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転生赤龍帝のマフィアな生活

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五十一話:母は強し

 
前書き
今回は短めです。
それではどうぞ。 

 

 イタリアに着いた俺達は久しぶりに俺の実家であるボンゴレ本部の屋敷に来ていた。いや、俺からしたら帰って来たという方が正しいのか? まあ、なんでもいいか。頭を切り替えてから女性陣を率いて屋敷内に入る。

「お帰りなさいませ、お坊ちゃま。お嬢様方」
「久しぶりだな。セバスチャン」
「お元気なようで何よりです。お荷物をお持ちしましょう」

 セバスチャンと他の執事やメイドに荷物を持たせて俺達の部屋に運ばせる。ミランダもここで俺達から離れて本来の仕事に戻る。それにしても……セバスチャンがワープするように消えては現れて、消えては現れてを繰り返しながら荷物を運んでいたのは気のせいか? 時々黒い炎が見えたような気もするんだが……まあ、セバスチャンだから気にしなくてもいいだろう。そう結論付けて大広間に行こうとしたところでセバスチャンに呼び止められる。

「お坊ちゃま、奥方様がお待ちしています。お坊ちゃまの将来についてお嬢様方も含めてお話があるようです」
「……果てしなく嫌な予感がしやがる」

 俺は早くも痛みという名の警報を発し始めた胃を治めるために胃薬を呑み込みながら母さんが待つ部屋へと重い足を進めていくのだった。そして、部屋の前で意を決してドアを四回ほどノックする。すると中から随分と久しぶりに聞く母さんの声が聞こえてくる。

 特に怒った風の声ではないので若干安心しながら女性陣を引きつれて部屋に入る。そう言えば、父さんは結局どこにいるんだ? 手紙で一方的に連絡が来る以外で最近は音信不通なんだよな。まあ、俺に対して無理難題をふっかけてくる元気はあるみてえだから心配はしてねえけどな。

「お帰りなさい、一誠ちゃん、クロームちゃん。それとようこそ、一誠ちゃんのお嫁さん候補さん達」
「ブホァ!?」

 母さんのふざけた台詞のせいで思わず、変な声で吹き出してしまう。そんな俺を見て母さんは無駄に上品に笑い、後ろの女性陣からは凄まじいレベルのプレッシャーを掛けられる。まるで、『あなたには私が絶対必要なのよ』とでも言うような視線に俺の胃がゴリゴリと音を立てて削られていく。まさかこんな視線をイリナ以外からも受ける日が来るとは思っていなかった。……ちくしょう、胃が…胃に穴が空く。

(イッセー様と感覚をリンク出来れば、常に胃の痛みを味わえる可能性が?)
(ッ!? そうです! なぜ、私達はそんな重要なことを見落としていたのでしょうか! 一誠様、すぐにでもリンクの準備を!)
(なんで、てめえらを喜ばす真似をしなくちゃなんねえんだよ!)

 痛みを全て変態共に与えられるのなら考えるが、ただ単に感覚の共有だけだったら俺に対して一切のメリットがねえだろ。どちらかというと、変態共の狂喜乱舞のせいでさらに胃が痛むはめになってさらに変態共が喜んで、また俺の胃がダメージを受けての無限ループが始まっちまうだろうが。それだけは何としてでも阻止する!

「こ、こいつらはそんなのじゃねえよ、家族だ!」
「つまり、全員共、手をつけた後ってこと? 我が息子ながら恐れ入るわ」
「そう言う意味じゃねえよ!」
「そう言えばこの前、送られてきた写真に写っていた孫の名前を考えたんだけど」
「頼むから話を聞いてください!」

 少し泣きそうになりながら母さんに詰め寄る。ダメだ、いつ通りにこっちの話なんて少したりとも聞きやしない。というか、ミランダの奴『子作り爆弾』の写真、やっぱり送ってやがったのか。いつもいつも、余計な事ばかりしやがって。あれで仕事は完璧にこなすから文句も言い辛いというのが難点だ。

「ダメよ、一誠ちゃん。そんなに詰め寄られたら……ママはパパの物なんだから」
「最近、本気で母さんの遺伝子を色濃く受け継がなくてよかったと思う事があるんだが」

 俺がボンゴレファミリーでもボスでもなかったらこんな母さんを持った時点で確実に家出している自信がある。ため息交じりに考えていると母さんが何を思ったのかニコニコとしながら俺を抱きしめて来る。

