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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico15幸を願う者には福が来る

 
前書き
幸を願う者には福が来る/意:自身だけでなく他者の幸せを、希望を願う者にこそ天は微笑みかけ、その者に福を与える。 

 
†††Sideアインス†††

主はやて達が時空管理局は本局・特別技能捜査課の仕事で家を空けている間、私が家事一般を行う決まりになっている。もちろん私が買って出たことだ。私の後継騎であるリインフォースⅡが生まれ、あの子に私の魔導の全てを与えたことで、私がいま扱える魔法は思念通話のみとなった。単独戦闘もユニゾンも満足に出来なくなった私には、もうこれしか八神家を支えられる術はないから。

「おや、アインスさん。今日は1人かい?」

「あ、はい」

今は買い物途中だ。そして私に声を掛けたのは、私が贔屓にしている肉屋の店主。私はスーパーで買い物をするより、こうして店の者と直接話をしながら買い物をしたいため、少し家より遠いが商店街を訪れることにしている。人と話していると、私は今ここにいると、自分の存在を認識できるから。

(闇の書の終焉からもう半年近く。おそらく私の終わりも近い・・・)

今日は6月4日。そう、私たちの敬い慕う、幼き主である八神はやての誕生日。私たちが未だ“闇の書”と称されていた頃、主はやてとお会い出来たあの日だ。もう1年と経ったのだな。

「それで今日はどうするかい? どれも新鮮、どれも美味! 当店自慢の肉ばかり! アインスさんは美人さんだからね。お安くしておくよ」

「いつもありがとう、店主。・・・では、すき焼きに合うお肉をください」

主はやての誕生日を今夜祝うため、なのは達を家に呼んですき焼きパーティをすることになっている。そのための買い物だ。なのは達もそれぞれ食材を持ち寄ってくれるそうだが、人数が人数だ、こちらでも用意しておくべきだろう。
肉屋を後にし、次は八百屋へ向かう。そんな中、「うおっ、アインスさん、どもっす!」男子学生数人が私に気付いて90度に体を曲げて一礼した。その光景には商店街の人たちや客も慣れてしまっているおかげで騒ぎは起きない。

「私に会うたびにいつもそのような真似はしないで良いと言っているんだが・・・」

「いえっ! 命の恩人のお1人には常に義を以って挨拶を!」

高校生と呼ばれる歳の男子学生たちは礼をやめようとしない。命の恩人と呼ばれるようになってかれこれ2ヵ月少し。私とルシルとシグナムの3人でこの商店街を回っていた時、私たちはこの学生たち(あの頃は不良と称されていたな)に絡まれた。いわゆる、ナンパ、というものだ。当然、私たちは無視していたのだが、彼らはそれが気に入らず暴れ出した。

(それを、こちらも力づくで止めたのだったな)

魔法は使えずとも、オーディンより教わった格闘技が私やシグナムにはある。喧嘩慣れしているとは言え素人相手に負けるわけがない。で、この学生たちを退治したことで商店街の人たちから感謝され、八神家は有名になり、人気となってしまった。
それから数日、別の不良学生たちとこの学生たちが大喧嘩。一方的にやられていた学生たちを、私とシグナムとザフィーラ、そしてルシルで庇い、それがきっかけとなってこうして私たち4人を敬うようになった。私にはさん付けで、シグナムには姐さん付け、ザフィーラには旦那付け、ルシルには坊っちゃん付け。

「お荷物、お持ちしましょうか!?」

「いや、結構だ。ではな」

「「「「「はいっ! お気を付けて!!」」」」」

「お前たちもな」

ビシッとまた礼をする学生たちを置いて買い物を続ける。以前とは違ってボランティアなどにも参加し、商店街の人たちにも受け入れてもらえるようになってきた。

「いやいやぁ、相変わらず人気者だねぇ。あんた達に守られたことであの子たちを更生してくれて、本当に良かったよ。若気の至りとは言っても、過ちに気付くのなら早い方が良い。あの子たちは運が良い方だよ」

