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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【東方Project】編
  087 永夜の集い


SIDE OTHER

―……〝月〟に楯突きし愚かなる現人神(あらひとがみ)よ、〝月〟からの誅罰の代わりに〝賢者〟からの〝遊戯(スペルカード)〟…。……〝穢れ〟にまみれたそなたに、この弾幕が超えられるか!―

「っ…! しまった!」

永琳はそんな気っ風の良い前口上でスペルカードルールを用いての決闘を始めたが、そんな言葉を苦虫を噛み締めた様な表情で溢したのは真人と対峙して、そう経過してない頃合いだった。

……今となっては昔の事──否1000年以上経過した今であっても、八意 永琳と云う女性にとって〝升田 真人〟──その青年は不確定要素(イレギュラー)の塊だったのは変わらなかった様である。……それを≪月の賢者≫と謳われた永琳が今こうして弱音の様な言葉を溢すハメとなっている現状が如実に物語っている。

永琳は大きく〝2つ〟のミスをした。

まずは永琳が使用したスペルカードである。永琳が使用したスペルカードが“アポロ13”だったことである。……真人は直ぐにそのスペルカードの〝見聞色〟と〝RISE(ライズ)〟を兼ねた回避機動で“アポロ13”の弾幕を(ことごと)く回避した。

後の話しになるが、〝それ〟を偶然見てしまった〝永琳の弟子(れいせん)〟は「〝神懸かった〟とはああいう事を言うでしょうか。≪博麗の巫女≫真っ青な回避機動でした。……一分野でもお師匠様に(まさ)る方が居られるとは露ほども思いませんでした」と語ったらしい。

閑話休題(いまはかんけいないことである)

そして2つ目が命取り(永琳は死なないが)だった。……理由は瞭然(りょうぜん)。永琳が提示したスペルカードが〝1枚〟だったからである。……これは殊更詳(つまび)らかに語るべく事でも無いだろう。……絶対数の〝弾幕(スペルカード)〟が少なかった──ただそれだけの事。

……(やが)て“アポロ13”のスペルカードも終了する。永琳が提示したスペルカードは1枚──とどのつまり、真人は永琳を完膚無きまで下す事に成功したと云う事になる──並びにそれは、真人は積年の雪辱を果たす事に成功した事にもなった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 升田 真人

「……〝月〟に楯突きし愚かなる現人神(あらひとがみ)よ、〝月〟からの誅罰の代わりに〝賢者〟からの〝遊戯(スペルカード)〟…。……〝穢れ〟にまみれたそなたに、この弾幕が超えられるか!」

八意 永琳はそう啖呵をきると、“彼の理想郷が創造主の掟(ディファレント・ディメンション・マスター)”の空間内──俺が〝設定(セッティング)〟した世界に飛び上がり、〝常人ならば〟青褪めること必死な密度の弾幕を展開した。

「……ここまで私の弾幕を避けるとは思わなかったわ。……でも私のこの〝スペルカード(とっておき)〟を避けきれるかしら? ……“アポロ13”!」

〝見聞色の覇気〟と〝RISE(ライズ)〟の身体強化──〝STRENGTH(ストレングス)〟と感覚強化──〝SENSE(センス)〟でするすると弾幕を抜ける俺に業を煮やしたらしい八意 永琳はスペルカード名を高らかに宣言した。

(右下、左、下、右上、右──っ! もしかしてあそこは…)

先ほどの焼き直しの様に〝見聞色の覇気〟+αで回避機動をとっている時の事だった。……弾幕が拡散していく〝中央〟を見た時、頭の中で閃光が弾けた。……判りやすく云うのなら、〝ニュータ□プのアレ〟とも云える。

僅か──人っ子一人、ぎりぎり入れる様なスペースではあるが〝空白〟が出来ているのが見えた。

「っ…! しまった!」

弾幕の合間を縫って、その〝空白〟に身を捩じ込んだ時、八意 永琳が叫んだのを聞いた。……スペルカードルールの決闘では一度そのスペルカード宣言したら、途中でその弾幕の〝型〟──と云うよりは〝質〟を変えてはならないとな暗黙の了解がある。……八意 永琳が外聞を憚らず叫んだのは、俺に“アポロ13”のスペルカードが攻略されたのを気付いたからだろう。

その後は、弾幕を展開する度に中心部の〝空白〟に身を捩じ込ませながら“アポロ13”の終了時間までやり過ごす──簡単な仕事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……さて、≪月の賢者≫のスペルカードも味わう事も出来たし──ついでに雪辱も果たす事が出来たし、そろそろお(いとま)しようか」

「……待ちなさい。1300年前、輝夜に貴方と離れる様に(そそのか)したのは私よ。……何か聞きたい事が有るのではないかしら」

八意 永琳を下し、“彼の理想郷が創造主の掟(ディファレント・ディメンション・マスター)”で〝設定(セッティング)〟した空間を破棄して、皮肉混じりの言葉を八意 永琳に投げながら部屋から退室しようとした時、八意 永琳は予想外の事──今となっては負け惜しみとも取れる事を(のたま)った。

