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ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか

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五年後

【ファミリア】といえば、俺が所属する【バルドル・ファミリア】や、今このオラリオでも有名な【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】のようなダンジョンに潜ることで生計を立てる【ファミリア】が大半を占めているのだが、だからと言ってそれだけというわけではなく、ポーションやアイテムを売る商業系ファミリアだったり、医療系のファミリアだったり、すごいのだと国家系のファミリアがあったりするらしい。

なんだよ、国家って。

で、そのファミリアには規模や功績によってI~Sの評価がつけられる。
まぁ、このランクが高ければ高いほど、ギルドからの徴税額が上がるわけだけど。



それと、バルドル様達のような神様についても少し説明をしておいた方がいいだろう。
今から千年くらい前に天界とよばれる神様のいた場所からこの下界に降りてきたそうだ。
理由は至極簡単。天界がつまらないから。
永遠の時を天界で過ごしていた神様達は下界の民の無駄の多い生き方に興味を抱き、この地へ降りてきたのだ。で、それが大いに受けたらしい。曰く、楽しい!と。
まぁ、下界の人も神様達にダメだなんていえなかっわけだし、逆に恩恵(ファルナ)を与えてくれるため重宝したとも聞く。いわゆるギブアンドテイクってやつだ。

さて、その恩恵(ファルナ)についてなんだが、これは神様が下界の民に与えるもので、様々な事象から経験値(エクセリア)を得て能力を引き上げて新たな能力を発現させることを可能にするものだ。
簡単に言えば極めて効率よく成長させる成長促進の力だな。
あくまで本人の潜在能力を開花させる補助に過ぎないから、過度な期待は禁物だぜ?




ーーーーーーーーーー



「ーーーーとまぁ、説明はこんなもんだな。 何か分かんないとこあったか? スウィード」

「いや、分かんないとこというか、一応全部知ってますよ?」

「なんと、マジか」

どうやら、目の前のヒューマンの新人君にはこの手の一般常識は教える必要が無いようだ。
まいったな、と俺は自身の黒髪をかいた。

「それよりも、ここのファミリアのルールとか、そういうのは何かないんですか?」

「ルール? つってもなぁ……基本他のとこと変わらないと思うぞ?」

「で、でも、じゃあなんで入団条件があんなに厳しかったんですか?」

そう言うと、スウィードは首をかしげた。
俺はといえば、どう答えていいか分からずについ口を閉ざしてしまう。
うーむ、何と言えばいいのやら……

「式君、スウィード。少しそのソファーから退いてくれませんか?」

丁度その時、奥の部屋から執事服を着て掃除道具を持ったヒューマンの男性が現れた。

「あ、パディさん。 掃除、お疲れ様です」

「いえいえ。これは僕の仕事ですからね。これも執事の勤め」

いつもと変わらない優しそうな笑顔のパディさんに言われた通り、俺もスウィードも今しがた座っていたソファーから退いた。
無人となったソファーを手早く慣れた手つきで掃除していく。

「……今更なんですが、何でパディさんが掃除を?」

「あぁ、それな。あの人、夢が執事らしい」

「…………え? それだけですか?」

「おう、それだけだ」

パディさんが掃除をする姿を眺めながら俺とスウィードは会話を続けた。
時間にして三分も経たずにファミリアの団員計九人が座れるほどの大きなソファーがきれいになっていく。
……てか、この人ほぼ毎日掃除してるから掃除する前もそれほど汚れてないんだが……

「ダメですよ。掃除は毎日が基本ですから」

「普通に心の中を読まないでくださいよ」

「執事ですので」

「なにそれ怖い」

ちなみに、エセとパディさんに向けて言うのは厳禁だ。
過去に一度、そう言ったバカがいたのだが、Lv差があるにも関わらずにボッコボコにされていた。何があったのかは怖くて聞けなかった。

