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ぶそうぐらし!

作者:かやちゃ
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第6話「さいかい」

 
前書き
めぐねえが噛まれたのがパンデミック発生から一週間後...早すぎたかな。
まぁ、いいや。(おい

原作とアニメの細かい相違点を少し纏めてみました。

放送室の場所:原作→三階、アニメ→二階?
地下への階段:原作→階段の後ろにある機械室から、アニメ→階段から
寝床:原作→放送室?、アニメ→資料室

細かい所はこれぐらいですかね? 

 


       =遼side=



「―――後は、多分工藤君の言うとおりですね。」

「なるほど...。」

  佐倉先生から今までの経緯を知る。

  偶々屋上にいたことで助かり、そこから生活圏を広げ、その最中にあの夕立で集まったゾンビにバリケードを壊されて襲われたって事か...。

「咄嗟に他の三人を庇うなんて、思い切ったことをしますね...。」

「...私はその時、あのマニュアルを見て責任を感じていたの。だから、あの子達が生きるためには私はどうなってもいいって...だから、かしらね...。」

  自己犠牲か...。こんな状況じゃ仕方ないこと...なのかな。

「それにしても学校で籠城するのを敢えて部活にする...ですか。」

「ええ。その方が、精神的にも楽だと思って...。」

「同感ですね。こんな状況になっては、例え軍人や傭兵でもきついと思いますから。」

  こういう精神的にきつい状況の時は、何か戦場に関係ないことで趣味などを行う事で気を紛らわすのがいいと親父に言われた事があるな。まさにそれか。

「...とすると、早々に戻るべきですね。」

「えっ?」

「あの時は三階に行ってなかったから分かりませんでしたけど、夕立でゾンビが集まってたという事は今の状況としては助かったか既に死んでいるかの二択ですからね。それに、佐倉先生はもう死んだものだと思って、三人とも精神に多大な負荷がかかっているでしょうから。」

  話を聞いた限り、他の三人は唯一の大人である佐倉先生を結構頼っていたらしいからな。もし、その人物が死んでしまったのなら、相当精神に来ているはずだ。

「...そうね...。」

「では、早速行きましょうか。」

「.....えっ、今から...?」

  既に時間では日が暮れている。確かに遅いかもしれないな。

「善は急げと言いますし。あ、一応、武器として持っておいてください。」

  サプレッサーを付けた拳銃を先生に渡しておく。

「ええっ!?わ、私こんなの使えませんよ!?」

「使い方はドラマとかにあるのと全く同じです。それに、一応の武器ですから、大抵の相手は俺が引き受けます。」

  刀を腰に差し、そう言う。

「いつ手遅れになるか分かりません。今すぐ行きましょう。」

「手遅れ...そうね。行きましょう。」

  整理しておいたバッグを背負い、一階へと向かう。

「...これは....。」

  佐倉先生が道中の頭の潰れたゾンビを見て疑問の声を上げる。

「大抵は俺が倒したものです。頭を潰せば大抵は倒せるのがセオリーなんで。」

「この数を...たった一人で...?」

「まぁ...そうですね。」

  廊下を見てみればまさに死屍累々な光景が広がっている。...我ながらひどいな。

「さぁ、行きましょうか。」

「ええ。」

  階段を上って二階に上がる。すると、そこには...。

「バリケードか?」

「...これは、皆で作った...もう一度、組み立てたのね...。」

  机が積み重ねられ、ワイヤーなどで固定されているバリケードがあった。

「...っと、よじ登れるな。先生、行けますか?」

「んしょ....うん、行けるわ。」

「なら、先に行っておいてください。奴らが来る可能性もあるので。」

  バリケードを背に、警戒しておく。...尤も、今の所一階で数体見かけただけだが。

「んしょ、んしょ...ふう...。」

「行けましたか?...よし、俺も。」

  さっさと机をよじ登り、バリケードを乗り越える。

「身軽ですね...。」

「この程度の壁はよじ登れないとダメだと親父に鍛えられましたから。」

「き、厳しいですね...。」

  小さい頃からだったからその厳しさにも慣れちゃったよ...。(遠い目)