「そうですね。ええ、その通りです」

すき焼きに入れる野菜類を購入し、それから次々と食材を購入して、「ただいま」家に帰る。挨拶はもちろん返って来ないはずだったんだが、「おかえり~」リビングから挨拶が返ってきた。エコバッグを置いて「何者だ!」リビングに突撃。

「勝手にお邪魔してるよ~」

「はやてには伝えられないからね。私たちや父様が元管理局員で、あなた達を犠牲にして闇の書を凍結封印しようとしていたって。だからアポなしになってしまったのよ」

リビングのソファで脚を組んでくつろいでいるのは、ギル・グレアム元提督の使い魔の片方、リーゼロッテ。ダイニングのテーブルにはもう片方のリーゼアリアがきちっと椅子に座っていた。

「・・・それで今日は一体なんの・・・?」

玄関からエコバッグを取って来て、食材を冷蔵庫などにしまいこみながら訊ねる。グレアム元提督やリーゼ姉妹は元管理局員だ。お父上の知人の“おじさん”と騙り、主はやてを犠牲にすることを前提に私たち“闇の書”の封印を企んでいた。

(そのこともあって、主はやてにはグレアム元提督たちの真実を伝えていない。まぁ、グレアム元提督は真実を伝えたうえで謝罪したいと言ってはいるが・・・)

とにかくルシルの機転、それになのは達の協力のおかげで、主はやてを犠牲にすることなく、“闇の書”の旅路を終わらせることが出来た。“夜天の魔導書”という名を取り戻すこともでき、リインフォースという美しい名を、私は得ることも出来た。感謝しても感謝しきれない。

「・・・いやね。以前受け取ったクロノからの報告書で、あなたの寿命が近いって判っていてね。今の内に挨拶しとこうと思って。なんていうか、お疲れ様って」

「正直、あたしは未だにアンタ達のこと、許してないよ。父さまはずっと苦しんできた。あたしだってクライド君――大切な友達を喪った。でも、アンタ達だって苦しんできたって判ったから・・・その、なんだ・・・」

「そうか。わざわざありがとう。リーゼロッテも、ありがとう。グレアム元提督のお加減はどうだろう」

「う~ん・・・ちょっと老け込んだかもなぁ~」

「確かにね。管理局でも幹部クラスの局員だったからね、父様は。辞職したことで気が緩んだのかも」

それからリーゼアリア、リーゼロッテと1時間ほど話し、2人はトランスポーターを利用して帰って行った。2人に出したお客様用のティーカップを片付けていたら、ふっと手から力が抜けてしまい、「あ・・・!」ガシャンと床に落とし、割ってしまった。
屈んで割れた破片を手に取ろうとした時、「っ!?」激しい眩暈に襲われた。破片の上に倒れ込まないように何とか尻もちを付くことに成功。キッチン台にもたれかかりながら立ち上がろうと試みるが、上手くいかない。

(どことなく体から力が抜けていくような・・・)

治まることのない眩暈、強い倦怠感。明らかに異常事態。原因は判らないが、とにかくどこかに横になるために立ち上がろうと手を付いた。

「っ!!?」

一瞬、ほんの一瞬だが、床に付いていた両手が霧散したかのように見えた。この体は魔力で出来ている。それなら今見えたアレは、「構築限界・・・?」なのだろうか。魔力が霧散することで体が消滅する・・・私の結末だ。
気の所為だと思いたいため両手を目の前に持ってくる。すると、「っ!」指先がほんのうっすらと霧散しかけた。両腕が重力に従ってパタリと床に落ちる。

