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リリなのinボクらの太陽サーガ

作者:海底
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真相

 
前書き
難産な回でした。
説明寄りの回。 

 
11年前、とある管理外世界で闇の書が覚醒した。目覚めたその本と守護騎士は、当然管理局に狙われる事となり、守護騎士達は幾度も交戦した。彼女達が戦っている事も何も知らずに願いを叶えると言われて主が求めたのは、まだ幼い娘の健やかな成長と幸せ。しかしその想いは、彼らが知らなかった真実によってあっけなく撃ち砕かれるのを、その時は誰も想像だにしなかった。
ある日、彼らは闇の書を完成させた。数多の妨害を乗り越えて……否、管理局によってそう思わせるように仕組まれていた。奇しくも未来でグレアム達が計画したように、主と守護騎士を取り込ませて闇の書を完成させる事で、当時の管理局の計画が次の段階へ移行する。
覚醒時に生じる隙を突いて封印魔法を使用、それが管理局の目的だった。当初の計画は予定通り上手く行き、後は虚数空間と呼ばれる場所に投棄することで闇の書事件の終焉を迎えさせる。転生機能も虚数空間では機能しない、そう考えていた管理局にとって、計画の成就は闇の書事件が二度と起こらなくなる、そういう手筈だった。だがそのはずは、封印を打ち破った闇の書の暴走によって狂いが生じる。結果的に多数の局員が負傷したものの、戦艦一隻と一人の局員の殉職によって、その事件は一旦の終結を見せた。
後に闇の書は地球の八神はやての手元で転生するのだが、それは“次”の話だ。“前”の件で、管理局は三々五々、あらゆる場所に人を送っては事件の謝罪や賠償、後始末をしなければならなかった。その中には当然、闇の書の主の親族に対する中傷などもあった。

「この子の母親は、突然夫を失った挙句、被害者一同の行き過ぎた中傷や暴挙によって、命を落としてしまった。当時まだ4歳と幼いこの子を残してね……」

「やり過ぎた連中は治安組織の一員としてちゃんと逮捕したけど、当時の私達も彼らの言い分は理解出来たのよ。クロノとリンディを残して逝ったクライドの件があったから、どうしても彼女達の擁護はあまり気が進まなかった。闇の書に対する憎しみに、私達の心は飲み込まれていた。だから両親を失ったこの子は、誰も引き取ろうとも、育てようともしなかったわ。私達でさえも、近付く気にすらならなかった」

「この子を引き取るという事は、闇の書の主だった父親と向き合わなければならない。でも次元世界では誰もそれをする気にはならなかった。皆、闇の書に関わる者全てを憎んでいたんだ。だからある日、突然この子が姿を消した時、誰も探そうとも心配に思う事も無く、むしろ厄介払いが出来たと思っていた。法を司る管理局さえもね」

「でも監視カメラの映像から、この子を連れて行った人間は判明していたの。それはアレクトロ社を翻意にしていた局員だったわ。そこからアレクトロ社に彼女が内密に匿われたという所までは知っていたんだけど……わざわざ見つけて助け出そうと思えなかった」

「……知っていて、見捨てたのか? この子が助けを求めているのを見ていて……おまえ達は見殺しにしたのか?」

「うん………この子に罪はない、いや母親も、もっと言えば父親にだって本当は罪は無かった。私達もそれくらいには気づいていたさ……この子の家族もまた、闇の書に狂わされたんだって。だけど理屈で納得が出来なかった。見なかった事にして、自分を慰めていたんだ。その結果、この子が更に苦しむとわかってて……!」

「ヤガミを犠牲にする計画も心が痛んだけど、既に一人の少女を見殺しにした私達はもう止まれなかった。全ての元凶だった闇の書さえ無くなれば、きっと納得してくれると思い込んで、最後まで推し進めるつもりだった。結局あなたが止めたからこの計画はしなくて済んだけど、代わりに私達にはやらなくてはならない事を思い出した」

「それが、おまえ達がここに潜入した理由か。言わせてもらうが今更行動を起こすとは、わかってるだろうがあまりに遅すぎる。マキナの命は、このままでは明日の夕刻に尽きるんだぞ? 奴らの研究に散々利用されて、挙句の果てに使い捨てのように殺されるんだぞ?」

