型だ。したがって生粋のダメージディーラーほどの筋力値は持っていないし、敏捷値も持ち合わせていない。

だがそれを抜きにしても、皮膚にあるまじき硬質な手応えが返ってくる拳がジリジリと近づいてくるのを止められなかった。

「レンッッ!!!」

『――――――――ゥル』

ぴしり、と。

生気のない顔に、真横に裂ける真っ赤な亀裂が走る。

『ゥゥウルルルアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!!』

咆哮。

ぐばりと開いたあぎとから放たれた砲声は、空気の震えという物理的な力となって至近距離から少女にブチ当たる。

――――寸前。

少年の背面が突如、轟音とともに爆発した。

「当たった!」

半ば希望的だった一撃に驚くリラは、しかし直後に顔を強張らせることになる。

ぐるん、と真っ赤に煮えたぎる双眼が蠢き、ちっぽけな少女をロックオンした。

「ひッ――――!」

だが。

瞳が見つめていたのは、リラではなかった。いや、そもそも初めから認識されていたのかすら疑問である。

双眸が見つめていたのは、遥か先。

廃墟都市。

『………………………………フラン?』

「…………え?」

とうとうエネルギーパック残量が完全なるゼロになり、刀身が掻き消えた光剣を、無駄とは知りつつ構えながら、ユウキは耳を疑った。

―――人語を、喋った?

「レン?レンなの!?」

返答はなかった。

圧搾された大地の軋みとともに、少女達の眼前からレンと呼ばれたモノは忽然と消え失せた。 
 

 
後書き
なべさん「はい始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!」
レン「涼しくなってきたな」
なべさん「秋になってきたからね」
レン「……なぁ、前回もこんなこと言っt」
なべさん「さぁさぁ!本編は!いよいよカオスになってきましたな!!」
レン「……そうだね。もうこれオリジナルで良くないか?原作キャラ誰もいないじゃん」
なべさん「ユウキがいるじゃないか」
レン「出てないから却下。てかこれちゃんと締められるの?大丈夫?」
なべさん「大丈夫さ、たぶん…いやきっと…何とか……」
レン「おい」
なべさん「はい!自作キャラ、感想を送ってきてくださいね!」
――To be continued―― 
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