「もう、全然連絡とらないからママ心配したのよ。クロームちゃんは毎日メールをくれるのに一誠ちゃんは何もしないんだから」
「……ごめん、俺が悪かった。今度からは連絡するよ」

 抱きしめられたせいで母親の温もりが直に感じられて、怒るのを諦めながら俺も抱きしめ返す。何だかんだいって俺はこの人の息子でこの人の事を母親として愛しているんだろうなと口には絶対しないことを内心でひっそりと考える。何やら、カストカゲが『相棒がデレた…だと?』などと言って混乱しているので後で目覚ましの意味合いも込めて足の小指に隕石を落としてやろう。一発で目が覚めること請負だ。

「今度からはちゃんと連絡をしなさい」
「……わかった。一ケ月に一回は連絡する」

 その瞬間なぜか俺を拘束する腕に力が籠った。そして、まるで万力の力を徐々に上げていくかのように締め付けていく。

「長いわ。ママをウサギちゃんみたいに死なす気?」
「いや、ウサギは寂しくても死なな―――」

 ―――ミシリ、と骨がきしむ音が俺の耳に聞こえてくる。誰の骨の音かだと? 決まっているだろ―――俺だ! 母さんが容赦なく俺をサバ折にしようとして来ている中、必死に動いて母さんの腕の中から脱出しようとするが残念ながらビクともしない。ここで、俺と母さんが唯一似ている点、というか遺伝した部分を教えてやるとしよう。

 別に現実逃避じゃねえからな。まあ、とにかくだ、俺の持って生まれた才能の内、死ぬ気の炎は父さんから遺伝したものだ。そして、母さんから遺伝した物は―――馬鹿げた身体能力だ。俺が人間でありながら人外を容赦なく屠れるのはその身体能力のおかげだ。当然ながら母さんから受け継いだものだから母さんの身体能力も馬鹿げている……俺が本気で馬鹿げていると思うレベルで。

「があああっ!? 死ぬ! 死ぬ! 母さんより俺の方が先に死ぬ!!」
「親より先に死ぬ親不孝なんてママは許さないわ!」
「だったら、離してくれっ!」
「毎日、連絡するって言うまで離さないわ」
「あ? 毎日なんて面倒くさ―――」

 ―――メキャッ!
 人体から聞こえてはいけない音が聞こえ始めてきやがった。やばい、このままだと本気で母親の胸の中で死ぬ息子という悲劇が完成してしまう。背に腹は代えられねえ、面倒だが仕方ねえ。これからは毎日連絡するしかねえ。

「分かった! 毎日連絡するから離してくれ!!」
「ありがとう一誠ちゃん。ママ大好きよ!」

 ―――ボキャッ!
 感動の余りさらに力を込めて抱きしめて来た母さん。それと同時に俺の意識が飛びかける。……この運命からはどうあがいても逃れられなかったのか。そんなことを意識が薄れて来た頭でボンヤリと考え、俺の意識は闇に落ちてい―――

「いい? 良い男は一度掴んだら離さないのが鉄則よ」
「握力をもっと鍛えるわ」
「待て、イリナ。それ以上握力を上げられると俺が死ぬ」
「わ、私も頑張ります!」
「アーシア、お前も十分すぎるだろうが! それといい加減、物理的に離さないという発想から離れろ!」

 いけなかった。何やら俺の寿命を物理的に削りそうな物騒な考えを母さんが女性陣に教えていたのでツッコミを入れるために起き上がる。因みに折れた部分は晴の活性で治療中だ。背骨の損傷が少なかったのが唯一の救いだ。

(ご主人様! なぜ、今のご褒美を私達と共有してくださらなかったのですが!?)
(我々は常にあなたと共いるというのに!)
(誰も居て欲しいなんて一言も言ってねえよ。寧ろ消えろ)

 俺の罵声に対して歓喜の声を上げる変態共を無視しながら俺は変な方向に話がずれていきそうなのを止めに入る。早い所、将来についての話とかいうのを終わらして自分の部屋に籠りたい。引きこもりなんて言うんじゃねえよ。文句があるなら俺と同じ生活を一週間続けてみろ。

