倭寇
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
5部分:第五章
第五章
「この倭寇の力は大きく削がれる」
「日本に退くしかなくなる」
「そうなるというのですね」
「今我々を最も悩ませているその倭寇は」
「我が明朝を脅かさなくなりますね」
「そうだ。だからこそだ」
何としてもという口調になった。戚継光のそれがだ。
「わかったな。討伐するぞ」
「はい、しかしです」
「この場所を通るのは」
「かなり危険ですね」
幕僚達は周囲を見回す。彼等の前後左右は複雑な突起状になっている海岸だ。何かが身を隠すにはだ。まさに絶好の場所であった。
そこを進みながらだ。彼等は話すのである。
「何時倭寇が来てもです」
「どうなるかわかりません」
「何時襲われてもです」
「危険です」
「そうだな。しかしだ」
戚継光は腕を組んでだ。己の幕僚達に話す。
前を見据えてだ。そうして言うのだ。
「手筈通りだ」
「その通りにすればですね」
「討伐できる」
「そうなのですね」
「物事がわかればだ」
どうかとも言う戚継光だった。
「対処は容易い」
「何もかもがわかれば」
「そうなのですね」
「そうだ。だからあえてここに入った」
そうだというのだ。
「こうしてな。さて」
「はい、何時来てもですね」
「用意は出来ています」
「兵達に伝えよ」
戚継光は前を見据えてだ。腕を組んだ姿勢で告げた。
「敵が来ればだ」
「はい、その時はですね」
「一気にですね」
「そうせよと」
「そうする。いいな」
こう話しながらだ。戚継光率いる討伐軍の船団は先に進んでいく。そしてだ。
不意にだ。明の兵達はだ。
休んだ。動きを止めたのだ。
それを受けてかだ。四方八方からだ。
倭寇の軍勢が出て来た。どの者達もだ。
鉄砲を持ちそして刀を持っている。日本の鎧を着ている。身軽に動けながら頑丈なだ。実に厄介なその鎧を着ている彼等がだ。
小舟を器用に操りだ。出て来たのだ。その彼等に対してだ。
戚継光はだ。己の軍に指示を出したのだった。
「いいか」
「はい」
「あれですね」
「今こそあれをですね」
「前に進む」
そうするというのである。そしてだ。
実際に前に出てだ。そのうえで兵達に命じるのだった。
「鳥銃を一斉に放て!」
「はい!」
「わかりました!」
兵達はそれに従いだ。すぐにだ。
前にいる倭寇の軍にだ。鳥銃を一斉に放ちだ。それからだった。
怯む彼等に突っ込みだ。あの竹をそのまま使った槍でだ。
倭寇達を蹴散らしていく。そこからさらに船団を動かしてだ。
戸惑う倭寇達を攻めていく。今度はだ。
ページ上へ戻る