もう、何というか……あまりにも呆れ果てて物が言えない。被害者として加害者の家族に思う所があるのは俺だって想像できる。しかしな……これは無いだろう。当時は4歳だったと? それで実験体となる日々を送る事になったと? いくら彼女が加害者の家族とはいえ、やり過ぎにも程がある。それに加害者にされているマキナの父エックスも、実際にこうなる事を望んでいたわけでもない。物事が全てが悪い方向で成立してしまっている、それが11年前の闇の書事件の結末か……。
しかし……俺も似た境遇で育ったからわかる。マキナは俺と同じだ。俺と同じく、“愛を注がれず道具として育った子供”だ。それに現在15歳でフェイト達と同じくらいの見た目という事は、それだけマキナは成長に必要な栄養を与えられなかった環境に居たと考えられる。
虐待以上の事をしでかしたアレクトロ社にも罪はあるが、そんな環境に彼女を追い立てた連中もまた同罪だ。被害者だという“免罪符”は通じない、自分たちも加害者だという事を理解するべきだ。

周波数140.85からCALL。

『11年前の闇の書事件に関しては私もよく存じていなかったので、こういう事実があったとは知りませんでした』

「そもそもこちら側に来るどころか、あの旅すらもしていない時期だからな。違う世界の出来事なのだからお互いに知らなくて当然だ」

『そうですが……マキナ・ソレノイドの奪われた時間は決して戻る事はありませんわ。知らなくても早々に助けるべき存在だったのに……気付けなかった私達は、やはり無力ですね』

「エレン、そう決めつけるのはまだ早い。マキナはまだ助けられる。明日の夕刻までにSEEDを摘出すれば、彼女は命を落とさずに済む」

『ええ、必要なのは精密な手術を行える技術を持つ医者と設備ですね。ただマキナさんは闇の書の先代主の娘、次元世界の普通の医者が手術を行ってくれるかと言われると、誠心誠意頼めばやってくれるとは思いますが、やはり拒否される不安が残りますわ……』

「患者を区別しないはずの医者が拒否する程とは、闇の書の悪名はそこまで酷いのか?」

『世紀末世界の人間が魔女やイモータルに対して抱いている認識と大体同じものだと言えば、サバタならよく伝わりますね?』

「なるほど、それは確かに不安にもなるな……。しかし次元世界でも随一の精密手術の技術があり、闇の書の関係者だろうと分け隔てなく接する事の出来る医者か……この話を聞いた後では、次元世界にそんな人間がいるとは思えなくなってしまうな……」

『恐らく管理世界では、手術をしてくれる医者がいるとは望めませんわ。しかし管理外世界にも、手術に必要な技量がある医者がごく少数いるとは思いますが、今から探して見つけられるかどうか……』

『……湖の騎士』

『え、クロノ? 湖の騎士って?』

『フェイトは知らないでしょうけど、闇の書の守護騎士達はそれぞれの分野で次元世界随一の技量を持っているのよ。その中で湖の騎士という称号で呼ばれる騎士は、回復魔法のスペシャリストらしいわ。アリシアを蘇生する方法を探していた頃、願いを叶えると言われる闇の書に関して調べた事があるから、この事を覚えていたの』

『確かに湖の騎士なら、心臓の傍にあるSEEDも摘出できるね。医者としての実力なら問題ないだろうさ』

『それじゃあママ、マキナさんを助けるには湖の騎士を探さなければならないってコト? でもその人って闇の書の守護騎士なんでしょ? 頼んでも力を貸してくれるのかなぁ……』

『そもそも本当に湖の騎士が現れていたら、即ちそれは闇の書が覚醒している事になる。管理局としては闇の書は見つけ次第対処しなければならない程の重要案件なんだ。過去幾度も敵対してきたのに、彼らが協力してくれるとは思えない……』

クロノはああ言ってるが、湖の騎士シャマルの所在を知る俺は俺で内心複雑な思いだった。俺が元々ミッドチルダに来たのは、闇の書の主となったはやてやヴォルケンリッターの連中を守るため。しかしマキナを助けるには、彼女達の所在をグレアム以外の連中に公にしなければならなくなる。いくら偽物だと言い張った所で、この手術を成功させられる程の技術を持った医者は限りなく少ないのだから、手術の光景を見れば彼女達が本物の闇の書の守護騎士達だとバレてしまう。それは彼女達に対する裏切りだ……。

いや……待てよ? エレンなら、俺の思惑に気付いて上手く取り計らってくれるかもしれない。闇の書に刻まれていた呪いや俺がやろうとしていた事も、彼女なら信用して任せられる……いや、彼女しか任せられない。となればエレン達だけが対処できるようにした方が良い。すると俺が話していいラインは……この程度か。