「それと、あと二時間ほどで夕食ですので、遅れないように」

「あ、了解しました」

「パディさんの料理、美味しいですもんね」

味を思い出したのか、スウィードの口からよだれが垂れる。
気持ちは分からんでもない。なんせ、本当に美味しいのだから。

「フフ、ありがとうございます」

誉められたことが満更でもなかったのか、パディさんは嬉しそうに目を細めて部屋から去っていく。

と、ここで入れ替わるようにして部屋にとある人物が現れる。

「し、式! スウィード! ちょっと匿って!」

「団長?」

「ハーチェスさん、どうしまし……あぁ、リリアさんですか」

?と首をかしげているスウィードに、俺はいつものことだから、と伝える。
駆けてきたのは他でもない、この【バルドル・ファミリア】の団長であるハーチェス・ザイル。
五年前の零細ファミリア時代から所属していた最古参のヒューマンである。

「そうなんだよ。夕食前にあんなの食べたら……」

「ハーチェス様ー!!」

「き、キタァ!?」

自らを呼ぶその声に、ガタガタと震え出すハーチェスさん。
今年で二六歳にもなる男の、まして団長の見せる姿であるとはとても思えないが……


「とりあえず、そこの物陰に。俺が何とか誤魔化しますんで」

「た、助かる式!」

慌てて部屋の片隅に置かれた棚の陰に身を潜めたハーチェスさん。
そして、ハーチェスさんが隠れた直後に部屋に入ってきた一人の(エルフ)

「あれ? 式、ハーチェス様は? 確か、ここに入っていったような気がしたのだけれど……」

「いや、見てませんよ。 ……それより、リリアさん。その手に持っているものは?」

銀髪碧眼のエルフ、リリア・エミルカ。
【バルドル・ファミリア】の紅一点にして、自称【ハーチェスの嫁】

彼女の手に持っている皿に盛られた毒々しく、ブクブクと泡が沸き立っているそれを指差して俺は言った。

「シチューよ! 私が、ハーチェス様のために作ったの! どうしてもって言うなら、式も食べていいわよ?」

「いや、そんなハーチェスさんへの愛情こもったもの食べれませんよ。遠慮しときます」

「そう? ウフフ、分かってるじゃない」

物陰から激しく動揺している気配を感じるが、きっと気のせいだろう。
チラリと見えた顔がかなり青ざめていたのが印象的だった。

「でも、何処へ行ったのかしらねぇ……。 仕方ない、犬でも連れて来ましょうか」

「誰が犬だ誰が」

リリアさんがそう言うと、厨房の方から出てくる影。
特徴的なのは、頭の耳と尻尾。狼人(ウェアウルフ)の男性だ。

「あら、ヒル。丁度今探そうとしてたのよ」

「頼み事するやつを犬呼ばわり……」

ケッ、と悪態をついていたヒルさんは言葉を途中で切り、リリアさんが手に持ったシチューという名の何かを見て顔をしかめた。

「おい、なんだそのクソみてぇな臭いをするやつは」

「シチューよ。それ以外の何物でもないわ」

「……そうかよ…」

どうやら、ヒルさんまツッコムのは諦めたらしい。
先程の態度から一変し、リリアさんをどこか可哀想なものを見る目で見ていた。

「それよりよ、ヒル。あなたハーチェス様見なかった?」

「あ? 団長? ………いや、知らねぇな」

「は? あなたのその鼻は飾りなのかしら?」

「なわきゃねぇだろ。 そのゲテモノのせいで鼻がイカれてんだよ」

やってらんねぇ、と文句をこぼしたヒルはまた厨房へと戻っていく。
どうやら、パディさんが掃除している間の代役らしい。
言葉に似合わず家事のできる御方だ。

「……パディの犬のくせに」

「ンダトゴラァ!! あと、俺は狼……」

「ヒル、何で遊んでいるのかな?」

リリアさんの呟きが聞こえたのか(流石、狼である)、ヒルさんは厨房から顔を出して怒鳴り声をあげる。
がしかし、ヒルさんの続きの言葉は掃除を終えて戻ってきたパディさんの声に遮られた。

