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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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GGO編
  第173話 乙女?の怒り



 荒れ果てた荒野を進んでいく。

 最終戦争が終わり、文明が衰退した世界とは言っても、栄えていた時代の文明はかなり進んでいる。あの世界(ALO)の様なファンタジーっぽい敵も出てくるが、どちらかといえば、機械兵器(マシン)が多い。人型で言えばアンドロイド、ヒューマノイド、女性型ガイノイドが機関銃を手に襲ってくる。全自動で動く機械戦車も。

 いったい誰に操られているのだろうか……、それが大筋のストーリーに関わってくるのだろう、と考えるのは難しくない。普通のストーリーモードであれば、瞬く間にアップロードされているモノは、クリアされていくだろう。
 
 以前のALOでの世界樹攻略(グランド・クエスト)でもなければだ。

「まぁ、人型系ならある程度のスキルを試せたから、よしとするか。……それなりには問題なさそうだ」

 そんな荒廃した壊れた機械達の上に凛として立つのは銀色の髪を持つ美少女。靡く髪をそっと、抑える仕草を見れば……誰でもそう思うだろう。

 ……あ、フードかぶり直した。


「………」

 勿論、かのz……彼はリュウキである。
 コンバートし、自身の身体能力を実際に確認する為に、色々と野良(ソロ)でプレイをしているのだ。内容は、基本的にMobとエンカウントしたら、片っ端から蹂躙。初期配置された直傍のエリアな為、殆どいじめみたいなものだ。上級者が初心者のエリアを荒らすのは、正直マナーが悪い行為だ。
 だけど、他のプレイヤーとはまだ遭遇していないから特に問題ないだろう。

「こほん。……さて、体術スキルの確認はこれくらいでOK、と」

 リュウキは、ウインドウを出して、確認をして消去する。

 取得するスキルは大体組み込み終えた。
 FPSシリーズのゲームで使用していたのは、連射のきく機関銃(マシンガン)突撃銃(アサルトライフル)だったけれど、それは初期での話。経験を積んでいく内に様々な武器を試してきて、最終的に行き着いたのが。

「……拳銃(ハンドガン)だな。欲を言えば、回転式拳銃(リボルバー)が好みだけど、装弾数を考えたら、ちょっとだけどアレだし。リロードも。……当面は自動式(オートマチック)かな? ……うーむ、回転式拳銃(リボルバー)も捨てがたい……」

 リュウキは、二丁の拳銃を取り出しながら唸っていた。


□ .44オートマグ

 アメリカ製の世界初のマグナム弾を使用する自動拳銃(オートマチック)だ。
 拳銃のカテゴリーの中では圧倒的に、強い部類に入ると思われるのだが、このゲーム内では使い勝手が悪いらしい。現実での欠点でもある様に、レシーバーやチャンバー内の汚れで、閉鎖不良を起こす。故に、耐久値が減るのが通常の武器よりも早い。反動(リコイル)の衝撃もかなり大きく、それなりに筋力値(STR)が充実していないとブレが大きくなり、速射しにくいのだ。……レンタル武器だから、別段そこまで高望みをするつもりはなかったけど。

そして、もう片方。


□ コルト・シングル・アクション・アーミー


 略するとSAAで表せれる。
 これもアメリカ製であり、コルト社製造の回転式拳銃(リボルバー)
 歴史は非常に古く、西部開拓時代にはもう既に使用されており、今現在でも継続されている。通称は《ピース・メーカー》、正式名は《M1873》。

 これは完全にリュウキの好みで選んだ銃だ。名の通りシングルアクション。
 攻撃面での欠点は撃鉄をいちいち引かなければ、引金を絞っても意味はない。が、その作動方式が好きなのだ。随分と渋い趣味をお持ち~だとも思えるが。そこは個人の自由!
 それに、これが自動拳銃(オートマチック)に負けるか? と言われればそうではない。

 このSAAに限ってと言われているが、達人クラスになれば最速の1発はコンマレベルの世界なのだ。瞬きしてたら撃たれてる。と言える程だ。某有名なアニメでも描写されている様に、速度の領域では上はこの銃だ。