「・・・だ・・・」

主はやての、騎士たちの、未来を繋ぐため。

「・・い・・・・」

この身を捧げることにしたんだ。

「・・・や・・・」

覚悟はしていた。

「・・・いや・・・」

後悔もしていなかった。

「・・・やだ・・・」

だけど・・・

「・・いや、だ・・・」

こうして現実を目の当たりにして・・・。

「・・・いやだ・・・」

思い知る。

「誰か・・・」

死の恐怖を・・・。

「・・・誰でもいい・・・」

永遠の別れを・・・。

「・・・助けて・・・」

死にたくない・・・。

「誰か・・・私を・・・」

消えたくない・・・。

「・・・私を助けてくれ・・・」

一緒にいたい・・・。

「私の時間を、増やしてくれ・・・」

これからもずっと、主はやてやルシル、リイン、騎士たちと共に・・・。

「・・・生きたい・・・!」

視界が涙で滲み始め、頬を伝っていくのが判る。そして漏れ始める嗚咽。必死に唇を噛んで本格的に泣かないように努める。泣いてはダメだ。主はやて達に勘づかれてしまう。この良き日に、私の消滅を考えさせてはいけない。

「止まれ・・・」

涙を止めようと両手で目を擦る。

「止まれ・・・!」

ゴシゴシ。強く目を擦る。それからどれだけ経っただろう。大声で泣くことだけはなんとか耐えることが出来た。しかし体力だけは戻ることはなく、その場から未だに動けそうにない。もうこのまま消えてしまうのだろうか。主はやて達に別れを告げることも出来ないまま。

「なんて不孝者なのだろう・・・」

とうとう私はコテンと床に倒れた。脳裏に次々と浮かび上がってくるのはこれまでの生涯。オーディンと出会うまでの荒んだ時間。オーディンと出会ってからの幸せいっぱいの楽しかった時間。オーディンを喪ってから、主はやてと出会う前での辛かった時間。そして、主はやてと出会ってからこれまでの時間。

「・・・幸せにしてくれたから・・・、幸せにしてあげたい・・・」

だから選んだ消滅だっただろう、リインフォース・アインス。想いが私の体を動かす。上半身を起こし、キッチン台に手を掛け、両脚に今まで入いらなかった力を込めて立ち上がる。そして時間を掛けながらも破片を片付け、洗濯物を取り込む。今の私の仕事は、主はやて達が居ない間、家を守ること。今日で最期なら、せめて全ての家事を終えておきたい。

「――・・・はぁ・・・」

気だるいながらも家事を終え、私はリビングのソファに腰掛けて大きく息を吐いた。背もたれに全体重を預けて気を抜くと、急激な眠気に襲われた。なんとなく、眠ったらそのまま、なんて思えてしまう。

「すき焼きパーティが終わり・・・主はやて達がお休みになるまでは・・・」

今日1日だけは、主はやての誕生日だけは必ず生き残らなければ。背もたれから背を離し、前屈みになる。視線が床に向く。

「・・・!?」

私以外にこの家に誰もいないはずなのに、視界に誰かの爪先が映り込んだ。顔を上げるとそこには「・・・ルシル・・・?」私と同じ長い銀色の髪を有していて、そして蒼と紅の虹彩異色という特徴をした青年が立っていた。身長は180cmほど。ルシルの変身か、と一瞬過るが意味の無い行為をあの子はしないと知っているため、すぐに違うと捨てる。なら・・・

「オー・・・ディン・・・?」

私は幻でも見ているんだろうか。すでにこの世には居ないオーディンがそこに居て、私に微笑みかけていた。あぁ、たとえ幻でも再びあなたと出逢えたことは嬉しいです。

「オーディン。私、頑張りました」

「・・・」

「精いっぱい生きました」

「・・・」

「でも・・・まだ、まだ死ねないんです・・・」

「・・・」

オーディンの幻が私の頭に手を伸ばし、そっと撫でてくれた。久しぶりの感触に嬉し涙が出る。感極まった私は、不思議なことにスッと立ち上がることが出来て、そのままオーディンの胸に飛び込んだ。オーディンはそんな私をあやす様に背中をポンポンと叩いてくれる。

