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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐

作者:sonas
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第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
  17話 見えていなかったもの

 認識できないモーションで行使されるスキルというものは、VRMMOという五感全てを駆使して行われるゲームに於いては存在自体がバランスブレイカーである。視覚や聴覚に頼れない、事前情報の無いままに繰り出される理不尽というのは、果たして本当にこのSAOに存在するのだろうか。《召集》スキルの話を始めてアルゴから聞いたときには、いかにも眉唾といった印象だったが、事実としてプレイヤーに犠牲者が出ていることや、その犠牲者を悼む仲間がいたこともあり、とてもではないが虚偽と断ずるには難いものだった。

 しかし、当初唯一の手掛かりとして期待していたレアエルフ――――ティルネルを奇跡的に確保するものの、それについて質問してみれば簡単にスキルの存在を否定される始末。それも、NPCが自身に設定された応答パターンから逸脱したことによる回避的解答というわけでもなく、その答えは理論立てて説明された確固たる回答だ。何らかのフラグによって情報がロックされているのかと勘繰って、何度か質問を繰り返し試みたが、答えてくれる素振りもないまま徒労を悟ってしまう。
 方向性を変えて、被害に遭ったPTの生き残り――――レイとニオに話を聞いてみれば、それは他のプレイヤーから得たという事実が確認できた。さらに推測を深めるとするならば、何某かからの情報をもとにスキルを使われたと判断した、つまりは決して自分達で《スキル行使を確信し得る根拠》を掴んでいたわけではなかったと言い換えられるのである。これが、俺の情報収集で得られた事実と、そこからの考察。

 次いで、情報収集を終えた俺はアルゴと連絡を取った。確実でない推論は省いて、その場で得られた情報のみをアルゴに送信すると、その返信によってアルゴも新情報を得たという旨が記されていた。ただし、その内容は《エルフを集める非実体モンスター》を始めとする数種の情報と、《フルプレートの重装備プレイヤー》が情報源であったという情報。この情報源についてはレイから聞いた情報提供者の姿形と該当するのだが、だとすればその重装備プレイヤーは複数のエルフ召喚にまつわる情報を所有、広報していることになる。しかしながら、根本的な部分を考えるとして、一つの層で類似するスキルやギミックが複数存在するとは到底考えにくい。芸がない、と言ってしまえばまだ聞こえはいいが、事実であれば、森のどこに居てもエルフがどこからともなく大群で襲ってくることを意味するのである。いたずらに難易度を吊り上げるような真似を、果たしてこの浮遊城の創造主はするのであろうか。百層まで続くこの城を作りながら、たかだか第三層で躓くプレイヤーを鑑賞して、彼に面白味はあるのだろうか。奇しくも諸悪の根源たる男の立場で考えると、虚偽である可能性が優勢となってしまう。

 さて、重装備プレイヤーに思考を戻すとしよう。まず言えることは、そのプレイヤーが危機管理を促すために情報を他者に伝えているのは考えにくいという点。根拠は至ってシンプルなもので、情報が複数のプレイヤーに断片的に伝えているという、提供する情報の不完全性にある。何某かが持つ情報が仮に――俺の推測に反して――全て事実であり、当人は全てに遭遇していて、危険性を伝えようとしているのであれば、その情報を全てを開示するのが最善且つ確実な手段である。その最たる例がアルゴを介しての攻略本への記載であろう。しかし、何某かは情報提供の全てを他のプレイヤーとの相対にて行っている。姿を知られているのが確固たる証拠だ。

 かくして、情報収集によって捜査線上に浮上した《重装備プレイヤー》の捜索に移行するかと思いきや、突如として送られてきたヒヨリからのメールが事態を急変させる。要領を得ない文面であったものの、その文面には《現在の調査は無意味》と《みんなを守って》という、ティルネルの言葉とされる記述は俺を困惑させるには十分だった。その真意までは不明だが、もし仮にプレイヤーを対象に捜索していた俺達の行動を認識した上での発言だとするならば、それは既にティルネルという存在は、モンスターはおろかNPCという枠組みすら超越した存在となる。