「……〝輝夜(あなた)(かれ)では生きる時間が違うから、これ以上一緒に居ても輝夜(あなた)にとっても──もちろん、(かれ)にとっても良いことにはならない。……本当に(かれ)を愛しているのなら(かれ)から離れる事を推奨する〟──俺だったらこう言うか」

「っ!!? ……細部は違えど、どうして輝夜を(そそのか)した言葉が判ったのかしら」

「……そんな事、八意女史──貴女の身になって一寸(ちょっと)頭を働かせれば妖精でも判ることだ」

「……どうして──どうして、今になって輝夜の前に現れたのよ。貴方と別れさせてから100年間、その時の輝夜は見れたものじゃなかった。……ここ100年で漸く眠り際に貴方の名を呟く事も無くなったのに…」

(ああ、そうか。この女性(ひと)はきっと…)

そんな八意 永琳の独白には、〝ある感情〟──輝夜への〝贖罪(しょくざい)〟が混ざっている様な気がしてならなかった。……実を言うとその昔、〝“蓬莱の薬”は彼女(えいりん)が造った〟と、なんでもない酒の席でほろ酔いの輝夜から聞いた事がある。

(つまり、それらの事から類推するに──“蓬莱の薬”を輝夜に飲ませてしまった事を後悔している…?)

しかし俺のこの思考は推測にしか過ぎない。……≪月の賢者≫とまで(うた)われた様な──〝月〟でもさぞや重要な役職に就いていたであろう人物が、態々(わざわざ)穢れた土地──〝穢土(えど)〟と貶しているような〝地上くんだり〟まで降りて来て、尚且つ〝地上(そこ)〟で生活している。……そう考えてみれば、俺の推察も(あなが)ち外れていない様な気もする。

「……そもそも貴女は勘違いしている。いつから俺が〝普通の人間〟と錯覚していた? ……いや、現人神になる前からの話で」

ハルケギニアに居た時点──肉体年齢が20歳かそこらの時点で俺の〝老化〟は止まっている。そこにほぼ日課となっている鍛練を合わせると、肉体年齢的には100余年がゆうに経過している。……曲がりなりにも〝普通の人間〟とはもう呼べないだろう。

……そしてこれは余談だが、〝平賀 才人〟としての肉体だけで無く、〝升田 真人〟としての肉体でも20かそこらで〝老化〟は停止している。……ある程度〝仙術〟を修めた事と関連がありそうだが、本当のところは判っていない。

閑話休題。

「……輝夜の部屋は、この部屋から出て右に行った所に在る突き当たりの左手側に在るわ。貴方なら行けば判るでしょう。……きっと輝夜は待ってるわ。……行ってあげて」

八意 永琳は、まるで憑き物が落ちたかの様に呟いた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……ここが…」

八意 永琳に言われた通りに進んだら、やたらと豪奢(ごうしゃ)な装飾の両開きの(ふすま)が顕在していた。……正に〝一目瞭然〟な(それ)を、マナー違反(?)承知で──ノックも無しに装飾を傷つけない様に開ける。……そこに居たのは──

「騒がしいわね。珍客でも来たのかしら? ……えいり──」

「……っ…!」

〝そこ〟に居た〝彼女〟はゆっくりと──嫌にゆっくりと感じる所作でこちらを向く。家で、(ねや)で、満足亭(みせ)で見慣れた──黒曜石(オブシディアン)で編まれたと言われても納得出来てしまいそうな、(つや)のある黒髪。……見間違えるはずは無い。〝蓬莱山 輝夜〟はそこに居た。

輝夜を確認した時、俺の中で〝ガチャリ〟と──何かが嵌まった音がした。

SIDE END

SIDE 蓬莱山 輝夜


(嘘よ…。……〝あれから〟一体どれほどの時間(とき)が経っていると云うのよ…)

やたらと騒がしい今宵の【永遠亭】。背を向けていた戸が急に開かれ、永琳が急用を持ってきたのかと思って振り返ってみたら〝彼〟が居た。

……〝彼〟が──真人(あいしたひと)が〝今〟ここに居るわけが無い──でも居て欲しい。……永琳の言葉を借りるのなら、〝理性と感情は別物〟と云うか。〝思考(りせい)〟が〝感情(こころ)〟が合致してくれない。

もしここに真人が居る事を認めてしまって、〝本当はここに存在しなかったら〟──そんな事になったら〝死ねない〟この身を死ぬほど恨んでしまうだろう。故に内心では否定した。〝真人が居るわけが無い〟──そんな思考回路を念頭に置く事で、〝その場合〟のショックを軽くする──言ってしまえば〝心の防衛反応〟か。

「……真人、なの…?」

……がしかし──否定したのは良かったが、その〝否定〟を私の心が拒否した。気が付いたら目の前の〝彼〟にそう訊いていた。

「ああ。……息災だったか?」

「あ、あぁ…」

覚束無(おぼつかな)い足取りで真人に近付き、抱き付いてみれば真人はちゃんと〝ここ〟に居た。……真人の体温、真人の匂い、真人の感触。それらによって1000年の年月が急激に巻き戻されていく様な気分だ。

……嗚咽を我慢出来ずに、真人──と思わしき青年の胸に泣きついていた。

SIDE END 
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