「では、行きましょう。」

「ええ。」

  三階に着き、警戒を解かずに職員休憩室を抜ける。

「...人気がないな...。」

「みんな....。」

  暗くなった廊下をライトで照らして見渡すが、奴らすら見当たらない。

「普段は、どこの部屋を拠点にしていたんですか?」

「えっと...普段は生徒会室で、寝るときは放送室を使ってたわ。」

「では、そこから見て行きましょう。」

  生徒会室はすぐそこなので、佐倉先生を後ろに控えさせて警戒しながら開ける。

「っ....!」

「....っと。」

  すると、中にはシャベルを持った少女と、後ろで包丁を持った少女がいた。

「せ、生存者....?」

「無事、生きてたみたいだな。」

  パッと見た所、怪我も負ってないみたいだ。...疲労は目に見えてるが。

「ゆうりさん、くるみさん...。」

「め、めぐねえ!?」

「い、生きてたんですか!?」

  後ろから佐倉先生も姿を現し、二人は先生に驚く。

「ええ。九死に一生をって所ね。」

「でも、めぐねえ、噛まれたのなら、どうやって...。」

「ワクチンを打ったのさ。」

  シャベルを持った少女が噛まれたはずの事を言ったので、それに答える。

「偶々辿り着いた地下二階に、奴らになるのを防ぐワクチンがあったんだ。それを佐倉先生に打った。ただそれだけだよ。」

「...あんたは一体...。」

  そりゃ、この中じゃ俺が仲間はずれか。疑われるのも仕方ない。

「三年B組、工藤遼だ。事件当日、家で寝込んでてな。そこからここまで避難してきたって訳だ。」

「同級生...って家から!?よくここまでこれたな!?」

「家の窓と玄関が頑丈だったからな。親もちょうどいなかったし、運よく免れただけだ。ここまでこれたのは...一重にこれとこれのおかげかな。」

  銃と模造刀を見せる。

「え、ちょ、これ...本物?」

「刀は模造刀だが、銃はれっきとした本物だ。」

  持とうとして伸ばしてきた手を引っ込められる。

「...どこでそんなものを?」

「あーっと...親父が元軍人でな。どういう訳か、いざという時のために金庫の隣の鍵付きの棚に入ってた。」

「凄い家だな...。」

  まぁな。俺も我ながら凄い家だと思う。

「...まぁ、俺も一度噛まれてやばかったけどな...。」

「えっ!?」

「あー、大丈夫大丈夫。運よく地下に辿り着いてワクチンを打ったから。」

  噛まれた事に驚いたので、説明すると安堵した表情をする二人。

「....由紀さんは..?」

「由紀は....。」

「隣で寝ています。」

  その答えにホッとする先生。皆何とか無事だったからだろう。

「ただ由紀は...。」

「っ...由紀さんが、どうしたの...?」

  何かあったようで深刻な表情をする二人。

「...めぐねえが、襲われたのをきっかけに、現実逃避をしているというか...。」

「...由紀ちゃんは、あの日のあの後、熱を出して寝込んでしまったんです。それで、昨日目を覚ましたんですけど、そしたら...。」

  聞けば、その子の中ではパンデミックは起こってなく、普段通りの学校生活を送っているつもりらしい。...現実逃避、つまりその子には今の惨状が見えていないそうだ。先生も襲われたはずなのに、普通にいる事になっていたらしい。

「確かに、こんな状況にでもなれば現実逃避もしたくなるよな...。そこに先生が襲われてしまったっていう事実だ。むしろ、精神が崩壊していないだけ凄いとも言えるな。」

「....そんな他人事みたいに...。」

「うん?」

「そんな他人事みたいに言わないでよ!あの子が、どれだけ苦しんでいるのか...!」

  後ろの方にいた茶髪の少女がそう言う。

「お、おい..!」

「っ...ごめんなさい...一人でいたあなたも十分大変だったものね...。」

「いや、実際他人事みたいに言ってたしな。そこは謝るよ。」

  軽率な発言だったな。...しかし、随分大事にされてるんだな。由紀とやらは。

「....二人は、私がいなくなってから、どうしていたの?」

「...めぐねえが襲われたあの日、しばらくしたら雨が止んで、奴らはどこかに行ったんだ。その隙を突いて、私とりーさんで三階を奪還したんだ。」

「それで、一時的な安全を確保して、昨日にバリケードを立て直して、三階を安全にしたんです。」

  なかなかに凄いな。たった二人だけで三階を確保するなんて。

「....頑張ったわね...。」

「...私達も、めぐねえが死んだと思ってたから、もう死に物狂いでさ...。」

「そうだったの....。」

  見れば見るほど、疲労しているのが分かるな...。先生の顔も暗い。

「...無事だったから良かったけど、もう、私がいなくなっても無茶しないでね...。」

「「はい...。」」

  優しく諭され、反省の返事をする二人。

「...さて、もう夜になってる事だし、二人ももう休みなさい。後は私に任せて。」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!いくらなんでもめぐねえだけに任せられない!」