「………とりあえず、無意味と言われてもアルゴに任せた方がいいか」


 餅は餅屋、情報は鼠。適材適所ということで、アルゴには引き続き情報収集を続行してもらうようにメールで頼み、俺は一先ずヒヨリの待つ拠点へと戻ることにした。


「…………………」


 ただ、先程の肩に受けた感触が気味悪く残っていた事もあり、《隠蔽》スキルを使用しつつ帰途につくことにした。進行方向を同じくするNPCの背後に張り付きながら、周囲の歩行者たるプレイヤーやNPCを遮蔽物に用いつつ人影に潜り込むように移動する。生憎のところ、俺には殺気を感じたりというような超人的感覚は持ち合わせていないために判断はできないが、どこからか貼り付くような奇妙な感覚が続いているようにも思える。正直な話、SAOにおける感覚というのは全てシステムによって生成されたデジタルな信号をナーヴギアを通じて脳に直接伝えているものであり、そこに第六感的な感覚は専用スキルに依存しない限りは求めるべくもない。単なる自意識過剰であればいいのだが、されど気味の悪さというものはなかなか解消されてくれない。
 半ば腹を括って歩を進め、急ぎ足で拠点へと戻る。慌てて鍵を施錠し、溜息を一つ零しつつリビングへと進入する。そこには、ソファに横たわるティルネルと、傍に寄り添うヒヨリの姿があった。


「またか」
「また、って………?」
「俺が初めて見た時にも気絶している。だから回収した。………同じかどうかは知らないけど、ずっと寝たきりってことはないと思うぞ」
「………そう、なんだ………」


 まだ確証を得ての事ではないのだが、ステータスに異常がなく、罷り間違っても《圏内》にいるのだ。モンスターという身の上――――もとい、カテゴリーだろうか――――に、どこまで適応されるか甚だ疑問ではあるものの、突然死のような事態は為り得ないと見て良さそうだ。根拠もなくヒヨリを安心させるのも、あまり褒められたことではないのかも知れないが、そればかりに固執されても無為に精神を摩耗させるだけだ。


「有り体に言えば、当分は安静だな。聞きたい話もあったんだけど、流石に起こすのは気が引けるよな………」


 というより、目下の問題は情報源の沈黙だろうか。アルゴも引き続き捜査をしているとはいえ、俺にはやはり、ティルネルから事情を聴いた方が核心に迫れるような気がしてならない。


「聞きたい話………それって、ティルネルさんがメールを送ってって言ってたこと?………私、聞いてるよ」
「………あ、そっか」


 思わず胡乱な声音で言ってしまった。自信か何かに満ちた申し出ではあるが、本当に正鵠な情報をくれるのだろうか。俺には、その点が既に疑わしかったものの、一先ず聞いてから判断することにした。


「じゃあ、聞かせてくれるか?」
「調査は意味無いからやめて………みたいな感じの事を言ってたと思う………」
「ほほう?」
「それでね、みんなを守って、って………」
「………そうか」


 新発見はなし。これは十分に予想していた。
 しかし、話を聞かねばならない箇所はこれだけではない。


「ところで、メールでもあったけど、ティルネルの言うところの《みんな》ってのは誰を指すんだろうな?」
「………あ、うん」


 どこか上の空といった具合に、ヒヨリは声を上げる。妙に元気がないような気がするが、気になっている反面で聞き出すべき話もあり、そちらを優先させる事とする。


「もし、ヒヨリが今までティルネルと一緒にいて、何か気付いたことがあったら聞かせてほしい」
「うん、でも、私も知りたい事があるの」
「何をだ?」
「燐ちゃん達が、どうして外に出て情報を集めてるのか、知りたい。何だか、私だけ置いてけぼりになってるような気がして、それが嫌なの………ダメ?」


 ないがしろにしているというよりは、人死にという沙汰に巻き込んでやりたくなかったというのが本音だが、どうにも真剣な顔つきをしている。これまでのようにヒヨリをこの件から遠ざけておけるようにも思えない。こうなったヒヨリは、なかなかにしつこいものがある。それに、そもそもデスゲームの只中にいるんだ。いつかはヒヨリも、望む望まざるに関わらず、何かしらの形で死に向き合わなきゃいけない。それでも、こんな事に関わらせたくはなかったが。


「この件について、これから話すことについて、誰も憐れまないと約束してくれ。そうしたら話す」
「どういう事?」
「割り切って話を聞いてくれって事だ。情報程度に受け取ってくれれば問題ない」
「そんなの、聞く前から言われても………」
「解ってくれ。じゃないと、俺だって安心して話も出来ない」


 不愉快そうな表情だ。間違いなく納得してくれていないだろうが、この場においては納得出来るか否かは問題ではない。これから先、俺達と関わりを持った誰かの死を深く考えすぎて重荷にしてしまうようならば、この話は聞かせるわけにはいかない。その為に後先考えず奔走されては、自分の首さえ絞めかねない急所となる。