「んん。どうしたもんだか……」

 遊びが目的であれば、強さよりも好み、スタイルをやや優先するリュウキ。だが、今回の目的は、例の男に注目されなければならない。負けるつもりは毛頭無いのだが……、失敗は許されないのだ。次のBoBで、何か悪い予感がするから。

 そんな時だ。

「おーおー、初心者さんが単独で、こんな所でなーにしてんだ?」

 後ろから、だれかが話しかけてきたのだ。当然だけど、近づいてきている連中がいていたのは判っていた。悪意があるか、無いかどうかは別として。そして、近づいてきてこの物言いを考えたら、どうやら前者の様だ。

「うーん。まぁ 今回は仕様がないとして……。終わらせたら、たまにはGGOでもプレイしたいから、別アカ作った後で……」

 集中しているのだろうか? 全くリュウキの耳には入っていない様に見える。後から来た何人かは それを見て苛立ちを隠せられない様子だ。

「おい、テメェきいてんのか!」

 癇に障った様で、明らかに怒気の篭った声が響いた。
 このゲームでは、待ち伏せからの不意打ち。や闇討ち等であり、先手必勝が勝つ事への近道だと言えるだろう。

 だが、例外なモノは勿論ある。そう、今回の様に初心者(ニュービー)を相手にする時だ。

 初心者(ニュービー)かどうかは、装備を見れば一目瞭然。武器も、レンタル装備であれば経験者なら直ぐに判るのだ。それらの情報を総合し、初心者だと言う事が判った。随分と姑息なプレイスタイルな様だ。

「まぁ、まだ色々と試したりするのは……。む、そろそろ町に戻った方が良いか。情報収集もあるんだ」

 リュウキは、そう呟くと、あくまで無視しながら立ち去ろうとする。

「コラァァ! 無視するなっ!」

 前に立ちふさがるのは自分よりも一回りも二回りも大きい身体の持ち主。……リュウキは、フードの中に隠された表情から、その男の身体と顔を視る。

「……(羨ましい)」

 リュウキは、そう考えてしまっていたのだった。この来訪者達の姿を見て。……その男らしい姿に憧れちゃって。

「ああ!? 何ブツブツ言ってんだ。舐めた態度とりやがって!」

 どうにも、さっきのが相当お気に召さなかった様で、ご立腹な様だ。そんなもん知ったこっちゃない、と言うのが率直な気持ちだが。

「……(対人戦(PvPer)しとくのも悪くない、か)」

 リュウキは、くるりと周囲を確認。
 確認できる数は6人。初期装備の初心者(ニュービー)相手に、狙撃手(スナイパー)をバックアップさせているとは思えないが、警戒する事に越したことはないだろう。気配を一通りは探った。

「ま、金目のモノ置いてけ、なんていわねえよ。ただ、こっから町までは、戻してやるよ。希望通りよ?」

 この世界での移動手段は、乗り物と自分の脚しかなく、ワープ手段等はない。つまり、町へと戻るのは死に戻りだけになるのだ。

 この世界で、初心者(ニュービー)を倒して得する事等は特に無い。アイテムを持っている訳でも、レアな装備を持っている訳でもないからだ。が、今までのMMOでもずっと続いているのが、この《初心者狩り》だ。

 ある者はスコアを伸ばす為やボーナスを得る為。
 そして、何よりもストレス解消と言うのが当て嵌る。

 これまでのMMOの様に画面越しじゃなく、実際に体感しているから、その効果は以前までの比じゃないのだ。薬物依存症、とも言える程に身に染みてしまい、更に現実へと還っていく事を考えたら、最悪極まりない行為だ。

「はぁ……」

 各ゲームで、この手の相手には何度もあった事はある。どんなゲームでも、何処の世界でも、共通して言えるのは不快感MAXであり、胸糞悪い事だけだ。

「何ため息ついてんだよ! 初心者が!」

 男の1人が、蹴りを入れようとしたその時。リュウキは、その脚を腕で受け止めつつ……。

「……はぁっ!?」

 そのまま、すべり込ませる様に胸倉にまで手を伸ばした。そのまま、背負いなげをする要領で、地面に叩きつけた。“ズガっ!”と言う音と共に、その華奢な身体からは考えられない力が出ていたのか、砂埃が高くにまで舞った。