「エレン、さっきの必要な条件を満たす医者に心当たりがある。はやて……俺がこちら側に来て世話になっていた少女の家に、ベテラン以上の技量を持つ医者がいる。戻ったら彼女に協力を要請してみる」

『第97管理外世界、地球の者ですか……必要な機材はラジエルのを使えば事足りるでしょうが、その女性は管理局の機材を扱えるのでしょうか?』

「そこは信じるしかない。しかし……俺の知る限りでは、彼女しか条件を満たす医者がいないんだ。彼女も色々事情持ちだが……おまえもいてくれるなら多分話を聞いてくれる」

『……なるほど、了解です。しかし……ラジエルは今補修作業中で、任務を終えた頃でも恐らく出航できません。この問題はどうしましょう?』

「そこは大丈夫だ、地上本部に預けてある俺のバイクを使えば良い。あれは行き先を設定すれば、単独での次元間移動が可能だ。時間もさほどかからないから、この任務を終えてからすぐに向かえば十分余裕はある」

『承知しました。ではこちらは任務が終わり次第、ラジエルの医療設備の準備を整えておきます。サバタはその女性の説得、及び移送を行ってください』

「わかった。だが今は、当初の目的に専念するとしよう」

『ええ、SEED製造機はもう目前です。イエガーが何か仕掛けている可能性もあるので、そこは重々注意して下さい』

「ああ、任務に戻る」

通信切断。色々後始末や問題が増えたのだが、とにかく一つ一つ解決していくしかない。さて……気を取り直して進もうと思ったのだが、俺は今、リーゼ姉妹に真剣な目を向けられているのだが、一体どうしたのだろう?

「サバタ、マキナは私達が守り抜くわ。あなたはまだ目的があるようだけど、私達の目的はこの子だから……せめて任せてくれない?」

「昔も今も迷惑をかけといて言うのも何だけど……信じて。今度こそ、この子は守り切って見せる。あなたの覚悟を見てから、私達はあなたに恥じない姿になりたかった。過去の過ちを償いたいのよ……」

「そうか……リーゼロッテ、リーゼアリア、おまえ達の想いはよくわかった。なら、この先は俺一人で行く。マキナを……任せたぞ」

言い聞かせるように言うと、リーゼ姉妹は真摯な眼差しで頷いた。言葉が話せなくても理解は普通に出来るマキナは、今までの話を聞いて自分の状況を把握したのか、俺の手の平にこう書いてきた。

『マタネ』

自分の未来の事も、この先の危険を心配している事も、それら全てをひっくるめて彼女はこの言葉だけを伝えてきた。話せないからこそ、時間がないからこそ、数少ない単語から彼女の想いの程を計る事が出来る。
“またね”、それは再会を願う言葉。俺は未知の危険を前に、マキナは命の終焉を前にした事で、この言葉には大きな意味が含まれる運びとなった。だから俺は、彼女にこう返した。