「オーディンが、私のお迎えとしていらしたのでしょうか・・・?」

「・・・」

「もう逃れられないと・・・?」

「・・・」

「・・・私、オーディンの事が好きでした。家族としてではなく、恥ずかしながら女性として、あなたの元に転生したあの時からずっと。これが最期なのでしたら伝えておきたかったです」

心の内を吐露する。何百年と秘めてきていた想いを、都合よく私が見ている幻であろうオーディンに。それでもいい。ただ伝えたかった。私のようなヒトではない者にはあの世なんてあるのかどうか解らない。生まれ変わりなんてものもあるのかどうかも。

「それでも私は願いたいです。いつか、主はやてとルシルとの間に子が産まれたら、それが私でありますように・・・」

オーディンやルシルはオリジナル・ルシリオンのクローンだという。その存在意義は、“エグリゴリ”を救済、その正体は事を成すための生体戦闘兵器。いつ死闘を繰り広げ、その命を落とすか判らない。だからルシルは、シャルの告白を断り続けるし、主はやてとも一緒にならない可能性もある。
それに、最強の“エグリゴリ”であるガーデンベルグを撃破したらルシルもまた、その役目を終えて死ぬことになるだろう。それでも、それまでに結ばれてくれたら、なんて身勝手なことを思ってしまっている。でもそうなるよう願いたい。

「・・・挨拶も無く逝くこと、本当に申し訳ありません。主はやて、ルシル、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン。私、リインフォース・アインスは、幸せでした」

すでに現実と幻覚の境界が曖昧になってしまっていて、オーディンに横に抱え上げられたように錯覚する。一度オーディンの顔を見上げてからその胸に寄り添い、スッと目を閉じた。そうして私の意識は途切れた。

†††Sideアインス⇒????†††

こんにちはです。わたし、リインフォース・ツヴァイといいます。わたしの生みの親で、マイスターでもある八神はやての融合騎――ユニゾンデバイスです。え? ツヴァイって数字の2という意味ではないですか、って?
そうなのです。わたしリインにはオリジナルが居るのです。はやてちゃんのデバイスの1つ、“夜天の魔導書”と呼ばれるストレージデバイスの管制システムで、融合騎であるリインフォース。はやてちゃんと、オリジナルのリインフォース・アインスの2人のリンカーコアを、リインの核としてますです。

(ママが2人いる感じですね~♪)

そして今日、6月4日ははやてちゃんのお誕生日なのです。さらにはアインス達がはやてちゃんと初めて言葉を交わした特別大事な日でもあるです。そういうわけで今日は八神のお家で、なのはさん達お友達みんなをお呼びしてすき焼きパーティをしますです。食材は持ち寄りですけど、今頃はお家でお留守番のアインスも食材を買っている事かと思うです。

(すき焼きはとっても美味しいですから、今からお腹ぐぅぐぅですぅ~♪)

お肉やお野菜、おうどんなどなどをそのまま食べても美味しいですけど、溶き卵に絡めると、さらにとっても美味しくなるのですよ。不思議ですぅ~。

「どうしたの、リインちゃん。すごく楽しそう」

「なにか良い事でもあった?」

「あ、テレサさん、テレジアさん。お疲れ様ですぅ~」

はやてちゃん達が所属してる時空管理局の特別技能捜査課の一員で、リイン達みんなの先輩であるテレサさんとテレジアさんが、はやてちゃんに与えられたデスクの上に居るリインに声を掛けてくれました。テレサさんはとっても優しくて、楽しい女の子です。テレジアさんはとっても優秀で、格好いい女の子です。

「実はですね、今日はすき焼きパーディなのですよ♪」

「スキヤキ・・・って・・・」

「なんです?」

あぅ、そこからなのですね。次元世界によっては食文化が違いますから、こういう時もあると、リインはすでに学習済みなのです。お2人にすき焼きとはどういうものかをお話しします。するとお2人は「美味しそう!」お腹を鳴らしました。

