| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Tales Of The Abyss 〜Another story〜

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

#23 強襲・神託の盾騎士団




 この巨大戦艦タルタロスが震え、そして とてつもなく大きな音が響いてくる程の衝撃。何があったのか、確かに判らないが、判って無くても嫌な予感しかしなかった。

艦橋(ブリッジ)どうした!?」

 声管を使いジェイドが連絡を取る。すると慌てた様子で直ぐに返答が返ってきた。

『大佐ッ!! 敵襲です! 前方上空にグリフィンの大集団です!!総数は……総数は不明!! 全体連絡!! 総員! 第一戦闘配備につけ! 繰り返す!! 総員! 第一戦闘配備につけ!!』

 その伝声管の声は、この部屋に響き渡る程の音響だ。何が起きたのか悟った他のメンバーは、急いで外を見た。


『グ  オ  オ  オ  オ  オ  オ  オ  オ !!!!!』



 外、この空の上空には、まるで空の全てを覆い尽くすかのような数の魔物が、グリフィンの大集団が押し寄せてきたのだ。
 いや、それだけではない。空にはグリフィン、そして大地からは、ライガの群れが襲ってきているのだ。如何に戦艦とは言え、数の暴力である。全てが合わされば タルタロスよりも大きな巨大魔物の様なものだから。

『グリフィンから 多数のライガが降下!! お、応戦間に合いません!! 船体に張り付き攻撃を……! 〝ドガァァァン!〟 ぐわぁぁッ!!』

 その連絡が艦橋(ブリッジ)との最後の通話だった……。その伝声管を伝って響いてきた爆音が影響だろうか、戦艦が更に大きく揺れた。

「きゃーーーっ! ルーク様~~ アニスこわーい~~」

アニスが、揺れを利用してルークに飛びかかった。所謂抱きしめ~と言う事。

「うわわ!?」

 ルークは揺れに戸惑っていてそれどころではなかった。 

「魔物たちが連携行動を……!? どういうこと!?」

 ティアもこの現状を理解する事が出来ない。ただ、この場所が危険だと言う事以外は。

艦橋(ブリッジ)! 応答せよ!艦橋(ブリッジ)!!」

 ジェイドが、何度か連絡を取ろうとするが返事が帰ってくる事は無かった。
 凄まじい揺れは、このタルタロスを壊す勢いで続き、それと連動している様に、モンスター達の唸り声も続いていたのだが、突如 前触れも無く、それは止まった。

「と……止まった………!? イオン様 大丈夫ですか?」

 ティアが、漸く揺れが止まったのを確認すると、急いで膝をついているイオンに手を差し伸べた。

「は はい、ボクは大丈夫です」

 イオンの傍にいたアルは、周囲を警戒していた。 

「何とか……とりあえずは止まったね……。まだ安心は出来ないけど……」

 確かに震えは止まったけど、あれだけの数のモンスターの唸り声が突然消えたのだ。その方が不自然過ぎる。

「じょー……冗談じゃねえ! こんなアブネー陸艦! 俺は降りる!!」

 ルークは直ぐに立ち上がると、ドアに向かって駆け出した。

「だ、駄目だよルーク!! 外には敵がいるかもしれないのに! 今はっ!」

 アルが引き止めようとするのだが、そう言い終える前にルークは飛び出してしまった。

 その時。


「そのとおりだ!」

 通路で待ち伏せしていたのか、目の前に突如大男が現れた。 巨大な大鎌の様な武器がルークの首近くまで振り下ろされ壁に突き刺さる。ほんの少し ズラすだけで ルークの首を斬られてしまうだろう。あの大きさの鎌だ。少しでも当たれば、大怪我じゃすまない。

「迂闊に動くなよ この坊主の首が飛ぶぞ? さあ 大人しく導師イオンを渡してもらおうか」


 佇まいから、只者ではないと言う事は誰もが感じた。身体程の大きさの大鎌を軽々と扱うその腕力、そして、まるで射抜くかの様な眼光。そして強大な威圧感をこの男は放ち続けている。