「全くをもって、面倒臭いが、まぁ 良い。記念すべき最初の相手だしな。……胸糞悪いが、この世界なら、スタンダードかもしれない」

 ぱんぱん、と服を払いながらそう言うリュウキ。
 投げ飛ばされた男は、叩きつけられた衝撃により、一時行動不能状態(スタン)に陥ってしまっている。
 この世界での設定として、HP以外にもそう言った、スタンの作用は存在する。麻痺であったり、毒物であったりだ。その中でも気絶と言う作用は今回の様に体術や、非殺傷弾を使用する事で起こる。中々難しいが、麻痺に比べると、絶望的な程までに動けなくなるから、されてしまえばもう巻き返しは無理だろう。

「や、やりやがったな!」
「今更 何言ってるんだ? 先に手を出してきたのはそっちだろ」
「うるせえ! 散開しろっっ!」

 男がそう言うと、戦闘陣形を取るのだろうか、後の数人が距離を取った。が、間合いがまだまだ、リュウキにとっては近すぎる。目算だが、5~6m程度だ。本気である程度の安全を確保したいのなら、ダッシュで離れるべきだ。

 男達は、バックステップをしながら、離れていく。
 確かに敵を視界に入れながら逃げるのは当然だ、と思えるが、この相手には悪手だ。

「……ふん」

 脚に力をいれて、一気にダッシュ。この手の相手は、初心者しかカモにしていない。自分から、対してステータスが高くないと露呈している様なものだ。

「うおっ!!」

 あっという間に、間合いを詰められた男は目を見開いていたが。咄嗟に下げられた《H&K MP5》を起こし、構えた。そして、銃口をリュウキに向け、引金を絞る。

 “ババババッ!”と一気に800発/分の速度の銃弾が発射される……が。

 その銃弾は、リュウキに当たらずに、あさっての方向へと飛んでいった。

「なっ……!?」
「遅い」

 リュウキは、速度をそのままに、向けられた短機関銃(サブマシンガン)の銃身を手の甲で抑えたのだ。 その為、向けられた銃口はリュウキから反れた。そして、その勢いを決して殺さずに手首を捻り、銃身を掴む。
 掴んだまま、銃を引っ張り男を引き寄せると。

「ぐえっ!!」

 そのまま、地面に投げつけた。
 最初の男の様に、地面に凄まじい強さで叩きつけられると同時に、動かなく、動けなくなった。

「ツーダウンってな……」
「っ……!!」

 そのフードの下の表情。
 決して見えたわけじゃないのだが、目が光っている様に見えた。その下に獰猛な獣がいる様に感じた。喰う側の筈が……、喰われる側の立場に変わった事をこの時理解したようだ。

「し、死ねっ!!」

 比較的離れた位置にいた男が一気に、H&K HK53、アサルト・カービンと呼ばれている銃を撃ちまくった。衝撃的な光景を目にして、狙いが定まる筈もない。
 味方にも当てて構わないといった具合に発射していたのだ。

「お、落ち着け!!」

 叫ぶが、まるで反応しない。銃声のせいで、声などは届かない。

「ふん」

 リュウキは、その間に密着状態で自身のハンドガンを撃ち放つ。
 当然だが、至近距離で、急所に、つまり頭に撃てば必殺の一弾(ヘッドショット)になるのだ。一発でHPの全てを奪い去るとほんの数秒間だけ、存在しているその身体を一瞬盾にする。

「あ、悪魔か! アイツっ……!」

 仲間を盾にした所を目の当たりにした男は、そう叫ぶ、が。

 初心者を問答無用で撃ち殺す自分たちを完全に棚に上げてると思わないのだろうか?