「ああ、またな」

それを聞いたマキナは、屈託のない微笑みを浮かべた。

さて……イエガーと言ったか。おまえが今、地下5階でなにをしているか知らないが、落とし前は付けさせてもらうぞ。

・・・・・・・・・・・・・・・・

~~Side of はやて~~

「……よしっ、良い色や。みんな~! 晩御飯できたで~!」

「やったぁ! はやてのから揚げ、ギガウマなんだよな~!」

「こらヴィータ、嬉しいのはわかるが、騎士としてみっともない格好は……」

「まあいいじゃないか、シグナム。たった一日でケミカルウェポン漬けだった私達に主が食事を作って下さったのだから、ありがたく頂こうではないか」

「うむ……盾の守護獣の我でも、出来ればもう二度と手を出したくない料理ばかりだった……」

「み、皆ヒドイ! 私だって皆に元気になってもらおうと、一生懸命料理を作ってたのにぃ~!」

「シャマル、おまえが作ったものは料理とは呼べない。むしろ料理という単語に失礼だ」

「ああ、あたしだってあんな暗黒物質をまた食えって言われたら、ぜってぇ嫌だ」

「シャマル……人には得手不得手があるから、もうおまえはキッチンに入らないでくれ。せっかく助かった私も、あれを口にし続けたら本当に死にかねない……」

「我も正直な所、勘弁してほしい……」

「そ、そんなぁ~! 誰もフォローしてくれないなんて……ぐすん」

「あははは! やっぱこの家の台所は私か、サバタ兄ちゃんがおらんと壊滅的になってまうなぁ~!」

『あ……』

「あはは……はは……、はぁ……いつになったら帰って来るんかなぁ、サバタ兄ちゃん……。見送っといてなんやけど、やっぱ寂しいわ……」

サバタ兄ちゃんが闇の書、いや夜天の魔道書の件でミッドチルダに旅立ってから、丸一日経った。晩御飯の支度が出来て食卓に揃った皆の前で、私はどうしてもここにいない彼の事を考えてしまった。しゃあないやろ、私にこんな温かい心と生活を与えてくれたあの人がこの場におらんと、どうしても心にぽっかり穴が開いたような気持ちになってしまうんや。それでヴォルケンリッターの皆が心配そうな顔をするのを見て、私は慌てて寂しい顔から笑顔へ取り繕った。

「さ、さあはよ食べへんとせっかくのから揚げが冷めてまうわ。ご飯はあったかい内に食べんとな! ほら、いただきます!」

『い、いただきます』

そうやって半ば強引に食事を始める私達やけど……失敗したなぁ、一度彼のことを思うとどんどん気持ちがそっちに流れてしまう。今更自覚したけど私、サバタ兄ちゃんに依存しとる。サバタ兄ちゃんがいないと、心が沈んでしまう。両親以外の人で、初めて“愛”を注いでくれた人。彼の傍にいると、私の心が自然と温かくなる。それはフェイトちゃんも同じだろう。だからこうして離れていると、私はいつもの私でなくなる……半分虚ろな人形になりかけてしまう。

「……はやて」

「あ……ああ、ゴメン、ヴィータ。私は大丈夫や。身体は健康やし、足もリハビリの甲斐あって少しはまともに動かせるようになってきた。な~んも心配いらんで」

「そんな訳ねぇだろ。兄ちゃんが出かけてから、はやてに元気がねぇ事ぐらい、フツーに気付くっての」

「主……私達も主の気持ちは我が身のようにわかります。彼がいないと、この家は中途半端になってしまう。どうしても温かさが欠けてしまうんです。私だって……気づけばいつの間にか彼の安否を考えてしまっています」

「リインフォースもか……やっぱ私らは似た者同士なんやね。というより、サバタ兄ちゃんのおかげで救われた人全員が同じ気持ちなんやろうな」

「そして彼は……我らに静かな生活を与えるためにあらゆる手を尽くし、こうしてミッドチルダに行ってくれた。しかし……本当にそれで良いのだろうかと、我はずっと考えていた」

「ザフィーラも同じ事を考えていたか。騎士として間違った所業をしてきて、確かに私達は苦しんできた。しかし私達が手にかけてきた者達に一切償う事も無く安寧を得てしまって、それでこの先も騎士として胸を張って生きられるのか……誇りある騎士である私達が、罪から逃げるような真似をして暮らせるのか、とな」

「そうね……私達の手には数えきれない人達の血がこびりついている。過去の主の命令もあるとはいえ、犠牲にしてしまった彼らに何も報いる事無く暮らす事なんて、今は良くても次第に罪の意識が積み重なっていくわ。それではきっと、本当の意味で静かな生活を送る事は出来ない」

「みんな………みんなもやっぱり何もせずにいるのは我慢ならへんのやな。うん……それは私も同じ。本当なら過去の主達の罪を、私が背負う必要はないのかもしれへん。せやけど皆と家族としてやっていくには、どうしても闇の書の罪は償わなくてはならないものなんや。色々頑張ってくれたサバタ兄ちゃんには悪いけど、私が闇の書の主で、皆がその守護騎士だってこと、ちゃんと話そう。ちゃんと話して、私達が敵ではない事、色んな人に謝りたいって事、しっかり理解してもらうんや。きっと私や皆は、過去の被害者達から色んな暴言とか言われたりするんやと思う。当然や、許されない事をしたら誰だって怒るもん。でも……罪から目を背けたら、本当の幸せを掴む事なんてできひんのや。私は……今度こそ戦う。あの時のように何も出来ず、見てるだけ、祈るだけはもうイヤなんや。だから戦う……戦って戦って戦い抜いて、罪を清算し続ける。皆……それでも私に付いて来てくれるか?」