 俺だって、アルゴに義理立てしているのはあくまでも攻略本の欠落箇所の補完までだ。それでも、犠牲者が続出して攻略が停滞しかねない重大な案件でなければ、見向きもしなかっただろう。つまりは《一刻も早くヒヨリを元に戻してやりたい》から、この状況が俺にとって都合が悪い為だ。そう考えると、利己的な自分に嫌気がさしてくる。それでも、ヒヨリには自ら死地に赴くような真似は出来る限り避けてほしい。誰かの死に感傷的になって行動してほしくない。しかし、何故だろうか。視線を落とすヒヨリを見ていると、これまでの方針に、何か言い知れない間違いがあったような、そんな気がしてくる。


「危ない事、してるの?」
「危険だろうな。だから、出来れば関わらせたくはなかった。ただ、ヒヨリから聞かれれば話そうとも思ってたのは事実だ」
「………じゃあ、私がその事を知らなかったのは、燐ちゃん達がそうしたかったからなの?」
「少なくとも、俺から知らせようとはしなかった」
「………私のこと、頼ってくれないの?」
「………………」


 返す言葉が見つからない。頼っていなかったのは事実だ。だが、頼ってしまうと関わらせてしまう。そうなった時、レイ達の身に起きた悲劇を知った時、ヒヨリは間違いなく彼女達の為に動き出す。死者の為に有難迷惑な徒労を尽くすか、或いは彼女達の独自に行っている迷い霧の森における調査を個人的に開始するか、どちらにせよ、あのPTが救われることはない。その後に残るのはやるせない程の寂寥感だ。死者が出たという事実が、彼女達には晴らし難い影となっている。どうあがいても、ヒヨリでは救えない。それから力不足を悟ってしまえば、精神的な枷となってしまう事は容易に予測できる。


「私、一緒に戦うって燐ちゃんに言ったよ? だから、はじまりの街から一緒にここまで来たんだよ? 今までみたいに、私を頼って………お願いだから、私を信じて………燐ちゃん達だけ大変な目に遭ってるのなんて、嫌だよ………」
「ヒヨリ?」


 泣きそうな声で訴えてくるヒヨリを目の当たりにして、今更ながらに、思い知らされる。第一層の主街区たるはじまりの街での一幕を、想起する。
 俺の行為は、結局として自己満足だったのかも知れない。ヒヨリの為にと思っていた行為は、ヒヨリの決意を侮辱していた。まるで自分だけが戦っているつもりになっているようで、ひどく情けない。こんな事、もうはじまりの街を出る時に理解していた筈だったのに。
 だが、それを間違いだとも思わない。俺はただ、俺なりにヒヨリを守り、救い出すしか出来ないのだから。その手段が如何なるものであったとしてもだ。だが、当人からの申し出であったならば、自ら考えて至った答えであるならば、それを尊重しない道理はないのもまた事実。


「………多分、俺達が頑張ったところで誰も救われない。そういう意味ではもう、これは手遅れになってしまっている。それでも聞くか?」


 ただ、これだけは認識してもらいたい。誰かの為に行動を起こすのは、今回に限っては悪手だという事を。目的を見誤って暴走しては、手痛い目を見る。


「うん、教えて………!」
「………分かった」


 頷き、ヒヨリにこれまでの経緯を話す。
 迷い霧の森にて、エルフを周囲から呼び寄せるモンスター限定の特殊スキルがプレイヤーによって確認された事。
 その特殊スキルは、アルゴが著している攻略本にも載っていない未知のスキルであった事。
 その特殊スキルによって増大したエルフの群れと交戦した結果、先日助けたPTから犠牲者が出てしまっていた事。
 その手掛かりとしてレアエルフを捜索し、ティルネルを発見するに至った事。
 その後の情報収集で、俺は昨日の犠牲者の在席していたPTの他にも被害者が存在していた点に行き着いた事。
 また、アルゴは先の特殊スキルに類似する複数の目撃情報を入手し、その全てにおいて目撃者が全て同一の特徴であった事。
 それらの情報を、決して婉曲な言い回しにせず直接的に伝えた。当初は不安であったものの、俺の考え過ぎであったらしい。ヒヨリにしては、話によく耳を傾けてくれていた。正直、ヒヨリを信じないで侮った事はもう何度目になるかわからない。全く、我ながら学習能力のないものだ。


「そっか、あの子達、そんな事あったんだね………」
「可哀想かも知れないけど、俺達には何も出来ない。向こうの問題だからな」
「解ってる………でも、やっぱりおかしいよ?」
「どうした?」


