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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【東方Project】編
  077 月面戦争

 
前書き

ここから2話ほど安定の超展開パートに入ります。 

 

SIDE 升田 真人

「賊はあっちの方に逃げたぞ! 今、〝表〟で対処なされている依姫様達の手を煩わせる前に捕まえるぞ!」

「「ああっ!」」

俺の現在地は月の都。……俺はあろう事か、月の都の警備隊らしき連中に追われていた。……“インビジ”様万歳である。

「……これも全部、八雲 紫って女と、俺の好奇心や〝うっかり〟の所為だ…」

……実は前者の八雲 紫はあまり関係無く──俺がこの状況に陥っているのは、主に後者である2つ──俺の好奇心と〝うっかり〟の所為なのだが、この現状にそう呟かずにはいられなかった俺は悪く無い。

俺は月の都で姿を隠しつつ、取り敢えずはやたらと動き回っていて疲れていたので休憩がてらと八雲 紫と云う少女に会った日の事に思いを馳せる事にした。……八雲 紫と出会ったのは、風見 幽香──幽香(そう呼ぶ様に言われた)との、いざこざが有った日の事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

「ドライグ、“デルフリンガー”に〝譲渡〟だ!」

<了解した!>

『Transfer!』

――「ちょっと待ってもらえるかしら」

そこはかとなく胡乱気な感想を抱かされる闖入者の声に、ただ今──締感からか、瞑目中の風見 幽香からしての目前一寸──3センチメートルほどで、風見 幽香を〝殺さない〟様にしていた左斬り上げ気味の斬撃を止める。

……別に風見 幽香を〝斬る〟つもりは無かったので、この〝茶番〟を止める事に異存は無い。……風見 幽香は〝まだ話の通じる相手〟なのだ。殊更〝妖怪アレルギー〟を持っているわけでもない。……故に(デルフリンガー)を引く事に異存は無い。

「その決闘、私に預からせてもらえないかしら?」

「……貴女は?」

「〝スキマ妖怪〟…っ」

闖入者にそう訊ねると、その闖入者を知っているらしい風見 幽香が苦虫を丼単位で口に入れ、それをゆっくりと噛み潰しているような表情で漏らす。……その表情でまたその2人の関係性が垣間見えた気がした。

「……怪事(けち)が付いたわね」

「……そうだな」

……文字通り[怪事(けち)]が付いたので〝外套〟を解き、“デルフリンガー”を背中の鞘に納めつつ、デルフリンガーとドライグに礼を言い〝神器(セイクリッド・ギア)〟を消す。

「……あらあら、〝怪事(けち)〟とはまた〝あんまり〟ですわね」

「……風見さん、彼女は?」

「幽香で良いわ。……あの女は八雲(やくも) (ゆかり)。私と同じ様に妖怪で、神隠しの主犯らしいけど私はさっきの様に〝スキマ妖怪〟と呼んでいるわ。……真人とシホだったかしら──これは忠告だけど、貴方達もあの女にはあまり関わらない方が身のためよ」

風見 幽香──幽香の言葉を聞き入れながら扇子で口元を隠しながら〝あらあら〟と笑っている八雲 紫に目を遣ると八雲 紫は優雅に一礼するど自己紹介をし始めた。

「ただいまご紹介に与りました、八雲 紫です。升田 真人さんの〝噂〟の方も(わたくし)の耳にも入ってきてますわ」

「おお、これはこれは。〝私の噂〟など耳に入れても仕方無いでしょうに。……どの様な〝噂〟を耳にしたかは存じ上げませんが、取り敢えずは自己紹介をば。……姓は升田、名は真人。憚りながらも≪赤龍皇帝≫、〝異邦人〟を自称している者です」

スカートを摘まんでの優雅な礼だった。……彼女の外見も相俟って、ただの自己紹介の礼と云えど、それは1枚の絵画の様に思えた。……多少意味合いは違うかもしれないが、俺が矢継ぎ早に自己紹介を返せたのはハルケギニアでの生活で見慣れていたお陰だろうか。……でなければ、アホ面を晒していたかもしれない。

「「ふふふ…」」

「「………??」」

いきなり寸劇(茶番)に幽香とシホは固まっている。2人の頭上にクエスチョンマークが踊っているのが幻視した。

「……で、八雲女史は私──俺と幽香の戦闘を止めたのですか?」

「あら、どうせなら紫で結構ですわ。そこの〝花妖怪〟の事は呼び捨てにしているのでしょう? ……戦闘を止めた理由は、主にそこの花妖怪殿に死なれたくなかったからですわ。……〝もしも〟の事が有ったら、それこそ〝こと〟でしたもの」

(この女…)

嗤い、笑う紫。……どうにも、幽香を殺す気が無かったのがバレているらしい。……取り敢えず、脳内で〝ジョゼフ=紫〟としておいた。何となくで理由は特に無い。……事の外間違っている気がしないのはご愛敬か。

「俺は野良犬に手を噛まれても、そこいら犬を蹴りあげたりしませんよ。まかり間違って、今回みたいに狼に手を出すほど無謀ではないつもりですし。……まぁ、これは俺が〝犬に噛まれていない〟からこそ言える言葉ですが」