「ぱ、パディ!? あ、いや、これはリリアのやつが……」

「人のせいですか? 余所見をして? 沸騰してるのも無視してですか?」

最後にはヒルさんが謝る声が厨房から響いた。
恐るべし、パディさんである。

「……あの、二人はいつもああなんですか?」

「ん? ああ。あの二人は同郷の幼馴染みらしいぜ」

「へぇ~、初耳です」

「だろうな、言ってなかったし」

「……はぁ、結局ハーチェス様が見つからないわ……」

手に持ったシチュー?を残念そうに見つめながらリリアさんが部屋を去る。
少しして、周りの安全が確認できたのか、ハーチェスさんが恐る恐るといった様子で物陰から顔を出した。

「い、行ったか?」

「大丈夫ですよ、ハーチェスさん」

「よ、よかった、助かった……」

一安心したようで、ホッと息をつく。
リリアさんも、ハーチェスさんにゾッコンなのは別にいいのだが、その前に料理の腕を何とかしてもらいたい。爆発かゲテモノの二つにひとつだから、パディさんが毎度泣いている。材料費がぁ、と

「……なんか、リリアさんは想像してたエルフの人と違いますね……」

俺のとなりで、事の成り行きを黙って見ていたスウィードがボソリと声を漏らした。
確かに、エルフといえば誰もが容姿端麗で、認めたものにしか肌を許さないとか言われてるから、こう、もっとキツそうなイメージが湧くのも分かる。

「でもまぁ、あの人がああなのは、ハーチェスさんだけだ。ファミリアの団員にも優しいけど、他のやつに対してはエルフのイメージまんまだからな」

「そ、そうなんですか……」

「言っておくけど、もう一人の方が変っちゃ変だが……あ、そういや、ハーチェスさん。他の三人は?」

「えっと、確かデルガとアルドアは買い出し。エイモンドは……まぁ、いつも通りその辺を彷徨いてるんじゃないかな?」

さすが団長、団員のことをよくわかっていらっしゃる。

「スウィードも、ちょっと変わった人が多いファミリアだけどよろしくね」

「い、いや。むしろこちらこそですよ! まさか、自分が【バルドル・ファミリア】に入れるとは思ってもいませんでしたし!」

そういってくれると嬉しいよ、とハーチェスさんは笑った。
俺はといえば、スウィードの相手をハーチェスさんに任して自室に戻る。
ここ、【バルドル・ファミリア】のホームである【光明の館】は、俺達九人が住むには少々広い。なので、個人個人に部屋が与えられているのだ。プライベートルームがあるというのは本当にありがたい。

ちなみに、俺の部屋はホームを建てる際に【ゴブニュ・ファミリア】に頼み込んで自腹で和室にしてもらった。
極東風、と注文したのだが、見事な畳の部屋である。最高だ。

で、そんな部屋に似合わない三本の槍。
言わずもがな、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)である。
尚、残りの一本は【ヘファイストス・ファミリア】に注文した短槍だ。


俺が【バルドル・ファミリア】に入団してから五年。ついに俺はLv5へと登り詰めた。
神様の言っていた成長しやすくしといてやるという言葉は本当だったらしく、やけに早かった。
スキルも魔法も、転生の際に決めた通りになった。

【バルドル・ファミリア】の方も順調で、今ではランクCのファミリアだ。
九人という少人数だが、実際、スウィード以外の団員は皆Lv2以上。

何故こんな奇妙なファミリアになったかといえば、とうぜん、俺という異常がいたからだ。
規格外とも思えるようなこの力が公になることをよしとしなかったバルドル様とハーチェスさんが配慮してくれた結果、ファミリアの団員を制限してるのだとか。
でも主神であるバルドル様が言うなと言えば言わないのだから別にいいのではないのかと思わないこともなかったが、大方、バルドル様のしがらみとかそういう問題が起きたら面倒くさいという私情も含まれているのだろう。
てか、ハーチェスさんがそう言ってたし。

先程、スウィードが言っていたうちのファミリアへの入団条件についても話しておこう。
その条件とはズバリファミリアの団員、及びバルドル様全員のOKを貰うというものだ。
誰か一人でと反対すれば即拒否される。
それがルールだ。
まぁ、厳しいとは思うが、これもバルドル様が決めたことだ。俺達眷族があれこれ言う立場ではないのだ。


