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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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第30話 みんなで勉強会

「分からないー!!!」

バン!っとシャープペンを机に思いっきり置くライ。

「ライちゃん、図書館では静かにね」

「でも、すずか〜………」

「授業中いつも寝ているライが悪いんだろうが………」

「うっ!!」

「そうですね。よだれを垂らしながら寝言でハンバーグって言ったときはこっちが恥ずかしったです」

「ううっ!!」

「それにこの前なんかは………」

「もう止めて星、夜美!!分かったよ、僕頑張るから!!」

そう言って再びシャープペンを持ち直したライ。

「そうそう、私も見てあげるから頑張ろうね」
「ううっ、ありがとうすずか………」

嘘泣きだろうが涙を見せ感謝するライ。

「みんな大変やなぁ〜」
「…………何人事みたいに言ってるのよ!!」

アリサがでかい声ではやてに言う。

「アリサ、やかましい。図書館ぐらい静かにしてろ」
「それは悪かったけど、でもはやてに問題が………」
「私は何も悪いことなんてしてへんよ?」
「今日は勉強するって言ってたじゃない………」

はやてはみんなが勉強している中、片手にジュースを持って雑誌を読んでいた。

「アリサちゃん…………ここどうやるの?」
「だからさっきも言ったじゃない!!なのは。そこは…………」

アリサも大変そうだな。
でもあっちも…………

「フェイト、また同じところ間違えてる。ここは四段活用よ」
「ううっ、違いが分からないよ………」

加奈がフェイトに古文を教えている。
フェイトはもう古文と国語以外は全く問題ない。日本史も頑張って覚えたらしい。

だが古文が絶望的で、一向に進んでいないようだ。

で、なのははと言うと……………

「うう〜やっと終わった………」
「終わってないわよ。次は日本史。ちゃんと言ってきた所は覚えてきたんでしょうね?」
「………………うん」

「なのは?返事に間があったような気がするんだけど………」

眉をピクピクさせながらアリサがなのはに言う。
なのはは古文、国語、日本史がアウト。
フェイトみたいに暗記が得意って訳ではないので日本史が特にまずいらしい。

戦国時代と幕末については伝説の剣豪やら、裏話まで詳しいのだが、それ以外は全く駄目らしい。そして今回の範囲は鎌倉後期から室町後期まで。見事に被っていない。
古文と国語はなんとか赤点を免れるぐらいの点数。

正直一番心配だ………

「だったらお前も教えてやればいいじゃないか」

俺の隣でテスト勉強………というより大学受験の問題を解いている桐谷。
キモッ………

「口に出てるぞ、お前。ってお前も少しは勉強したらどうだ?」

そう言って俺の前に大学受験の問題集を俺の前に置く。

「……………こんなの出来るか」

俺は転生してきてもう6年だぞ!?
転生して間もないお前と一緒にするな。

それでも出来なそうだけど………

「桐谷、そこは違うぞ。ここは………」

と大学受験の問題を指摘するフェリア。
お前も少しは自重しろ………

設定は中学生だぞ!?
このレベルの高い空気に耐えられなかった俺は急いではやての所へ退避した。


ここは海鳴市立図書館。

はやてが車椅子時代によく利用していた図書館だ。
今日はテスト前の最後の休日。月曜日にはテスト本番である。今、俺たちはここにある自習室をほぼ占領して勉強会をしている。

なぜこうなったのかは昨日の夜の出来事が発端だ…………





「レイ〜!!助けて!!」

テストまで後3日になり、星の中学校も同じ時期にテストがあるため、我が家も俺とフェリア以外は勉強に熱が入っていた。
そんな我が家で俺はリビングのソファーに座りながら優雅にあったかい緑茶を飲んでいたときだった。
声をあげながらライが俺の背中にダイブしてきたのは。
その勢いで俺は含んだ緑茶を向かい側に座っていたフェリアにかけてしまう。

「レ〜イ〜ジ〜?」

「待て!?これはライが、だからナイフしまってくれ!!」

俺の思いもむなしく、結局オシオキされました…………

「エヘヘ、ごめんね」
「ったく、優雅なひとときを台無しにしやがって…………」

ボロボロになりながらも俺はライに言った。

「で、何か困ったことがあるんだろう。どうした?」
「それはね……………」

何かもぞもぞし始めたけど…………
変なことじゃないだろうな。

「僕に勉強教えて!!」



とこんなことがあり、ついでだからみんなで勉強しようと俺がみんなを誘ったことが始まりだ。

星から話を聞いたのだが、ライは授業中いつも寝ているらしい。
寝ているのは別に良い。だけど星達が勉強を教えていても直ぐに脱線して手に負えないらしい。
そこで俺に白羽の矢がたったのだ。自分たちの勉強もしたいと俺に協力を求めてきた。