 そして、その身体が真紅の硝子片となり、飛び散ったと同時に駆け出した。

「バ、バカめ! 距離があり過ぎだ! 死ねぇぇっ!!」

 弾丸をばらまきながら叫ぶ。だが。

「は、はぁ!?」

 驚き、目を見開いた。この弾幕の中を進んでいるのだ。まるで、速度を落とさずに。

「な、何で接近できんだよ! くそっっ!!」

 仲間の応援をしようと同じく機関銃を撃ち放つ。だが。

「こいつ……マジかよ」

 どんどん近づかれる。死が、近づいてくる。その中で、はっきりと見た。右手に持っている大型のナイフ、《コンバットナイフ》で銃弾を弾いているのだ。

「ば、弾道予測線(バレット・ライン)があるったって、無理があんだろぉぉ!! こっちはフルオートのマシンガンだぞ!!???」

 予測線もここまで弾幕を貼られてしまえば、赤い点で表示される、と言うよりは当たる範囲全部が赤く塗り潰される、と言った感じだ。そのひとつひとつを弾き、或いは回避してくる。だが、流石につけていたフードはそうはいかなかった様で、何発かかすり、耐久度が無くなって飛び散った。その可愛らしい? 姿が露になってしまう。

「お、おん……」

 その整った顔立ち、いや 幼さが残る

「誰がだっ!!」
「ぐえええっ!!!」

 そのまま、ナイフで相手の武器を弾きつつ左手の銃を使った。
 銃戦闘とナイフ格闘の瞬時の切り替えだ。

「あ、あの女……近接戦闘(CQC)スキルが、は、半端ねェ……」

 残った最後の1人が唖然と呟いていた。
 近接戦闘スキル、即ち、《Close Quarters Combat》その頭文字を取りCQCスキルと呼ばれている。体術スキルの上位と言える体術戦闘においては最高クラスのスキルだ。初心者が持っている様なものじゃない。

「だから……誰が……」
「はっ!」

 男の目の前に、いつの間にかボール?の様なモノが飛んできているのが判った。そして、その正体が何なのかも、直ぐに判った。何度も使った事があり、その威力は身にしみているからだ。

 手榴弾(グレネード)だ。

 この世界で主に使われるのはプラズマ・グレネードであり、通常の手榴弾よりも遥かに威力も爆発範囲も高い。
 が、至近距離で浴びれば当然即ゲームオーバーだ。

「く、くそっ」

 直ぐに回避しようとした。
 所謂爆弾は、安全ピンを、或いはスイッチを入れてから、数秒間してから爆発する。だから、その間に伏せるなり、回避するなりすれば、致命傷は避けられる事があるのだ。
 その筈なのだが……。

「女だ!!」
“どごぉぉんっ!!!”

 回避する間もなく、目の前で爆発した。リュウキの魂の慟哭と共に……。

 当然ながら、何が起きたのか判らず、吹き飛ぶその五体。そして、ゴロゴロ~と地面に転がり込み、やがて止まると《DEAD》のアイコンが現れた。

「……ふん、5秒も待ってられるか」

 リュウキは、銃を構えた状態でそう言っていた。そう、リュウキは直接銃弾を手榴弾(グレネード)に当てて、誘発させたのだ。故に爆発するまでの猶予もくそもなくなったのだ。

 死に戻る瞬間、いや、戻った後も混乱している事だろう。

『なぜ、爆発したのだろうか』と。

「……でもまぁ、こんなものかな」

 リュウキはそう言うと、軽くホコリを払う様に服を叩いた。

 だが、この戦いは終わってはいない。
 



「……はぁ、ナイス判断だぜ。リーダー」

 遠くで狙いを定めているモノがいたのだ。距離にして100m。

「あのシノンにはかなわねえけど、この程度の距離なら、外さねえよ……」

 スコープを覗き込む。
 使われているのは、狙撃銃(スナイパーライフル)


□ H&K PSG1。

 7.62×51mmNATO弾を使用するセミオートマチックライフルだ。
 ボルトアクション式に比べて、構造が複雑、そして命中精度が低下する為、狙撃ライフルとしてはあまり優秀ではないが、それを補うのが連射性だ。
 外しても、次弾を撃つのが単発式(ボルトアクション)式よりもはるかに早い。