「式さん、パディさんが呼んでますよ。 ご飯が出来たそうです」

「ん? そうか、すぐにいく」

どうやら、もう二時間が経っていたようだ。
俺はすぐに部屋を出て、外で待っていたスウィードとともに食堂へ向かう。
食堂、といっても、他のファミリアのものと比べれば小さい部類に入るが、今の人数でも十分な広さがある。
どうやら、外に出ていた三人も戻っていたようで、もうすでに席についていた。
俺が最後だったみたいだな。


「すいません、遅れました」

「大丈夫ですよ。 さ、座ってください」

待っていてくれたパディさんが俺とスウィードの分の椅子を引いてくれる。正直、年上の彼にこんなことをさせるのは気が引けるのだが、当の本人は全く気にした様子はなく、むしろ執事ですからと笑顔で答えるだけなのだ。

「それじゃぁ、皆揃ったね。 では、いただきます!」

「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」

バルドル様の音頭で食事が始まる。
うちのファミリアでは必ず皆で食事を取ることが鉄則となっているのだ。
これは俺がここに入る前、零細時代からのハーチェスさんとバルドル様の約束だそうだ。


「ハーチェス様、あーん」

「り、リリア? 一人で大丈夫だから……」

「ヒル、食べ方が汚いですよ」

「いいじゃねぇか。これが俺の味わい方だ」

「あ゛あ?」

「すまん、ちゃんと食べる」

「やっぱ、パディさんの料理、美味しいですね」

「フッ、でもこの僕の美しさには敵わないな!」

「あ、デルガ。オレっちにそこのソースをくれっす」

「……………」ヒョイ

「おお! 僕な好きなジャガ丸君もあるじゃないか!」

皆がみな、思い思いに食事を進めていく。




ーーーーーーーーーー



「さて、それじゃあ食べ終わったことだし、スウィードにメンバーの紹介をしておこう。 まだ、ちゃんとは知らないんだろ?」

「あ、はい。 それなりにくらいしか知りません」

テーブルに用意された食事が全て片付けられたところで、バルドル様が立ち上がった。
スウィード君はここにいる全員に認められた久しぶりの新人だ。入ってからまだ数日くらいしか経っていない。
そんな彼に、バルドル様が気をきかしたのだ

「それじゃぁ、自己紹介からいってみよう!」

イェーイ!と片腕を振り上げた神様はそのまま奇妙な躍りを踊り出す。
あれだ、相当酔っていらっしゃる。

「はい! スウィード・バルクマン、一五歳です! オラリオに来る前は狩人でした!
弓とナイフが使えますが、式さんみたいに刀も使ってみたいです!」

「よくできた! 皆、拍手だ!」

躍りを踊りつつもスウィードに拍手を送るバルドル様。
皆はその様子にもう慣れたのか、言われた通りに自己紹介を進めていく。

「えっと、じゃあ団長の僕から……でいいよね?」

立ち上がったハーチェスさんが俺達に確認を取るように見回した。
一人、アホなエルフが「フッ、二番手で団長の印象を奪ってしまう美しすぎる自分が憎い!」とかなんとか言っていたが、それ以外は大丈夫だと頷いた。

「【バルドル・ファミリア】団長のハーチェス・ザイルだ。Lvは4で見た通りヒューマンだ。二つ名は【光の守人(ドラウプニル)】。これからよろしく」

簡潔な紹介を終え、ハーチェスさんが席に座る。
そして、続けざまに立ち上がった(エルフ)

「僕はエイモンド・エイナルド! あぁ!こうやって視線を集めてしまう僕! なんという罪深さ! Lvは4、二つ名は【極光の陶酔者(ナルシスト)】。この僕に相応しい名だと思わないかい? ああ、分かっている、皆まで言わなくてもいい。この僕の美貌は万人をも……」