問いかけるようにそう言うと、皆はサバタ兄ちゃんのように、フッと笑って立ち上がると私の前で横一列に並んで跪いた。

「我らは夜天の名に集いし守護騎士」

「主のためならば喜んでその身を捧げましょう」

「我らの過去の過ちを主が背負うと仰って、我らが退くなぞあり得ません」

「主が望むならば例え幾星霜、万人に憎まれようとも決して御身の傍を離れる事は無く」

「主の命をあらゆる脅威から守り抜いて見せます」

皆はまるで騎士の宣誓みたいに……いや、騎士の宣誓として私にそう言ってくれた。最初皆が現れた時は、“闇の書の守護騎士”としての宣誓だった。しかしそれはサバタ兄ちゃんが闇の書に取り込まれた事とか、私が取り乱した事もあって上手く成立はしなかった。
だけど今回の宣誓は、“夜天の守護騎士、私だけの騎士”としての宣誓だった。それは何があっても最後まで、私と共に戦い、私と共に生きていくものだった。その生まれ変わった宣誓を私が拒む訳も無く……、

「皆……ありがとう! 改めてこれからよろしくな!」

ぐっと膝に力を込めて車イスから立って、彼女達の手を掴んだ。ここに夜天の魔道書の騎士とその主の間に、新たな誓いが刻まれたのだった。

……そうそう、このやり取りをしていたおかげでご飯が冷めてしまったけど、気持ちを一新したおかげで普通に美味しく食べきったで。ちゅうか昨日から味わってたシャマルのケミカルウェポン飯のせいで、普通の御飯だけで涙が出る程美味く感じたわ~。

そんなこんなで食事を終えて、食器を洗って片付けて落ち着いた所で……結局どうしようか皆で頭を悩ませる事になってしもうた。
いや……な? 償うと決めたんはええんやけど、それやったら管理局の誰かに会う必要があるやん。それに闇の書の守護騎士と主がいきなり出て行って、「私達、これから一生懸命償いま~す!」な~んて宣言しても色々アカンやろ? 要するに償うにしても誤魔化すにしても、結局管理局でちゃんと手続きせなあかんねん。でもあちらさんは闇の書と聞くだけでめっちゃ警戒してくるやろうから、その辺りは信頼出来る人を選ぶ必要があるんやけどな。別に今更ドンパチしたい訳でもあらへんし……でも私らは管理局と明確な繋がりは無いから、こうやってどん詰まりしとんねん。

「しっかし、サバタ兄ちゃんはどうやって繋がりを作ったんやろうなぁ~」

「まぁ、彼の事ですから、いつの間にかそうなっていた可能性が高いと思いますけど」

「真相は大体そんなもんやろうな。私やなのはちゃんも管理局に知り合いはおるけど、いくら通信機があるからってポンポン連絡くれていい訳やないし……リンディさんとか結構偉い立場やからね、忙しいのにあんま邪魔する訳にもいかんやろ?」

「通信機の意味がありませんね、それ。大体あの通信機は兄様が持って行ってるので、今ここにはありませんよ」

「ま、どっちかっちゅうとサバタ兄ちゃんの力の性質上、建前で渡しているだけって感じやったし、実際に使う事は考えとらんかったんちゃう? なのはちゃんのはフェイトちゃんと話すための物やし、あっちは使い道が明確になっとるからええねん」

「ええ。それにしても結局、問題はどう管理局の人と穏便に連絡するか、に戻ってしまいましたね。せっかく気分一新したのに、色々出だしから躓いていますね……」

『はぁ~……』

さっきまでシリアス気味な会話をしとったのに、急に力が抜けるような状況になってしまったから、もうなんか皆してため息が出てしまっとる。こりゃサバタ兄ちゃんが帰って来るまで手つかずかなぁ……。

「……そういや皆って、昔の事とかどれぐらい覚えとるん?」

「恥ずかしながら実の所、私達は過去の主達の顔も覚えていないのです。どんな命令を受けて、どのような事をしてきたのか、それらは霧がかかったようにうろ覚えで、はっきり思い出せないんです。管制人格として中から見てきたリインフォースは覚えているかもしれませんが……」

「流石に私も完璧に覚えている訳では無いのですが……一応、先代までは少々記憶に残っています」

「先代って、私の前の主のこと?」

「はい。思い返せば主はやてと同様に、彼もまた家族思いの人間でした。管理外世界の人間なので闇の書の事も知らず、妻と娘に恵まれた温かい家庭でした」

「ちょい待ち。先代って家庭持ちだったん!? しかも父親だったんか!?」

「ええ、立派な父親でしたよ。突然現れた騎士達の事は当然驚きはしていましたが、時間をかけて家族の輪の中に受け入れてくれました。一時は奥様と騒動が起きましたが、時間をかけて説明して何とか丸く収まりました」