「でも、二人とも相当疲れてるでしょう?」

  先生の言葉に二人とも言葉を詰まらせる。

「...大丈夫。心配いらないから..。」

「でもめぐねえ...そう言ってあの時は...。」

  “あの時”とは、多分襲われた時の事だろう。

「...大丈夫よ。」

「でも...!」

  どちらも不安なんだろう。先生も二人も譲ろうとしない。

「...俺が見回りをするよ。」

「工藤君!?」

「今まで俺は一人で生き抜いてきたんだ。それに、学校も少し探索したいからな。三階を一通り見回ってくるさ。」

  そう言って早速ライトを手に廊下を行こうとする。

「ちょ、ちょっと待てよ!いくらなんでも危険すぎる!」

「大丈夫だって。俺、風邪引いてさらに奴らに囲まれた状況でも何とかなったんだし、この程度の暗闇、どうってことないさ。」

  シャベルの子が止めてきたが、それに構わず俺は行こうとする。

「それに、生憎俺は今、眠くないんだ。あんたらは疲労してるからいい加減休むべきだ。じゃ、先生、後は頼みます。」

「...本当は止めるべきなんでしょうけど...任せましたよ。」

  後は二人の事を知っている先生に任せて、今度こそ俺は探索に向かう。





「....と、言っても、特に何もなかったな。」

  扉を閉めた事で閉じ込められていたゾンビ以外、特に変わった事はなかった。...いや、以前と比べたら色々変わってるけどもさ。

「...さて、見逃しがなければこれで三階のゾンビは全滅した訳だが...。」

  ...もう何週かするか。





「...あれ?佐倉先生?」

「あ、工藤君、戻ってきたんですね。」

  生徒会室の前に先生が立っていた。しかも銃を持って。

「私、二日も寝てたので眠くならなくて...工藤君のように見回りに行くのは二人に止められたので、せめて見張りだけでもって...。」

「なるほど...あ、もう一度見回ってきます。」

「気を付けてくださいね?」

  少しばかり心配だが、もし俺と同じ状態になっているのなら、ゾンビには気づかれづらいはずだ。





「三階はもういませんでした。」

  二週目は特に何もなく、すぐに先生の所に戻ってこれた。

「そう...それなら安心ね...。」

「まぁ、二階にはまだまだいるでしょうから、一時的に、ですがね。」

  先生の隣に立ち、少しばかり話をする。

「...先生、一つ、言っておきたい事があります。」

「...?なんでしょうか?」

「先生は...と言うより、俺と先生は、半分奴らと同じような存在になっています。」

「.....えっ?」

  俺の言った言葉を飲み込めずに間の抜けた返事をする先生。

「俺は一度噛まれ、そしてワクチンで治療しました。しかし、温度覚のほとんどを失っており、さらには痛覚も一部欠落しています。...先生はどうですか?」

「っ.....そう、いえば...。」

  心当たりがあるのか、顔を青くする先生。

「先生は俺よりもゾンビ化が進行...と言うよりかは、ほぼゾンビと化していました。正直、あそこから息を吹き返したのも奇跡かもしれません。だから、もしかすると俺よりも....。」

「温度覚と痛覚が失われてる...?」

「はい。それと、俺は奴らに気付かれにくくなっています。さすがに一定距離まで近づくと襲ってきますが、おそらく、仲間として見られているのでしょう。」

  俺の言葉に少し考え込む先生。

「...ごめんなさい。ちょっと、怖くなってきちゃった...。」

「無理もありませんね。...人間じゃなくなったみたいな感覚ですから。」

  体は死んだように冷たくなり、温度覚と痛覚が欠落する。人間の生態的にそんなのはありえないから、人間ではなくなったような恐怖感に襲われる。先生はそれが怖いのだろう。

「...さて、そろそろ休みましょうか。バリケードも見てきましたが、夜になったのが原因かは分かりませんが奴らの数も極端に減っていましたので、一晩程度なら寝ても大丈夫でしょう。」