「はいは~い、そこまで。それじゃいつまでたっても終わらないわよ」

全く持ったその通りである。
下手すりゃ、自分のことだけで一日中話せる男だ。誰かが止めなければ終らない。

「次は私ね。リリア・エミルカよ。見ての通りこいつと同じエルフで、Lv3
。二つ名は【ハーチェス様の嫁】よ!」

「フッ、君のは【水竜】という物騒な名が……」

「フンッ!」

「ガファッ!?」

エイナルドが沈んだ

よろしくねと笑顔のリリアさんに若干顔がひきつっているスウィード。
まぁ、気を付ければ大丈夫だ。

「ヒル・ハンド。狼人(ウェアウルフ)。Lv3の【無影】だ」

「ヒル……君は……はぁ、仕方ない。 僕はパディ・ウェスト。ヒューマンでLvは2。二つ名は今度の神会(デナトゥス)で決まるのでまだですね。 こっちのヒルとは同郷だから、よろしくお願いしますね」

足を組んで偉そうな態度をとるヒルさんに、執事のように礼儀正しく挨拶するパディさん。まさに凸凹コンビ。


「デルガ、先にやるっすか?」

「…………」コクリ

二人の紹介が終わったところで、ゴツい影がヌゥッと立ち上がる。

「……デルガ・ドル……ドワーフ…Lv3……【山脈(ハルバート)】」

小さい、しかしそれでいて低く響くような声が髭もじゃに隠れた口から発せられた。
デルガさんはこのファミリアのなかで最年長の三八歳。そして酒豪である。


「それじゃぁ、次はオレっちっすね!!」

と、そのとなりで小さな影が跳ねた。
小人族(パルゥム)のアルドアさんだ。
立つと顔だけしか見えなくなるため、椅子の上で立ち上がったのだ。
……どうでもはよくないが、パディさんがすごい形相で睨んじゃってるよ…

「オレっちはアルドア・ウォルドっす! 小人族(パルゥム)のLv3で、二つ名は【小さき巨人(リトルギガント)】っすよ! スウィード、歓迎するっす!」

「あ、ありがとうございます……」

アルドアさんの勢いに押されぎみになっているスウィードは苦笑いで握手をしていた。

「ほら、式。次はあんたよ。 目標にされてんだからしっかりやりなさい」

「ちょ、リリアさん。急かさないで下さいよ」

残った団員は俺だけなので皆と同じように立ち上がる。
バルドル様も含めた視線がこちらを向いた。うむ、こりゃ少し緊張するな。

「……ナンバ・式。ヒューマンのLv5。二つ名は……と、【秘剣(トランプ)】…」

いまだになれない自身の二つ名を、顔を赤らめながら呟いた。
だが、これはまだましな方だ。零細だった頃、Lv2になったときの二つ名なんて……お、思い出したくもない!!あれは黒歴史である!


「じゃ、締めは僕だ」

いつの間にか踊るのを止めていた神様は若干赤くなった顔でスウィード君の前に進み出る。

「あら、無意識に踊ってんだよな?」

「らしいです」

「そうだよ」

「……」コクリ

「っすね!」

「そうよ」

「治らないんだよなぁ…」

「き、君達! 人が気にしてることを言わないで!?」

こちらに振り向いて騒いだバルドル様は、コホンッと場を整えるように咳払いをした。

「スウィード・バルクマン。ようこそ、我がファミリアへ。君も大事な眷族(家族)だよ」

「っ! はいっ!」

ありがとうございます!と頭を下げるスウィードを見て、俺は五年前を思い出す。
昔の俺とスウィードが重なって見えた

「五年のこと?」

「……はい」

隣に歩み寄ってきたハーチェスさんに頷いた。

「思えば、式が来てから変わっていった。感謝するよ」

「……素直に受け取っときます」

「ハハ、そうか」

それだけ聞いたハーチェスさんは手をパンパンと叩く。

「さ、今日はもう終わり! 明日はまたダンジョンだから、しっかり寝るように!」

その合図で、皆が自室へと戻っていく。
明日はまたダンジョンだ。しっかり寝ないとな。




 
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