なので、俺はなのはたちも猛勉強中だったのを思い出し、一緒にしようと誘ったのだ。
というよりライの勉強をみるのが大変そうだから押し付けたかった……………

見事、すずかはごねるライを上手に教えてくれている。

そのおかげで俺はゆっくり小説を読んでいられる。
今度何かお礼しなくちゃな…………

「分からないよ〜零治君、ここ答え何?」
「承久の乱」
「ありがとう、零治君」

お礼を言って再び問題を解き始めるなのは。
だが直ぐに手が止まってしまう。

何かさっきからずっと同じな気が………

「………一回確認しながら答えさせたらどうだ?」

あまり口出しするつもりは無かったが、俺はアリサに聞いてみる。

「でも、本番は2日後よ」
「でも、ただ問題を解くにしても知識が無さすぎて、中々先に進んでないぞ………」

アリサの勉強方法はとにかく問題を解いていくスパルタなやり方だ。
なのはも分からない所は聞いているが、何分分からない所が多いみたいで。なかなか進んでいない。

「そうね、なのはがちゃんと勉強してきたのを前提に考えていたから………で、何かいい案があるんでしょうね?」
「普通に分からない所は自分で調べさせる。それで取り敢えずは全部空欄を埋めさせて、それからもう一度問題をやらせて分かるまで繰り返す。そうすれば出来るようになるだろう」

本当に理解できるかは微妙だけどな。

「それって集中力より根性ね………」
「数やれば流石に覚えるだろ。そっちの方がいいと思うけどね」

しばらく考えるアリサ。

「分かったわ、それで行きましょ。なのは、方法変えるわよ」

アリサは早速説明している。なのはの顔は青くなるばかりだが………

まぁ頑張れ。
俺も再び読みかけの本の続きを読み始める。

ふと、本棚に手を伸ばして一生懸命取ろうとしている女の子がいた。
俺は立ち上がり声をかけた。

「これか?」

「えっ!?うん」

確認がとれたので俺は本を取ってあげ、女の子に渡した。

「ありがとう、お兄ちゃん!」

笑顔で俺にお礼を言って、女の子は走っていった。

「優しんやな」
「別に、普通だろ」

話しかけてきたのは雑誌を持ったはやてだ。
どうやら雑誌を片付けに来たらしい。

「そういうことを普通に出来る人って意外と少ないんやで」
「………そんなもんか?」
「そんなもんや」

何が嬉しいのか笑顔で俺に言うはやて。

「普通にいると思うけどな………」
「珍しく謙虚やないか」
「珍しくとはなんだ。俺は謙虚で優しい少年だよ」

俺は冗談交じりに言った。

「あながち間違いやないんやけど……………」

ん?聞こえなかったけど何か言ったか?

「はやて?」
「ああ、なんでもないんや。ほな、雑誌戻してくるな」

そう言って雑誌コーナーに向かったはやて。

「………何かいつもと違うような」

そう呟いて自分の席に戻った。


「レイ〜教えて〜」

戻った俺を待っていたのは、すずかに教えてもらっていたライが俺の席に座ってだらけていた。

「お前何やってるんだ?すずかに教えてもらってたんじゃないのか?」
「すずか、いきなり家の用事が出来て家に帰っちゃったの」

マジか………

「ねぇ、だから教えてよレイ〜」

俺に席を譲ったかと思いきや、背中に乗ってきたライ。

「分かったからくっついて来るな。暑いだろ!」
「いいじゃん。レイの背中って大きくてあったかいんだもん」
「勉強するんだろう?いいから隣に座れ!」
「は〜い」

渋々俺の背中から降り、隣に座ったライ。

「いいな……………」
「えっと、アリサちゃん?」

二人を羨ましそうに見るアリサ。

「何故いつもライばかり………」
「夜美はお姫様抱っこされたことがあるじゃないですか。私はそういう事は一度も………」
「なら言わせてもらうが、星が一番幸せ者だぞ!レイと二人っきりでデートして………」
「デ、デートなんてそんな………」

顔を赤くして口ごもる星。

「くっ、今度は我の番だからな!!絶対付いてくるなよ!!」
「それは約束できません。あの時は邪魔が入りましたからもう一度です」

キャイキャイ騒ぎ始める星と夜美。

「ライ、あの無邪気さが憎い………」
「う〜ん、う〜ん………」

フェイトがかなり困っている顔をしているのにそれに全く気づかない加奈。

「何かみんな集中力切れてきてるな」

桐谷とフェリアは相変わらず大学受験の問題集を解きまくってるけど………
あの二人は例外だな。

「レイ〜ここは?」
「そこはこうして………」

なのはが一番まずいと思っていた俺だったが、ライもかなりまずいレベルだ。
ライは得意科目が体育のみの元気っ子な為、じっとしている事がかなり苦手みたいだ。

何が言いたいのかと言うと、得意科目がない。
恐らく今のままテストを受ければ、平均30点ぐらいの点数になるだろう。
すずかのおかげで、英語と日本史はそれなりの点数を取れるぐらいにはなったらしい。