 一頻り話を聞き終えたヒヨリは、難しい顔をしながら首を傾げる。どうにも納得出来ないというような風情だ。


「だって、攻略本を作ってるのはアルゴさんだって、みんな知ってるんだよね?」
「………タイトルからして、だからな」
「だったら、その被害者さんは他の誰かに話して教えてあげるよりも、アルゴさんに伝えた方が早いんじゃないのかな?」
「まあ、そうなるだろうな」
「どうしてアルゴさんに言わなかったのかな?」
「それは………何でだ?」


 言われてみれば、確かに釈然としない。
 情報を有料で提供している節は見られなかった事から、被害者こと重装備プレイヤーは事実、無償で注意喚起を行っていたことになる。しかし、どうせ無償であるならば情報を口頭で広めるよりも、いっその事アルゴに提供した方が遥かに効率的に他のプレイヤーに伝播するだろう。街でも噂程度に耳に入らなかったという点さえも気味が悪い。重装備プレイヤーの目的に対して情報の拡散が芳しくない。むしろ戸を閉ざしたかのように広まらないくらいだ。


「リンちゃん、戻ったゾ!」


 アルゴには珍しい怒声が室内を震わせ、乱暴にドアが閉じられる。やや気圧されるヒヨリの脇を過ぎて、気に入ったのか揺り椅子に荒々しく腰掛ける。普段の様子とはだいぶ違う印象だ。


「あ、アルゴさん? ………どうしたの?」
「ン? ………ああ、ゴメンネ。驚かせちゃったカナ? リンちゃん借りてくケド、良いカナ?」


 丁寧に場所を変えて情報交換をしようというらしい。だが、その必要は今しがた解消されたところだ。


「ここでいい。ヒヨリには話したからな」
「ニャニィ!? ヒヨリちゃんの聖女の如き清らかな心にえげつない爆弾投下して、リンちゃんは良心の呵責ってモンがないのカイ!? だから厨二忍者なんダヨ! 汚イ! 流石ニンジャ汚イ! ばっちい!! このなんちゃって風魔忍軍!!」


 俺とヒヨリでこれほどに扱いの差があったのか。厨二は関係ないだろうに。というか風魔忍軍ってなんだ?


「アルゴさんやめて、私がお願いして聞いたんだから」
「そうなのカ?」
「そんなところだ」


 なら仕方ないと勝手に締めくくり、アルゴは懐からメモ帳を取り出す。その一冊に一体いくらの情報が書き記されているのか気になるものの、同時に恐ろしくて、気軽に聞くのも憚られる。そんな心境など知る由もなく、アルゴは手帳のページを開く。


「まず、エルフを呼ぶギミックが噂にもならずに潜んでいた仕掛けだケド、追加取材で突き止めてやったゾ」
「あ、私も気になってた!」
「そーか、ヒヨリちゃんは偉いナー」
「えへへー」


 さっきまで苛立っていた筈なのに、落ち着くのが異様に早い。というより、ヒヨリに対しては既に孫か何かのような扱いに見える。


「撫でるのは良いが、話を進めてくれ」
「ンー? リンちゃん、もしかしてオネーサンに構ってもらえなくてヤキモチ妬いちゃったかニャーン? それとも、ヒヨリちゃん取られちゃったと思ってヤキモチ妬いちゃったのかナー?」
「寝てないからイラついてんだよ早くしろ」
「………じゃ、じゃあ、本題ダナ。情報を提供されたプレイヤーは皆一様に、もう一つの情報を抱き合わせ(セット)で教えられていたみたいダ」
「どんな情報だ?」
「要約するとダナ、当該のスキル及びギミックで召集されたエルフの集団を撃破すると、特殊なアイテムが入手出来る、って話だソーダ」


 手帳をペラペラめくりながら、《敏捷値(AGI)に二十パーセントの補正が入るピアス》だとか《筋力値(STR)に十七パーセントの補正が入るグローブ》だとか、意外にありそうではあるがこの層では入手不可能であろう破格な性能のアイテムが列挙される。この層の隠しダンジョンでも、入手できるユニーク品の性能はもう半分は控えめなものだ。


「こんなアイテムが手に入るカモ、って言われちゃあ誰にも教えたくないってモンだろーナ」
「でも、死んじゃうかも知れないんだよ?それでも、欲しいものなの?」
「ヒヨリちゃん、このMMOって世界はネ、欲張りサンがたくさんいるんダヨ。誰よりも強くなりたい人がたくさんいる世界ナンダ。そんな世界で、自分くらいしか知らないようなすごい強いアイテムの情報を偶然手に入れちゃったラ、多分誰にも教えないで自分だけのモノにするだろーネ」