 男の名は。


神託の盾(オラクル)騎士団 六神将 黒獅子ラルゴ》


 直ぐに、部屋にいた全員は、飛び出し ラルゴがいる通路に全員が集まった。確かに数を考えればこちらが圧倒的に有利なのだが、相手はルークを人質に取っている。だから、迂闊には動けないのだ。

「戦乱のたび骸を漁るお前の噂……、世界に遍く轟いているようだな。 死霊使い(ネクロマンサー)ジェイド」
「いえ―――貴方ほどではありませんよ。神託の盾(オラクル)騎士団 六神将 黒獅子ラルゴ 成る程、六神将が着ているとは誤算でした。……が、あなたがたった1人で この私を倒せるとでも?」

 一触即発の状態だった。と言うより、ジェイドは、ルークを人質に取られている事を忘れている物言いだった。極限までの駆け引き、とも言えるだろうか。

死霊使い(ネクロマンサー)? まさか……)

 ティアは死霊使い(ネクロマンサー)の名に驚いているようだ。それ程までに、有名な異名なのだろう。でも……、今は、それどころではない。ルークを助ける事が先決だ。そしてイオンもそう。
 あの男が、神託の盾(オラクル)だと言うのであれば、目的はイオンだろうから。

 アルは、ゆっくりと後退る。ラルゴは殆どジェイドのみに集中している様だから、それくらいであれば、動ける。そして、ティアの後ろにまで来ると。

(ティアさん……暫く動かないで……オレをそのまま隠してて!)

 アルは、小さくそう呟くと、譜術を発動させる為の術式を、ラルゴに見えない死角の位置に刻んだ。

「!?(わかったわ……)」

 一瞬ティアは、突然の事に驚いていたが、振り向かず直ぐに理解してその場で、隠す様に身構えた。これにより完全にラルゴからはアルが見えなくなる。


「ふん……。確かに死霊使い(ネクロマンサー)殿を相手にするのは聊か骨が折れそうだが、これ(・・)を使えば別だ。ふん!」
「!!」

 ラルゴはそう叫ぶと、ジェイドの頭上に小さな箱のようなものを投げつけた。その箱は、ジェイドの真上にまで到達すると分解し。

 バリバリバリ!! と、まるで雷の様なものが、ジェイドに降り注いだ。

「こ、これは! 封印術(アンチフォンスロット)!!」

 ティアが、投げられたそれが何なのかを悟り、叫ぶが、もうジェイドの身体を包み込んでおり、既に遅かった。

「し! しまった!!」

 雷の様な結界がジェイドを包み込み、そして その雷は一瞬だったのだが、ジェイドの身体を蝕む様にとり憑いた。ジェイドは堪らず、その場に疼くってしまった。

「ふん。これは本来、導師の譜術を封じる予定の物だったがまあいい!! これで貴様は、強力な譜術が使えぬ!!」

 ラルゴはそう叫ぶと、一気にジェイドに攻め寄った。封印術(アンチフォンスロット)それは、その名の通りの効力を発揮する。封印するのは、相手の譜術だけでなく、その身体能力もある程度低下させる事が出来るのだ。
 故に、マルクト軍の大佐として、今まで培ってきたジェイドの強大な譜術の殆ど、そして身体能力が封じられてしまったのだ。

「くっ!!」

 ジェイドは、咄嗟に槍を出し撃退の体制をとった。幾ら譜術を封じられたからと言って、おめおめと殺られる彼ではない事をアルは知っている。あの巨大ゴーレムと戦っている際に、放った槍術は、譜術にも負けずと劣らない力だったから。 そして、その身のこなしも。

「アニス!! イオン様を!!」

 ジェイドは、アニスにそう指示を出すが、アニスは既に判っていた様で、返事をする前にイオンを引連れて走り出す。

「させぬ!!」

 ラルゴは鎌を構えなおした。ここに来た理由がイオンだから、それを見逃す筈が無いからだ。そして、この瞬間を待っていた。攻撃の構えを取ったその時が一番ダメージが通り安いのだ。