「でも、そのスキヤキでパーティなんて、なにかのお祝い事?」

「はいっ。はやてちゃんのお誕生日なのですよ」

「えっ!? はやての誕生日なの!? 聞いてないんですけど!」

「わわっ、プレゼントなんて用意してないよ!」

テレサさんとテレジアさんが大慌て。そんなお2人の騒ぎを聞いて、「何かあったんですか?」この課の課長であるクー・ガアプ一佐のデスクからはやてちゃん達が戻って来ました。書類作成を終えたことで提出しに行っていたですが、なにも問題なくOKが出たようです。そんなはやてちゃん達にお2人はまず「誕生日おめでとう、はやて!」とお祝いの言葉を贈りました。

「あ、おおきにありがとうございます」

「そしてすぐさま、どうして教えてくれなかったの、と責める!」

「教えてくれたら先輩として、友達として、お祝いもしましたし、プレゼントも用意しましたのに!」

はやてちゃんに詰め寄るテレサさんとテレジアさん。はやてちゃん達は小首を傾げて、「てっきり知っているものかと・・・」ルシル君がそう返しますと、今度はお2人が小首を傾げました。

「クララ先輩が、テレジア先輩とテレサ先輩に伝えておくって・・・」

「テレサ。クララから聞いた?」

「聞いてない」

「「・・・クララぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!」」

俯き加減で体を震わせていたテレサさんとテレジアさんが急に顔を上げて、ものすごい勢いでオフィスから出て行ったです。それを見送ってますと、「八神家はもう終業だから、お友達の皆さんと帰宅していいですよ」ガアプ一佐がリイン達に微笑みかけてくれました。みんなで「お疲れ様でした、お先に失礼します」一礼してからオフィスを出ますです。

「クララ先輩に伝えたのは間違いだったかなぁ・・・」

「う~ん、クララ先輩って我が道を往く人やからなぁ。テレジア先輩に言うとけば良かったかもしれへんな」

はやてちゃんの誕生日が今日だとルシル君が伝えたのは、天然と呼ばれるクララさんです。しっかり者のテレジアさんに伝えておけば良かったのかもしれませんね。苦笑するはやてちゃんとルシル君に、ヴィータちゃん達も釣られて苦笑しました。とにかく今日のお仕事は無事に完了です。さぁ、アインスの待ってくれてるお家へ帰りましょう。

「おーい、みんな~!」

「お疲れ様~!」

海鳴市のお家へ帰るためのトランスポーターがある第零技術部――通称スカラボへ向かう中、私服姿のシャルさんと、制服姿のアリシアさんが技術部区画へ続く廊下の角で待ってくれてました。

「んだよ、シャル。せっかくの休みなのにわざわざ本局にまで迎えに来たんかよ」

「そだよ~。褒めて~♪」

シャルさんがヴィータちゃんにそう答えた後、ルシル君の側へ駆け寄って来ました。シャルさんは仔犬みたいな女の子です。ルシル君は「はいはい、えらいえらい」素っ気なく言います。

「メッチャ棒読み・・・」

「それはそうとアリシア。フェイトは一緒じゃないのか?」

「フェイト? フェイトならスカラボで、なのはとアリサとすずかと一緒にお茶してるよ。わたしとシャルは、はやて達が待ち切れずに迎えに来たの」

すずかさんとフェイトさんとアリシアさんはお仕事で、シャルさんはなのはさんとアリサさんと一緒にお休みでした。そしてリイン達は、シャルさんとアリシアさんと一緒にスカラボへ向かいます。そんな中、通信コールが入りました。受けたのは、「はい、セインテストです」ルシル君でした。

