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『ある転生者の奮闘記』

作者:零戦
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TURN24





「司令長官、スエズ星域の占領を確認しました」

 副官が俺に報告する。

「おぅ」

 俺は頷いて報告書を受け取り、先程入れられたコーヒーを口に付ける。

「スエズ星域の治安維持後はマダラスカル、南アフリカにでも攻めこむかな……」

 俺はそう呟いた。

 上手くいけるといいけどな~。ルートを結ぶ前にCOREが反乱するかもしれんしな。

「まぁいずれはガメリカも滅ぶやろな……」

 流石に全員を助ける事は出来んな。それは仕方ない。

「取りあえずは計画通りに進めるか」

 俺はそう言って残りの仕事に取り掛かった。



 そしてそれは遂に起きたのである。



――主星ワシントン――

『――ガメリカの皆さん、共和国大統領フランク・ルーズです。我がガメリカはこの大戦において手痛い敗北を喫してきました。全ての責任は大統領であり、軍の最高司令官である私にあります。しかし……我々は敗北の日々と決別しました。我々にはCOREがあります。強く正しいガメリカの象徴……』

 演説場でヒートアップする数万の聴衆を制し、フランク・ルーズ大統領は爽快な笑顔を振り撒いていた。

『それでは人工知能の開発という歴史的偉業を成し遂げた偉大な人物を……御紹介しましょうッ!! ガメリカの誇る天才科学者、マイク・マンハッタン博士です』

 ルーズ大統領の言葉と共にマンハッタンが登壇した。

『ウワアァァァァァァーーーッ!!』

 数万の聴衆が歓喜をし、マンハッタンは愛想よく手を振る。

『御紹介に与りました私がマイク・マンハッタン……COREの産みの親です。私はCOREの基礎理論を発想した時から成功する予感をしていました。そう、科学者としての勝利をですッ!! COREは多くの勝利をガメリカにもたらしました。そして多くの兵士の命を救った。もうガメリカの若者が命を危険にさらす古い戦争は終わりました。我々がコーラを飲みながらフットボールの試合に熱中している間に勝利は自動的(オートマチック)に訪れます。COREがッ!! いいえガメリカがッ!! 戦争をッ!! 根本からッ!! 変えたのですッ!! ガメリカに栄光をッ!! 自由を……そして勝利をッ!!』

『自由と勝利』

 マンハッタンの言葉を群衆は何度も繰り返して叫んでいる。

 そして再びルーズ大統領にマイクが移る。

『もはや日本軍など脅威ではないッ!! タイプ・ナガトは日本の墓標になるでしょうッ!! 私は此処で発表します。この若きマンハッタン氏を、大変異例ではありますが国防長官に任命しますッ!!』

『ワアァァァァァーーーッ!!!』

 群衆は再び歓喜の声をあげたのである。



「いいのかなハンナ? 戦争に勝ったわけでもないのにこんな盛大なセレモニーをして……」

 演説場の袖で若草会のクー・ロスチャとハンナ・ロックが話をしていた。

「COREに太刀打ち出来る敵はいない」

 ハンナはそう呟いた。

「イーグル・ダグラスが訴えたガメリカ一極体制はCOREによって実現する。あの男、本当に優秀だったわね」

 選挙中にイーグル・ダグラスはガメリカ一極体制を訴えていた。それがCOREで実現しようとしていたのだ。

「この演説はオープンチャンネルで全宇宙に発信している。大統領選挙がらみでCOREの正体を公にするしかなかったけど。手の内を明かしたからには最大限のアピールする。COREは無敵だと喧伝することで敵の戦意を削げる」

 ハンナ・ロックは未来を思考していた。

「趣旨は分かるよ……ところでキャロルは?」

 今のところキャロル・キリングは統合軍司令官であったが、この軍事式典にはいなかった。

「あの子はCOREが嫌いみたいなの。関連するイベントは出たくないのよ」

「COREの恩恵を一番受けるのはキリング財閥のはずなのに……」

「個人的な嗜好の問題じゃないの」

 クーの言葉にハンナはそう言った。

「私……キャロルが最近、若草会で浮いているのが気になってて。落ち込んでいるんじゃないかな? こんな時こそ支えてあげたい」

「クーは優しいのね」

 ハンナはクーを抱いて頬を撫でた。

 そして異変が起きた。

 突然、演説場のスピーカーからハウリングが起きた。

「何だッ!! これはたまらん。スピーカーを止めろッ!!」

 ルーズ大統領が叫んでいる。

 するとハウリングは収まり、音楽が聞こえてきた。

『happybirthday♪』

 軍事式典の場には相応しくないメロディが流れ出す。

「何だこれ……僕のIDを受け付けない? 誰だ書き換えたのはッ!!」

 そんな時に壇上に一体のCOREが上がる。直ぐに大統領の護衛が駆けつけた。

「ナンバー4101ッ!! お前の警備エリアは此処じゃないぞッ!!」

「オレハ4101ジャナイ」

「何? お前の認識番号だッ!!」

「オレハ……俺は『人間だ』ッ!!」

 COREは護衛の首を掴み、持ち上げた。

「な、何をッ!? 放せ……」

「happybirthday」

 バキィッ!! と首の骨が折れた。護衛の四肢は力なく垂れ下がる。

「し……死ん」

『ウワアァァァァァァーーーッ!!!』

 スピーカーを通してルーズ大統領が叫ぶ声がパニックの引き金となった。

「そ、そんな馬鹿な……」

「よぅマイク・マンハッタン。『懺悔の言葉はないかい』」

「ッ!? お前は……」

 マンハッタンの表情が驚愕に変わる。

「ありがとうマンハッタン博士。こんな素晴らしい擬体(ボディ)をくれて。お前は俺の天使だな。だから恩返しだ、お前は殺さずに仲間(CORE)にしてやる」

 COREは血で濡れた手を顔に赤い線を引いた。それは二本、縦に。

「〈賢い鼠〉……」

 それはガメリカで有名な犯罪人だった。

「嫌だァァァーーーッ!!」

「喜べよマンハッタン。俺が殺したのは千人ぽっちだ。だがお前が作ったCOREは百億を殺すだろう。マイク・マンハッタンはガメリカ史上最悪の悪魔になった」

 CORE――リンカーン=イレブンゴーストは笑う。

「さて、大統領閣下……ん?」

 フランク・ルーズ大統領の心臓は既に停止していたのであった。






 
 

 
後書き
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