「ふふふ。それならいっその事〝噛まれて〟みますか?」

紫はそう微笑み、幽香の同等はありそうな妖力(オーラ)でもって威嚇してくる。俺も負けじと、内包している氣を少しずつ解放して一触即発な雰囲気で──これまた茶番をしていると、それに見かねたらしい幽香が口を挟んでくる。

「ちょっと、やるなら他でやって頂戴。……大体、スキマ妖怪は私に〝件〟の返答を聞きに来たのでしょう? ……〝妖怪の大群を引き連れて月に攻め込むから一口乗らないか?〟──だったかしら?」

「ええ、良い返事は聞けそうでは無さそうですけどね。その様子じゃあ」

「「〝月〟に攻め込む?」」

……気付いた時には、シホと異口同音に口を開いてしまっていた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……そんなこんなで紆余曲折あって、俺は月に乗り込む事になったのだった。……現在進行形でリアル【逃走中】な理由は、警備隊へと〝見聞色〟込みで耳を澄ませてみたら、どうにも“穢れセンサー”なる物に引っ掛かってしまったらしい。……それで今は都の──〝大都会〟を顕示している様な大通りから2本ほど裏道に入った様な場所に息潜めていたりする。

紫達──〝大隊〟とは行動を別にしていて、“腑罪証明(アリバイブロック)”で転移してから数分の事だったので、少々面を食らっている。……紫が率いる軍勢が〝表〟の月で争っている最中なので、タイミングが悪かったのもある。よくよく考えなくても、〝表の月〟で戦があれば〝月の都〟に緊張が走るのは自明の理だったのだ。

「……俺って、本当バカ…。……なんちゃって」

ネタ台詞を漏らしつつ、多少息落ち着ける場所も見つけたのだし、今俺が追われている理由──〝穢れ〟について考察する事に。

(……そう云えば──輝夜は俺に、〝穢れ〟があまり無いと言っていたっけか。……それなのに、こうもあっさりと追われている。……となると、考えられる理由は大まかに分けて2つか)

追われている主な理由の2つ──それ(すなわ)ち、この〝月の都〟の“穢れセンサー”が高性能なのか──はたまた、俺が“穢れセンサー”なる物にに引っ掛かる程度には〝穢れ〟の濃い物を持っているからか。

「だったら…。……あんまり取りたい手段じゃないんだけどなぁ…。……背に腹は変えられんか」

“答えを出すもの(アンサートーカー)”で〝ここ──月の都の住人にとっての穢れ〟について〝答え〟を出す。……その出てきた膨大な量の〝答え〟を要約していく。

「〝穢れ〟…。〝生きる〟為に他者を殺す事──そして〝死〟か。……漸く見えてきた。だったら、対処法はある」

俺は〝穢れ〟が薄いが、月の民ほど〝穢れ〟が無いわけではないらしい。……敢えて例えるなら月の民が〝白に近い灰色〟なら、俺は〝黒に近い灰色〟で、その差が“穢れセンサー”なるものに引っ掛かった理由だろう。

「“死なない遺伝子(アンデッドジーニアス)”」

……対処法は簡単である。〝一時的〟に“死なない遺伝子(アンデッドジーニアス)”──不死のスキルで〝死〟を遠ざけてやれば良いだけだ。

「……成功成功」

遠退いて行く警備隊の声に、ほくそ笑むのだった。……それからは〝やりたい事〟をするために行動を始めた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……て、紫ピンチがだな」

やりたい事──所謂〝火事場泥棒〟も終わったので、“腑罪証明(アリバイブロック)”で紫の近くに転移すると、月の防衛隊に紫が囲まれていた。……今しがた俺が呟いた通り、どこからどうみてもピンチだった。

(……〝妖怪(こちら)〟の数も大分減っているな。……そろそろ潮時だな)

……取り敢えず、紫を助ける為にある自作(オリジナル)スキルを使う。……輝夜を連れて行かせない為に作ったは良かったが、大体はゴキブリの様な害虫の殲滅に使う事くらいにしか使わなかった〝殲滅型〟のスキルを、よもや〝月の民〟に使う事になるとは思わなかった。

「……これも因果か…。“残った一人は首を吊った(アンドゼンゼアワーノーン)”」

紫を囲んでいた防衛隊の連中は、その場に糸が切れた操り人形(マリオネット)の様に崩れ落ちる。……返事が無いただの屍だ。彼らの首を見てみれば、ロープの様な物で絞められた感じの痕がくっきりと残っている。……自作(オリジナル)の、〝大量虐殺のスキル〟である。

「真人…?」

「……はい、とっとと撤退した。……もう大勢は決しているだろう? 俺も大体やりたい事は終わったからさ」

「……真人はどうするの?」

素(?)が出ている紫。

「……殿(しんがり)でも努めておくさ。はい、撤退したした」

「……絶対に戻って来ること、判ったかしら?」

「必ずや」

そう不安そうな表情の紫の不安を払拭出来るよう、笑顔で見送るのだった。……この時、距離と角度の関係で紫の頬が朱に染まっている事に気付かなかった。

SIDE END 
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