『セインテスト研修生。すまないが査察課のオフィスに寄ってほしいんだが、いいだろうか』

「はい、判りました。すぐに向かいます。・・・ごめん、行く所が出来た」

「そうみたいやね。それじゃあ、スカラボの応接室で待ってるよ」

「あー、いいよ。いつ戻れるか判らないから。先に家に帰っていてくれ」

「おい、ルシル。今日ははやての誕生日なんだから、泊まりなんかすんなよ」

「そうよ、ルシル君。残業とかになるんだったら断ってね」

「もちろんそのつもりだよ。ちょっと遅くなるかもしれないが、必ずすき焼きパーティには参加するから。それじゃまた後で」

はやてちゃんの頭を撫でた後、ルシル君は査察課のオフィスに向かいました。ルシル君のナデナデはとっても気持ちが良いので、リインも好きです。もう1つの仕事場である査察課に向かうルシル君と別れたリイン達はそのままスカラボへ。そうして到着しますと、応接室でなのはさん達がチンクさんやドゥーエさんとゆったりお茶をしてました。お疲れ様、とみんなで挨拶を交わし終えたあと・・・

「――じゃあ、あたし達は一度自分の家に帰ってから、はやてん家に向かうわ」

「プレゼントと食材を取りに行かないとね」

「前から思ってたけど管理局のお給料ってすごいよね。研修生でもちゃんと貰えるし」

「だからちゃんとしたプレゼントも買えるから良かったよ」

「高価なもんとかはええからね!? わたしらの年齢にあったもんでええからね!?」

それからドゥーエさんの操作で、なのはさんとアリサさんとすずかさんは、すずかさん家のトランスポーターへ。フェイトさんとアリシアさんとシャルさんは、フェイトさん家へ。そしてリイン達は、はやてちゃん家のトランスポーターへ帰るです。

「「「ただいま~~♪」」」「ただいまです~♪」

お家の2階に設けられたトランスポーターに到着です。はやてちゃんとヴィータちゃんとシャマルとリインで挨拶するです。シグナムとザフィーラも遅れて「ただいま」挨拶です。ですけど、おかえり、の挨拶が返って来ませんでした。

「アインス~? 居らへんの~?」

「・・・気配がありませんね」

「お買い物に行っているんでしょうか・・・?」

とりあえず1階へ降ります。ヴィータちゃんが真っ先に玄関へ行って、「アインスの靴もサンダルもあるぜ」アインスが家に居ることを示す物があることを確認です。続けて「今晩の食材も買ってきてあります」シャマルも、「洗濯物もしまい込み済みです」シグナムも、「お風呂でもないなぁ」はやてちゃんも、アインスの行方を確認していきます。

「アインス~、どこですぅ~?」

リインは、はやてちゃんとヴィータちゃんとリインのお部屋を確認しますです。ですがやっぱり居ませんでした。シグナムとシャマルの部屋も確認しましたが、「アインスが居らへん・・・」アインスはどこにも居なかったです。

†††Sideリイン⇒ルシリオン†††

「どうも、ルシリオンです」

内務調査部・査察課での所用を終えて、急いで第零技術部(スカラボとはなんか呼べない)へ。扉を開けてもらえるように通信を繋げると、室内から『ルシルか。少し待っていてくれ』チンクの返答があった。数秒とせずに扉のロックが外れて、左右にスライドして開いた。応接室にはチンクが1人いて、「はやて達は先に帰ったぞ」俺を出迎えてくれた。

「ええ。俺もこれから帰ります。トランスポーターの操作、お願い出来ますか?」

「もちろんだ。少し待っていてくれ」

チンクと一緒に奥のトランスポーターが設けられた部屋に移動。チンクが転移先である八神邸へと転送されるよう設定している後ろ姿を見守っていると、「今日、グレアム元提督の使い魔、リーゼ姉妹が八神家へ飛んだ」そう話かけられた。

「リーゼ姉妹が・・・」

ドクター・スカリエッティはもちろん、チンクらシスターズも“闇の書”の一件の真実をすべて承知している。それに、グレアム元提督が何を企んでいたのかもドクターは察知していた。大した情報収集能力だ。