 心を抉られる言葉だが、それ故に肯定できる。MMOにおけるステータスは、時にそのプレイヤーの性格的な個性よりも重要視されるものだ。ましてやこのSAOでは、ステータスはそのままその人間の肉体的な強さを表す。要は、この世界で生き抜く力の強さだ。俺は、その強さを底上げするために隠しダンジョンや隠しクエストの情報を他者に開示することなく保有している。その点においては、情報を供与されたプレイヤーと遜色無い。同類と言ってもいいかも知れない。


「でも、誰かがアルゴさんに教えても不思議じゃないよね? ………それに、信用できるの?」
「………情報提供した代わりに、漏洩するナって釘刺されてタンダ。イッチョマエに箝口令(かんこうれい)なんて敷いてやがったンダヨ。しかも、情報を得たプレイヤーは皆、第二層での鍛冶屋詐欺の被害者、つまりはステータスがショボくなったプレイヤーを選抜してるンダナー」


 レア品の情報の対価が他言無用とは破格の条件だ。情報を与えられたプレイヤーからして見ても、そもそも誰かに話したくもないだろうが、嘘の露見と告発のリスクを減らすための工作というわけか。そうすると、もうその重装備プレイヤーは人命の為に行動していたのではないのだろう。


「悪質だな」
「犯人、見付けなきゃだね」
「ソーダネ、もうひと頑張りカナ?」


 ヒヨリとアルゴが話すのを聞きつつ、ふと、考える。
 重装備プレイヤーから情報を受けたプレイヤーは皆、レアアイテムの情報を同時に教えられていた。
 それは恐らく、レイやニオのPTも同様の筈だ。しかし、彼女達は既に犠牲者を出してしまっている。つまりは、レアアイテム入手におけるリスクの高さを知っている事になる。俺は当初、彼女達がリーダーと呼ばれたプレイヤーの死因を調べているものだと推測していた。しかし、それは彼女達の《特殊スキルを知っていた》という証言で否定されている。それでもなお、人数に補充も加えずに森へ向かう理由はやはり………


「あの三人、また森へ行ってないだろうな………」
「昨日の女の子達、だよね?」
「やっぱり、リンちゃんも気になるカイ?」
「真偽も定かじゃない人為的に撒かれた情報で、その情報通りに死んでるやつがいるんだ。胡散臭いなんてもんじゃないだろ」


 それに、レイ達の拠点から出た時、俺は間違いなく何者かと接触している。
 あれは恐らく、レイ達を監視している。完全にターゲットとして見ている。だからこそ、レイ達を嗅ぎまわった俺に警告する意味合いで接触してきたのだと、今ならばそう考えられる。それらを加味した上で行き着くのは、ある一つの答えだった。


「ヒヨリ、アルゴ。レイ達のところに行くぞ。あいつらを止める」
「レイって、昨日の? 止めるって、森に行くのをだよね? 良いけど、でも、どうしたの?」
「あまり考えたくはなかったけどな、あいつらは多分PKに貼り付かれてる」


 俺の言葉に、アルゴは険しい表情を作るものの、ヒヨリは首を傾げてアルゴに視線で助けを求める。


「《プレイヤーキラー》だヨ、ヒヨリちゃん。プレイヤーを殺すプレイヤーの事をそう言うンダ」
「………じゃあ、あの子達って、死んじゃった子も………もしかして………」
「プレイヤーによって、人為的に殺された可能性がある。ってことだ」


 言いながら、アイテムストレージに眠っていた《アニールブレード》とタワーシールド《ジレーザ・シヤーニエ》を壁に立て掛ける。これからもう一度遠出をするのに、こんな荷物は持っていられない。事実、重量の上限に差し掛かっていた所為で移動には難儀したものだ。


「………行くぞ。死んだプレイヤーはどうしようもないが、生きてるやつなら話は別だ」 
 

 
後書き
情報収集後日談:if


燐ちゃん「そう言えば、レアアイテムの情報ってどうやって聞き出したんだ?下手に目先に餌をチラつかされてるだけに口が堅そうだけどな」

アルゴ「ボソッ(睡眠中の無防備なヒヨリちゃんのスクショと、スリーサイズで)………………実力、カナ?」

ヒヨリ「アルゴさん、すごいよー!」




ヒヨリちゃん正式合流回。メインヒロイン的な立ち位置なのにね………


ちゃっかりプログレッシブ本編に出た第二層での事件を流用しています。個人的見解ですが、あの事件と連動させるとキナ臭さ倍増です。色んな推論が出来ますね!



さて、今回は更新が結構遅れてしまいました。次は………何とも言えません。



ではまたノシ 
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