「この距離だ。絶対に外さねえ」

 ゆっくりと照準を合わせる。向けるのは当然、あの相手。

「後ろから、女を撃つなんて真似、したかねぇけど、こちとら仲間全滅させられてんだ。わりいな」

 そう言う割には、薄ら笑っている様にも見える。VRMMOの世界での最高の快楽は女性狩り。そう言われているのだ。
 それは、この銃の世界(GGO)とて、例外ではない。

 ……それに、この世界では圧倒的に女性の割合が少なく、そんな経験は殆ど無いと言えるだろう。彼が知っている女性の1人は、この世界では上位に位置する強者だ。故に標的になど出来る筈もない。

「へ……っ」

 これが女狩りだ。と興奮冷めやまぬ様子で引金に指を掛けた。
 その鮮やかな銀色の髪が風に靡いているのがスコープ越しにはっきりと見える。顔はこちらから見えないが……、その顔を銃弾で汚すのは忍びない。頭は綺麗なまま、とっておきたいと思うのも必然だと言えるだろう。

 そう感じ、照準を胴体に合わせようと下げたその時だ。

「っっ!!」

 突然だった。突然、あの兵士は振り向いた。銃口の方に。照準の丁度中心にその表情が見えた。靡く鮮やかな髪を持つ女が持つ瞳は……赤い真紅の瞳。美しいと思っていた筈のその姿、だったのに まるで、殺し屋の様に、感じた。

 そして、目を合わせただけで、殺される気がした。


「うわぁっ!!」

 思わず動揺して、着弾予想円(バレット・サークル)が大きく動いた。鼓動がまるで止まらず、そのままの勢いで引き金(トリガー)を引いた。


「成る程、一度でも視認、認識したら弾道予測線は出るんだな。この距離だし、システムが発見認識をするかどうかはわからなかったが、問題無いようだ」

 リュウキは、軽く動いた。
 はっきりと空中に刻まれている弾道の赤い線。その場所に弾丸は当たるのだから、その線に当たらなければ良い。このゲームで狙撃手は詰められたら殆ど終わり、と言われているのは、これが原因なのだ。連射性があるセミオートだとしても、マシンガン系の銃に比べたら微々たるモノだし、その武器の重量もある。圧倒的に重いのは狙撃銃(スナイパー・ライフル)だ。だから、機動性にも難がある。

「終わりだな」

 ある程度、推察をしつつも、勿論ちゃーんと接近をしたリュウキは、固まったままの狙撃手の背後を取った。

「な、なんで判ったんだよ。オレの位置が……。双眼鏡を使った訳でもねぇのに……」

 男は、ビクビクしている様子だ。
 ……外見を考えたら、そんな顔するか? とリュウキは思ったが、取り合えず。

「狙撃する時は、太陽の位置を考えるのが常識だ。……スコープに光が反射した。それが視えた。それだけだ」
「……ま、マジ、かよ」

 確かにそれは知っている。前にシノンに合った時にも言われた事だからだ。確かに太陽光に反射すれば、位置がバレる可能性はあるだろう。だが、そこまでの目を持っている者がいるとは到底思えなかった。だけど、目の前の女は。

「す、すげえや。マジで」
「………」

 その目は純粋な敬意や憧れが映っていた。リュウキは、それをはっきりと見たリュウキは取り合えず、即撃つ事を一旦やめ。

「初心者狩りなんて、くだらないって思わないのか? ……自分よりも弱いヤツ狩った所で、自分の強さにはならないと思うんだがな。快感目的なら……まぁ 人種が違うし、そこまでとやかくは言わないけど。……ただ、心底くだらないって思うだけだ」

 その目をしっかりと見て、聞いた男は。

「あ、ああ。アンタが言うんなら、その通りだと思うよ。オレ、今日からこのチーム抜けるわ。……勿論、撃たないでくれ、殺さないでくれとは言わねえ。最初に狙ったのは俺ら側だし、殺されたって文句はねぇよ」