「何をしに行くかは訊いて・・・?」

「アインスに挨拶をしに行く、とだけだ」

「挨拶、か。2人はこっちへ戻って来たんですか?」

「ああ。すでに帰還している。今はどこに居るから知らないが」

「そうですか・・・」

アインスの先がもう無いことは、クロノからの報告書でグレアム元提督たちも知っていると聴いている。挨拶に行ったというのは、おそらくそれが理由だろうな。今さらアインスに危害を加えるとは到底思えないし。

「はやてにはまだ伝えないのか、グレアム元提督たちの事を」

「知らない方が良い事もある、と思う」

先の次元世界では事件後すぐに明かされたが、今回は元提督たちの暴走を初めから食い止めることが出来た。だからはやて達にとっては財産管理をしてくれた恩人という立ち位置だ。そこにわざわざ自分たちを犠牲にすることを企んでいたんです、なんて伝える必要はない。

「・・・まぁ、その辺りについては八神家の参謀(おまえ)がいろいろと考えればいいさ。・・・さぁ、設定完了だ。いつでも転送できるぞ」

「ありがとう。お願いします」

トランスポーターへと入り、俺は八神邸へと転送された。一瞬の視界閉鎖。次に視界が開けた時はもう八神邸2階の物置部屋に設置されたトランスポーターに到着だ。物置部屋から出て階段を下りて行く。

「はやて? ただいま」

「おかえり、ルシル君・・・」

階段下で俺を出迎えてくれたはやてだったが、どうして小声なんだろうか。リビングダイニングからはリインやなのは達の声が漏れ聞こえて来るが、はやてと同じように声量を落として喋っているようだ。

「何かあったのか? みんな声が小さいけど」

「アインスがな・・・」

はやての口からアインスの名前が出た時、瞬時にリーゼ姉妹の姿が脳裏を過ぎった。だから「アインスに何かあったのか?」少し緊張しながら訊ねた。するとはやては首を横に振って、そうではない事を教えてくれた。

「アインスな、どうゆうわけか解らへんけど、ルシル君の部屋で爆睡してるんよ」

「あー、だからみんな小声なんだな~」

はやてと一緒に俺の部屋へと向かい、音を立てないように気を付けて扉を開ける。確かにアインスが俺のベッドでぐっすりと眠っていた。

「まぁ、そうゆうわけで小声なんよ」

「そうか。じゃあ、音を立てないように気を付けながら着替えるよ」

「うん。そうしてもらえると助かるわ」

はやてと別れてひとり自室へ入る。クローゼットの前で局の制服からTシャツにカーゴパンツに着替えていると、「ん・・・うぅ・・ん・・・」アインスが小さく吐息を漏らして寝返りを打った。体勢を仰向けから横へと変え、俺へと向いた。そしてすぅーっと閉じられていた瞼が開いた。

「おはよう、アインス。俺の洗濯物を置きに来たまま眠ってしまったのか?」

からかい混じりにそう言うと、「???・・・!!?」アインスの目がカッと見開き、勢いよく上半身を起こした。そしてキョロキョロと部屋を見回し、さらには自分の両手、胴体、布団を剥ぎ取って下半身を確認した。明らかに様子がおかしい。

「アインス。何かあったのか?」

「ルシル・・・? 私は、夢を見て・・・?」

「・・・えい」

「あいたた! いひゃい、いひゃいぞ!」

アインスに近寄って、スベスベで柔らかな頬を左右から引っ張ってやる。頬から手を放すとアインスは自分の手で両頬を擦って、「あれが夢だったのか・・・?」ポツリと漏らした。