「ジェイド!!そいつから離れろ!!!」
「!?」

「何ィ!」

 後ろからアルの声が聞えた為、ジェイドは接近し攻撃せずに後ろに跳躍、 アニスに気を取られていたラルゴの元から、ルークを連れはなれた。

「足元注意だッ!! 唸れ! 吼えろ! 沈黙を破りし、大地より迸るは神成る雷! 《ライトニング・ボルト》」

 アルが詠唱を終えたと同時に、ラルゴの足元が、突然光り出した。

「これは……っ! バカな! いつの間に!」

 ラルゴは、驚愕の表情を大地へと向けた。その光、そして力を一瞬で把握したのだ。これだけの力の譜術を発動させるのには、それなりの時間を要すると言うのに。

 思考を張り巡らせてしまった為、防御体勢に取れなかった。
 その次の瞬間、足元から頭上まで雷撃が迸る。

 雷撃は、先ほどジェイドを襲ったそれに似た輝きだが、性質は全く違った。流石のラルゴでも、鎧、鎌、その全て電気が通る物質だ。絶縁される訳でもなく、その雷撃は、全てラルゴに伝ったのだ。

「がはああッ!!! おっ おのれぇぇ!!!」

 ラルゴは倒れるどころか体勢を立て直そうとしていた。

「ッ……! アレを直撃して気絶さえしないなんて……!!」

 そのラルゴの頑丈さ、タフネスには驚愕だ。雷撃は、相手の意識を刈り取る。たとえ、刈り取る事ができなくとも、一時的に麻痺させる効力がある筈なのに、ラルゴは立ち、そして迎撃準備をしているのだ。


「いえ! でもチャンスです!!!」

 ジェイドは、勝機と判断し、素早く槍を構えた。雷撃をまともに受けたラルゴは倒れこそしなかったが、動きは鈍くなっていた。
 その隙をつき。ジェイドは、槍でラルゴの体を貫いたのだ。

「!!! 刺ッ」

 傍にいたルークは、槍が身体を貫くその場面(シーン)を、目の前で見てしまった。それを見て、ルークは一瞬気を失うような感覚に襲われてしまっていた。

 ジェイドは体を抑えながら、槍を消した。

「大佐! おケガは?」

 ティアも駆けつける。

「大丈夫です。助かりましたよアル」

 ジェイドは、そう言うと槍を何処かへとしまい、こちらを向いた。

「どういたしまして、……とりあえず 何とかなったね」

 アルはそのままジェイドの方に手を上げた。あの封印術(アンチフォンスロット)と言うものを受けた時、心配をしたんだけど、大丈夫そうだから、安心した様だ。

「このまま艦橋(ブリッジ)を奪還しましょう。イオン様はアニスが無事合流先へ逃がしてくれたはずです」
「でも、大丈夫なの? さっきのアンチ……何とかってやつは?」

 アルがそう訊いた。安心した、とは言っても、あれだけ苦しそうにしていたんだ。それなのに、一気に奪還までしよう、と言っていた事に驚いたのだ。

「大丈夫です……っと、言えればいいんですが、封印術(コレ)を完全に解くには数ヶ月かかってしまいます。 ですが、ティアの譜歌。 ルークの剣術。そしてアルの譜術が あればタルタロスの奪還は十分可能です。……協力していただけますか?」

 軍人として、力を借りなければならない状況には複雑な思いはあるのだが、選んでいる場合ではなく、そして、何が最善なのかを考えたら、これしかないのだ。

「オレは勿論だよ。早く親書を渡して欲しいし、イオンやアニスも心配だからね」
「私もです。行きましょう ルーク」
「あ、 ああ………」

 ルークはとりあえずは返事をしていたが、頭の中は先ほどの突き刺す場面から離れなかった。


(人……を刺した……)







 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