魔界転生(幕末編)
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第3話 転生前
第3話 転生前
武市は天草四朗と名乗った男の指であろうものを見つめて自問自答を繰り返した。
(私にはやり残したことがあるのだろうか?私はまだ生きたいのだろうか?)
武市の左手の各々の指には地・水・風・火・空が刻まれていた。
武市はすぐにそれを見た時に悟っていた。
自分のこの指を切り取って転生させたい人物に飲ませれば共に魔界より転生させられると言うことを。
だからこその自問自答だった。
(否、私は生きたい。私は陛下のため幕府のために起った。それがどうだ。明日をもしれぬ命と成り果てている。こんな理不尽があろうものか!!)
武市の心には怒りの炎がめらめらと燃え初めていた。
(たとえ、悪魔に魂を売ろうとも生きてやる。生きてこの日の本に災いを)
武市は四朗の指を粉末にし始めた。
処刑の日まであと数日だった。
武市には切腹が命じられていた。
以蔵などは打ち首にされさらし首となるお白洲があったと聞く。それからすれば武士としての本懐といえるだろう。
武市は面会に来た妻の富子に別れを告げた。その際に自分の亡骸は誰にも見せないようにと伝えておいた。
(準備をするか)
武市は牢番が持ってきた質素な食事に粉末を振りかけた。
(さて、私の命はあとわずか。が、必ず転生してみせる。が、私の他に誰を転生させるかだが)
食事を前にして武市は腕を組みんだ。
(まずはあの裏切り者だが手足として使える男、岡田以蔵。きゃつを転生させよう)
だが、どうやって自らの指を飲ませるかだ。
毒饅頭を使った以蔵暗殺は1度失敗している。たぶん、差し入れの食物には警戒しているに違いなかった。では、どうする。
そうだ。女を当てがおう。牢獄中で難しいかもしれないが御上にも情けというものがあるはず。
粉末を飲ませた女と交ぐ合わせるのだ。きゃつは女好きだからな。
クククと武市は笑った
後書き
この小説はあるサイトで連載していたものなのです。
読み返してみると、山田風太郎先生よりも映画の方に近いと感じ始めました。
今はこちらをメインにしてあるサイトの方は連載中止にしてしまいました。
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