「アインス。顔を洗っておいで。すき焼きの調理がもう始まっているようだし。アインスも作る側だろ?」

「!! いま何時・・・って、5時過ぎ!? 主はやて、申し訳ありません!」

アインスが慌てて部屋を飛び出していった。遅れて部屋を出てリビングに入ると、アインスがはやてを真正面から抱きしめていた。エプロン姿のなのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか、シャルの6人やはやての周りに居たシグナム達もどうしていいか判らないと言った風に眺めていた。

「どないしたん、アインス。悪い夢でも見たんか?」

「・・・えっと、はい。内容はその・・・忘れてしまいましたが」

アインスの背中を優しく叩くはやて。それを見たリインが「アインスは甘えん坊です~」と言うと、「だな~」ヴィータや「ふふ。そうね」シャマルが笑いながら同意。それがきっかけとなって、リビングダイニングがほんわか空気へと変わった。
なのは達からの「おかえり~」の挨拶に「ただいま」と返して、俺もソファへと腰掛ける。今日ははやての誕生日であり、“夜天の書”起動の記念日という特別な日だ。だから俺を除く八神家全員はキッチンに立ってはいけないという決まりだ。ま、アインスとシャマルは立ちたいと聞かないが。

(なのはとアリサとすずか、フェイトとアリシアとシャル。どちらの味付けも楽しみだ)

2チームに分かれてそれぞれ調理することになっている。そして3チーム目として、俺とシャマルとアインスが調理することになっている。人数が人数だからな。すき焼き鍋3つは欲しい。なのは達の調理が終わり、いよいよ俺たちの番となった。

「アインス」

「ああ」

「シャマル」

「ええ」

「「「八神家魂! オオッ!」」」

はやて直伝味付けのすき焼き、なのは達に見せてやろう。

†††Sideルシリオン⇒アインス†††

私は消滅したはずだった。しかし私は今、こうして主はやてやルシル、リイン、騎士たち、それになのはら友人と共に食卓を囲んでいる。どうして未だに存在しているのか解らない。けれど、今はその事は忘れようと思う。この優しく温かく、幸せな時間を暗くしたくないから。

「ルシルとシャマル先生とアインスのすき焼き、本当に美味しいわね」

「シャルとフェイトとアリシアのも美味いけど、野菜の切り方がすげぇ雑だよな」

「すずかちゃんとなのはちゃんとアリサちゃんのはキッチリ切れてるんやな~」

作り主が違えば味も食材の形も千差万別。だが、どれも美味しいすき焼きだった。食べ終えて食器や鍋を水に浸し、いよいよバースデーケーキの時間だ。ルシル、なのは、フェイト、アリシア、シャル、アリサ、すずかがケーキに10本のロウソクを円形に刺す。ルシルが火を灯し、リインが部屋の明かりを消すと、部屋は真っ暗になり、ロウソクの火だけが儚げに私たちを照らす。
そして「ハッピーバースデー・トゥ・ユー♪ ハッピーバースデー・トゥ・ユー♫ ハッピーバースデー・ディア・はやて~♬ ハッピーバースデー・トゥ・ユー♪」誕生日を祝う歌を歌い、主はやてがロウソクに勢いよく息を吹きかけて火を消す。火はその一度で消え、「おめでとうー!」大きく拍手で祝う。

(火を一度で消すことが出来れば願い事が叶うという。・・・主はやての願い。叶ってほしいものだ)

ケーキの後はプレゼント渡し、そしてお喋り。笑顔と笑い声に満ちたその時間を、私は見守った。死ぬのは辛い、消えるのは苦しい。でも、最期の最期まで笑っていようと思う。絶望ではなく希望を残すために。

 
 

 
後書き
ヒューヴェーフォメンタ。ヒューヴェーパィヴェ。ヒューヴェーイルテ。
前半でドキッとしてくれた方、いますか? ドキッとして下さっていれば嬉しいです。本当はこの話、4月1日のエイプリルフールに投稿する予定だったんですが、こんなに遅くなってしまいました。スケジュール管理がずさんな作者ですみません。
 
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