後は数学、国語、理科か…………

数学、国語はともかく、理科は一番苦手なんだよな。

「あら?席を変えたんか?」
「おおはやて、いいところに来た。ライの勉強見るの手伝ってくれないか?俺って理科結構苦手なんだよ………」

「別に構わへんで」
「助かるよ」

こうして、俺とはやてによるライの勉強会が始まった。
のだが………

「ねぇレイ、ここは?」
「そこは………」
「なぁ零治君、ここってこうやっけ?」
「違う、そこは………」

「零治君、終わったの。次はどうすればいい?」
「アリサー!!どこ行った!!」
「アリサちゃん、急用で急いで帰っちゃって………」

アリサ、お前もか………
お嬢様組はいったいどうしたんだ!?

上記で分かるようにまさかの俺一人に対し、3人がそれぞれ聞いてくるという、訳の分からない状況になってる。
つうか、はやて!テメェは教える側だったろうが!!

「いやぁ、全然分からへん」

ハッハッハと笑い飛ばすが、俺は全然笑えない。
何で俺が3人のめんどうを見なくちゃいけないんだよ………

「そうだ!桐谷とフェリアに………」
「あの二人でしたら更に難解な問題を解いてみると資料を探しに………」

星の説明で俺は希望を失った。
誰かヘルプ!!

「レイ、私達も手伝いますか?」
「えっ!?いいのか?」
「我も十分に勉強できた。もう大丈夫だろう」

ああ………こんな近くに女神がいる。

「ありがとう、二人とも。よろしく頼む」

こうして1対1で教えることになった。




「全く、何度言えば分かるのですか?」

「ご、ごめんなさい…………」

「いつまでも魔法少女でいられないのですよ。いい年なんですから魔法をぶっぱなしてばかりじゃ駄目なんです」

「ぶ、ぶっぱなしてって………で、でも仕事で………」

「最低限勉強を出来た人がいう言葉ですよ。理解できますか?戦闘狂」

「せ、戦闘狂………」

「あなたは学生なんですから勉強に支障が出るなら辞めるべきですよ」

「そ、それは嫌!!」

「だったら死ぬ気でやりなさい」

「は、はい!!」

………星、めっちゃ恐いんだけど。
なのはに何か恨みあるだろ。

「なのはちゃん、御愁傷様やな………」

「星、いつものお前はどこに………」

はやてと夜美も星の変化に戸惑っているみたいだ。

「レイ、優しく教えてね………」

「お前次第だが、星みたいにはしないよ」

ライも俺が星みたいになるのかと不安になっているみたいだ。

「加奈、星っていつもあんななの?」

「いいえ、いつもは落ち着いてる子なんだけど」

フェイトは星の事をまだよく知らないので勘違いしそうだな。


その後も星の拷問はなのはの精神を削っていったのだった………………


「私は恥ずかしくない………私は恥ずかしくない………」

ブツブツと何かを呟いているなのは。

「な、なのは!?」

慌ててなのはに近づくフェイト。
夕方になっていたので勉強会もお開きになったのだが、なのはの様子がおかしかった。

「………何があったのだ?」

「フェリア、世の中には知らなくていいことがあるんだ………」

「何をしてたんだお前ら………」

桐谷の言葉も分かるが、俺はなにも言えない。
星が恐くて………

「大丈夫ですよ。ちゃんとテストも出来る筈です。出来なかったら………」

ニコニコしながらなのはを見る。

「分かってますよね?高町なのは」
「ひぃ!!」

怯えてるんだけど。

「ねぇ、大丈夫でしょ」

「ああ………」

「そうだな………」

なにも言えなくなるフェリアと桐谷。

その後、星はいつも通りだったが、誰も星に逆らうことがなかった………




「ど、どういうこと?」

テストも終わりすべてのテストが帰ってきた。

アリサの言葉は最もだ。

何故ならばなのはが平均80点を取ったからだ。

「どうしたの、なのは!?」

「えっ!?別に普通だよ」

「普通ってあんなに苦労してたのに………」

「うん、でも点取らないと………」

ブルブル震え始めるなのは。

「………いったいあの後何があったのよ?」
「アリサ、世の中には知らなくていいことがあるんだ………」

次に星があんな風になったら全力で止めよう。

そう心に決めたのだった。 
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