「そりゃあ、夫がいきなりたくさんの女性を連れてきたら妻としてはビックリして当然やなぁ。あんた浮気かっ!? みたいに昼ドラにありそうな騒動があったんやろうね……」

「ふふ……まあ多少ゴタゴタしましたが、結局は娘のおかげで夫婦の絆が深まる結果になりました。要するに惚気です」

「あらま、やっぱ愛は不滅っちゅう訳やね」

「ええ。それで願いを叶えると言われると、彼らはまだ幼い娘の健やかな成長と幸せを願いました。あまりにも健全で微笑ましい願いを騎士達は快く受け入れ、主に気付かれず、人目に付かないように魔力の蒐集を始めました」

「先代……あたし、全然覚えてねぇ。なんでせっかく会えた良い主の事を、あたしは思い出せねぇんだ……」

「ヴィータは蒐集の合間によく主の娘の面倒を見ては、嫌々ながらも本当は嬉しそうに遊んであげてたりしていたな。書の中からよく見ていたが、中々面白かったよ? 照れくさそうに娘と遊んでいた時、それを主と奥様がニヤニヤしながら見ていて、それに気づいて一気に恥ずかしく思ったのか、半泣きで頬が朱に染まったヴィータの顔は今思い出しても傑作ものだった」

「ま、マジか……前のあたしはそんな事をしてたのか……」

「シャマルは奥様と一緒に家事や料理、井戸端会議に参加したりしていたな。それとリビングで二人してグータラしていた事もあって、割と奥様と同じ生活リズムで過ごしていた印象が強いな」

「えぇ~前の私って怠け者だったのぉ~!? あ、主婦みたいな事もしてるわね」

「ザフィーラは先代主の趣味だった家庭菜園を手伝った後、よく日向ぼっこをしていた。守護獣の姿で寝転がっていると、主の娘が傍に来てザフィーラのフサフサした毛皮が気持ち良くてスヤスヤ眠っていたものだ」

「ふむ……傍から見て微笑ましい光景だろうな」

「シグナムは…………あ~うん、色々頑張ってたような……」

「待て!? なんか私だけおざなりじゃないか!? 先代主の所にいた時、私は何をしていたのだ!?」

「シグナム……中には思い出さなくとも良い記憶もあるのだよ」

「なんでそんな憐れむような目で私を見るんだ、リインフォース!? 頼むから覚えてるなら話してくれ!」

「どうしても聞きたいのなら構わないが……シグナムは主の傍に武闘派がいなかった事で、腕試しで誰か強い者はいないのかと各地を出回っては結局見つけられず、トボトボ帰って来る事が多々あった。いやぁ~あれはあまりに哀れな姿だった。戦いの実力が強くとも、相手がいなければ無用の長物になる、を見事に体現していた姿だったなぁ」

「…………」

「ほら、聞かなければ良かっただろう?」

「いや……そうでもない。先代主の周りに害を及ぼせるような者がおらず、平穏に暮らせる場所だったという事がわかったんだ。そう考えれば戦う相手がいないというのも、案外悪くないさ」

じゃあ何で半泣きなん? とはツッコまない。シグナムは自分の中にある何かと戦い、それを乗り越えたんや。外野が変に突っついたりしていいもんやない。

ほんのちょっとした興味から始まった、リインフォースから語られる先代主の家庭や生活。その光景を想像すると心が温かくなるもので、私が望んでいた家族の愛が溢れていたのだという事が伝わってきた。そして私達もいつかこういう温かさを作り出していきたい、そう思える物だったのだが……先代主の末路はここにいる誰もがわかっていた。

「この幸せを永遠に続かせるために……いや、主の願い通りに娘の健やかな成長と幸せも叶えるために、騎士達は闇の書を完成させた。そして……悪夢と崩壊が始まった。住んでいた家は壊れ、家族は傷つき、土地は荒れ、待ち伏せしていた管理局は主と騎士達を取り込んだ闇の書に極大封印魔法を発動してきた。何らかの方法で先代主は表に出た私と入れ替わり、抵抗する事無く封印魔法の直撃を受けた。だが闇の書は暴走を続けて戦艦一隻を飲み込み、管理局員一人を犠牲にしながらアルカンシェルの直撃を受け、消滅したその代の闇の書は新たな主の下へと転生機能が発動した……」