 そう言って、銃から手を離した。両手をはっきりと上げて、戦意がない事を示した。流石に、無抵抗で投降しているしている男を撃つのは、心苦しい。

「ん。そうか」

 ハンドガンを下ろすリュウキ。
 このまま、見逃そう、と思いかかったその時だ。

「だからさ? 殺す前にフレンド登録して、後 名前教えてくんねぇ? あ、アンタみたいに強い女は中々いないんだ。頼むよ! 色々と聞きたいから」
「………」

 リュウキは、表情を落とした。そして、表情は暗く、自身の中でも精一杯声色を黒くさせながら呟く。

「今、なんて?」
「え? いやだからさ? 名前教えてくれ お姉さん!」

 『お姉さん』と、男が言った瞬間、左腰に差していたSAAを引き抜いた。

 引き抜いてから撃つまでの時間差は、0.1秒を切る。
 “ドン!”と言う銃声が響き、なんでこの瞬間に撃たれたのか判らない男は、疑問を浮かべた様な、でも、何処か満足そうな表情も浮かべていて、中途半端な顔だった。

「……誰がお姉さんだ! 女だっ!!」

 聞こえていたかどうかは不明だけど……、精一杯の抗議をしているリュウキだった。その顔で、リュウキが言っても、怒っていっても傍から見たら、『乙女の怒り』に見えなくもない。

 リュウキはつい数秒前に考えていた撃つのはやめると言う、考えを忘れて怒声を上げる。これが、初の対人戦だった。

 そして、勿論……フードは必須だと言う事、絶対に必須だと言う事を、この時判断した。

 せめて、BoBが終わるまで。また、ALOに戻る日までは。













 それは、丁度リュウキの魂の慟哭?が荒野に響き渡っていた丁度その時。





~SBCグロッケン~


 もう1人の男の娘?であるキリトは、あっけなく道に迷っていた。
 この幾つも重なる多層構造のせいか、初見ではマップでもない限り、迷う様になっている、と思える。……マップが無いわけではないが、現在位置と実際に眼前に広がるこの風景を照合するのも容易ではない。当然、時間をかけてじっくりと隅から隅まで確認すれば良いだけの話だけど……あいにくあまりこの姿で長居はしたくないし、する事が多すぎるのだ。

 仕方ないから、最終手段にでることにした。MMOである事を利用する。……この姿でその方法を取るのは好ましくないけれど。

 キリトはそう考えると、眼前を行き交う人たちの中から、NPCではなくプレイヤーのタゲを見つけた。小走りに駆け寄ると、背後から声を掛ける。

「あ、あのー、すみません、ちょっと道を……っ」

 そして、声をかけた時、即座に『しまった!』っと思った。
 その声に反応して、振り返ったのは、明らかに女の子だったから。サラサラと細いペールブルーのショートの髪。額の両側で結わえており細い房がアクセントになっている。その眼つきはまるでネコ科な雰囲気を漂わせているようだった。

「(い、いや、まてよ? ひょっとしたら、オレの様なアバターと同じ感じで、少年かもしれないし、更に言えばリュウキかもしれない……)」

 と、思いつつ、そのプレイヤーの身体全体に視線を走らせたが……、その淡い想いは露と消えた。
 サンドカラーのマフラーの下、ジッパーの開いたジャケットの奥では、シャツがちゃんと膨らんでいるから。その、所謂 女の子を象徴するモノが。

 その時点で、リュウキではありえないだろう、と判った。最初に出会った男が言うには、自分と同系列のアバターだと言っていたから、性別逆転はありえない。

 そして、小柄な少女だと言う事も判った。……それに最初にわからなかったのは、自分も小柄だから、だろう。キリトはあまり、見続けるのもセクハラだから、確認したのは一瞬だけにした。振り向いた女性プレイヤーの表情が明らかに警戒心を示していた。

