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ワールド・エゴ 〜世界を創りし者〜

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parallel world7.5-『失われた13番目』-

『光闇』のアルマは、その闇獣の死体の山の頂上で座り込んでいた。

『 』が放ったこの獣達は、一体一体はそこまで強くない。
 だが、それが全世界一つ一つに、万単位で押し寄せて来るのだ。

 だから、できる限りアルマ『達』は、その討伐に当たっていた。
 全ての始まりたる『真偽』のアルマはもう居ない。『力』のアルマも、かの闇神に接触するため出払っている。
『喰らう』アルマはまだこの世に現れていない。実質、数億数兆、いや、それよりも圧倒的に多くある『平行世界』に放たれた闇獣達を、たった9人で相手をしなければならない。

 --楽勝にも程があった。

 1人がその力を振るえば、たちまち闇獣は死に絶え、死体の山が築き上げられていく。
 それが9人。あと程度の軍勢、コンマ一秒掛けずに瞬殺できる。

 そして今、比較的その軍勢の勢いが収まった。
 __そう思った時だった。

『光闇』のアルマの目の前に、『ソレ』が現れたのは。

「こんにちは」

「……1番目から12番目に該当する力は無い。誰だ、お前は」

 外見だけ見れば、アルマのそれで間違いは無い。
 しかし、性質が違い過ぎる。

 コイツからは、『何も感じられない。そして、何もかもが感じられる。』

「誰だとは心外だね。僕も君達と同じ『アルマ』だよ」

「……確かに『アルマ』は全員チートだが、流石にお前レベルの奴は居ないぞ」

 キッと、『そいつ』の眼を睨みつける。

 闇が溢れ出し、光が溢れ出す。

 混ざり合う事の無い二つの『それ』は混じり合い、溶け込み、『そいつ』を飲み込んだ。


 ----『光闇』のアルマは、そんな夢を見た。

「……ッ‼︎」

「どうしたのかな?悪い夢でも見た?」

 目の前では変わらず、『そいつ』が面白がるように立っている。

「というのは冗談。君と戦うつもりは無いよ」

「俺に、それを信用しろと?」

「まあ、無理だろうね。なんたって、居るはずのない『自分』が居るんだから」

 あいも変わらず罵倒するような笑みが飛んでくる。

「いや何、危害を加えるつもりがないのは本当だ。ちょっと面白そうだから見に来ただけだ」

『それ』は笑いながら告げる。

「君達は頑張っているようだね。適度に狩っておく事で、『主人公達』の邪魔をさせないでいる。
『閲覧者』もあまりそういう結果は望まないだろうしね」

「主人公……閲覧者……?」

 意味が分からない。なぜそんな小説のような言い回しをするのか。

「君は分からなくていい。この『物語』でこれを知るのは僕のような『作者』で十分だからね」

 ヘラヘラと笑う。『光闇』の元祖たる『真偽』のアルマと似たその人を小馬鹿にしたような性格は、少しとはいえ『光闇』のアルマもイラついた。

「……で?こっちは忙しいんだ。用件を話せ」

「うん?ああ、いや、特に用件は無いよ?」

「……はぁ?」

 ニコニコ、或いはニヤニヤといった擬音が似合いそうな笑顔で、何のためらいも無く『そいつ』は続ける。

「言ったろ?ちょっと興味が出ただけ。それ以上でもそれ以下でも無い。
 僕は傍観を決め込むよ、あまりにも場違いな奴が来ない限りはね」

 ニッコリと、憎たらしいを通り越して逆に清々しくなるような笑顔で『そいつ』は笑った。

「さて、残りの『登場人物』はまだ多いね、『彼』に早く書かせないと」

 またもや意味不明な事を呟き、『そいつ』は振り向く。

 その体は隙だらけだったが、何故か体がピクリとも動かない。
 止められている感覚では無い。自ら止めているのだ。
 脳が。
 筋肉が。
 骨が。
 神経が。
 全て『そいつ』の支配下に置かれている。

「そう怖い顔をしないで。言っただろ?介入する気はないよ」

「……逆に俺達が止めたい事を止めてくれりゃ、文句は無いんだが」

「そんな事しちゃ面白く無い。一瞬で片がつく。『閲覧者』も興醒めになるしね……っと」

 軽く首を傾けこちらを向き、『そいつ』は締めくくるように言った。

「引き止めて悪かったね。引き続き作業を続けてくれ給え。因みに、僕の名はさっき言った通り、
『アルヴァート・ルーク・マレイド』だ。まあ他にも『ルーシクス』だの『アルマ』だの色々あるけど、
 一番特殊な名で言えば--『絶炎』--かな?」

 全てを。総てを見透かしたような瞳が、『光闇』のアルマを映す。

「それじゃあね、『4番目(光闇)』のアルマ君。多分憶えていないだろうけど、『13番目(紡ぎ手)』として、精々応援させて貰うよ」

 そして、『それ』は消えた。

 拙い。せめて、『3番』から『11番』には伝えなくては。あの『■■■』の存在を。

 --『■■■』……?

 待て、奴は何と言っていた?何と名乗っていた?

 --奴?奴とはなんだ?

 --そもそも……

 --『何かあった訳でも無いのに』、何故こんなにも自分は焦っている?

 そんな疑問は誰も答える事無く、そして直ぐに忘れられた。




















 世界転生まで、あと■■時間。
 《滅びの依り代》の完成まで、あと■■時間。
 
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