「その新たな主が、何の因果か私の手元ってことやね……」

「はい。そして先代主の家族がその後、どうなったのかまではわかりません。ただ歴代の主の家族と同様に、家系ごと途絶えてしまった可能性が高いです。……私達は、主はやてと同じような温かさを持っていた先代主と、その家族の幸せを壊してしまったのです。今回、兄様が……闇の書の中身を破壊してくれなかったら、私や騎士達はまたしてもこの幸せを壊してしまい、あまつさえそれを忘却の彼方に追いやってしまっていたかもしれないのです。主はやての事も、下手をすれば全て忘れていたかもしれないのです! もし……もし兄様がいなかったらと思うと……か、身体が震えて止まりません……!」

「リインフォース……大丈夫、もう大丈夫や。皆が幸せを不本意に壊すような事はあらへん。闇の書はサバタ兄ちゃんが夜天の魔道書に戻してくれた、だからこれ以上怖がることなんて無いんや……」

自分の身を抱いて肩を震わせるリインフォースを私は両腕を回して抱き、背中を優しく叩いた。騎士達も過去を覚えていないという事実がどういう意味を持つのか、それを明確に理解した事で私とリインフォースの所に集まってきた。皆を自覚なしに主を殺す手伝いをさせる性質の悪い呪いは……もう無いんや。

「いえ……いえ……! 私は……彼には私の……! あぁ……ぁぁ……!!」

もう彼女達に呪いは無い。なのにリインフォースは何かを悔いるように懺悔の言葉を呟き続けていた。事情を知らない私は、それが歴代の主達に手向けたものだと思っていた。だけどリインフォースが謝罪していた相手が本当は誰だったのか、それを知ったのはまだ先の頃だった……。

・・・・・・・・・・・・・・・・

~~Side of サバタ~~

「これが……SEED製造機」

専用エレベーターに乗って、俺は地下5階に到達した。この空間は施設の地下が島の外を貫いて飛び出している事で、ガラス張りの壁の向こうに氷河が見えた。SEED製造機は部屋の最深部に設置されていて、恐らく製造時に発する熱の冷却に氷河の冷たさを利用しているのだろう。
写真を撮りながら見てみると、SEED製造機は無数のパイプの隙間から蒸気の煙を常時放出しており、それが見た目上で物々しい威圧感を醸し出していた。並の人間なら、ただの機械相手にどうしてここまで怖気が走るのかわからずにいるのだろうが、暗黒の戦士である俺ならわかる。

「この機械の仕組みに……ダークマターが使われている!?」

「その通り……これはある画期的な物質を利用したものなのだよ、暗黒少年」

SEED製造機の影から現れたのは、高級そうな白いスーツに身を包んだ男。アレクトロ社代表取締役にして社長、イエガーその人だった。全てを見下しているかのように獰猛な笑みを浮かべている彼は、余裕粛々な様子でこちらの眼を見てくる。
それより俺は、奴の放った言葉に引っかかりを覚えた。

「画期的な物質だと?」

「そうだ。宇宙を構成する物質であるダークマター、それを有効活用する方法を思い付いてな。そこから私はSEEDの基礎アイデアを思い付いた。SEEDは装着すれば過去に存在した優れた人間の能力を、その者の遺伝子を介してコピーする。だがな、冷静に考えてみろ。いくら次元世界であろうと、ただの科学技術でそんな事が実現できるわけが無いだろう? 人間の遺伝子から読み取れるのは、その人間の個体情報やDNA配列、塩基配列、ヒトゲノムといった遺伝情報ぐらいなものだ。その人間が築き上げてきた能力や技術、ましてや記憶や経験を模倣する事なんてまず不可能、理論上あり得ないのだ」

「だがこれまで俺が会ってきたSEED使用者は、記憶はともかく、能力や経験、技術はほとんど模倣出来ていたように見える。それはどういうカラクリだ?」

「そう、そこが重要なのだ。死者の遺伝子にダークマターを混ぜると、反生命変化を示す。貴様達が俗に言う吸血変異、アンデッド化を科学用語で表したのがこれだ。そして反生命変化した遺伝子は、驚いた事に本来人間が記憶を入力する事は出来ないイントロン下から、ある情報を引き出せるようになる。その情報こそが、遺伝子元の人間の能力と経験、技術といったものを含んでいるのだ。SEEDはその情報を使用者のDNAに上書きして、あたかも死者の能力をコピーしたかのように見せている訳さ」