「(し、しまった……、ナンパ、って思われたかも……)」

 キリトはその事でも危惧していた。
 VRMMO内において、男性プレイヤーが女性プレイヤーに『道に迷った』等を使うのは、その時点で七割型はナンパ目的と断じていいからだ。これらの話は、ネット上の提示版でも大々に公開されており、しつこかったり悪質だったりして、女性達を怒らせた日には、ネット上であれよあれよという間に情報が拡散してしまうから、恐ろしい。

 色々と考えていたが、意外にも、その警戒心に満ちた表情はすぐに消えていた。

「……このゲーム、初めて? どこに行くの?」

 綺麗に澄んだ声だった。
 そして、つい数秒前までは警戒心が出ていて、鋭い眼つきだったのに、今では微かな微笑さえ浮かんでいる。……まず間違いなく、この少女は自分のことを女だと誤解していることに気づいた。この世界に来た当初に出会ったあの男、アバターバイヤーの男も誤解したのだから。

「あー、えっと……」

 キリトは正直、かなり迷った。
 誰に言い訳する訳でもなく、だ。最初は反射的に己の性別を明らかにしようとしたのだが、言葉を噤んだ。ある意味都合がいいことなのだ。この後、男のプレイヤーに改めて声をかけ、そいつも女性だと誤解すれば、少々面倒なことになりかねない。数少ないであろう、この世界の女同士のプレイヤーであれば、打ち解けるのも早いかも知れない。キリトの中での第二のモットーとして『利用できるものは何でも利用すべし』とある。バレた暁には、人生の中でも最大クラスの汚点になりかねないが、今はリュウキとも出会っていないし、同じ境遇だったら、口裏合わせだって出来るのだ。

 ……流石に、リュウキが同じようなことをしてるとは思えないが。

 兎も角、このまま話を止めたままでは、相手に不審に思われる。だから、彼女には悪いけどこのまま誤解したままでいてもらおうと、頭の中で決定、可決した。


――……この間の所要時間1.5秒。


「はい、初めてなんです。何処か安い武器屋さんと、あと総督府、っていうところに行きたいんですが……」

 比べたら、やや低くハスキーボイスだろうと、自分の耳で聞いてもそう思う。自身の声色を変えた声を評価している間に、目の前の彼女は、小さく首をかしげた。

「総督府? 何しに行くの?」
「あの……、もうすぐあるっていう、バトルロイヤルイベントのエントリーに。あ、明日らしいので、下見に行こうかと……」

 それを聞いた途端に、彼女の大きな目がぱちくりと丸くなる。

「え、……ええっと、今日ゲームを始めたんだよね? その、イベントに出なきゃいけないことは全然ないけど、ちょっとステータスが足りないかも……」

 そう、初心者では、遠まわしに無理だと忠告しようとしてくれたのだ。初心者じゃなければ、道を聞くようなことはしないし、先ほど認めてもいるから。
 だけど、キリトは、声色に注意しつつ答える。

「あ、初期キャラじゃないんです。そういうわけじゃなくって、これはコンバートで、他のゲームから……」
「へぇ、そうなんだ」

 女の子の藍色の目がきらりと輝いた。微笑みから、完全な笑顔になってきく。

「聞いていい? なんでこんな埃っぽくて、オイル臭いゲームに来ようと思ったの?」
「えっと、それは……、今までずっとファンタジーなゲームばっかりやってたんです。たまにはサイバーっぽいのを遊んでみたいなーって思って。……銃の戦闘とかも興味あったし」

 正直、これは嘘ではない。
 剣での近接戦闘に特化した自分のスタイルが、この世界でどれくらい通用するのか、と言う事で実際に少々興味があるのだ。

 ……そして、あの男、リュウキの事もある。

 プロが蠢いているこの世界であの男は何処まで登って行けて、自分は何処まで食らいつけるのかも気になるのだ。……万能プレイヤーだと思うし、簡単に順応する姿が簡単に目に浮かぶが。



――……因みにキリトがリュウキに対する評価は、決して間違ってはいない。だが、今回ばかりは軽く見すぎた、と言うべきだったかもしれない。




 それをキリトは後々に、身に染みる結果になるのだった。

 
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