 三日目には変態に仲間入りして俺を見て『靴を舐めさせてくださいイイイイイイッ!』とか言ってトルネード土下座をかまして来るようになるぞ。……結局俺にとって悪い事が起こるのには変わらねえな……ああ、胃が痛い。

「で、結局のところ、何の話なんだ、母さん」
「あら、もう話してるじゃない。一誠ちゃんのお嫁さんを決めるのよ」
「まだ、そんな年じゃねえだろうが!」
「家に何人も女の子を住まわしているのに何も起こらないなんてあり得ないでしょ。しっかりと籍を入れれば安心してあんなことやこんなことを楽しめるのよ」
「あんたは息子に何言ってんだ」

 もう、やだこの母親。母親が子供に言う台詞じゃねえよ。第一、それを言うならクロームにも……いや、クロームは誰にも渡さねえぞ。クロームが欲しい奴は俺の決別の一撃(コルポ・ダッディオ)を千発食らって立っていられねえ限りは認めねえ。それと、ドMの変態はそもそも審査対象外だ。

(そんな! なぜですっ!? 千発どころか一万発は耐えてみせるというのに!)
(てめえらには効かねえからに決まってんだろうが!)

 むしろ、褒美になるとか意味が分からねえよ。何で人の大切な妹を無条件どころか報酬付きで変態にやらねえといけねえんだよ。変態にやるぐらいなら俺が責任もって一生面倒見るわ。まあ、変態じゃなくても元々、誰かに渡す気はゼロに等しいんだがな。そんな事を思っているとカストカゲが『シスコン乙』と陰口をたたいてきたので足の小指に隕石を落とすついでに、傷口にデスソースを塗ってやるとしよう。きっと泣いて喜ぶこと間違いないだろう。

「お義母さん、僕がイッセー君のお嫁さんになります!」
「いいえ、お義母様。私が一誠さんの嫁です」
「お兄ちゃんは渡さない…!」
「あらあら、娘がたくさん増えてお母さん嬉しいわ」

 ヴァーリが爆弾発言をしたかと思ったらユニが続き、何故かクロームもその流れに乗って来る。そして、バチバチと火花を散らしながら睨み合いをし始める女性陣。母さんはニコニコと笑いながらそんな様子を眺めるだけで俺がプレッシャーの余りに胃薬を二瓶程開けているのに気づいていない。

 それにしても……いい加減、俺も腹くくらねえとな。……このカオスな空間から逃げる覚悟をな! その後、運良くカスザメからヴァリアーの仕事の電話が入ったのでこれ幸いと逃げ出す俺だった。正し、帰ったら話の続きをしましょうねと母さんにナチュラルに釘を刺された状態でだが……。




~おまけ、ある日の教会~



 ある日の教会、本来であれば希望で満ちていなければならないその場所には絶望が満ち溢れていた。それも全てある人物によるものだった。

「おい、聞いたか!? イリナ様がイタリアに帰ってきてしまったらしいぞ!」
「嘘…だろ? また、あの組手地獄が始まるってのかよ!」
防波堤(ゼノヴィア)もいない今、どうしたらいいのですか!? ああ、神よ!」
「あの……誰なんですか、それ?」

 無知な新人がイリナについて聞くと、その恐ろしさを知る先輩は罪とは無知の事だと言わんばかりに怒鳴りつける。

「バッキャロー! 人類の最終兵器(リーサルウェポン)イリナ様を知らねえのか!」
「最強の悪魔祓い(エクソシスト)であるデュリオさんをパシリにしてミカエル様にまでバイブレーション機能を搭載させたお方だぞ。ああ……思い出すだけで身震いが」
「他の熾天使(セラフ)様が地上に降りてこられないのもイリナ様を恐れてというのがもっぱらの噂だ」
「ぜ、絶対に逆らってはいけない人だというのは分かりました」

 この日、新人は絶対に逆らってはいけない人物を知ったのであった。

 
 

 
後書き
ハーレム系の小説を書いておいてなんですけど個別エンドで終わらせたいと思い始めた今日この頃。
まあ、まだまだ変態という名のハーレムは増えそうですけど(白目) 
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