「そう...ですね...。」

  バリケードも簡単には突破されないほど丈夫だった。それに、奴らは人間を認識できるとはいえ、階段からここまで離れていたら反応もしないだろう。

「俺は近くの空いている部屋を使います。先生は?」

「多分、放送室にまだ私の寝る場所が残ってると思うから、それを使わせてもらうわ。」

  先生の言葉を聞きながら、適当に部屋を見ると、校長室が使えたので、俺はそこにする。

「では、俺は校長室で寝ます。お休みなさい。」

「はい。お休みなさい。....あの、工藤君...。」

「はい?なんでしょう。」

  何かを言いたそうにしている先生。

「...その...本当に、感謝しているわ。私を、助けてくれて。」

「..いえ、助けられる命は、助けるべきですし。」

「それでも、ありがとう。....じゃあ、お休みなさい。」

  そう言って放送室に入る先生。...さて、俺も寝るか。
  校長室にあるソファーとかを適当にどけ、空いた所に寝袋を敷いて寝る。

「(もし、このまま彼女達と行動を共にするなら、武器とかを下から持ってこないとな。」

  下には強力な武器になるショットガンやアサルトライフルが弾薬と共に置きっぱなしになってるからな。ハンドガンが一番使いやすいけど、多数のゾンビを倒すには心許ない。

「(これからは一人じゃない。一人じゃできない事ができるようになるけど、逆に護るべき命が増えたって事だ。...仲良くなれればいいんだが...。)」

  そんな事を考えつつ、俺は段々と眠りに就いていった。











       ~おまけ・その頃の■■~





「...本当に行くんですか?」

「えぇ。だって、もう食料がないでしょ?なら、調達しに行かなきゃ。」

「ですけど...。」

  入口を椅子や机で塞いだ教室で、教師である三人がそんな会話をする。

「助かったのは私含め、大人三名と子供十数名。それも、他の人達を見捨てるような形で...よ。それなのに、飢え死にとか見捨てた人に悪すぎるわ。でも、この状況の中動けるような人材は私しかいない。...それなら、私が行くしかないじゃない。」

「っ.....。」

  自分達が無力なのが悔しいのだろう。残る大人二名は手を握り締めて俯く。

「...大丈夫よ。私はこれでも、夫にサバイバルでも生き抜けるように鍛えられてるんだもの。早々噛まれないわ。」

「....分かり、ました...。」

  渋々と、本当に渋々と了解する教師二名。自分達にできるのは、残っている子供達をできるだけ安心させる事だと、理解してしまったのだろう。

「さて、いっちょ行ってきますか!...って、あれ?」

  机が壊れた事で入手した鉄パイプを腰に差し、デッキブラシのブラシの部分を外した棒を一振りし、いざ行かんとすると、誰かが彼女に抱き着く。

「......!」

「...大丈夫よ。私は絶対に死なない。だから、安心して待っててね?」

  腰まである長い髪の、大人しい雰囲気の少女が、心配そうな目で彼女を見る。それを彼女は、安心させるように諭す。

「....、....。」

「...うん。いい子ね。」

  少女は、声を出さない。いや、出せない(・・・・)。パンデミックが起きた時の恐怖で、声が出せなくなったらしい。

「........うん、今は大丈夫ね。じゃ、行ってくるわ。」

  バリケードが薄い窓の近くに立ち、廊下の気配を探ってからそう言う。

「...気を付けてください。あなたがいなくなったら、私達は...。」

「分かってるって。」

  そう言って、彼女は教室の外へと出て行った。







 
 

 
後書き
遼がめぐねえを見つけた時に、バリケード(の残骸)を見かけなかったのは、その時はまだ三階にバリケードを張ってたからです。一巻では二階に降りた所にあるけど、四巻の回想では三階に張ってあったので、そういう事にしました。
三階から二階にバリケードが移動してるのは、めぐねえがいなくなった分、くるみとりーさんが必死で頑張った結果です。(その時の由紀はめぐねえがいなくなった事で寝込んでる設定。) 
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