「………しかし暗黒物質に侵された遺伝子を体内に取り込めば、時間を置いてアンデッド化するのではないか?」

「それは半分正解だ。貴様が戦ってきたFOXHOUNDのSEEDを使った者達はFOXDIEに感染して死ぬ。せっかくシャドーモセスまで行かせて回収してきたというのに、こんな誤算があるとはな……だがそれは仕方ないと割り切るさ。さて、SEEDには首輪の意味で麻薬を仕込んであるが、麻薬があろうが無かろうが、結局使用者を破滅させる事に変わりはない。それは今貴様が言った様に、反生命変化した遺伝子情報もコピーするのだから、使用者の遺伝子も時間をかければ徐々に反生命変化していく。しかし完全に変化する訳でもないから、途中で肉体は全て砂状に朽ちる。つまり、アンデッドになる前に消滅するのだよ」

「そんな代物を……おまえはどういうつもりで作った? どういう形であれ、アンデッド化を促進させる装置を作って、おまえに何の得がある?」

「得ならあるさ。プロジェクトFATEのクローンにSEEDを使えば、無限に強力な兵士を生み出せる。オリジナルにSEEDを使うのは本当に必要な時だけ、それ以外はクローンに全て戦わせれば良い。そしてクローンはどこかの戦場で倒されると、放っておいてもこの性質で朽ちていく。使い捨ての生物兵器、従順で使い勝手の良い強力な手駒、力尽きても証拠は一切残さないエコ仕様、それが私の生み出す“クローンソルジャー”だ。これを“商品”として管理局に売れば、たちまち永久的な収益が手に入る。管理局は魔導師という限りある人材を前線に送る事で、自分たちの権威を示している。しかしこれは貴重な魔導師を使い潰し、自滅に向かう仕組みである不完全なシステムだ。よく言われる管理局の慢性的な人材不足の原因は、ここに集約されていると言っても過言ではない。しかしクローンソルジャーを導入すれば、管理局は魔導師を食い潰さずに済み、戦力は金さえ払えばすぐに補充できる。更にクローンソルジャーの命令権は我が社を最上位と設定しているため、管理局を実質的に支配する事が出来る。そして管理局の……いや、我がアレクトロ社の権威は永久不滅のものとなる!」

「ふざけるな……! クローン達にもそれぞれの命や心、人生がある。おまえ達の勝手な都合や理屈で、それを奪われる訳にはいかない! 人間を道具として使うおまえ達の野望は、ここで壊させてもらう!!」

「そう言われて黙って見守る真似はしないさ。私の計画の成就のためにも暗黒の戦士、全てを知るおまえだけは……ここで私自ら消し去ってやる」

ドクンッ………!

直後、イエガーから人間ではあり得ない程の威圧感が発せられる。あまりのプレッシャーに、奴の周りの空間が歪んで見えるぐらいだ。そしてもう一つ、見逃せない要素があった。奴の肌は寒さすら覚える白色に変色し、目は赤く妖しい色に変化、白いスーツは黒く変色し、髪はまるで二本角のように天へ伸び、口元に鋭い牙が見え、凄まじい濃度の暗黒物質が奴の身体全体から発せられていた。
これだけ特徴的な変化を前にして間違える訳がなかった。イエガーは……!

「ふふ……ククク……フハハハハハ!! 光栄に思えっ!! 私がこの姿を取ったのは実に100年ぶりだぞ、暗黒の戦士ィッ!!!」

「クソッ、イエガー! おまえはヴァンパイアだったのか!!」

「その名は人間としての身分を示す名だ、改めて私の真名を教えてやろう! 私は騒乱のイモータル、ロキ! 銀河意思ダークの命の下、人間社会を欲と闇に陥れる事が使命!! 暗黒少年サバタ、おまえの命はここで私が貰い受けようぞ!!」

そうして俺は、ラタトスクを除いて次元世界で初めて、未知のイモータルと交戦を開始するのだった……。

 
 

 
後書き
オリジナルイモータル・ロキ:イエガー社長の正体。人類に対するアプローチの仕方が直接的ではなく、間接的であるのが特徴。ラタトスクのようにヴァナルガンドを使って直接殲滅といった手段ではない、割と頭脳派のタイプ。今回の話が難産だった主な理由。

なのはvividを見て思った事。
あれ、綺麗なのに何か物足りない……ああ、クロアンの意地汚さが無いんだ。あ~………って染まってる!? 
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